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祓い屋京浮シリーズ18

『いやぁ、ボクにも神様が宿ちゃってね』

「「は?」」

挨拶を言うような気軽さで、告白されて、術者の浮竹と式の京楽は見事にはもった。

そして、同時に首を傾げた。

『嘘じゃないよ。ね、十四郎』

『そうだぞ。春水には、夜刀神という神が宿った。ちなみに俺ラブだ』

「もとから、そうだった気がするんだが」

「そうだね。っていうか、神様が宿ったなら僕を労わってよ!日頃から、君がラブな禍津神の浮竹に羽をむしられたり、拷問されたりしてるんですけど!」

『なんだ、桜文鳥いたのか』

「ちゅん!(酷い!)」

思わず桜文鳥の姿になり、式の京楽は術者の己の肩に止まった。

『ということで、京楽に神様が宿った記念パーティーを始めるぞ!』

「なんだそれは」

『硬く考えるな。ただ飲み会だと思え』

「酒!酒をもってこーい」

人型に戻った式の京楽は、メイドのルキアに高級な酒をもってきてもらった。

アルコール度数の高いやつで、それを水のように飲んでいく。

『僕にもちょうだい。アルコールに大分強くなったからね』

「俺も・・・・」

「浮竹はだめ!カクテルでもだめ!酒は禁止!オレンジジュースで我慢しなさい」

「なんで俺だけ・・・・・」

「酒に弱いから。この前、酔っ払って術者の僕を押し倒したの忘れたの」

「う・・・・オレンジジュースでいい」

術者の浮竹は、オレンジジュースにコーラ、スプライト、リンゴジュースと、用意されていたソフトドリンクを飲んでいく。

種類を用意したのは、式の京楽で、酒を飲ませられない術者の浮竹への配慮からであった。

取り寄せたご馳走を皆思い思いに口にする。

『うまいな、この料理』

『うん。どこから取り寄せたの?」 

「レストランシャノワール」

式の京楽が答えると、術者の京楽の顔色が変わった。

『三ツ星レストランじゃないの。お金、かかったでしょ?』

「浮竹が、そこのオーナーの依頼をこなしたことがあって、取り寄せることができたよ。100万以上は吹っ飛んでるけど」

『ありゃー。これは、全部ありがたく食べないとね』

「残しても、ルキアや海燕も食べるし、大丈夫だぞ」

『そう。じゃあ、無理して食べる必要もないかな』

日頃の感謝をこめて、ルキアと海燕の分も別に用意しているが、食べ残しになったらその分も食べてくれるだろう。

「コーラよこせ~~~。うぃっく」

「ああもう、浮竹にカクテル飲ませたの誰!」

『すまん、俺だ。甘いからジュースだと思って、術者の俺にも飲ませてしまった』

「浮竹はここで脱落だね。ベッドに寝かしつけてくるよ」

『変な気は起こすなよ、桜文鳥!』

「さすがに、パーティーしてる最中に盛ったりしないよ」

式の京楽は、術者の浮竹を寝かしつけに行ってしまった。

その場に残ったのは、禍津神の浮竹と、術者の京楽だった。

『これ、おいしいよ。飲んでごらん』

『ん・・・甘い』

『カクテルだね。浮竹の澄んだ緑の瞳みたいな色だ』

『春水・・・・・』

『十四郎・・・・』

「おーい。人に盛るなっていっておいて、何いい雰囲気かもしだしてんの」

戻ってきた式の京楽に邪魔されて、二人は甘い空気を霧散させた。

『術者の俺は大丈夫だったか?』

「うん。酔っ払てたけど、すぐに寝ちゃったよ」

『そうか。じゃあ、パーティーを続けるぞ。飲むぞー、食うぞー』

『十四郎、飲むのはほどほどにね。君もアルコール強いわけじゃないんだから』

『むう、分かっている。つぶれたら、介抱してくれるだろう?』

『まぁね』

式の京楽は、二人の邪魔にならないように、ルキアと海燕を交えて、二人のために用意しておいた料理も出して、パーティーを続行した。

終わる頃には、二人の酒豪の京楽二人を除いた面子が酔いつぶれていた。

『じゃあ、ボクは十四郎とゲストルームを使わせてもらうから、君はルキアちゃんと海燕君をお願い』

「分かってるよ」

酔いつぶれてしまったルキアと海燕を、それぞれ部屋のベッドに寝かせて、その日はお開きになった。



「うーん、頭が痛い・・・・俺はまた、酒を飲んだのか?」

「そうだよ。禍津神の浮竹が、甘いからって、カクテルをジュースと間違えて、君に飲ませたんだ」

「そうか。式の俺も酒を飲んだんだろう。そう強くはないはずだ。酔いつぶれなかったか?」

「ううん、酔いつぶれたよ。術者の僕が、ゲストルームに運んでいったけどね」

「今何時だ」

「昼前の11時」

「皆は起きているか?」

「うん。君が最後だよ」

「ばか、なんで起こさない」

「だって、気持ちよさそうに眠っていたから」

浮竹は顔を洗って着替えると、術者の京楽と禍津神の浮竹が、遅めの朝食をとっている場所に出くわした。

『はい、アーン』

『あーん。今度は、そっちが食べたい』

『ふふ、十四郎は食いしん坊だね』


「なんだ、あれ」

「さぁ。昨日からあんなかんじで・・・術者の僕にはいった夜刀神とやらは、よほど禍津神の浮竹にご執心のようだよ。禍津神の浮竹も浮竹で、術者の僕にめろめろさ」

『ああ、起きてきたの。おはよう』

「おはよう」

『春水、次そっちを食べさせてくれ』

『ふふ、十四郎は甘え上手だね』

『春水にしか、しない』

「なんだか見ていて、ほっこりするけど、恥ずかしい」

『どうして術者の俺が恥ずかしいんだ?』

「年齢は違えど、お前たちと同じ見た目をしているせいだ。まるで若くなった俺が、若くなった京楽に食べさせてもらっているみたいで\・・・・・」

『じゃあ、遅めの朝食を、桜文鳥に食べさせてもらえばいい。うん、いい考えだ。たまには仲良く人前でもいちゃつけ』

「無理言わないでくれ」

「僕は一向にかまわないよ。はい、浮竹アーン」

「一人で食べれる!」

スプーンを奪い取って、エビピラフを術者の浮竹は一人で食べた。

「ちゅんちゅん!」

エビピラフを、文鳥姿になった式の京楽がつつく。

「お前はあわとひえでも食べてろ」

「ちゅん~~(あんまりだー。昨日は我慢して、ちゃんと寝かしつけてあげたのに)」

「我慢して当たり前だ!客が来ている時は、一切盛るな」

「ちゅん(この前のことなら、反省してます)」

「本当か?」

術者の浮竹は、文鳥姿の京楽をじっと見つめた。真摯な眼差しに、式の京楽の目が泳ぐ。

「ちゅんちゅん(多分、反省してた)」

「羽、むしってやる」

「ちゅん~~~~!ぴ~~~~(いやあああ、やめてええええええ)」

「今度は、羽毛布団を作ってやる。むしりまくるからな」

「ちゅんちゅん(助けて~~~~)」

そんな式の京楽は、逃げて鳥かごに入るまで、羽をむしられ続けて、けっこうな量の羽毛が確保できたので、術者の浮竹は本気で羽毛布団を作るようだった。

『桜文鳥の羽毛布団?鳥臭そう・・・・・・』

『こら、そんなこと言っちゃかわいそうでしょ』

「ちゅんちゅん!!(その前に、羽むしられてるの止めてよ!」

『いや、そういう愛情表現なんだろう?』

式の禍津神の浮竹の言葉に、術者の浮竹は少しだけ赤くなった。

「そんなんじゃない」

『あ、照れてる』

「気のせいだ。ああ、これも何もかもお前が悪い!」

鳥かごを揺らされて、式の京楽は。

「ちゅん!ちちちちちち!!!(なんで、僕のせいなのさ。浮竹のばかぁ!)」

ちちちちちと、高く囀って、鳥かごから出ると、外に飛んでいった。

「ちちちちちち(家出してやるううう)」」

「夕飯までには帰って来いよ~~~。後、猫に気をつけろ」

「ちちちちち(分かった~)」

『あれ、家出なのか?』

「たまに家出する。3時間くらいで帰ってくる」

『それ、ただの気分転換の散歩じゃない?』

「むう、そうなのか」

『こら、春水、術者の俺を悲しませるな』

『いや、そんなつもりじゃなかったんだよ。ごめんね』

「いや、別にいい。京楽は外に飛んでいくことは、たまにあるし。大体、買い物して帰ってくる」

その言葉通り、きっちり3時間後には、スーパーで新鮮な野菜と果物を買い込んで、レジ袋をもった式の京楽が帰ってくるのであった。





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