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祓い屋京浮シリーズ10

マオや禍津神の浮竹に狙われたりして、精神的に散々な目にあった式の京楽は、文鳥姿になると頭に10円はげをこさえていた。

「10円はげできてるぞ」

「いわないで。気にしてるんだから」

「超速再生能力でも治らないのか」

術者の浮竹がそう言うと、式の京楽は人姿に戻った。

「人の姿になっても、ほらここに10円はげが・・・・」

「むう。アデランス・・・・・」

「そういう問題!?少しは僕を労わってよ!あいたたたた」

「どうした!?」

いきなり京楽がおなかを抱えて痛み出すものだから、浮竹も顔色を変えた。

演技ではなく、本当に痛いようで、救急車をとか思って式の存在であることに気付いてその思考を、一蹴する。

「何か薬をとってくる。あと、治癒術もかけよう!」

「いたたた・・・・・浮竹、いかないで。うまれる!」

「へ?」

『どうしたの』

『そうしたんだ?』

隣の部屋で、羽毛クッションをもふもふしていた禍津神の浮竹が、術者の京楽と共に姿を現す。

「その、京楽が突然腹が痛いと・・・・回復術をかけても治らない」

『鳥・・・・浮気か?」

「へ?」

術者の浮竹には分からないようだったが、禍津神の浮竹には式の京楽の腹痛の原因が分かるようだった。

「ちゅん!」

式の京楽は、文鳥姿になるとソファーに座り、なんと卵を2つ産んだ。

「ちゅんちゅん!(僕と浮竹の子供だ!)」

「京楽が卵を・・・・・はうあっ」

あまりのことに、文鳥になった京楽はメスであることをすっかり失念していた術者の浮竹は卒倒した。

その体を、やんわりと禍津神の浮竹が抱きとめる。

『しっかりしろ』

「うーんうーん」

気絶した術者の浮竹は、式の京楽が子供を産んで、子供が京楽ママと浮竹パパというひどい悪夢を見る羽目になる。

『とりあえず、卵どうにかしないとな。捨てるか』

「僕と浮竹の卵だよ!」

『そんなはずないでしょ。鳥のメスは無精卵でも卵を産むときがあるからね。君の場合、ストレスがたまりすぎて、卵を産むって形になったんでしょ』

「ちゅんちゅん!僕の卵・・・・・」

文鳥姿でもその気になれば人語をしゃべれるので、式の京楽は取り上げられた卵を哀しそうに見ながら、しょんぼりとなった。

『庭に埋めるね。命の元にはなっていないけど、そうなる可能性のあったものだから』

術者の京楽は、そう言って取り上げた卵を庭に埋めにいった。

卵を産んだことで、腹痛のなくなった式の京楽は、気絶したままの術者の浮竹に膝枕をしてやる禍津神の浮竹に嫉妬した。

「どいて。僕が膝枕する」

人の姿になった式の京楽がそう言った。

『鳥、卵を産むのははじめてか』

「そりゃそうだよ。僕も卵産めるなんて知らなかったよ」

『今後も産みそうな可能性があるなら、術者の俺に説明しておけ。卵を産む度に卒倒されてはいろいろ困る』

「うーんうーん、京楽が卵を・・・・京楽がママで俺がパパ・・・うーんうーん」

『かなり酷い悪夢を見ているようだな』

「どいて。浄化術で悪夢を消す」

式の京楽は、立ち上がって術者の浮竹の体を預かると、浄化の術をかける。

すると、術者の浮竹が目覚めた。

「あれ?ここは・・・・はっ、俺と京楽の子供は!?」

『おちつけ。鳥というか式と人の、それも同性の間に子はできないだろう』

「むう、それもそうか。なんだかすごい嫌な夢を見ていた」

『災難だったな』

術者の浮竹の長い髪を、禍津神の浮竹が撫でる。

「僕のものだよ。あげないからね」

『誰もとろうとなんて思ってない。この鳥め』

「君がいたずらばかりしてくるから、僕は10円はげができたんだよ!」

『そうか。早く生えるといいな。育毛剤を買ってやろう』

「ムキーー」

「10円はげはストレス解消したら治るだろう」

「じゃあ、今夜の僕の相手、してくれる?」

「なんでそうなる!」

真っ赤になった術者の浮竹は、式の京楽をハリセンではたいた。

庭に卵を産めてきた術者の京楽が帰ってきた目の前で、キスをされたからだ。

『別にボクらの存在なんて気にしなくていいのに。ねぇ、十四郎、好きだよ』

『あ、春水・・・・・・・』

術者の浮竹と式の京楽の目の前で、いちゃつく二人を見て、変わったなぁと思った。

勿論、よい方向に。

その日は、術者の京楽と禍津神の浮竹は、術者の浮竹の屋敷に泊まっていった。

かすかな喘ぎ声が、2人の耳にも届いていたのは、秘密であった。


『朝早いな』

「んー。何もする気がおきない」

禍津神の浮竹に朝の挨拶をされて、術者の浮竹は物憂げな表情でソファーの上に寝転がっていた。

式の京楽の羽をつめて作った2つ目のクッションを手に。

「あのアホが・・・」

『盛ったんだろう?』

「う・・・・」

『隠してもバレバレだからな』

「客がきてるのに、あいつ」

術者の浮竹は、静かに怒っていた。

流されたとはいえ、そういう関係に陥ってもう長いが、客がきている日に盛られたのはあまり少ない。

「後で、羽むしってやる」


「へっくしょん」

寝室で、式の京楽は盛大なくしゃみをして起きて、隣に術者の浮竹がいないのに気づいて、着替えてリビングにいくのだが、盛大にハリセンが炸裂したのは言うまでもない。



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