祓い屋京浮シリーズ25
夢魔は、普通夢の中にでてきてその夢の主の生気を喰らう。
だが、その夢魔は特別で、一部の記憶だけを喰らった。
「ふふふ・・・・神に直接手出しはできんが、この方法なら・・・・」
狂い咲きの王は、夢魔を改造した。
そして、術者の浮竹の夢の忍びこみ、記憶を喰らうように命令した。
--------------------------------------------
「おはよう、浮竹。もう10時だよ。いい加減に起きて」
「う・・・・ここは・・・・・お前は、誰だ?」
「もう、朝からそんな冗談に付き合っていられないよ」
「ここは、俺の館・・・・お前は誰だ」
「浮竹?」
式の京楽は気づいた。
夢魔に、記憶を食べられてしまったことに。
夢魔にとりつかれた名残が匂いがあり、記憶を食べられた片鱗があった。
「僕は京楽春水。君の式の水龍神で、君の伴侶で君の夫だ」
「俺は人間だったはず・・・・なぜ、水龍神に」
浮竹は、自分の体を見る。
水龍神化して、鏡の前に立つと、人ではないあやかしの神になった己がいた。
「分からない・・・・お前が誰なのか、分からないのに、胸が苦しいんだ」
浮竹は、ぽろぽろと涙を零した。
「泣かないで、浮竹」
「触るな」
浮竹は、警戒心を出して、京楽から距離をとった。
「浮竹、今は思い出せなくても、絶対に記憶を取り戻してみせるから!君の記憶を食った夢魔を、殺してやる」
「夢魔に・・・記憶を食われた?」
「そうだよ。今の君は、僕に関する記憶だけを食べられたはずだよ」
浮竹は、首を傾げる。
「お前の記憶・・・・・大切なことを、忘れてしまっているのか」
また、ぽろぽろと涙を零した。
『遊びに来たぞー』
禍津神の浮竹が、術者の京楽と共にやってきた。
「あ、術者の僕!ちょうどいいところに・・・・・・」
『なんだ、桜文鳥。またなにかしでかしたのか。術者の俺が泣いてるじゃないか!』
禍津神の浮竹が、式の京楽の首を絞める。本気の力で、術者の京楽はなんとかふりほどいて、事情を二人に説明した。
『記憶を食う夢魔ねぇ。いるにはいるけど、希少存在だよ。それを探して殺すといっても、どこにいるのか・・・・・・』
「夢魔は、またやってくる。浮竹の記憶の味を味わったなら、虜になるはずだよ。今日の晩にでも、また記憶を喰らいにやってくる」
『じゃあ、そこを叩けばいいのか』
「協力してくれる?」
「術者の京楽と禍津神の俺と知り合いなのか、お前」
「そうだよ。君と一緒に知り合った」
「思い出せない・・・・・・」
術者の浮竹は、頭に手を当てた。
思いだそうとすると、酷い頭痛が起きた。
「俺は・・・このまま、お前のことを忘れたまま・・・・・」
浮竹の精神は、夢魔に記憶を食われた弊害か、感情が乱れやすく、精神年齢も幼くなっていた。
「このまま・・・・じゃ、いや、だ・・・・・・」
『俺たちがついてるから、大丈夫だ!』
禍津神の浮竹は、術者の己を抱きしめた。
「禍津神の俺・・・・俺は、本当に、この京楽という男の伴侶で、こいつは俺の式なのか?」
『そうだぞ。いつもお前にスケベ心をもつ、いかれた桜文鳥だ』
「ちょっと、何吹き込んでるの!浮竹が信じちゃうでしょ!」
「いかれた・・・・・すけべ・・・・・桜文鳥・・・頭が、痛い」
『そんなスケベはほっといて、夜まで時間があるんだし、遊ぼう!』
禍津神の浮竹がそう誘うと。
「遊んで、遊んで。何をしよう。鬼ごっこ?かくれんぼ?」
精神年齢の幼くなった術者の浮竹は、笑顔を浮かべて、水龍神化して、角や尻尾を生やした姿で、禍津神の浮竹の手をひっぱって、部屋の外に出ていく。
「あ、浮竹!」
『大丈夫、水龍神様。禍津神様がついてる限り、安全だよ』
「それはそうだろうけど・・・・・あんな幼い浮竹、僕はもっと味わいたい」
『それ、スケベな意味で?』
「違うよ!純粋に、ただもっと触れ合いたいだけだよ。あんな幼い浮竹、そうそうお目にかかれるものじゃない。でも、記憶を食った夢魔は許せない。八つ裂きにしてやる」
『記憶から消されたの、相当怒ってるね』
「当たり前でしょ」
二人の京楽は、夢魔が出てきたらどう処理しようかと相談しだした。
----------------------------------------
『今度は何して遊ぶんだ?』
「鬼ごっこも隠れんぼもした。室内で遊ぼう。すごろくしよう」
『ああ、いいぞ』
禍津神の浮竹は、術者の自分にとても優しく接する。
「浮竹、ちょっといい?」
びくりと、術者の浮竹が禍津神の浮竹の背後に隠れる。
「いやだ、傍にいると、胸が苦しくなって、頭が痛くなる」
「ねぇ、君の夢に出てきた夢魔はどんな夢魔だったの?」
「・・・・・花。彼岸花」
「そう。ありがとね」
術者の浮竹が覚えていた夢魔は、彼岸花の着物をきていた。人型の夢魔だった。
「彼岸花の夢魔ねぇ。聞いたこともない」
『どうだったの』
「彼岸花の夢魔だそうだよ」
『それ、花鬼(かき)じゃない?どこその誰かが、花鬼を改造してけしかけてきたのかも」
「狂い咲きの王か。あいつのしそうなことだね」
『うん。それより、センパイは大丈夫そうだった?』
「禍津神の浮竹とすごろくはじめてた」
『すごい、交じりたそうな顔してるね』
「僕も、幼いかんじの浮竹と遊びたい!」
『警戒されてるし、傍にいると頭痛起こすから、我慢だよ』
術者の京楽は、式の京楽の頭を撫でた。
「撫でられるなら、浮竹がいい」
『わがままだねぇ』
やがて夜になり、術者の浮竹は式の京楽の羽毛でできた羽毛布団の上ですーすーと、静かに眠りについた。
隣の部屋では、術者の京楽と禍津神の浮竹が、緊急時の時のために備えており、式の京楽は夢魔がくるの待つために、眠っている術者の浮竹の傍で起きていた。
「夢を、記憶をちょうだい。あなたの記憶、すごくおいしい。もっと、もっと・・・・・」
すーっと現れた、彼岸花の夢魔は、眠る浮竹の中に吸い込まれてしまった。
「これ以上、奪わせるものか!」
精神体となって、眠る術者の浮竹の中に入り込んだ式の京楽が見たものは、術者の浮竹が禍津神の浮竹と今日遊んだ記憶だった。
「欲しい。その記憶、ちょうだい?」
「そこまでだよ!」
「誰!邪魔しないで!」
「邪魔なのは君のほうだよ。浮竹の記憶を返してもらうよ!」
浮竹の精神世界の中で暴れまくるわけにはいかず、夢魔を外に引きずりだした。
「こんな、こんなことになるなって聞いてない!」
「ああそうだろうね。どうせ藍染にそそのかされたんだろうけど、相手が悪かったね。死んでもらうよ」
「待って!私を殺すと、この人は記憶を取り戻さないわ!」
「じゃあ、記憶を返して」
「いやよ。こんな美味しい記憶・・・・・」
「返す気が起きるように、するだけだよ」
ニタリと、式の京楽は残酷に笑んだ。
「いやあああああああああ」
破壊の炎と浄化の炎になぶられて、さしずめ酷い拷問といったところだろうか。
彼岸花の花鬼の夢魔が、自分から記憶を返すまで痛めつけた。
「ひっ、い、命だけは助けて」
「だめだね。僕の浮竹に手を出した罰だ」
「ひいいいいいいいいいいい」
夢魔は、枯れた彼岸花を残して、この世から消え去った。
『うまくいったのか?』
『僕たち、助太刀するつもりだったのに』
「君たちに任せたら、すぐ終わってしまいそうだったから」
隣の部屋で、夢魔の酷い叫び声を聞いていた二人は、式の京楽を本気で怒られるとどういう目にあうの少し分かったようだった。
水龍神であるが、今回は町が水没するような怒りではなく、夢魔一人を拷問して殺す怒りだった。
「あ・・・・きょう、ら、く・・・・・・・」
うっすらと目を開けた術者の浮竹が、ゆっくりと半身を起こす。
「俺は・・・・彼岸花の夢魔に、お前の記憶を食われて・・・・・お前を拒絶して・・・」
「もぅ、終わったことだから。気にしなくていいんだよ、浮竹」
「俺は、お前を忘れた。夢魔に記憶を食われたとはいえ、大切なお前のことを」
術者の浮竹は、式の京楽の背中に手を回して抱き着くと、その体温を確かめる。
「記憶、戻してくれて、ありがとう。禍津神の俺、術者の京楽も心配をかけたな」
『元に戻ってよかったね』
『むう。俺は、もう少し素直な術者の俺と一緒に居たかった』
『こら、禍津神様。無理難題をふきかけない』
『とりあえず、記憶が戻ってよかったな、術者の俺!」
「ああ・・・・彼岸花の夢魔は死んだのか」
「僕が殺した」
「そうか」
「裏で糸を引いているであろう、狂い咲きの王に関しては、情報が少なすぎるからこっちから趣くのは無理だね。すごく拷問してくびり殺したいけど」
いつもの温和な式の京楽は、残酷に笑った。
『じゃあ、俺たちは帰るな』
『お邪魔だろうし』
「え、あ、え」
術者の浮竹が何かを言う前に、式の京楽に押し倒された。
「僕が、どれだけ心配したと思ってるの。もう、僕のこと忘れられないように、その体に刻みつけてあげる」
「盛るな!」
「無理。君を抱くよ」
「んんっ」
去って行った二人の見送りもできずに、記憶の戻った術者の浮竹は式の京楽に、その体に刻み込むように愛を与えていく。
「ああ!!!」
「もう、僕を忘れないで。約束できる?」
「約束するから、あ、あ、あ、もうやぁあああ」
京楽に乱されながら、浮竹は京楽に口づけた。
「お前だけを、愛している」
「僕もだよ、十四郎」
「あ、春水・・・もっと・・・・・・」
求めてくる愛しい伴侶に、京楽はごくりと喉を鳴らした。
「愛してる・・・・・・」
妖艶で、淫らな浮竹を見ることができるのは、京楽だけ。
京楽は、キスマークを浮竹の体中に残しながら、愛しあうのだった。
だが、その夢魔は特別で、一部の記憶だけを喰らった。
「ふふふ・・・・神に直接手出しはできんが、この方法なら・・・・」
狂い咲きの王は、夢魔を改造した。
そして、術者の浮竹の夢の忍びこみ、記憶を喰らうように命令した。
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「おはよう、浮竹。もう10時だよ。いい加減に起きて」
「う・・・・ここは・・・・・お前は、誰だ?」
「もう、朝からそんな冗談に付き合っていられないよ」
「ここは、俺の館・・・・お前は誰だ」
「浮竹?」
式の京楽は気づいた。
夢魔に、記憶を食べられてしまったことに。
夢魔にとりつかれた名残が匂いがあり、記憶を食べられた片鱗があった。
「僕は京楽春水。君の式の水龍神で、君の伴侶で君の夫だ」
「俺は人間だったはず・・・・なぜ、水龍神に」
浮竹は、自分の体を見る。
水龍神化して、鏡の前に立つと、人ではないあやかしの神になった己がいた。
「分からない・・・・お前が誰なのか、分からないのに、胸が苦しいんだ」
浮竹は、ぽろぽろと涙を零した。
「泣かないで、浮竹」
「触るな」
浮竹は、警戒心を出して、京楽から距離をとった。
「浮竹、今は思い出せなくても、絶対に記憶を取り戻してみせるから!君の記憶を食った夢魔を、殺してやる」
「夢魔に・・・記憶を食われた?」
「そうだよ。今の君は、僕に関する記憶だけを食べられたはずだよ」
浮竹は、首を傾げる。
「お前の記憶・・・・・大切なことを、忘れてしまっているのか」
また、ぽろぽろと涙を零した。
『遊びに来たぞー』
禍津神の浮竹が、術者の京楽と共にやってきた。
「あ、術者の僕!ちょうどいいところに・・・・・・」
『なんだ、桜文鳥。またなにかしでかしたのか。術者の俺が泣いてるじゃないか!』
禍津神の浮竹が、式の京楽の首を絞める。本気の力で、術者の京楽はなんとかふりほどいて、事情を二人に説明した。
『記憶を食う夢魔ねぇ。いるにはいるけど、希少存在だよ。それを探して殺すといっても、どこにいるのか・・・・・・』
「夢魔は、またやってくる。浮竹の記憶の味を味わったなら、虜になるはずだよ。今日の晩にでも、また記憶を喰らいにやってくる」
『じゃあ、そこを叩けばいいのか』
「協力してくれる?」
「術者の京楽と禍津神の俺と知り合いなのか、お前」
「そうだよ。君と一緒に知り合った」
「思い出せない・・・・・・」
術者の浮竹は、頭に手を当てた。
思いだそうとすると、酷い頭痛が起きた。
「俺は・・・このまま、お前のことを忘れたまま・・・・・」
浮竹の精神は、夢魔に記憶を食われた弊害か、感情が乱れやすく、精神年齢も幼くなっていた。
「このまま・・・・じゃ、いや、だ・・・・・・」
『俺たちがついてるから、大丈夫だ!』
禍津神の浮竹は、術者の己を抱きしめた。
「禍津神の俺・・・・俺は、本当に、この京楽という男の伴侶で、こいつは俺の式なのか?」
『そうだぞ。いつもお前にスケベ心をもつ、いかれた桜文鳥だ』
「ちょっと、何吹き込んでるの!浮竹が信じちゃうでしょ!」
「いかれた・・・・・すけべ・・・・・桜文鳥・・・頭が、痛い」
『そんなスケベはほっといて、夜まで時間があるんだし、遊ぼう!』
禍津神の浮竹がそう誘うと。
「遊んで、遊んで。何をしよう。鬼ごっこ?かくれんぼ?」
精神年齢の幼くなった術者の浮竹は、笑顔を浮かべて、水龍神化して、角や尻尾を生やした姿で、禍津神の浮竹の手をひっぱって、部屋の外に出ていく。
「あ、浮竹!」
『大丈夫、水龍神様。禍津神様がついてる限り、安全だよ』
「それはそうだろうけど・・・・・あんな幼い浮竹、僕はもっと味わいたい」
『それ、スケベな意味で?』
「違うよ!純粋に、ただもっと触れ合いたいだけだよ。あんな幼い浮竹、そうそうお目にかかれるものじゃない。でも、記憶を食った夢魔は許せない。八つ裂きにしてやる」
『記憶から消されたの、相当怒ってるね』
「当たり前でしょ」
二人の京楽は、夢魔が出てきたらどう処理しようかと相談しだした。
----------------------------------------
『今度は何して遊ぶんだ?』
「鬼ごっこも隠れんぼもした。室内で遊ぼう。すごろくしよう」
『ああ、いいぞ』
禍津神の浮竹は、術者の自分にとても優しく接する。
「浮竹、ちょっといい?」
びくりと、術者の浮竹が禍津神の浮竹の背後に隠れる。
「いやだ、傍にいると、胸が苦しくなって、頭が痛くなる」
「ねぇ、君の夢に出てきた夢魔はどんな夢魔だったの?」
「・・・・・花。彼岸花」
「そう。ありがとね」
術者の浮竹が覚えていた夢魔は、彼岸花の着物をきていた。人型の夢魔だった。
「彼岸花の夢魔ねぇ。聞いたこともない」
『どうだったの』
「彼岸花の夢魔だそうだよ」
『それ、花鬼(かき)じゃない?どこその誰かが、花鬼を改造してけしかけてきたのかも」
「狂い咲きの王か。あいつのしそうなことだね」
『うん。それより、センパイは大丈夫そうだった?』
「禍津神の浮竹とすごろくはじめてた」
『すごい、交じりたそうな顔してるね』
「僕も、幼いかんじの浮竹と遊びたい!」
『警戒されてるし、傍にいると頭痛起こすから、我慢だよ』
術者の京楽は、式の京楽の頭を撫でた。
「撫でられるなら、浮竹がいい」
『わがままだねぇ』
やがて夜になり、術者の浮竹は式の京楽の羽毛でできた羽毛布団の上ですーすーと、静かに眠りについた。
隣の部屋では、術者の京楽と禍津神の浮竹が、緊急時の時のために備えており、式の京楽は夢魔がくるの待つために、眠っている術者の浮竹の傍で起きていた。
「夢を、記憶をちょうだい。あなたの記憶、すごくおいしい。もっと、もっと・・・・・」
すーっと現れた、彼岸花の夢魔は、眠る浮竹の中に吸い込まれてしまった。
「これ以上、奪わせるものか!」
精神体となって、眠る術者の浮竹の中に入り込んだ式の京楽が見たものは、術者の浮竹が禍津神の浮竹と今日遊んだ記憶だった。
「欲しい。その記憶、ちょうだい?」
「そこまでだよ!」
「誰!邪魔しないで!」
「邪魔なのは君のほうだよ。浮竹の記憶を返してもらうよ!」
浮竹の精神世界の中で暴れまくるわけにはいかず、夢魔を外に引きずりだした。
「こんな、こんなことになるなって聞いてない!」
「ああそうだろうね。どうせ藍染にそそのかされたんだろうけど、相手が悪かったね。死んでもらうよ」
「待って!私を殺すと、この人は記憶を取り戻さないわ!」
「じゃあ、記憶を返して」
「いやよ。こんな美味しい記憶・・・・・」
「返す気が起きるように、するだけだよ」
ニタリと、式の京楽は残酷に笑んだ。
「いやあああああああああ」
破壊の炎と浄化の炎になぶられて、さしずめ酷い拷問といったところだろうか。
彼岸花の花鬼の夢魔が、自分から記憶を返すまで痛めつけた。
「ひっ、い、命だけは助けて」
「だめだね。僕の浮竹に手を出した罰だ」
「ひいいいいいいいいいいい」
夢魔は、枯れた彼岸花を残して、この世から消え去った。
『うまくいったのか?』
『僕たち、助太刀するつもりだったのに』
「君たちに任せたら、すぐ終わってしまいそうだったから」
隣の部屋で、夢魔の酷い叫び声を聞いていた二人は、式の京楽を本気で怒られるとどういう目にあうの少し分かったようだった。
水龍神であるが、今回は町が水没するような怒りではなく、夢魔一人を拷問して殺す怒りだった。
「あ・・・・きょう、ら、く・・・・・・・」
うっすらと目を開けた術者の浮竹が、ゆっくりと半身を起こす。
「俺は・・・・彼岸花の夢魔に、お前の記憶を食われて・・・・・お前を拒絶して・・・」
「もぅ、終わったことだから。気にしなくていいんだよ、浮竹」
「俺は、お前を忘れた。夢魔に記憶を食われたとはいえ、大切なお前のことを」
術者の浮竹は、式の京楽の背中に手を回して抱き着くと、その体温を確かめる。
「記憶、戻してくれて、ありがとう。禍津神の俺、術者の京楽も心配をかけたな」
『元に戻ってよかったね』
『むう。俺は、もう少し素直な術者の俺と一緒に居たかった』
『こら、禍津神様。無理難題をふきかけない』
『とりあえず、記憶が戻ってよかったな、術者の俺!」
「ああ・・・・彼岸花の夢魔は死んだのか」
「僕が殺した」
「そうか」
「裏で糸を引いているであろう、狂い咲きの王に関しては、情報が少なすぎるからこっちから趣くのは無理だね。すごく拷問してくびり殺したいけど」
いつもの温和な式の京楽は、残酷に笑った。
『じゃあ、俺たちは帰るな』
『お邪魔だろうし』
「え、あ、え」
術者の浮竹が何かを言う前に、式の京楽に押し倒された。
「僕が、どれだけ心配したと思ってるの。もう、僕のこと忘れられないように、その体に刻みつけてあげる」
「盛るな!」
「無理。君を抱くよ」
「んんっ」
去って行った二人の見送りもできずに、記憶の戻った術者の浮竹は式の京楽に、その体に刻み込むように愛を与えていく。
「ああ!!!」
「もう、僕を忘れないで。約束できる?」
「約束するから、あ、あ、あ、もうやぁあああ」
京楽に乱されながら、浮竹は京楽に口づけた。
「お前だけを、愛している」
「僕もだよ、十四郎」
「あ、春水・・・もっと・・・・・・」
求めてくる愛しい伴侶に、京楽はごくりと喉を鳴らした。
「愛してる・・・・・・」
妖艶で、淫らな浮竹を見ることができるのは、京楽だけ。
京楽は、キスマークを浮竹の体中に残しながら、愛しあうのだった。
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