忍者ブログ

プログ

小説掲載プログ
10 2024/11 14 2324 25 26 27 28 29 30 12

祓い屋京浮シリーズ26

鬼蜘蛛。

上半身が鬼で、下半身が蜘蛛のあやかしであった。

普通は人のいる場所に現れず、巣を作って蜘蛛の糸で、動物や他の妖怪がかかるのを待ち、食べる。

人は襲わないわけではなく、人を襲うと退治されてしまうと知っているので、人が自分の巣にかかると食い殺さずに逃がした。

そんな鬼蜘蛛が、人の多い街に現れて巣を作った。

無論人がかかり、その鬼蜘蛛は人を食べた。

それだけでも厄介なのに、その鬼蜘蛛は、食べた人の姿をとるのだという。

すぐに依頼が舞い込んできた。

鬼蜘蛛に妹を食い殺された兄からの依頼だった。

「鬼蜘蛛を退治してください!妹が食い殺されたあげく、妹の姿をとって、人を巣に近づけて襲って食べるんです!」

「要件は分かった。すぐに退治に趣こう。街で巣を作るなんて異常だ。術者に退治してくれと言っているようなものだ」

「お願いします」

「ねぇ、浮竹。鬼蜘蛛ってけっこうパワーのある妖怪だよ。大丈夫?」

「俺が危うくなったら、お前が助けてくれるだろう?」

耳元で囁くと、京楽は自分の胸を叩いた。

「君のピンチには、僕がいるからね!大船に乗ったつもりでいてよ!」

水龍神化した浮竹は、神でもあるため、あやかしになど食われないだろうが、用心するにこしたことはない。

依頼者の後を追って、街に向かい、鬼蜘蛛が巣をはっている場所を教えてもらった。

「もう、妹の姿をとっていないかもしれません。食った人間に自由に変化できるので」

「厄介だねぇ」

「そうだな」

式のマオとレツを放ち、巣に誰もかかっていないことを確認すると、浮竹と京楽は巣に青白い炎を放った。

「あーんあーん」

子供の泣き声がして、浮竹が走り寄る。

「しっかりしろ!今、助けてやるからな」

蜘蛛の巣の端っこに、マオとレツを放った後で、子供が巣にひっかかった。

「あーんあーん。食わせろおおお」

子供は、ばりばりと音をたてて元の鬼蜘蛛の姿に戻ると、浮竹の肩に噛みついた。

「ぐげげげ、なんだこの血は!体が焼けるううう」

血しぶきをあげて、浮竹がよろめく。

京楽はすぐに浮竹の肩の傷を再生させて、浮竹の体を受け止めた。

「俺の血は、神聖なものらしい。水龍神だからな。それより、子供を食ったのか!」

「ぎぎゃぎゃ。子供は、そうだなぁ、三人くらい食ったなぁ」

「被害者の数は不明だが、十人はこしていそうだな。京楽、刀を」

浮竹が、京楽のためだけに与えた、霊刀を京楽は抜き放つ。

浄化の力できらきら虹色に輝いていた。

「試し斬りには、いい相手だね」

「俺の霊力の全てを一度こめてある。鬼蜘蛛程度なら、紙のように切れるだろう」

「ギャギャギャ!俺に食い殺されろ!白い長い髪のお前、外見が気に入った。食ったら、お前の姿になろう」

「そんな浮竹はご免だよ。食わせる気もないし、傷つけた報いは受けてもらわないとね!」

京楽は、霊刀で鬼蜘蛛の下半身の足を切り飛ばす。

「痛い、痛い!」

「被害者の人間も痛がっていただろう。それを、お前は食った。人を食うあやかしは放置できない。滅せよ!」

浮竹が霊力で五芒星を描き、その中心に京楽が立つ。

霊刀が、血のように真紅に輝いた。

「人生にさよならはできたかい、鬼蜘蛛。じゃあね」

「ぎゃああああああああああ」

全ての足を切り飛ばされて、胴体と下半身に切り分けられた鬼蜘蛛は、上半身だけで逃げようとする。

血が、瘴気となって辺りに漂う。

「この程度の瘴気、なんてことはない。滅べ」

浮竹は、霊力でできた弓で矢を放った。

「ぎいやあああああ!!」

それは上半身だけになった鬼蜘蛛の額にささり、鬼蜘蛛の上半身を浄化の炎が青白く燃え上がる。

「ねぇ、この霊刀に名前つけていい?」

「好きにしろ。巣を全て焼き払うぞ」

「君の力で真紅に輝くから、「シンク」がいいな」

「シンクか。悪くない」

鬼蜘蛛の残った下半身と巣を浄化の炎で焼いていくと、建物の奥に蜘蛛の糸でぐるぐる巻きにされら物体があった。

静かだが、呼吸をしていた。

「生存者か!後で食おうとしていたんだろうな。今、助けるからな!」

ばりばりと、糸をはがされてでてきたのは、鬼蜘蛛の子供だった。

「お兄ちゃん、だあれ?」

まだあどけなさを残す、上半身は人の姿をかろうじで保っていた。

鬼蜘蛛になりきる前の、幼体であった。

「かわいそうだが、ここで処分する」

「母様はどこ。人の肉を早く食べたい。お兄ちゃんが、今日のえさ?」

「シンク、頼むよ!」

シンクと名付けられた霊刀は、幼体の鬼蜘蛛の首をはねた。

ころころころ・・・・。

転がってきた首を、浮竹が焼いていく。

「アハハハ。これで、ボクを殺したつもり?」

灰となったはずの鬼蜘蛛の幼体が、再生していく。

「どういうことだ!」

「浮竹、気をつけて!シンク、結界だ」

結界をはって、濃い瘴気を漂わせる鬼蜘蛛の幼体から離れた。

「ふふふ、人を食ったのはボクさ。母上は、捕まえただけ。食った人の姿に化けると、人は面白いように罠にかかる」

「京楽、そのまま結界の維持を。俺が片を付ける」

浮竹は、浄化ではなく破壊の炎を手の平に生み出す。それを、左手で生み出した浄化の炎を混ぜ合わせた。

すると、小さなブラックホールができた。

「永遠に、苦しむがいい。人を食い殺し続けた、罰だ」

「嫌だ、ボクはもっと人を食って、力をつけて、この世を支配・・・・・・・」

「名も知らぬ鬼蜘蛛よ、さらばだ」

浮竹は、生まれたブラックホールを鬼蜘蛛の幼体に投げた。

「いやだ、ボクはもッと生きて人を食うんだあああ」

鬼蜘蛛の幼体は、ブラックホールに飲みこまれていなくなってしまった。

周囲の瘴気も吸いとり、更には建物まで吸い込もうとする。

「浮竹、力が過剰だよ。抑えて」

「ああ、分かっている。強力な術だが、少し強力すぎるか・・・・・」

ブラックホールを閉じて、浮竹は結界を解いた京楽に近寄り、シンクに吸い込んだ鬼蜘蛛の妖力を分け与えた。

「この霊刀は進化する。京楽の力と、屠った獲物と、分け与えられた力で」

「うわお。すごい刀だね」

「大切にしろよ。俺の出せる全霊力を注ぎ込んだ一品だからな」

「うん。大切にするよ。毎日手入れする」

「さて、鬼蜘蛛の件は片付いた。依頼者に報告しよう」

「うん、そうだね」

神の名を冠する二人にとって、鬼蜘蛛は脅威ではないが、隙を見せたら傷を負う可能性もある相手だった。

実際、浮竹は肩を怪我した。

「君を傷つける者は、僕とシンクが容赦しない」

「俺がやられても、正気を保っていろよ」

「縁起でもないこと言わないでよ」

「ふふ。帰ろうか」

「そうだね。帰ろう」

依頼者に報告し、依頼料をもらって家に帰る。

鬼蜘蛛に限らず、最近あやかしが活発化してきていた。

さてはて、次の依頼は何か。

浮竹と京楽は、束の間の穏やかな時間を過ごすのだった。


拍手[0回]

PR
URL
FONT COLOR
COMMENT
Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
PASS

TRACK BACK

トラックバックURLはこちら
新着記事
(11/22)
(11/21)
(11/21)
(11/21)
(11/21)
"ココはカウンター設置場所"