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祓い屋京浮シリーズ20

「できた!京楽100%羽毛布団!!!」

「はぁ・・・羽むしられすぎてストレスで10円はげが3つできた」

「名誉の勲章だと思え!」

「普通、こんなか弱い小鳥の羽むしる!?いくら超速再生があるからって、小鳥一羽で羽毛布団の材料をとか無理ありすぎ」

ここ数日、黙々と羽をむしられ続けた京楽は、ストレスで10円はげが3つできていた。

「アデランスか育毛剤・・・・」

「いいよ、再生能力高まらせて治すから!」

京楽の体が金色の光り、瞳も金色になってて瞳孔が縦に収縮する。

半ば水龍神の姿になって10円ハゲを再生させた京楽は、自分の羽毛100%の布団で寝てみた。

「お、案外悪くないね。ふかふかだ」

「そうだろう。クッションもふかふかだったし、羽毛布団も作りたかったんだ」

「はぁ。君を愛しているから許すけど、普通ここまでされると怒って二度と振り向いてくれないからね」

「京楽は、俺のものだろう?」

悪戯気に目を輝かせて、浮竹が羽毛布団に寝ころんだ京楽に口づけた。

「んっ」

「お、お誘いかい?」

「ここまで。お預け。続きは夜に」

「サービスしてよ?夜の営みもなしで羽むしられ続けたんだから」

「それは、気が向いたら」

「えー。けちー」

いちゃいちゃしてるところに、遊びにきた禍津神の浮竹と術者の京楽がやってきた。

『あ、お邪魔だったかな』

「そんなことはない」

自分のさっきまでキスをしてた式の京楽を蹴飛ばして、術者の浮竹は二人を迎え入れた。

「ほんと、なんでタイミングこうも悪いの」

『昼間っから盛る桜文鳥が悪い』

「はいはい。どうせ僕が悪いですよ」

「ずっと作ろうと思ていた、京楽の羽毛布団が完成したんだ!使ってみてくれ!」

『鳥臭い・・・ごほん、なんでもない』

禍津神の浮竹が、羽毛布団を見る。

術者の京楽は、羽毛布団に寝転がってみた。ふかふかだった。

「ふかふかだね。高級羽毛布団にも負けないよ」

「そうだろう。禍津神の俺も使ってみてくれ」

『えー。鳥臭い羽毛布団ってやだな。まぁ、術者の俺がかわいそうだから使ってやるが』

ためしに寝転んでみて、クッションよりもふかふかなのに驚く。

『鳥臭くなければ、欲しいところだな』

「残念なことに、まだ1つしかないだ。俺が使うから、あげれない」

『いや、鳥臭いからいらない・・・・』

「みんなで鳥臭い鳥臭いって、僕は水龍神だよ!小鳥の姿は仮の姿!」

『羽毛集められるから、いいんじゃないのか』

「僕は羽毛のためにいるんじゃないよ!家出してやるーーー!ちゅん!!!」

文鳥姿になると、窓から飛び出して行った。

「ヨル、念のために監視を頼めるか。ちょっと羽むしりすぎて、ほんとにちょっと家出してしまうかもしれない」

「かあ」

ヨルと呼ばれた鴉の式神は、京楽の後を追って窓の外から飛んでいった。

『あれも、君の式神?』

「ああ。鴉のヨルという。主に監視用に使っている」

『心配なら、式の京楽の足に位置が分かるリングでもつけたらどうだ』

「むう、そういう手もあるか。でも、京楽は今まで一度も家出すると言って、帰ってこなかったことはない。長くても半日の家出だ」

『あ、いけない!新しい式札を納品するの忘れていたよ!ごめん、十四郎、僕一度家に戻るね』

『あ、春水が戻るなら俺も帰る!』

二人は、慌ただしく帰っていき、術者の浮竹だけが残された。

「ふむ。一人だとけっこう寂しいな。ルキア、お茶にしよう。ルキアも飲んでいけ」

式のルキアを呼んで、二人でお茶をした。

式の京楽が作り置きしておいたバームクーヘンとアッサムの紅茶を飲みながら、ルキアに問う。

「最近、黒崎一護って男の子と仲がいいらしいな」

「な、一護は関係ありません!別に親しくなんか!」

「いや、式神だからって遠慮することはないんだぞ。海燕なんて婚約して結婚はできないと説明しておいたのに、結婚式挙げてしまったからな」

「海燕殿が、正直羨ましいです」

「ルキアも、もっと積極的になっていい。一護君を落としてこい」

「ご主人様!」

ルキアは顔を真っ赤にした。



一方、式の京楽は。

自宅に戻り、式札を納品した術者の京楽の家にきていた。

術者の浮竹の屋敷ほどではないが、そこそこに広い家だった。

『春水、桜文鳥がカレーの具になりたいって来てる』

『水龍神様・・・・どうしたんだい?』

「浮竹って、ほんとに僕のこと好きなのかなぁ?求めれば応じてくれるけど、羽むしるし、ハリセンではたいてくるし・・・・・・」

式の京楽は、ちょっとナーバスになっていた。

しくしくと、桜文鳥の姿で泣き出す。

『好きじゃなかったら、君と同じ時を生きようとはしないでしょ?禁忌の術を使ったくらいなんだから、よほど愛されているよ』

「禁忌の術って、何かあるの?」

『水龍神様、知らないで使わせたの?一緒に使った相手がいなと、時折激しい悪夢を見たり、激痛に苛まれる副作用があるよ』

「ええ、なんだって!」

『桜文鳥、心配なら家に帰れ。お前の飼い主が、今苦しそうにしている』

「え、分かるの?」

『式のヨルが、消えてる。術者の俺のことは、なんとなく分かるんだ。今、孤独の中にいる』

術者の浮竹は、ルキアと海燕が買い物にで出かけたことで、屋敷に本当に一人ぼっちになってしまった。

禁忌の術の副作用で倒れ、痛みを我慢して、羽毛布団の上で丸まって耐えていた。

「今すぐ帰る!」

式のヨルを維持できないくらいの痛みに、いっそ気を失いたいと思った。

「きょ・・・ら・・・く・・・・・・」

助けて。

言葉にならない言葉を紡ぐ。

式の京楽は、文鳥ではありえない猛スピードで術者の浮竹の家に帰ると、窓から中に入った。

「浮竹、しっかりして。何処が痛いの!」

「ああ、京楽・・・・家出は終わりか?心配なんて、していないんだからな」

「強がりはいいから!僕は君の傍にいるよ。離れてごめん」

「・・・・ん、ああ。大分楽になった。禁忌の術の呪いは、分かっていたことだから、お前が謝まる必要はない」

「浮竹、君だけを愛しているよ」

「知ってる」

文鳥からいつの間にか人の姿に戻った京楽に抱きしめらて、浮竹はその背中に腕を回した。

「お前と同じ時を生きれるなら、どんな呪いでも受け入れる」

「そんなこと言わないで。僕は傍にいるから。呪いなんて、はね返してやる」

「家出は終わりか?今日の記憶は1時間30分。最短だな」

「もう、浮竹。ほんとにもう大丈夫?」

「ああ、もう大丈夫だ。心配をかけた。ただ、少し眠い。京楽も、一緒に寝よう。羽毛布団で」

心配して訪れた術者の京楽と禍津神の浮竹が見たものは、妊婦の胎内に居る双子のように丸くなって、鳥臭いと言われた羽毛布団の上で丸くなって眠っている二人の姿だった。

『風邪、引かないようにね』

毛布をかけてあげると、うっすらと術者の浮竹が目を開ける。

「すまない、眠くて、相手できない・・・・」

『ゆっくり休め。な、春水』

『うん。ゆっくりおやすみ、術者の浮竹と水龍神様』

ちゃっかりルキアを呼んでお茶をして、夕食もごちそうになり、ゲストルームで一泊していった。

次の日。

「お前なんか、家出してしまえ!」

「ああ、家出してやるよ!こんな家、二度と戻ってくるもんか!」

ケンカをして、まだ家出する式の京楽の姿があった。

念のためにと、夜刀神の京楽が、禁忌の術の呪いを抑えこむ式を術者の浮竹に与えたものだから、常に傍にいなくても呪いが侵食することはもうなかった。


3時間後。

残暑が厳しいからと、アイスを4人分買って、何気ない顔で帰ってくる式の京楽の姿があったそうな。

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