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祓い屋京浮シリーズ13

「河童がでるんです」

「河童?今時に?」

「そうです。子供を川でおぼれさせたり、洗濯物をよごしたり、赤ん坊を泣かせたり、備蓄の食料を盗んだり・・・・・・はてには万引きまで。どうか、河童を退治してください」

「はぁ。最初の子供を川でおぼれさせるは分かるが、万引き?河童が万引き?」

浮竹は、首を傾げた。

万引きをする河童など、聞いたことがない。

「最近の妖怪は、最先端をいってるやつもいるからね。知り合いのあずきとぎなんて、DJしてたよ」

「あずきとぎがDJ・・・・・・」

京楽の言葉に、さらに首を傾げる浮竹であった。

そんなこんなで、河童退治に赴くことになった。

その河童は沼のどこかにいるので、沼のある場所の近くに、きゅうりをいれた罠をしかけて、河童がかかるのを待った。

「ぎぎゃぎゃ!罠だ!」

「いや、ほんとにかかるもんなんだね。河童ってきゅうり好きなんだ」

「河童と言えばきゅうりだろ」

そんなやりとりをしながら、罠にかかった河童を見ると、体中が傷だらけで、浮竹も京楽もまずは罠から解放せずに、河童の言い分を聞くことにした。

「お前、子供を溺れさせたのか?」

「違う。おぼれていたのを、助けただけだ」

「じゃあ、洗濯物を汚したのは?」

「雨が降ってきたから、取り込んでやろうとしたら、汚れがついてしまった」

河童は、自分が退治されるかもしれないと分かっていても、真面目な顔で答えた。

「赤ん坊を泣かせたのは?」

「かわいかったから近寄ったら、泣かれた」

「備蓄の食料を盗んだのは?」

「いつもきゅうりを備えてくれる会社の人が風邪になってこないから、きゅうりをもらいにいったら、他の妖怪が備蓄の職力を盗んでいて、その犯人にされた」

「じゃあ最後だ。万引きはしたのか?」

「万引きは確かにしたけど、美味い棒1本だ。後で、お金をちゃんと払った。レジの中に、お金をいれた」



「ねぇ、浮竹、この子・・・・・・」

「ああ、嘘はついていないようだ。嘘探知の式が反応を示さない」

「ねぇ、河童君。君を退治しろと、町の人がうるさいんだ。でも、君は退治されるようなことはしていない。僕らが退治しなかったら、次の術者が君を退治にくるだろう。引っ越しを提案するのだけど、どうだい?」

「むう、俺は町の人に怖がられているのか」

「怖がられているというより、嫌われてるね。河童はそう強くないから、人でも退治できるし」

「ぎゃぎゃ。このままでは、俺は死ぬしかないのか?」

「そうなるね。だから、住処を変えよう。僕たちは無益な殺生は好まない性質でね。引っ越しするなら手伝うよ」

「じゃあ、引っ越しを手伝ってくれ。大切な荷物がいっぱいあるんだ」

河童は、隣町の池に引っ越すことになった。

くだらないおもちゃやら、きゅうりをくれたおばあさんの形見やら、とにかくいっぱいものがあって、3往復した。

「ぎゃぎゃ。これで、俺は退治されずにすむのか」

「お前は、もう人前には出ずに、この池で静かに暮らせ。人と関わるな」

「ぎゃぎゃ。そうする・・・・・・・」

依頼人には、河童を退治したのではなく、移動させたと真実を伝えて、依頼料の半額をもらった。

「なんだか、少しかわいそうだったね、あの河童」

「河童は悪戯好きで、子供をおぼれさせて殺したりするからな。あの河童はいい妖怪だ。殺すのは可愛そうだったし、人と関わずに生きていけるなら、もう大丈夫だろう」

「でも、万引きする河童なんて初めて聞いた。しかも代金ちゃっかり払ってるし」

「いい河童だったな」

「そうだね」


屋敷に戻ると、ルキアが術者の京楽と禍津神の浮竹が来ていることを告げた。

「2人はお留守番だ。術者だけの式札の買い物にいってくる。お前たちをもっていることがばれたら、金にものをいわせて取り上げられそうだ。大人しく、留守番してるんだぞ」

「ええ、僕は留守番なの」

『俺も留守番なのか』

『十四郎、素直にセンパイの言葉に従って』

『むう。お前がそう言うなら、仕方ない\』

「僕が禍津神の浮竹と二人きりでお留守番・・・・・ぬああああ」

『鳥、留守番するぞ!』

「ああ、うん。ちゅん」

『羽をむしっていいのか?』

術者の浮竹と京楽が出かけて、二人きりになった式たちは、一方は小鳥になって、一方はその小鳥の羽をむしりたいと目を輝かせていた。

「ちゅんちゅん!!(鳥の姿でいると楽なだけで、羽むしらないで!)」

『鳥の姿にでいると楽・・・・やっぱり、お前水龍神じゃなくってただの鳥だろ!』

「違うよ!」

ぼふんと音をたてて、式の京楽は元の人の姿に戻った。

ぐ~~~。

その瞬間、禍津神の浮竹の腹が盛大になって、禍津神の浮竹は顔を赤くした。

『違う、これは鳥を見て腹が減ったから』

「何食べたいの?作ってあげる」

『鳥・・・お前、料理できるのか』

「浮竹の食べるものは大抵僕が作ってるからね。そっちも似たようなもんでしょ」

『むう。確かに俺は料理はできない・・・・・』

「簡単なもので、オムライスにしよう。作り方も簡単だし、教えてあげるから術者の僕に食べさせてあげなよ」

『鳥・・・・じゃなくて桜文鳥。お前って、けっこういい奴だな』

「鳥から進化した・・・・まぁいいけど」

こうして、式の二人はああだこうだとやりとりをしながら、オムライスを4人分作った。

お腹が減っていたので、式の二人は先に食べた。

『ただいま・・・ああ、疲れたよ。センパイは大丈夫?浄化の札を売ってくれって押しかけられてたけど』

「なんとか生きてはいる。疲れた。腹減った。飯食って風呂に入って、寝る」

『今から食事作るから・・・・どうしたの、十四郎』

にこにこ顔で、禍津神の浮竹は術者の京楽の手をひっぱり、ダイニングルームに連れていく。

『俺が、教えられながらだけど作ったんだ。食べてくれ』

『これ、十四郎が?』

『ああ』

『式のボクに教えられながら、作ったの?』

『そ、そうだ』

『ふふ、十四郎かわいい。いただきます。うん、美味しいよ』

『そうか、良かった』

禍津神の浮竹はにっこりと笑顔になる。

「浮竹も食べなよ。まだあったかいから」

「ああ、いただく。いつ食べてもお前の料理はうまいな」

「ふふん。水龍神の中でも名コックって、名前知れてたんだよ」

「今じゃ、水龍神どころかただの鳥だけどな」

『鳥じゃないぞ、術者の俺。桜文鳥だ』

「お、式の俺は、呼び方が変わったってことは、何かを認められたんだな」

「もちろん、料理の腕を・・・・・」

『いろいろ聞いた。夜の話とか』

バキポキ。

関節を鳴らしながら、オムライスをさっさと食い終わった術者の浮竹が、式の京楽に近づく。

「ぎゃあああああああ」

「いっぺん死ねえええええええええ」

「もぎゃああああああああ」

『『ご愁傷さま』』

離れた場所で、どたばたと暴れる二人を見ながら、術者の京楽と禍津神の浮竹はゆっくりと茶を飲むのであった。


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