移ろわざる者
最近、体調が芳しくなかった。
肺の発作が収まったと思ったら、高熱を出し、熱が下がったと思ったらまた発作をおこした。
おかげで、最近ろくなものを食べておらず、雨乾堂にいながら点滴を受けていた。
救護詰所に入院したほうがいいと海燕は言うが、浮竹は体調が落ち着いた時は仕事をしたりしているので、入院はしなかった。
「隊長、ほんとに大丈夫ですか?」
「ああ、大丈夫だ。最近は発作の回数も減ってきたし、熱も微熱だし・・・・・」
元から細いのに、更に肉を落とした浮竹の体は軽そうだった。
「とにかく、ちゃんと寝ててくださいね!今日は粥くらいなら食べれそうですか?」
「あまり食欲はないが、薬も飲まないといけないし、多分食べれる」
わざわざ卯ノ花隊長にきてもらい、一度回道を受けた。
体調は芳しくないが、快方には向かっているようだった。
海燕は、昼まで寝ていた浮竹に、昼食をとらせるために一度隊舎のほうに下がった。
ほどなくして、鮭の入った白粥と玉露の茶がもってこられた。
食欲は相変わらずないが、何か食べないとこのままでは何時まで経っても点滴を受けなければならない。
白粥を一口食べた。
美味しいと感じたが、相変わらず食欲は出なかった。
無理をして半分ほど食べた。
「もう無理だ・・・・これ以上食べようとしたら、きっと吐いてしまう」
「隊長、そこまで無理して食べなくていいです!無理なら数口でもいいんですから!」
「でも、せっかく用意してもらったのに」
「そんなことより、隊長の体優先です」
出された薬を飲んだ。あと、最近飲みだした肺の病にいいという漢方の薬湯を口にする。
その薬湯は苦くなく、ほんのり甘味があって浮竹は飲むのに支障はなかった。
他の薬は、苦いか味がしないかのどちらかだった。
「全部の薬が甘かったら、喜んで飲むのにな」
ふとそう思う。
今日もまたまだ熱が出ていた。
微熱だが、念のために寝ていることにした。
「はぁ・・・・最近天井ばかり見ている気がする」
「浮竹、大丈夫かい」
「京楽!」
暖簾をくぐって入ってきた京楽に、浮竹は喜びの声をあげた。
体調が芳しくないのと、京楽の仕事が溜まっていたせいで、最近来てくれなかったのだ。
「京楽、お前がくると少し元気が出る気がする」
「なら、もっと早くに来るべきだったねぇ」
頭を撫でられた。
半身を起こして、京楽の手土産のおはぎを見るが、食べれそうになかった。
「すまない、京楽。おはぎは海燕にでもやってくれ。食欲がないんだ」
「熱・・・まだあるね」
こつんと、額と額を合わせてくる。
大好きな京楽。傍にいるだけで、こんなにも世界が色を変える。
「浮竹、元気になったらまた甘味屋にでもいこう」
「ああ」
「まずは、こんな点滴を受けなくていいように、ちゃんと食べることだね」
「食欲がないが、少しずつだが食べれるようにはなっている。初めは食べていたら吐いてしまって、どうにもならなかったんだ」
「かわいそうに」
京楽は、浮竹を優しく抱きしめた。
「ああ、こんなに細くなっちゃって・・・・・」
「ここ2週間ばかり、果物とかしか口にしていないし、点滴ばっかりだったからな」
浮竹は、苦笑した。
京楽の胸が痛む。
「ああ、早く元気になっておくれ」
「お前の顔を見ていたら、元気がわいてきた。昼食半分残したんだが、何か消化にいいものをもってきてもらう」
海燕を呼んで、粥をまたもってきてもらった。
はじめから少しの量にしておいたので、完食できた。
「えらいね、浮竹」
「隊長は、薬より京楽隊長と会せたほうが、元気になるの早いかもしれませんね」
海燕は、そういって食器をもって下がっていった。
「キスしていいかい?」
「いいぞ・・・・んんっ」
舌が絡むキスを繰り返す。
もう、1か月近く交わっていない。
京楽は我慢しているが、それは浮竹もだった。性欲は強くないが、週に一度は交わるのだから、今の状態は少し苦しかった。
「元気になったら、君を抱きたい」
真正面から告白されて、浮竹は頬を赤らめる。
「すまないな・・・我慢させてしまって」
「仕方ないよ。君の体が弱いのは、今に始まったことじゃないし」
浮竹は、京楽を抱き締めた。
「その、抜いてやろうか?」
「だめだよ、熱あるんだから」
「むー」
「元気になったらね」
「ああ」
キスを何度も繰り返した。
まるで交わっている時のように。
「今日は久しぶりだから、泊まっていくね」
「ああ、そうしてくれ。暇なんだ。海燕も仕事があるから、いつも俺に構ってばかりいられないし」
天井ばかりを見ているのに飽きた。
その日は、京楽は隣に布団を敷いて寝た。寝る前に、熱がさがったので、京楽のものを抜いてやった。
翌日になると、昨日の体調の悪さが嘘のように元気になっていた。
まずしたことは、風呂に入った。点滴は外され、普通のご飯も食べれた。
たまっていた仕事を処理して、京楽と久しぶりに・・・・半月ぶりくらいに、甘味屋へ行った。
臥せっていたのが嘘のように、たくさん食べた。
「ねえ、今夜いい?」
「あ・・・ああ」
抱いていいかと、聞かれているのだ。
よいと答えてから、久し振りだなと思った。
夜になり、その日も京楽は雨乾堂に泊まった。
「久しぶりだし・・・病み上がりだから、あんまり無理はさせられないね」
「気にしなくていいのに」
「だめだよ。また熱を出したりしたらどうするの」
「う・・・・」
もっともなことを言われて、浮竹は押し黙った。
キスをされて、長い白髪を撫でられた。
褥にとさりと、押し倒され、長い白髪が畳の上に散らばる。
「ん・・・・・」
隊長羽織と死覇装を脱がされていく。肋骨が少し浮き出ているその細さに、京楽が言う。
「もっと食べて、肉つけなきゃね」
「あっ」
胸の先端をひっかかれ、舌で転がされた。
全身の輪郭を愛撫されて、胸から鎖骨にかけてキスマークを残される。
「んっ」
潤滑油に濡れた指が入ってきた。
久し振りの感覚に、腰が浮く。
「ああ!」
後ろで感じるのも久しぶりすぎて、あっけなく浮竹はいってしまった。
「早いね・・・・」
「たまってたからな」
指をひきぬかれて、京楽のものが入ってくる。
「ひあああああ!」
引き裂かれる感触は、されど悦びで。快感ばかりを生み出した。
「やっ」
前立腺ばかりをすりあげて、突き上げてくる動きに、ふるふると首を横にふる。
「もっと、乱暴にしていいから・・・・お前で、満たしてくれ」
「だめだよ。優しくしたいんだから」
浮竹の中を犯していく。
「ああ!」
腹の奥までくわえこまされて、孕むと思った。
「んん・・・・ああああ!」
行為は荒々しくはなく、最奥まで突き上げられるが、いつもより激しくはなかった。
「やああああ」
最奥をこじあけられるように、熱をたたきつけられた。
じんわりと広がっていく高温に、内部がきゅうきゅうと疼いた。
「あ、もっと・・・・・」
「十四郎・・・・愛してるよ」
「俺も愛してる・・・・・春水っ」
何度も突き上げられて、浮竹も精液を吐きだして、尽きた。
京楽は加減しようとしていたが、あおって、京楽が満足するまで抱かれた。
「風呂にいこうか」
「あ、こぼれる・・・」
京楽の子種が抜き取られたことで、零れていく。
「いっそ、孕めればいいのに」
「何その殺し文句。まだ抱かれたいの?」
「お前になら、何度だって抱かれてやる」
「全く、君って子は・・・・」
ちゅっと、音がなるキスをされて、風呂場につれてこられて中にだしたものをかき出された。
髪と体を洗う。キスマークは太腿とかにまでついていて、京楽が満足するまで抱かれたので浮竹は大分体力を消耗していた。
風呂からあがり、着物を着ると、浮竹は早々に眠ることにした。
「今日は久しぶりすぎて疲れたので、もう寝る。京楽も寝ろ」
同じ布団で、互いを抱き締めあいながら、体温を共有していると、意識は闇に滑り落ちていった。
「ん・・・・寒いね」
ふと、京楽は夜中に目を覚ます。
毛布も布団も、浮竹がもっていってしまっていた。
引っ張ってしまった勢いで起こしてはいけないと、押し入れからもう一組の布団をしいて、そこで寝た。
「おはよう」
「ああ、おはよう・・・そのすまない、どうやら寝相が悪くて一人で布団と毛布を、もっていってしまったみたいで・・・・・」
「そんなこと、いいんだよ。熱はない?」
額に手を当てられる。
幸いなことに、熱はなかった。
「朝ごはん食べれそう?」
「ああ、もう元気だし食べれる。心配をかけてばかりだな、俺は」
「心配をかけさせないのが一番いいけど、君は体が弱いから。仕方ないよ」
海燕を呼んで、朝餉を用意してもらった。
念のために、薬湯も用意してもらった。その薬湯は高くて、京楽がわざわざ手に入れた高価な品であった。味も甘味があるように、調整してもらっている。
「ありがとう、京楽。愛している」
浮竹は微笑んだ。麗人は、真っ白な髪に白い肌、翡翠の瞳をもっていて、笑顔がとても似合う。
「僕も愛してるよ、浮竹」
「あの、朝から恥ずかしいこと言ってないで、早く食べてください」
じと目の海燕など気にせず、二人はキスをした。それから朝食を食べながら、合間に螺鈿細工の櫛で浮竹の長い白髪を櫛削る。
「俺の存在は空気か・・・・・・」
二人のかもしだす、熱を孕んだいちゃいちゃぶりに、海燕はあてられて外に出た。
「はぁ・・・・俺は空気、空気・・・・」
自分に言い聞かせて、いちゃこらしている二人を急かして、京楽を8番隊まで送り、浮竹に仕事を渡す。
「海燕」
「なんですか、隊長」
「お前は、空気なんかじゃないぞ。ちゃんといるって分かってる。それでも、いちゃつくけどな」
「はぁ・・・・あんたも京楽隊長も、どっちも意地が悪い」
「そうかもな」
はははと、笑う浮竹は、元気そうだった。
元気なら、それでいいと思う。ふと、庭を見ると梅の花が咲いていた。
それを切って、花瓶に活けて、飾った。
「海燕?」
「あんたらは、梅の花みたいに咲いて、でも散ることなく今度は季節がきたら桜になって、紫陽花になって、朝顔になって・・・・・・」
「まるで、頭の中に花が咲いているといわんばかりだな」
「咲いてるでしょう」
「咲いているかもな」
くすくすと笑って、浮竹は梅の花を見た。
「もうすぐ、春だな」
「そうですね」
季節は移ろう。でも、移ろわないものもある。
それは浮竹と京楽の関係。
何百年経とうと、変わらぬ愛の軌跡。
移ろわざる者。
それが、二人なのだ。
肺の発作が収まったと思ったら、高熱を出し、熱が下がったと思ったらまた発作をおこした。
おかげで、最近ろくなものを食べておらず、雨乾堂にいながら点滴を受けていた。
救護詰所に入院したほうがいいと海燕は言うが、浮竹は体調が落ち着いた時は仕事をしたりしているので、入院はしなかった。
「隊長、ほんとに大丈夫ですか?」
「ああ、大丈夫だ。最近は発作の回数も減ってきたし、熱も微熱だし・・・・・」
元から細いのに、更に肉を落とした浮竹の体は軽そうだった。
「とにかく、ちゃんと寝ててくださいね!今日は粥くらいなら食べれそうですか?」
「あまり食欲はないが、薬も飲まないといけないし、多分食べれる」
わざわざ卯ノ花隊長にきてもらい、一度回道を受けた。
体調は芳しくないが、快方には向かっているようだった。
海燕は、昼まで寝ていた浮竹に、昼食をとらせるために一度隊舎のほうに下がった。
ほどなくして、鮭の入った白粥と玉露の茶がもってこられた。
食欲は相変わらずないが、何か食べないとこのままでは何時まで経っても点滴を受けなければならない。
白粥を一口食べた。
美味しいと感じたが、相変わらず食欲は出なかった。
無理をして半分ほど食べた。
「もう無理だ・・・・これ以上食べようとしたら、きっと吐いてしまう」
「隊長、そこまで無理して食べなくていいです!無理なら数口でもいいんですから!」
「でも、せっかく用意してもらったのに」
「そんなことより、隊長の体優先です」
出された薬を飲んだ。あと、最近飲みだした肺の病にいいという漢方の薬湯を口にする。
その薬湯は苦くなく、ほんのり甘味があって浮竹は飲むのに支障はなかった。
他の薬は、苦いか味がしないかのどちらかだった。
「全部の薬が甘かったら、喜んで飲むのにな」
ふとそう思う。
今日もまたまだ熱が出ていた。
微熱だが、念のために寝ていることにした。
「はぁ・・・・最近天井ばかり見ている気がする」
「浮竹、大丈夫かい」
「京楽!」
暖簾をくぐって入ってきた京楽に、浮竹は喜びの声をあげた。
体調が芳しくないのと、京楽の仕事が溜まっていたせいで、最近来てくれなかったのだ。
「京楽、お前がくると少し元気が出る気がする」
「なら、もっと早くに来るべきだったねぇ」
頭を撫でられた。
半身を起こして、京楽の手土産のおはぎを見るが、食べれそうになかった。
「すまない、京楽。おはぎは海燕にでもやってくれ。食欲がないんだ」
「熱・・・まだあるね」
こつんと、額と額を合わせてくる。
大好きな京楽。傍にいるだけで、こんなにも世界が色を変える。
「浮竹、元気になったらまた甘味屋にでもいこう」
「ああ」
「まずは、こんな点滴を受けなくていいように、ちゃんと食べることだね」
「食欲がないが、少しずつだが食べれるようにはなっている。初めは食べていたら吐いてしまって、どうにもならなかったんだ」
「かわいそうに」
京楽は、浮竹を優しく抱きしめた。
「ああ、こんなに細くなっちゃって・・・・・」
「ここ2週間ばかり、果物とかしか口にしていないし、点滴ばっかりだったからな」
浮竹は、苦笑した。
京楽の胸が痛む。
「ああ、早く元気になっておくれ」
「お前の顔を見ていたら、元気がわいてきた。昼食半分残したんだが、何か消化にいいものをもってきてもらう」
海燕を呼んで、粥をまたもってきてもらった。
はじめから少しの量にしておいたので、完食できた。
「えらいね、浮竹」
「隊長は、薬より京楽隊長と会せたほうが、元気になるの早いかもしれませんね」
海燕は、そういって食器をもって下がっていった。
「キスしていいかい?」
「いいぞ・・・・んんっ」
舌が絡むキスを繰り返す。
もう、1か月近く交わっていない。
京楽は我慢しているが、それは浮竹もだった。性欲は強くないが、週に一度は交わるのだから、今の状態は少し苦しかった。
「元気になったら、君を抱きたい」
真正面から告白されて、浮竹は頬を赤らめる。
「すまないな・・・我慢させてしまって」
「仕方ないよ。君の体が弱いのは、今に始まったことじゃないし」
浮竹は、京楽を抱き締めた。
「その、抜いてやろうか?」
「だめだよ、熱あるんだから」
「むー」
「元気になったらね」
「ああ」
キスを何度も繰り返した。
まるで交わっている時のように。
「今日は久しぶりだから、泊まっていくね」
「ああ、そうしてくれ。暇なんだ。海燕も仕事があるから、いつも俺に構ってばかりいられないし」
天井ばかりを見ているのに飽きた。
その日は、京楽は隣に布団を敷いて寝た。寝る前に、熱がさがったので、京楽のものを抜いてやった。
翌日になると、昨日の体調の悪さが嘘のように元気になっていた。
まずしたことは、風呂に入った。点滴は外され、普通のご飯も食べれた。
たまっていた仕事を処理して、京楽と久しぶりに・・・・半月ぶりくらいに、甘味屋へ行った。
臥せっていたのが嘘のように、たくさん食べた。
「ねえ、今夜いい?」
「あ・・・ああ」
抱いていいかと、聞かれているのだ。
よいと答えてから、久し振りだなと思った。
夜になり、その日も京楽は雨乾堂に泊まった。
「久しぶりだし・・・病み上がりだから、あんまり無理はさせられないね」
「気にしなくていいのに」
「だめだよ。また熱を出したりしたらどうするの」
「う・・・・」
もっともなことを言われて、浮竹は押し黙った。
キスをされて、長い白髪を撫でられた。
褥にとさりと、押し倒され、長い白髪が畳の上に散らばる。
「ん・・・・・」
隊長羽織と死覇装を脱がされていく。肋骨が少し浮き出ているその細さに、京楽が言う。
「もっと食べて、肉つけなきゃね」
「あっ」
胸の先端をひっかかれ、舌で転がされた。
全身の輪郭を愛撫されて、胸から鎖骨にかけてキスマークを残される。
「んっ」
潤滑油に濡れた指が入ってきた。
久し振りの感覚に、腰が浮く。
「ああ!」
後ろで感じるのも久しぶりすぎて、あっけなく浮竹はいってしまった。
「早いね・・・・」
「たまってたからな」
指をひきぬかれて、京楽のものが入ってくる。
「ひあああああ!」
引き裂かれる感触は、されど悦びで。快感ばかりを生み出した。
「やっ」
前立腺ばかりをすりあげて、突き上げてくる動きに、ふるふると首を横にふる。
「もっと、乱暴にしていいから・・・・お前で、満たしてくれ」
「だめだよ。優しくしたいんだから」
浮竹の中を犯していく。
「ああ!」
腹の奥までくわえこまされて、孕むと思った。
「んん・・・・ああああ!」
行為は荒々しくはなく、最奥まで突き上げられるが、いつもより激しくはなかった。
「やああああ」
最奥をこじあけられるように、熱をたたきつけられた。
じんわりと広がっていく高温に、内部がきゅうきゅうと疼いた。
「あ、もっと・・・・・」
「十四郎・・・・愛してるよ」
「俺も愛してる・・・・・春水っ」
何度も突き上げられて、浮竹も精液を吐きだして、尽きた。
京楽は加減しようとしていたが、あおって、京楽が満足するまで抱かれた。
「風呂にいこうか」
「あ、こぼれる・・・」
京楽の子種が抜き取られたことで、零れていく。
「いっそ、孕めればいいのに」
「何その殺し文句。まだ抱かれたいの?」
「お前になら、何度だって抱かれてやる」
「全く、君って子は・・・・」
ちゅっと、音がなるキスをされて、風呂場につれてこられて中にだしたものをかき出された。
髪と体を洗う。キスマークは太腿とかにまでついていて、京楽が満足するまで抱かれたので浮竹は大分体力を消耗していた。
風呂からあがり、着物を着ると、浮竹は早々に眠ることにした。
「今日は久しぶりすぎて疲れたので、もう寝る。京楽も寝ろ」
同じ布団で、互いを抱き締めあいながら、体温を共有していると、意識は闇に滑り落ちていった。
「ん・・・・寒いね」
ふと、京楽は夜中に目を覚ます。
毛布も布団も、浮竹がもっていってしまっていた。
引っ張ってしまった勢いで起こしてはいけないと、押し入れからもう一組の布団をしいて、そこで寝た。
「おはよう」
「ああ、おはよう・・・そのすまない、どうやら寝相が悪くて一人で布団と毛布を、もっていってしまったみたいで・・・・・」
「そんなこと、いいんだよ。熱はない?」
額に手を当てられる。
幸いなことに、熱はなかった。
「朝ごはん食べれそう?」
「ああ、もう元気だし食べれる。心配をかけてばかりだな、俺は」
「心配をかけさせないのが一番いいけど、君は体が弱いから。仕方ないよ」
海燕を呼んで、朝餉を用意してもらった。
念のために、薬湯も用意してもらった。その薬湯は高くて、京楽がわざわざ手に入れた高価な品であった。味も甘味があるように、調整してもらっている。
「ありがとう、京楽。愛している」
浮竹は微笑んだ。麗人は、真っ白な髪に白い肌、翡翠の瞳をもっていて、笑顔がとても似合う。
「僕も愛してるよ、浮竹」
「あの、朝から恥ずかしいこと言ってないで、早く食べてください」
じと目の海燕など気にせず、二人はキスをした。それから朝食を食べながら、合間に螺鈿細工の櫛で浮竹の長い白髪を櫛削る。
「俺の存在は空気か・・・・・・」
二人のかもしだす、熱を孕んだいちゃいちゃぶりに、海燕はあてられて外に出た。
「はぁ・・・・俺は空気、空気・・・・」
自分に言い聞かせて、いちゃこらしている二人を急かして、京楽を8番隊まで送り、浮竹に仕事を渡す。
「海燕」
「なんですか、隊長」
「お前は、空気なんかじゃないぞ。ちゃんといるって分かってる。それでも、いちゃつくけどな」
「はぁ・・・・あんたも京楽隊長も、どっちも意地が悪い」
「そうかもな」
はははと、笑う浮竹は、元気そうだった。
元気なら、それでいいと思う。ふと、庭を見ると梅の花が咲いていた。
それを切って、花瓶に活けて、飾った。
「海燕?」
「あんたらは、梅の花みたいに咲いて、でも散ることなく今度は季節がきたら桜になって、紫陽花になって、朝顔になって・・・・・・」
「まるで、頭の中に花が咲いているといわんばかりだな」
「咲いてるでしょう」
「咲いているかもな」
くすくすと笑って、浮竹は梅の花を見た。
「もうすぐ、春だな」
「そうですね」
季節は移ろう。でも、移ろわないものもある。
それは浮竹と京楽の関係。
何百年経とうと、変わらぬ愛の軌跡。
移ろわざる者。
それが、二人なのだ。
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