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祓い屋京浮シリーズ

「おい、起きろ京楽」

「うーん・・・げへへへへ、浮竹、愛してるよ」

「なんの夢を見てるんだ!いい加減起きろ!」

浮竹は、京楽の頭をハリセンでスパーンと殴った。

「はっ!僕の愛しいエロい浮竹が消えた!」

がばっと起き上がった京楽の目に映ったのは、正装している浮竹の姿だった。

「浮竹、どうしたのそのかっこ」

「依頼主に会うためだ。とある大会社の社長らしい。普段着ではまずいから、スーツを着た」

「スーツ姿の浮竹って新鮮だなぁ。脱がしたい」

「あほか!」

ハリセンで殴られそうになって、京楽は桜文鳥の姿になると、浮竹の頭の上に乗った。

「ずるいぞ。文鳥になるなんて」

「だって、浮竹のハリセン、容赦ないんだもの」

「そりゃ京楽相手だからな」

「酷い!」

はたから見れば、桜文鳥が浮竹の頭の上でちゅんちゅんと愛らしく鳴いているようで、実際は違った。

「とにかくお前も・・・・・ああ、めんどくさいから桜文鳥のままでいい。式だと説明すればいけるだろう」

そうして、用意した車を浮竹は運転して、とある大会社の社長に、応接室に通してもらった。


--------------------------------------------


「どうか、座敷童様をお守りください。とある退治屋が、代々我が家系の繁栄を約束してくれた大切な座敷童様を殺そうとしているのです」

「その座敷童はどこに?」

「私の邸宅の地下に」

「まさか、座敷牢などに監禁してないないだろうな?」

「チュンチュン!」

「まさか!座敷童様のために特別にあつらえた部屋で、静かにお過ごしになられております。飽きないように、術者を雇って、式で遊び相手をしてもらったりしていますし、座敷童様がその部屋を出たいと言ったことはありません。決して監禁などしておらず、地下室にいるのは座敷童様の意思です」

「ふむ・・・・その座敷童を殺そうとしている相手に覚えは?」

「商売敵のB社の手の者かと。退治屋を最近雇ったと聞きます」

「ふむ・・・・今回の敵は、同業者というわけだ」

「同業者同士の争いは、なるべくしたくないんだけどねぇ」

ちゅんちゅん鳴いていた桜文鳥が、いきなり人の姿をとったので、その社長はびっくりして腰を抜かした。

「ああ、俺の式の京楽春水。桜文鳥の姿をとるが、一応人型で俺が持っている中でも最強の式だ」

「さようで・・・・その、依頼のほうは受けていただけるので?」

「ああ、引き受けよう」

「そうだね。何もしてない座敷童ちゃんを殺すなんてひどいしね」

京楽は、浮竹用に出された茶菓子とお茶を飲みながら、一息つく。

「座敷童ちゃんは僕が守るよ。浮竹は術者を見つけて話をつけて。もしくは、不利になったら僕を呼んで。座敷童ちゃんを数時間は守れる結界をはるから」

「分かった」

こうして、浮竹と京楽は社長の邸宅の地下室にいる座敷童のところにいき、一度守ることを伝えると、座敷童はあどけなく笑った。

「お兄ちゃんたち、あたいを守ってくれるの。ねぇ、お手玉しよ?」

「はいはい、それはこっちの京楽がしてくれる」

「あ、ちょっと浮竹!?」

「式の気配がする。行ってくる」

「気をつけてね!これ、僕のお守り!攻撃を一度はじき返すように作ったやつ」

人型の紙人形を受け取って、京楽を座敷童の守り手にして、浮竹は気配のあった式がいるであろう場所へ向かった。

「隠れていないで出てこい。座敷童に手を出すことは許さない」

猫耳のついた巨乳美女の式がいた。

その式は、浮竹を見ると、微笑んだ。

「ギン、出番よ」

「乱菊、早いがな。争いもしないうちに、僕を呼ぶんかいな」

乱菊と呼ばれた式は、欠伸を噛み殺しながら、ギンと呼ばれた青年の中に消えていった。

「なんや、同業者かいな。こっちはその座敷童を処分せぇって依頼受けてるねんけどな」

「お前は・・・・市丸ギン!」

現れたのは、祓い屋や退治屋の中でもだんとつに力の強い、有名な退治屋だった。

「浮竹十四郎。人型の式神を4体。あとは猫と鴉の式神」

「どこでそれを・・・・・・」

「さぁ、何処でやろなぁ」

「座敷童には、手を出させないぞ!」

市丸ギンは、にっと笑った。

「依頼の価格安いしなぁ。まぁ、今回は退いたるわ。僕も罪のない座敷童なんて殺したくないしな」

「退いてくれるのか」

「ほな、またな」

市丸は神出鬼没で、ドロンと音を立てて、消えてしまった。

あとには、紙人形が残された。

紙人形を使って、本体でなく分身体で相手をしていたようであった。

「助かった・・・・・・・」

「おのれ、市丸ギンめ!お館様の命令を無視しおって!ええい、わしが相手じゃ!」

今度は、70台くらいのじじいの式が現れた。

術者はすぐ近く。

じじいの式は、浮竹に焼けこげるような炎を浴びせた。

ぼっと燃えたのは、京楽が念のためにと渡してくれた紙人形だった。

「京楽、来い!」

「チュン!」

「なんじゃあ、文鳥の式だと?わしをなめているのか!」

「あいにく、ただの文鳥じゃないんだよねぇ」

京楽は、人型に戻ると、水の玉を召還し、それでじじいの式を閉じこめた。

「がぼがぼ」

「そのまま溺れ死んでしまえば?僕の浮竹に手を出した罰だよ。それから、逃げようとしているそこの君、切り刻まれたくなかったら、ちゃんと顔を出して名乗りなよ」

「・・・・・日番谷冬獅郎。座敷童退治を受けたが、同業者と争えとは言われていない。こい、氷輪丸!」

氷の式を呼びだして、名乗った日番谷冬獅郎という年若い少年の退治屋は、京楽と浮竹から距離をとった。

「俺も、市丸のように退かせてもらう。お前は浮竹十四郎だろう。祓い屋の中で有名な相手とことをかまえるほど、バカじゃない」

「あれぇ、みんな退くの?バトルはなし?」

「京楽、争わないでいいならそれにこしたことはない」

「つまんないじゃない」

「京楽!」

浮竹は、京楽の頭を殴った。

「じゃあな。俺は退く」

冬獅郎は、じじいの式を回収して、去ってしまった。

「殴ることないじゃない」

「同業者で争うのは御法度だ。それくらい、知っているだろう」

「あれぇ、そうだっけ?」

「はぁ・・・・・・。依頼主のところに戻るぞ」

浮竹は、結界で守られているとはいえ、座敷童のことが心配だった。

市丸ギンや日番谷冬獅郎ほどの術者ならば、京楽の結界を破壊して、座敷藁を殺すこともできるだろう。

座敷童と依頼主のところに戻ってくると、2人とも無事だった。

だが、様子が変だった。

「あたいは、もう役目をまっとうした。汝らの一族に莫大な富を与えた。もう、自由になりたい」

「座敷童様、そんな我儘を言わずに!」

「いやじゃ。自由になりたいのじゃ」

「依頼主さん、座敷童を自由にさせてあげてくれ。あんたは十分に富を築いただろう」

浮竹の言葉に、依頼主は血走った目で頼みこんでった。

「どうか、座敷童様をこの地に呪縛してください!」

「そんなのいやじゃ!」

座敷童は、京楽の後ろに走ると、その陰に隠れた。

「さぁ、早く座敷童様に呪縛を・・・・・・」

「断る」

「同じく」

「なんだと!依頼料をとっておきながら、依頼主に逆らのか!」

「依頼を受けるも止めるも、術者の自由だ。何百年もこの座敷童の世話になってきたんだろう。もういい加減、解放してやれ」

「いやだ、私は、座敷童様の力でもっともっと、もっといっぱい金を稼ぐのだ・・・・」

「あーあ。低級霊が憑いてるね」

「そうみたいだな。祓うぞ」

「分かったよ」

浮竹は京楽に命じて、清浄なる結界を依頼主周囲に張り巡らせる。そして、穢れなき神の水を満たして、依頼主に憑いていた低級霊を祓った。

「あれ、私は?」

「君、霊に憑りつかれていたんだよ。金に目をくらませすぎてね」

「座敷童様・・・・・」

依頼主は泣き出した。

「ああ、もう、手のかかる主じゃのう。仕方ない、そなたがあの世にいくまでは、まだこの土地で、そなたの一族の繁栄を手助けしよう」

「座敷童様!!」

依頼主はわんわん泣いて、座敷童を困らせた。


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「じゃあ、この結界から、むやみに外に出ちゃだめだ。この結界は君を守るためのもので、特殊な術だ。祓い屋や退治屋から、姿も見えないし認識もできない。ここから俺が離れれば、俺も認識できなくなるから」

「すまんのう」

「浮竹って優しいでしょ」

「そうだのう」

「僕のお嫁さんなんだ。ふがっ!」

「誰が誰の嫁だ!」

浮竹は、京楽の股間を蹴り上げた。

「ぬおおおおおおおお」

じたばたする京楽を置いて、浮竹は歩き出す。依頼料はちゃんともらったし、同業者に根回しして、座敷童は去ったと認識させた。

「ちゅんちゅん!!!」

ばたばたともがきながら、桜文鳥になった京楽が、浮竹の肩に止まった。

「全く、お前は・・・・・・」

「ちゅん!」

「しゃべれるだろうが!」

「痛ひ・・・・・・」

「だろうな。そうなるように蹴ったからな」

「酷い」

「知るか」

「クスン。浮竹、好きだよ」

はためからは、文鳥がチュンチュン啼いて、飼い主がそれに答えているように見えた。

「帰るぞ」

「うん。帰ろう」

ルキアや海燕の待つ、マイホームに帰ることになった。

数日の出張になったが、2人ならうまく家を守ってくれているだろう。

「ねぇ、あの市丸ギンと日番谷冬獅郎って子、同じ系列の退治屋かな?」

「市丸ギンは単独だ。日番谷冬獅郎のほうは、術者日番谷家の一門だろう」

「何はともあれ、同業者と争いにならなくてよかったよ」

「そうだな」

自宅について、家の中に入る。

「おかえりなさいませ」

「おかえりなさい」

ルキアと海燕が、出迎えてくれた。

「ああ。ただいま」

「ただいまー」

浮竹と京楽は、着の身着のままで、そのままベッドに横になってすぐに眠ってしまった。

特殊な、座敷童を守る結界をはるのに丸一日を要したのだ。

くたくたで、眠気がすごくて、我が家に帰ってきてすぐに寝た。

「主、食事は・・・・・」

答えはなかった。

ルキアは、作った食事を冷蔵庫にいれた。

海燕は、たまった洗濯物を洗いにいった。

「ご主人様から、違う式の匂いがする。同業者と、いさかいでもあったのだろうか」

「それは俺たちには関係のないことだろう。どうせ、京楽が戦闘に出るだろし」

「むう、海燕殿は冷たい!」

「主のことは守るけど、あくまで俺たちは式だ」

「それは分かっているが・・・・」



「あああ、いいよ、いいよ浮竹すごい。すごいぬおおお、そんなこともしてくれるの!?」

眠っていた浮竹は、隣でうるさくわめきながら寝ている京楽を、ベッドから落とした。

「ああああ!あれ!?」

「文鳥になってろ!この盛りのついたばかが!」

「ちゅん!ちゅんちゅん!!」

浮竹の呪文で強制的に桜文鳥の姿にされて、鳥かごにぶちこまれて、京楽は浮竹が目覚める5時間後まで、鳥かごの中でちゅんちゅんと鳴き続けるのだった。

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