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無題

「京楽、少し変わったか?」

「ん、分かる?暴走しちゃってから、いろいろ反省して禍津神の浮竹に修行に付き合ってもらったんだよ。これ、お土産のアップルパイ」

「式の俺に、修行とか・・・・あれは神の中でも災厄を司る神だ。大丈夫だったのか?」

「うん」

浮竹はアップルパイを受け取り、式のルキアに紅茶を入れてもらいながら、改めて自分の式である京楽を見た。

いつものちゃらんぽらんな雰囲気が消し飛んでいて、精悍な様子に見えた。

「その、かっこよくなったな・・・・・」

顔を赤くしながら、浮竹はアップルパイを口にした。

「うまい・・・・・」

「術者の僕の作るお菓子、おいしいからね。かっこよくなったでしょ?だから、今日は・・・・」

すっと尻を撫でてくる京楽をハリセンで叩いて、浮竹は真っ赤になってアップルパイを口にほうばって、京楽を文鳥姿にした。

「ちゅん、ちゅん!」

「お前という奴は、少し褒めるとそうやって下心をを出す!それがお前の最大の欠点だ」

「ちゅん~~~」

文鳥姿になった京楽は、浮竹の肩に止まって、寂しそうに鳴いた。

霊力を乗せて、文鳥姿のまましゃべる。

「がんばったんだから、ご褒美ちょうだいよ!」

「むう。今日だけだからな!」

「やったあぁ!」

人型に戻った京楽は、浮竹にキスをして、抱き寄せた。

「んっ・・・・・・」

『ありゃりゃ、お邪魔だったかな?』

突然の来訪を告げたのは、術者の京楽だった。

「な、なんでもない!そう、なんでもない。ただのあいさつだから!」

式の京楽をハリセンで殴り倒して、術者の浮竹は真っ赤になった。

『あーあ。修行つけたのに、下心は消えないのか、鳥は』

禍津神の浮竹は、殴り倒されてしくしくと泣いている式の京楽を見た。

「ちゅん!」

情けない姿をずっと晒せなくて、式の京楽は文鳥姿になって、術者の京楽の頭の上に乗った。

『おーい、頭に乗らないでくれないかな。今日は、依頼を一緒にこなすためにきたんだよ』

酷い悪霊に憑りつかれた男性が、女性を襲いレイプして殺しているという凄惨な事件が、ここ数日おこっていた。

『ボクらだけじゃあ、犯人が出る場所が分かりにくいからね。式を飛ばしても人数が足りないんだ。協力してくれるかい?』

『水龍神、修行のl成果の見せ所だぞ』

「引き受けよう、浮竹」

「あ、ああ・・・・・・。酷い悪霊か。祓うのに媒介が必要かもしれないな」

浮竹の場合、媒介は自分の血だった。

もしくは京楽の血か、ルキアの涙。

祓うのに血がいることが時にはあるので、血を流すことは気にしていないが、術者の浮竹に傷を作ってほしくないと、いつも式の京楽が血を与えていた。

『じゃあ、集合場所はここで。明日の朝10時からはりこみだよ』

酷い悪霊ではあるが、いつもはなりを潜めているため、見つけづらいのだ。


翌日。

集合場所で、術者の浮竹は長い白髪を結いあげて、女性ものの着物を着て、自分が囮になることを相談で決めた。

はじめは禍津神の浮竹だったのだが、嫌だと駄々をこねて、術者の浮竹が女装する羽目になった。

術者の浮竹は、一人で行動しているように見えて、式札にしている京楽をつれていた。

『じゃあ、気をつけて。ボクらは囮にひっかからない可能性を見て、他区域を担当するから。そのかっこ、似合ってるよ。ボクの浮竹にも着せたいくらいだよ』

『俺は、女の恰好なんてしないからな!』

『はいはい』

「かわいいよ、浮竹。食べちゃいたい」

式札からそんな声が聞こえるので、術者の浮竹は式札から器用に式の京楽の頭を出して、ハリセンで殴った。

「あいた!」

「あほ言ってないで、いくぞ。前回と前々回に犯行が行われた辺りに行く」

「君は、僕が守るから。安心して」

「ああ」


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「ひひひひ。綺麗な姉ちゃん、おれといいことして死んじゃえよ」

「うわ、これまた酷いどす黒い悪霊だねぇ。修行してなかったら、少し多めの血が必要だったかもしれないよ」

式札の京楽が姿を現して、悪霊に憑りつかれた男は困惑した。

「な、術者か!」

「正解だ。大人しく祓われろ!」

「いやだ、俺はもっと女を襲って、殺すんだああ!お前もレイプして殺してやる」

「僕の伴侶をレイプして殺すだって?」

ゆらりと、式の京楽からオーラがにじみ出る。

式の京楽は、ナイフで指を切って少量の血を流すと、それを媒介にして強力な浄化の力を出す。

京楽は、いつの間にか狩衣姿になり、水龍神の片鱗を見せて、凄まじい悪霊の霊気を相殺して、浄化してしまった。

だが、憑りつかれた男も同じような欲をもっていたので、悪霊を祓われても浮竹に襲い掛かってきた。手にはサバイバルナイフを。

「死ねええ」

浮竹は、式のマオを飛ばして、避ける。

悪霊がとれれば普通に戻ると油断していた浮竹の頬を、サバイバルナイフがかすめて、血を流させた。

「よくも、僕の浮竹に傷を・・・・・・」

暴走しそうで、しないギリギリの範囲でおしとどまり、男の首に手刀を叩き込んで、京楽は犯人を無視して、浮竹にかけよった。

「癒しの力よ・・・・・・」

「京楽、大げさだ。かすり傷だ」

「だめだよ。綺麗な顔にもしも傷が少しでも残ったら、僕が狂う」

「京楽・・・・・・んっ」

傷を癒させれ、ついでにと接吻を受けた。



『あのー。いつまでこうしてるといいのかな?』

「うわ、術者の京楽!それに式の俺まで!」

『ラブシーンは、あまり外でしないほうがいいぞ』

「違う、これは!」

「ラブシーン見たね!10万罰金だよ」

『金とるのかい』

『てもちは5万しかないぞ』

「やだなぁ、冗談だよ・・・・おぶ!」

術者の浮竹のストレートパンチを鳩尾に受けて、式の京楽はしゃがみこんでから、これ以上術者の浮竹の怒りを受けないために、文鳥姿になって、禍津神の浮竹の頭に止まった。

『鳥くさくなる!』

「ちゅん、ちゅん!」

「こんな時にだけすぐに文鳥になるなんて卑怯だぞ、京楽!」

「ちゅーーーーん!!」

怒った術者の浮竹に鷲掴みにされて、数枚羽をむしられた。

「ちゅん!(ごめんなさい、外ではもうしません)」

「はぁ。すまない、術者の京楽に禍津神の俺。悪霊は祓った。後はこの犯人を、警察につきだすだけだ」

『犯罪は犯罪だからね。罪を償うしかない。悪霊がついていたとしても、犯罪をおこしてしまったのだから、贖うしかない。かわいそうだけれど』

「かわいそうなことないよ!こいつ、悪霊がとれた状態でサバイバルナイフで浮竹をレイプして殺そうとしたんだよ!」

『なに、術者の俺をか!許せない、殺そう』

『こら、十四郎』

『あ、ごめん春水。警察だったな……』

結局、警察に引き渡された犯人は、後日6件のレイプ殺人事件で裁判を受けて、死刑判決を受けることになる。

『大丈夫か、術者の俺。襲われたんだろう?』

「ああ、大丈夫だ。頬を少し切られただけだ」

『綺麗に治ってるな。水龍神の力か』

「ああ、そうだ。前はこんなに治癒能力は高くなかった」

『やっぱり、修行の成果が出ているんだよ』

術者の京楽の言葉に、式の京楽は文鳥姿のまま、ちゅんちゅんと嬉しそうに鳴いて、術者の浮竹の肩に止まった。

「京楽、お前のがんばり具合は素直に認めてやる」

「ちゅん!」

「だからって、道端で盛るな!」

「ちゅん!」

「家に帰ったら、好きにするといい」

『『うわ~~~』』

女装しているせいで、妙に色香のある姿でそう言われて、術者の京楽と禍津神の浮竹まで赤くなった。

『その姿で誘うなんて、殺し文句だね』

「誘ってるわけじゃない。報酬だ」

『術者の俺、鳥が鼻血だしてる』

文鳥姿なのに、ぼたぼたと血を鼻から垂れ流して、式の京楽はまた術者の浮竹に鷲掴みにされて羽をむしられるのであった。







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