忍者ブログ

プログ

小説掲載プログ
10 2024/11 14 2324 25 26 27 28 29 30 12

祓い屋京浮シリーズ24

「おお、姫よ。そなただけを、我は愛してるいる」

「やめて!私は姫なんかじゃないわ!ただの女子高校生よ!あなたは落ち武者でしょう!あなたは死んでいるのよ」

「姫よ、何を言っておるのだ。来月には祝言をあげると誓い合ったではないか。我と共に、ゆこうぞ」

「嫌よ!私には、好きな人がいるの!浮竹十四郎と言って、すごい術者なんだから!」

「なんと!姫をたぶらかす悪しき者がいるのか。おのれ、許さぬ浮竹十四郎。煉獄に送ってくれようぞ」



「落ち武者の霊に、姫と呼ばれて攫われそうになるんです。とっさに、あなたの名前を口に出したら、煉獄に送るとかいいだして・・・すみません、高校生なので依頼料は10万しか出せませんが・・・・・落ち武者を祓ってくれないでしょうか」

「君ねぇ、よりによって浮竹の名前を・・・・」

「黙れ、京楽」

「ちゅん」

京楽は、桜文鳥の姿にされて、ちゅんちゅんと抗議してから、浮竹の肩に乗った。

「かわいい・・・・」

触ろうとする女子高校生の手を、京楽は嘴でつついた。

「いたたた」

「こら、京楽!」

「ちゅん!」

「話は分かった。落ち武者の霊は、必ず浄化しよう。今は憑いていないようなので、しばらくこの屋敷で生活してくれ。落ち武者が現れ次第、浄化しよう」

「あの、あなたのことが好きなのは本当なんです!」

女子高校生は、顔を真っ赤にさせながら、叫んだ。

「すまない。俺はこの水龍神・・・今は文鳥の姿をしているが、そいつと結婚式まで挙げてしまったし、こいつのことだけを愛している。君の気持には答えてやれない」

「いえ、いいんです。ただの、一目ぼれでしたから・・・・」

依頼者の女子高校生は、涙を流した。

「ルキア、後を頼む」

「はい、ご主人様」

同世代の少女になら、心を開くだろうと、ルキアにフォローを任せて、その落ち武者について文献を漁る。

「ふむ。平家の落ち武者だな」

「平家かぁ。壮絶な最期だったらしいし、やっかいな落ち武者に憑かれたものだね」

「霊能力者に、一応お祓いを受けて、一時は憑かれなくなったそうだが、また憑いたり憑かなかったりで、今度は攫っていきそうになるそうだ。浄化するしかない」

「そうだね。落ち武者は自分が生きていると勘違いしてる連中が多いから」


それから数日が経ち、同じ屋敷で生活している女子高校生の悲鳴で、浮竹と京楽は目を覚ました。

「きゃあああああああ!!!」

「現れたか!」

「我を裏切ったか、姫よ!よりにもよって、浮竹十四郎の館にいるとは!密通していたな!?我以外の子を身籠ったか!」

「違うわ、あなたはもう死んでいるの!それに私はあなたなんて知らない!あなたの姫なんかじゃない!」

「ああ、口惜しや。この身がもっと動けば、姫を・・・・・・」

「そこまでだ」

「そこまでだよ」

「出たな、浮竹十四郎という術者とそのお供!」

「誰がそのお供だよ!僕は京楽春水。浮竹の伴侶で夫だよ!」

「修道か。珍しくはないが、我が姫をたぶらかした罪、その命で贖ってもらおう!」

浮竹は、落ち武者に向かって式札を飛ばした。

「む、動けぬ」

「そのまま、浄化されろ」

「なんのこれしき!」

落ち武者は、兜と鎧を残すと、霊体のみの体で浮竹に体当たりをしかけた。

「ぐっ」

霊体に直接ダメージがいって、浮竹が蹲る。

「マオ!」

「にゃああああ!!!」

浮竹に呼ばれて現れた式の猫のマオは、落ち武者に噛みついた。

「ひいい、猫は、猫はいやじゃあああああああ」

「マオ、そのままで。京楽、浄化するぞ」

「分かったよ!」

二人は、力を合わせて浄化の炎を作り出すと、落ち武者に放った。

「むう、我はただの落ち武者にあらず。雷神を食うた、半神よ!」

ばちっと雷の音がして、浄化の炎が消された。

「雷神を食っただと!厄介な!」

「僕たちは水龍神。雷神を1匹食ったくらいで、やられはしないし、神は食われると普通滅びる。お前に宿っている力は、雷神そのものではなく、残滓だ」

「雷神の力を受けるがいい!」

落ち武者は、雷を飛ばすが、途中で消えてなくなった。

「な、何故だ!姫、逃げるぞ!」

「やめて、こないで!」

女子高校生にもたせた、強力な浄化の札で、落ち武者が怯む。

「今だ、いくぞ、京楽!」

「分かってるよ!浄化の力よ、燃え上がれ!」

ぽっ、ぽっ、ぽっ。

落ち武者の周りに浄化の炎による五芒星が描かれ、その中に落ち武者が吸い込まれていく。

「ああああ、姫、我を助けよ!その命を差し出し、我の糧となれ!」

「きゃああああああ!!!」

現れた、落ち武者が最後の力で投げた霊刀に、女子高校生は貫かれた。

「踊れ踊れ、浄化の焔よ!踊れ踊れ、癒しの焔よ!」

浮竹の祝詞で、女子高校生の霊刀で貫かれ、血しぶきをあげていた傷が塞がっていく。

「姫えええ、ああ、姫ええ」

落ち武者は、それだけを言い残して、浄化された。

「大丈夫か!」

「君、大丈夫!?」

「ええ、なんとか・・・・それより、落ち武者は!?」

「浄化して滅びたよ。もう、君をつけ狙うこともないだろう」

「ありがとうございます。あの依頼料少ないですよね。数日ここでお世話になったし・・・社会人になったら、ちゃんと依頼料を払いますから!」

「いや、気にすることはない。10万のままでいい。もう、家に帰っても大丈夫だぞ」

「そうですか・・・・長居するのもなんなので、私帰りますね。ありがとうございました!」

女子高校生は、手早く荷物をまとめると、足早に去っていった。

「浮竹、傷見せて」

「気づいていたのか」

「あの祝詞は、誰かの傷を肩代わりするためのもの。霊刀で貫かれた女子高校生の傷を、肩代わりしたね?ああ、ひどい火傷だ」

雷神を食ったというのは本当らしく、落ち武者の残した傷は深く、浮竹は血を廊下に流した。

「癒しの力よ・・・・・」

「癒しの力よ・・・・」

京楽が注ぎ込む癒しの再生の力に、浮竹が己の治癒能力を乗せる。

「よし、もう大丈夫だね。依頼人を守るためとはいえ、無茶をしたね」

「仕方ないだろう。あのままじゃ、依頼人が死んでた」

「肝が冷えたよ。なるべく、あんなことはしないで」

「分かっている」

浮竹の傷は、傷跡も残らないほど綺麗に消えていた。

「助けて!!」

「この声は?」

「花鬼(かき)の鳴(めい)の声だ!何かあったんだ、行こう!」

「うん!」

庭に出ると、椿の狂い咲の王が、花鬼の鳴の首を締め上げていた。

「鳴を放せ!」

「この花鬼は、私に服従しない。花鬼の全ての頂点にいる私を」

「破壊の焔よ!」

京楽が、破壊の渾沌の炎を藍染に向けると、藍染は鳴を放して、後ずさった。

「神々の力は、厄介だな」

「僕たちは神だ。椿の狂い咲の王程度、いつでも殺せる」

「さぁ、それはどうかな?」

椿の狂い咲き王は、京楽の背後に回り込んで、霊力をかすめ取る。

「破滅の焔よ!」

今度は、浮竹が混沌の力を使う。隙をつかれた椿の狂い咲きの王は、体を焼かれながら笑った。

「はははははは、私を焼いても無駄だ。新しい私が生まれ落ちるだけだ」

「椿の精・・・・本体を枯らさないと、だめってことか」

「ふふふふ・・・・・」

「覚悟しておけ。俺がお前の本体がどこにあるのか、知らないとでも思っているのだろう」

「まさか・・・・」

「他の花鬼から、お前の本体がある位置を教えてもらっている」

「く、引っ越すしかないか」

「滅せよ!」

「ぐああああああ」

椿の狂い咲の王は、灰となったが、本体の椿を枯らしたわけではないので、またいずれ復活するだろう。

「すごいね、浮竹。いつ、花鬼から椿の狂い咲きの王の本体の場所を知ったんだい」

「ただのはったりだ」

「ほえ~」

「今頃、慌てて引っ越してるだろうさ。次の土地に馴染むまで、時間がかかる。しばらくは、姿を見せないだろう」

「浮竹、素敵!」

「きもい!」

「酷い!ちゅんちゅん!!!」

「かわいこぶっても、きもい」

「ちゅんちゅん~~~!!!」

京楽は、かわいこぶりっこをして、浮竹の前で文鳥姿で踊りだす。

求愛のダンスだった。

「鳴、大丈夫か」

「はい。助けてくださって、ありがとうございます」

「家族だろう。当たり前のことをしただけだ」

「あの、椿の狂い咲きの王の怒りを買ったのでは・・・・・」

「知らん。あの男のことはくわしくないし、たまに目の前に現れるが、戦いを挑んでくるわけでもないし、京楽の言った通り、神でもある俺たちにの前では、倒されるしかない」

「そうですか・・・・でも、何かありそうです。どうか、お気をつけて」




「浮竹にこの場所を知られていたなんて、とんだ失態だ。花鬼ども、急げ!次の土地にひっこすぞ!」

一人、慌てる藍染の姿があったという。

拍手[0回]

PR
URL
FONT COLOR
COMMENT
Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
PASS

TRACK BACK

トラックバックURLはこちら
新着記事
(11/22)
(11/21)
(11/21)
(11/21)
(11/21)
"ココはカウンター設置場所"