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祓い屋京浮シリーズ21

人であることに、意味はあるのか。

人でないことに、意味はあるのか。

どちらを選んでも、生きていることには変わりない。

浮竹は、水龍神である京楽に愛され続けて、その身に霊力を浴び続けて、水龍神の眷属になりかけていた。

それを、京楽に黙っていたのだが、ある日突然覚醒して、瞳が金色になり、角を生やしている姿を京楽に目撃されて、京楽はショックを受けた。

「君を、あやかしにするつもりはなかったんだ。でも、君と交じりあっていれば、君が水龍神の眷属にいずれなると分かっていた。でも、愛したかった。僕は身勝手だね」

「別に俺は、お前と生きれるなら、人であろうと、人でなかろうとどちらでも構わない」

「水龍神の眷属というか、君も水龍神そのものになってしまってる。僕が霊力を注ぎすぎたせいで」

「つまりはSEXしまくったせいか?」

恥じらいもない言葉に、京楽は少し赤くなって、浮竹の手を握った。

「こうなってしまった以上、責任はとるよ。結婚しよう」

「はぁ?」

浮竹は、間の抜けた声を出した。

結婚?

今更?

もう結婚もして子もいるようなそんな生活を送っているのに?

「お前の気が済むなら、結婚するか」

「結婚式を挙げよう。術者の僕と禍津神の君も客として招待して・・・・・」

『結婚するのか?』

「「わぁ!!!」」

いきなりスーッと現れた禍津神の浮竹の言葉に、二人は驚いて心臓が口から飛び出しそうになっていた。

「禍津神の俺、入ってくるならせめてノックくらいしてくれ」

『だって、ルキアって子が入っていいって、鍵をあけてくれた』

『ごめんねぇ、水龍神様・・・・あや、術者の君まで、水龍神様になったの?』

「どうやら、そうらしい。で、結婚式を挙げたいんだと。招待されてくれるか二人とも」

『喜んで、式には出るよ』

『俺もだ』

「母上や兄上も呼んでいいかな?」

「好きにしろ」



水龍神である一族のほとんどに囲まれて、結婚式を挙げることになった。術者の京楽と禍津神の浮竹は、その中でもひときわ目立っていた。

『使役されるのではなく、眷属としてでもなく、同じ水龍神と結婚して対等の立場でいられることに、私は誇りを感じています。どうか、うちの息子と末永く幸せになってください」

式の京楽の母親は、自分の息子を式として使役する術者の浮竹のことを嫌っていたが、身内である水龍神になったことで、一族の者であるということを認めることにしたようだ。

「弟は変わり者でスケベで不甲斐ないが、どうか幸せにしてやってくれ」

式の京楽の兄にまでそう言われて、どれだけ京楽が一族の中で異端であったかが分かる。

「もう、あなたたちの仲を邪魔する者はいないでしょう。水龍神の一族の名にかけて、祝福を」

「「「祝福を」」」

『なんか、俺たち場違いの場所に来た感じだな』

『まぁいいじゃない。水龍神様をこんなに見られる機会なんてめったにないんだから」

術者の京楽は、水龍神たちを一人一人こっそり観察していた。

神と名のつく仲間に弱いし、興味があるらしい。



「京楽春水。永久に、この者を愛すると誓いますか」

「誓います」

「浮竹十四郎。永久に、この者を愛すると誓いますか」

「誓う」

「ここに、二人の若い水流神の結婚を認めます。皆さま、拍手を」

式の京楽は水色の着物と袴を、術者の浮竹は白い着物を袴を着ていた。

結婚式らしく、ブーケをもたされて、浮竹だけヴぇールをかぶせられた。

結婚指輪をはめあって、キスをした。

花びらが舞い落ちて、二人を祝福する。

知り合いの花鬼(かき)も何人か来ていた。

「おめでとう!」

「おめでとー!」

「なんか、大事になったな。別に、今までの暮らしが変わるわけじゃあないのに」

「形式でも、結婚は大事だよ。君が僕の本当の伴侶になってくれた証だから」

指輪は、術者浮竹の元の瞳の色である翡翠があしらわれていた。

「新婚旅行に行こう。海外に行きたいとこだけど、海外のあやかしのごたごたに巻き込まれるのは嫌だから、北海道にしよう」

「はぁ。もう、好きにしてくれ」

結婚式がつづがなく終わり、二人は初夜を迎える屋敷に案内された。

「初夜だってさ。お前と何百回交わってきたことか」

「今日は初めての気分でいてよ」

「無理言うな」

「せっかくの初夜だし、薬でも使ってみる?」

「そんなことしたら、離婚するぞ!」

「しない。しないから離婚しないで!」

その日は、浮竹が嫌だというまで焦らされた。

いつもより深く愛し合い、浮竹は意識を久しぶりに飛ばした。

朝起きると、すでに湯浴みをされて、後始末をもされて、浴衣を着せられていた。

「一週間は、新しい水龍神が生まれた祭りのために、僕の生まれ故郷であるこの湖の傍の城で過ごしてくれってさ」

「まぁ、別にいいが」

「愛してるよ、浮竹。・・・・・十四郎」

「俺も愛してる、春水」

唇を重ねると、遊びにきた術者の京楽と禍津神の浮竹が部屋に入ってきた。

『あ、お邪魔だったね』

『水龍神、まだ朝だぞ。盛るな』

「ただキスしてただけだよ!」

「さすがに朝からはしない。昨日したばかりだ」

『うわぁ、熱いねえ』

「初夜だったしな」

『お前たちに、初夜という言葉が向いていないと思うんだが』

「まぁ、俺もそう思う」

結婚式も終わり、水龍神の城で一週間滞在してから、新婚の二人は北海道へ一週間の旅行に出かけた。

少し肌寒い季節であったが、いろんなおいしいものを食べたりできて、二人とも幸せだった。末永く幸せに暮らせと言われたが、そんなこと言われずとも禁忌の術を使っているので、長い時おを式の京楽と生きることに変わりはない。

「おみやげ、白い恋人でいいか。夕張メロンも一応買っておこう」

温室で育てられた夕張メロンを、ホテルで食べたが、とても甘くておいしかった。

術者の浮竹はおみやげを、術者の京楽と禍津神の浮竹、それに海燕とルキアと、マオとヨルに、夜一、それに花鬼(かき)の鳴(めい)と、家族に近い相手を選んだ。

一方の京楽は、おみやげを本当の家族であった水龍神の一族、母と兄と従兄弟などに配ることにした。

「はぁ。カニはうまいな」

「うん、おいしいね」

ホテルの夕食に出されたカニのフルコースを食べ終えて、術者の浮竹と式の京楽は満足気だった。

別に、浮竹の屋敷でも食べれるのだが、本場の土地の新鮮なカニは、また別格の味だった。

北海道を散策し、おいしいものを食べてお土産を送り、一週間はあっという間に過ぎてしまう。


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「あんたら、よそのもんか。術者だな。どうか、雪を降らし続ける氷女を説得してくれんか。このままでは、作物が育たない」

依頼料代わりにカニをたくさんもらって、それを冷凍保存して屋敷充てに送ると、浮竹と京楽はその氷女のいる場所に向かった。

「なぁ、氷女。雪を降らし続けるのを止めてはくれないか。町の人が困っている」

「雪が降らないと、あの人が帰ってこないの」

「どういうことだい?」

「約束したの。雪が降る時期にもう一度会おうって。そのことを、事故にあって50年間も忘れていたの。約束したの。雪が降れば、あの人はまた・・・・・」

「氷女、その相手はもう死んでいる」

「何故、そう言い切るの?」

「お前の傍に、幽霊の男性がいる」

「え。あなた、あなたいるの?私には見えない。ねぇ、教えて。どうすれば見えるの!」

「今、お前にも見れるようにしてやる」

浮竹が霊力を注ぎ込み、霊体の男性を人でも見れるようにした。

「あなた!」

「ああ、やっと声が届く。ありがとう、術者の方。カホ、私は47年前に、交通事故で死んでしまったんだよ。カホ、約束を果たせなくてごめんな。どうか、お前だけでも幸せにおなり」

「いやよ!ずっとあなたを待っていた!私も、そっち側に行くわ!」

「カホ・・・・・・」

「あなた、愛しているわ」

氷女は、雪を降らせるのを止めると、霊体の男性を包み込み、少しずつ溶けていく。

「これでいいのか、氷女」

「ええ、いいの。あの世で、またこの人と幸せになるわ。種族は違っても、生きる時間が違っても、きっと永遠はあるわ」

「氷女ちゃん、新しい命をあげる」

京楽は、溶けていく氷女と霊体の男性に再生の力を与えた。

二人は、白い小鳥となって、寄り添いながら飛んでいく。

「力、かなり使ったな?」

「でも、あのまま消えるのはかわいそうだよ」

「俺の力を分けてやる」

キスで力を分けられて、京楽は浮竹を抱きしめた。

「永遠は、あるよね?」

「ああ、あるさ」

屋敷に帰る前日、ホテルの外に二羽の小鳥がいた。

「ちちちちち」

「ちちちち」

「ああ、仲良くしてるみたいだよ」

「お前、たまにはいいことするんだな」

「たまにって何!いつもいいことしかしません~~~」

「盛る鳥のくせに」

「ぐ・・・・・」

痛いところをつかれて、京楽はあらぬ方角を見る。

「とにかく、帰りますか。我が家に」

「ああ、そうしよう。帰ろうか」

二人は、氷女と男性のように、寄り添いあいながら、歩き出す。

「ちちちちち」

そんな二人を祝福するかのように、白い小鳥はいつまでもいつまでも鳴き続けるのだった。



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