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祓い屋京浮シリーズ22

『新婚旅行のおみやげ、うまかったぞ!また送ってくれ!』

禍津神の浮竹が一人で、おみやげの夕張メロンも白い恋人を食べてしまったのは、いうまでもない。

「いや、もう新婚旅行にはいかないから、おみやげはないぞ」

『え、ないのか!哀しいぞ!』

食いしん坊の禍津神の浮竹は、冷凍保存されて送ってこられたカニを見ていた。

『カニ・・・・』

「カニ鍋するから、食べていくか?」

「氷女の雪を止ませる依頼を北海道で受けたら、依頼料が金のかわりに大量のカニになったんだよねぇ」

『カニ・・・もちろん、食べていくぞ!』

『ほら十四郎、カニはこの前食べたばかりでしょ』

『うまいものは何度食っても飽きない!』

『はぁ。センパイにたかるのはどうかと思うんだけど』

「気にするな。量が多くて、誰かに分けようと思っていたくらいだ」

術者の浮竹は、禁忌の術を使って不老不死になったが、式の水龍神である京楽の強い霊力を浴び続けたせいで、眷属化してさらに進化して、水龍神そのものになってしまった。

龍の姿にはなれるし、水龍神化した姿にもなれるが、水を自在に操り、再生能力と浄化能力が飛躍的にあがった。

元から浄化能力も再生能力もあったが、倍ほどの力になっていた。

「カニ鍋をしよう。術者の京楽も食べていけ」

『いや、悪いねぇ。十四郎が食べたそうにしているから、僕も食べていくよ』

夜まで新婚旅行の話で盛り上がり、夕飯の時刻になって、大きめの鍋に3匹分のカニが入れらてやってきた。

『春水、カニだぞカニ!この足、もらい!』

「式の俺、まだゆで上がっていない。それはお前のものにしていいから、ちゃんと火が通るまで待て」

『むう』

禍津神の浮竹は何か言いたそうにしていたが、ちゃんと言いつけを守る。

「湯であがった。みんな、食べよう」

『こっちの胴体の部分ももらうぞ。カニみそが美味いんだ』

「はいはい、好きなだけ食べてよ。まだまだカニはあるんだから」

結局、4人で6匹分のカニを食べた。

そのほとんどが禍津神の浮竹のブラックホールの胃に消えていった。

「最後は、雑炊でしめだ」

『カニの出汁がきいていて、美味いんだよな』

禍津神の浮竹がまたほとんどを食べてしまったが、みんなちゃんと自分の分は食べたので文句をいう者はいなかった。

『術者の俺、明日もカニが食べたい!』

「いや、さすがに連日は・・・・・」

『駄目か?』

キラキラした瞳で見つめられて、術者の浮竹は根負けした。

「明日は、カニの天ぷらにしよう」

『やった、カニだ!』

『ちょっと、十四郎、センパイに悪いよ。二日も夕ご飯をご馳走になるなんて』

「気にするな」

『そうだぞ、気にしていたらカニは食えない!』

禍津神の浮竹は、雑炊を食べたばかりだというのに、術者の浮竹と式の京楽が自分たち用に買ってきた温室育ちの夕張メロンを食べていた。

冷たく冷えていて、禍津神の浮竹たち以外も食べることにしたが、カニをたらふく食べた後なので、控えめだ。

『甘くておいしい。お代わりをくれ』

「式の俺、夕張メロンはあんまり買ってこなかったんだ。これで最後だ」

『むう、美味いものはすぐになくなる」

「それは、君が食べまくるからでしょ」

『うるさい、桜文鳥。鍋に入れるぞ』

「京楽鍋か。案外うまかったりしてな。水龍神の鍋」

「ちゅんちゅん!!!」

式の京楽は、文鳥姿になって抗議して、飛び回った。

それを、禍津神の浮竹が飛び上がって捕まえる。

「ちゅんーーー!!!」

「水龍神鍋・・・・ちょっと、うまそう」

「ちゅんちゅん!!(絶対にごめんだよ!)」

いつものように羽をむしられながら、ちゅんちゅんと式の京楽はなんとか禍津神の浮竹の手から逃れて、愛しい伴侶の肩に止まる。

「ちゅん!(暴力反対!)」

「お前のその姿を見ていると、俺も羽をむしりたくなるんだ」

今度は愛しいはずの伴侶から羽をむしられて、式の京楽はちゅんちゅんと抗議してから術者の京楽の頭に乗った。

それを、二人の浮竹が狙う。

「ちゅんーー!!(家出してやるうう)」

「暗いから、早めに帰ってこいよ」

「ちゅん(分かったー)」

そう言って、式の京楽は家出というか散歩というのかのに出かけてしまった。

「今日は泊まっていくのか?」

『ううん、新婚さんの邪魔をするほど野暮じゃないよ。今日は自分の家に帰る」

『俺は泊まりたい!この屋敷のゲストルーム豪華だし、ベッドふかふかだし、朝食もうまいから、帰りたくない!』

『十四郎、センパイに迷惑かけちゃだめだよ』

術者の京楽が、禍津神の浮竹を窘める。

『俺たちがいちゃ迷惑か、術者の俺』

「いや、大丈夫だ。泊まって行け」

『やったぁ!』

『センパイ・・・・いや、水龍神様、ありがとう』

「今まで通りセンパイでいい。水龍神は二人いるし、ややこしいしな」

『水龍神って、龍になれるんだろう?いいな、背中に乗ってみたい』

「いいぞ。今なら夜だし、人目もつかないから乗せてやろう」

術者の浮竹は、龍になると、禍津神の浮竹を背に乗せて、空を飛んだ。

『わぁ、すごい、すごい』

念のためにと、術者の京楽も乗っていた。興奮しすぎて落っこちそうな禍津神の浮竹を支えていた。

龍になった術者の浮竹は、水を浮かべさせながら空を10分ほど飛ぶと、降下して元の姿に戻った。

『ありがとう、術者の俺!空を飛ぶのは始めてだった!ネオンが綺麗だな!』

「クリスマス時期の前になると、駅前やらでイルミネーションが綺麗に点滅するぞ。ネオンの海にも負けない」

『春水、クリスマスになったら、イルミネーション見に出かけよう!』

『いいけど、それまで待てるの?あと2カ月はあるよ』

『むう、俺だって辛抱くらいできる!』

『十四郎、かわいいね』

『急になんだ、春水』

『いや、僕たちも結婚式挙げたいなぁと思って』

『そんな形だけの約束なんてなくても平気だろう?』

『まぁね。十四郎がドレス着たら、綺麗だろうね』

『ドレスは嫌だ!術者の俺みたいな恰好だったら許す』

術者の浮竹も、式の京楽にドレスを着てくれと言われたのだが、断固拒否して、白い着物と袴姿で、結婚式を挙げた。

ただ、ヴェールはかぶっていたし、ブーケももっていたので大分花嫁らしかった。

「俺は嫌だったけどな、花嫁は。でも、花嫁を京楽にさせると・・・・・」

式の京楽の白い着物姿でヴェールをかぶり、ブーケをもった姿を想像してしまい、3人は顔を青くした。

『想像してしまった。キモい』

「同じくだ」


「帰ってきたよー。おみやげはタコ焼き!」

「全部お前が悪い!」

帰ってきたところを、いきなりハリセンで殴られて、式の京楽は涙を浮かべて、たこ焼きをテーブルの上に置くと、外に出ようとする。

「いきなり酷い!もう家出してやる!二度と帰ってくるもんか!」

そう言って、文鳥姿になって、羽ばたく。

「消灯前には戻ってこいよ」

「ちゅん!(分かったー。ちょっと家出してくるー)」

全然家出になっていなかった。

ちなみに、式の京楽が買ってきた4人分のたこ焼きは、禍津神の浮竹のブラックホールの胃に消えるのであった。






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