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禁忌という名の6

花の神のお陰で、空間を渡り、浮竹の元にこれた。

いきなり、目の前の空間がねじ曲がったものだから、京楽は驚いた。でも、その先から花の神の声がして、なんだろうと思った。

「愛児が危ない。孤独なる王よ、椿を助けたければ、命の代償を支払い、我も愛する愛児の元へ行くがよい」

命を代償にといわれてたが、躊躇などしなかった。花の神がいう椿とは、浮竹のことだろう。そして孤独なる王とは、京楽のこと。

実際に、空間を渡ったとき生気を吸われているのが分かった。数年分の寿命を吸い上げられたが、そんなことはどうでもいいのだ。

目の前の光景に、京楽は初めて本格的な殺意を覚えた。

浮竹は、足のアキレス腱を切られた上に、犯されかけ、舌を噛み切ったのか、口から大量の血が流れていた。

花の神に浮竹のことを任せた。浮竹の傷は、花の神の力によって応急手当がされて、一命は取り留めた。

その後のことは、あまり覚えていなかった。ただ、その場にいた人間を、姫以外を残して全部殺した。姫には、醜くなってもらいたかったから、回道でも癒えない酸で顔を焼いた。

その後は--------------。


応急手当がされた浮竹を、瞬歩で4番隊の総合救護詰所に緊急搬送させた。

きちんとした回道の手当てがされて、1週間の入院が告げられた。傷は塞がったが、高熱を出したのだ。精神的なショックも大きかった。

体があまりにも透けているものだから、悪いことだとはわかっていたが、意識がもうろうとしている浮竹を病室で抱いて、愛していると何度も囁くと、透けていた輪郭は取り戻すことができた。

「浮竹、愛しているよ」

「・・・・俺もだ、京楽」

熱にうなされながらも、浮竹は京楽の想いに答えてくれた。

キスをすると、透けかけていた手の輪郭が戻ってくる。

前々から、花の神に言われていたことがあった。愛して体を繋ぎあうことが、透けた時の対応の一番になると。

だから、浮竹の体に直接体液を注ぎ込んだ。

浮竹は、悪夢を見ているのか、時々また輪郭を透けさせた。それを京楽が抱いて戻して・・・そんなことを続けていたものだから、総隊長としての責務を、一時的ではあるが免除させてもらった。白哉が、京楽がいない1週間の間、京楽に代わって総隊長を務めた。

やがて、輪郭も取り戻した浮竹を抱きあげて、一番隊の執務室に戻ってきた。

「兄らか・・・・思ったより、遅かったな」

1週間と少しを留守にしていた。

浮竹の精神状態がうまく落ち着かなくて、鎮静剤をうってもらったりしていたら、帰るのが遅くなった。

「京楽総隊長。兄に、全てを返却する」

白哉は、自分の仕事は終わりだとばかりに瞬歩で去ってしまった。

「浮竹、ついたよ。一人で歩けるかい?」

「ああ、大丈夫だ・・・・・・」

少しふらついてはいるが、体はもう平気そうだった。

「京楽・・・・・お前、瑠璃院家のことは」

「ああ、霊圧も残していないからね。賊の仕業として処理させているよ」

「あの姫は?」

「あの女は、醜い顔に絶望して自殺したらしいよ。お似合いの結末だ」

くすくすと笑う京楽が、どこか怖かった。浮竹のことになると、京楽は人が変わる。

「今回のことで実感した。もう、君は一人で行動させない」

「仕方ないか・・・・・・・・」

自分の身に起きたことを思えば、それが普通の対応なのだろう。

「ただ、身辺警護をつけることを了承するなら、僕がいない時でも外にでていいよ」

「そうか」

また、日番谷やみんなのところに遊びに行けると知って、浮竹は嬉しそうだった。

「でも、しばらくは外出禁止だよ。まだ精神的に落ち着いていないからね」

念のために精神安定剤をもらった。

浮竹は、それを服用していた。

それは眠りを誘う作用もあって・・・・悪夢にうなされる浮竹に飲ませると、すっと深く眠ってくれるので、しばらくは必要かもしれない。

「愛しているよ」

「俺も、愛している」

執務室の椅子に腰かけて、その膝の上に京楽をのせて、今日も京楽は仕事をこなしていく。

「はぁ・・・・もう、何を言っても無理ですね」

「わかってるじゃないの、七緒ちゃん」

浮竹は、なるべく邪魔をしないようにと、静かにしていた。ただ、上半身は京楽の首に手を回していた。



「白哉、遊びにきたぞ」

身辺警護に、二人ばかりの死神をつけられた,。

「兄は・・・・暇人だな」

「ああ、俺は暇人なんだ。浮竹として仕事を処理することは許されてないから、毎日が暇で暇で・・・・・」

京楽が仕事でかまってくれないので、6番隊の執務室に遊びにきていた。

「兄は、これでも食べていろ」

「お、わかめ大使・・・・・むむっ、中身が白あんこだと!?」

「新商品だ」

「白哉、これは売れるぞ」

「そうか」

白哉は嬉しそうだった。


他愛のない時間は、過ぎていく。

クローンの浮竹が生まれ、1年目の春が過ぎようとしていた。




水底で、花の神は花びらを散らしていく。

「愛児よ------------この春が終わる時、愛児はもうの世界には在れない」

雨乾堂の池の前で、その水底の花の神を、浮竹はただ見ていた。

「せめて、4月まではいられるか?」

「あと1か月・・・・・・ちょうど、4月のなかばまでなら」

「そうか・・・・・・」

浮竹の覚悟は、もうできていた。

大好きな人たちに、お礼をして去りたい。
できれば京楽には---------------こちら側にきてほしいが、それは我儘すぎるだろう。

でも、と思う。

もし、京楽がきてくれるなら?

全てを捨てて、俺と共に在ることを望んでくれるなら?

「ふふっ・・・紛い者の命には、大胆過ぎるか」

浮竹が迎えた初めてで最後の春は、4月になろうとしていた。




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