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祓い屋京浮シリーズ7

「付喪神が・・・夫を祟るのです」

「はぁ。付喪神のマーガレットちゃんですか?」

「そうです。死んだ愛猫のマーガレットちゃんをはく製にしたら、付喪神になって夜な夜な徘徊し、夫の眠りを妨げて、時には夫を食べそうに・・・・・」

金持ちのそうな婦人は、そう言ってさめざめと泣いた。

「どうか、マーガレットちゃんを祓ってやってください。付喪神を退治してください」

「依頼は受けますが、なぜに付喪神が人に害を・・・・・・」

「知りません!」

付喪神は、人に長く愛用された古いものに自我が芽生える妖怪の一種だ。

100年愛用されたものが神格化して、魂をもつものだと言われている。

依頼主のいうマーガレットちゃんのはく製は、100年なんてとてもじゃないが経っていない。

浮竹は、京楽を呼んだ。

婦人は、泣いてそのまま帰ってしまった。

「どう思う、京楽」

「うん、今日も浮竹は美人だなぁと思うよ」

スパーン。

ハリセンがうなり、京楽は文鳥姿になって逃げながら部屋にある止まり木の枝に乗った。

鳥の姿のまま、霊力を放出して話す。

「マーガレットちゃんとやらについているのは、多分動物の低級霊だと思うよ。マーガレットちゃん自体かも。付喪神ではないでしょ」

「そうだな。俺もそう思う。ほら、もうはたかないから降りて人間の姿になれ」

「チュン!」

京楽は鳴いて、浮竹の肩にとまって、その首元に頭をおしつけた。

「チュン、チュン」

「はいはい、愛してるね。俺も愛してるぞ」

「ちゅん!!!!」

「嘘くさい?ああ、適当だからな」

「酷い!」

京楽は人型になると、客間を抜け出してキッチンにこもり、紅茶をトレイに乗せて戻ってきた。

「とりあえず、依頼主の家にいかないとね」

「この茶を飲んだら向かうぞ。低級霊だろうと、殺されそうになるというのは異常だ」

「そうだね。ぱぱっと祓って、終わらせようよ。そして僕と甘い甘いスウィートな時間を・・・・あいた!」

ハリセンがスパーンと炸裂する。

「鳥。禍津神の俺に食われろ」

「酷い!家出してやる!」

「そうか。もう戻ってくるな。鍵を変える」

「ひ~ど~い~。しくしくしく」

文鳥姿になって、ちゅんちゅん鳴きながら、京楽は浮竹の肩に止まって、共に車に乗って依頼者の家にやってきた。


「ああ、きてくださったのですか、祓い屋のお方。妻が付喪神がついているなんていいますが、何もおきてません」

依頼人の婦人の夫は、はく製にしたマーガレットちゃん(猫)を撫でてから、新しい飼いネコのスコティッシュフォールドの猫を撫でた。

「マーガレットちゃんは綺麗な猫でした。私は愛しましたし、愛されていました。祟られるはずはありません」

「あなた!昨日はマーガレットちゃんのはく製に階段だから落とされかけたじゃないの!」

「あれは、俺が転んだだけだ。マーガレットちゃんは抱いていただけだし・・・・」

夫婦は、ぎゃあぎゃあとやりとりをはじめた。

「そのマーガレットちゃんを、拝借しても?」

「あ、ああ、いいですよ」

「あー。付喪神ではないねぇ。低級な動物霊・・・・と思ったら、猫又がついてるね」

「ああ、そのようだ」

浮竹は結界を張り、夫婦からマーガレットちゃんを完全に引き離して、浄化の札を張った。

「ぎにゃあああああああ!!!」

はく製のマーガレットちゃんの中から、黒い猫又が出てきた。

それに、夫婦は目を見開いて驚いていた。

「猫又でも、悪いことをするのは無視できない。祓い清めたまえ」

式の京楽を使い、浮竹は京楽に浄化の術を乗せると、京楽は水龍神としてもつ浄化の力をさらに増幅させて、はく製から出てきた猫又を祓った。

「にゃおおおおおおおおおん!!おのれ、我を虐待死させておいて、何が愛しているだ・・・・そのスコティッシュフォールドも同じ目にあっている。保護してやってくれ」

それだけを言い残して、猫又はこの世界から完全に成仏してしまった。

「猫又の言葉をまさか、魔に受けたりは・・・・・・」

「します。その猫はいったんこちらで預かります」

「シフォンヌちゃん!」

「にゃああああ」

シフォンヌという名のスコティッシュフォールドは、主人を威嚇して、浮竹の腕の中に飛び込んで震えていた。

「動物病院で診てもらいます。虐待の疑いがあれば、警察を呼びますので」

「なんだと!金を払ってやってるのに!」

「金と犯罪は別物です」

「私たちは犯罪なんてしていない!猫に少しきつくあたっただけだ!」

「それが、犯罪というんだ。動物虐待は立派な罪だ」

「そうだよ。浮竹の言う通りだね。この子、こんなに震えてる」

京楽が、浮竹の手からシフォンヌを受け取って、撫でた。

「にゃあああ」

「京楽、食われるなよ」

「何それ怖い!」

なんだかんだあって、依頼主は前のマーガレットという猫を虐待死させていたのが分かり、現在飼っているシフォンヌも虐待されていて、シフォンヌは浮竹が引き取ろうとしたのだが、鳥なので食われると泣く京楽を見かねて、保護猫として里親を見つけてもらい、引き取ってもらった。


「猫は、怖いんだよ!小鳥姿の僕を見ると襲いかかってくるんだから!」

「それは、お前が文鳥の姿になるかだろうが」

「マオだって、時折僕に襲い掛かってくるじゃない!」

マオは、浮竹のもつ猫の式神の名である。

『そうか。お前は襲われるのが好みか、鳥』

「ぎゃあ、びっくりした!禍津神の浮竹、驚かさないでよ!」

『やあ、センパイ。シフォンケーキを焼いてもってきたんだ。4人でお茶でもしないかい』

「お、いいな」

禍津神の浮竹の背後から、術者の京楽が顔を見せて、シフォンケーキの入った籠を見せる。

『早く食おう。鳥、鳥も食うのか?』

「食べます。んで鳥じゃなくて水龍神。もしくは式ね」

『焼き鳥・・・・チキンカレー・・・・・』

「もぎゃあああああ!」

禍津神の浮竹は、式の京楽の髪の毛を掴むと、式の京楽は文鳥姿になって逃げようとしたところを、術者の浮竹にわしづかみにされた。

「鳥になって逃げるな。ちゃんと、式の俺の相手をしてやれ」

「ちゅん!ちゅん、ちゅん!」

「だってじゃない。お前だけ、その姿でシフォンケーキつつくつもりか。鳥にやる菓子などないぞ」

『鳥のままの鳥にやるくらいなら、俺が食べる』

「人型に戻りますぅ!僕だってシフォンケーキ食べたいよ!」

『じゃあ、いただこうか』

3人がぎゃあぎゃあ言い争っている間に、式のメイドであるルキアから紅茶を入れてもらい、かカップを4人分テーブルに並べてシフォンケーキも4つ置いておいた。

『春水、気がきくな』

『十四郎は、そんなに鳥、鳥って、式のボクをからかわないの』

『だって鳥だし。焼き鳥にしたい』

「もぎゃあああ!!!」

「大丈夫だ京楽、お前は愛玩用の小鳥だ。食べてもまずい」

「そういう話じゃないの!焼き鳥にしようとする発想を浮かべないでよ!」

『『「だって鳥だし」』』

3人同時にはもるので、それを見ていたルキアがふきだした。

「ご主人様とお客さん、面白いです」

「ルキアちゃん助けて~」

「私は洗濯物を取り込まないといけないので。それでは」

ルキアが去っていくと、4人はシフォンケーキを紅茶を口にしながら、最近の祓い屋稼業のことを雑談しだした。

「付喪神がついてるっていいだした依頼人がいてな。ついていたのは、前に飼っていた猫が猫又になって化けたやつだった。浄化したが、かわいそうだったな」

『浄化されたのなら、そうでもないだろう。天国に行ける』

禍津神の浮竹が、出てきた式のマオを撫でた。

『この猫の非常食は、やっぱり鳥だよな?』

「ああ、うーん、まぁそうかもな」

「ちょっと、否定してよ浮竹!」

『さて、じゃあボクらはもう少しゆっくりしようと、ボードゲームの人生ゲームなんてもってきよたよ。懐かしくて遊び方忘れがちだけど』

術者の京楽が持ってきた人生ゲームをお茶の後に楽しんだ。

1位は禍津神の浮竹で、宝くじで億万長者になり、子供を4人作ってゴールした。

最下位は式の京楽で、奴隷になって売り飛ばされた先で病にかかって死んだ。

『鳥、病気には気をつけろ。性病にはなるなよ。術者の俺にうつる』

「ムキーーーー!そんなもんにはなりません!!!」

『でも、してるんでしょ?』

術者の京楽が、赤くなっている術者の浮竹に聞くと、術者の浮竹はこの話は終わりだとばかりに、ハリセンを3人に炸裂させた。

『いたい』

『あいたた』

「ちゅん、ちゅん!」

すぐに文鳥姿になった式の京楽は、慣れているので術者の浮竹の肩に止まった。

「恥ずかしいから、この話はなしだ!いいな?」

『『「は~い」』』

術者の浮竹は、術者の京楽と式の浮竹が無事帰路についたのを確認して、肩に止まったまま眠りこけている京楽の頭を撫でるのだった。




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