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キスマーク

ある日、隊長といつも逢瀬に使う館で、俺は隊長のうなじにキスマークを残した。

それを知らない隊長は、翌日普通に6番隊の執務室にきて仕事を始めた。隊舎内を移動する時、ちらちちらと、いつもより多い視線を浴びているのに気づく。

移動するときふわりと黒髪が揺らめいて、隊長のうなじが見えた。

やっべ。

痕、残しすぎたかな。

でも、隊長は俺のものだし、他のやつが隊長に手を出すのを防ぐには効果はあった。

「何を呆けておる」

隊長にそう声をかけられて、はっとなる。

「いえ、なんでもないっす」

隊長の整いすぎた顔に見惚れていたと言ったら、きっと愚か者だと言われるだろう。

執務室で仕事をしだす前に、3席の利吉が小さな声で隊長に耳打ちした。

「うなじにいっぱいキスマークがあります」

おのれ。

ばらすとは卑怯な。

それを聞いて、ゆらりと隊長の霊圧が高くなった。

「恋次、こちらに来い」

「いや、隊長、あのねこれは」

「見えるかもしれない場所には、痕を残すなとあれほど言っていたのを、覚えておらぬのか」

「いえ、覚えてますけど最近の隊長は、色香が増して他の死神たちが食い入るように見てくるから・・・・・それがいやで、虫よけの意味かねて、わざとやりました」

「破道の8、白雷」

「ぎゃわわわわわ」

かなり加減された鬼道であった。普通なら真っ黒こげになる。

ちょっとしびれる程度の鬼道に、隊長が思ったより怒っていないことに気づく。

「怒ってないんですか、隊長」

「色香云々は分からぬが、容姿のせいで注目を集めるのは確かだ」

「そうなんですよ。隊長めっちゃ美人だから、俺心配で」

「私を信じれないのか?」

隊長の悲しそうな表情に、俺はしまったと思った。

俺の言動が、隊長を不安にさせている。

俺は隊長を抱きしめた。

隊長は、俺の腕の中で静かに立って、そして、背中に手が回される。

「私は、お前しか見ていない。それでも心配なのか」

「隊長・・・・・」

顔を寄せると、隊長は目を閉じた。

キスをすると、隊長の体が僅かに震えた。

「私には、恋次、お前だけだ。私が心から愛するのは。言葉だけでは信じられぬか?」

「いいえ、隊長。信じます。信じるしかできません」

隊長を愛している。

隊長しか、目に入ってこない。

隊長を抱き上げて、隊首室へといくと、隊長は首を振った。

「昨日睦み合ったばかりだ。今日はしない」

「最後まではしません」

隊長の隊長羽織を脱がせて、死覇装に手をかける。

隊長が、不安げに俺を見た。

「一回抜くだけです・・・・」

その気になってしまった俺は、隊長を抱きたいという欲を我慢して、自分のものをとりだすと、死覇装を脱がせて隊長のものを取り出すと、すり合わせて扱いだした。

「ああ、恋次!」

お互いのものに手をかけて、しごいていく。

全く反応していなかった隊長のものも、俺が無理やりたたすと、刺激でむくりと顔をもたげた。

「恋次・・・・んんっ」

キスをする。

隊長は、俺とのキスが好きだ。

舌を絡み合わせる深いキスを何度も繰り返し、ラストスパートをかける。

「隊長好きです・・・・愛してます」

「ああ!恋次、私もだ・・・・・・」

硬く熱くなったものをしごいて、俺が隊長のものの先端に爪を立てると、隊長はいってしまった。

「あああ!!!」

俺も、ほぼ同じタイミングで射精する。

「隊長・・・」

「んん・・・・・」

キスを何度も繰り返して、タオルで汚れた部分をぬぐって、お互いに服を着合った。

「恋次、辛くないのか」

「辛いですよ。ほんとなら、隊長を抱きたい。でも、昨日抱いたばかりだし、今は仕事の時間だし・・・・・」

俺のその言葉に、時間に厳格な隊長が、余韻を残した色香のある顔で、怒った。

「せめて休憩時間にせぬか、愚か者」

「でも、隊長だって拒否しなかったじゃないですか」

「それは・・・・」

真っ赤になって俯く隊長が可愛くて、顎に手をかけて上を向かせて、キスをした。

「お前はずるい・・・・」

隊長が、ベッドの上で俺に凭れかかってくる。

「私がお前を100%拒否できぬことを知っているくせに」

「そうですね。でも、昨日隊長を抱いたこともあって俺は我慢しました。少しは褒めてください」

「褒めるようなことではないだろう」

「俺は今すぐにでもしたいんです。でも隊長が嫌がるからしません」

「お前は・・・・手のかかる・・・・・・」

真っ赤になった隊長を抱きしめて、仕事時間中だということも無視して、ベッドに隊長と一緒に横になった。

「恋次?」

「今日だけですから・・・少し、こうして・・・・眠りましょう」

「だが、仕事が」

「もう、今日の仕事は終わってますよ」

「恋次」

ごろりと寝転がっている俺を、隊長は抱き寄せた。

「今日だけだぞ」

俺も、隊長を抱き寄せる。

性欲を解消した後に、緩やかな眠気が押し寄せてきた。

「隊長・・・・好きです」

すぐ近くにある、麗人の顔を見つめて、そのサラリとした黒髪をすいてやった。

「お前だけだ。私を好きにできるのは」

「はい。めちゃ嬉しいです」

触れるだけのキスを繰り返して、隊長の体温を感じながら横になっていると、いつの間にか眠ってしまっていたようだった。

起きると、腕の中に隊長はいなかった。

「隊長?」

執務室にくると、明日の分の仕事にとりかかっている隊長を見つける。

「隊長、そんなに仕事に打ちのめらなくても」

「反対だ。仕事でもしていないと、貴様に抱かれたくなる」

「隊長・・・・今日、館へいきませんか」

「昨日の今日だぞ」

「でも、体が疼くんでしょう?」

「う・・・・・・・」

俺は、隊長とやりとりをして、結局今日館にいって隊長を抱くことを承諾してもらった。

性欲の薄い隊長が俺に抱かれたいと言い出すなど、相当なものだろう。

1回だけ中途半端に抜いたのでは、足りなかったのだろう。

隊長。

好きです。世界で一番愛してます。

心の中で言ったはずが、言葉に出しているらしかった。

「世界で一番か・・・・私も、世界で一番お前を愛している」

思いもかけぬ言葉をもらい、俺は隊長に抱き着いた。

「重い」

「隊長は俺だけのものだ」

「お前も、私だけのものだ」

触れるだけの口づけを繰り返して、俺と隊長は今日も館に行き、一度だけであったが交わるのだった。

その時に、うなじに上書きするように、キスマークを残した。

隊長はそれに気づいたが、怒らなかった。

隊長。

ほんとに、あんたはかわいい人だ。

俺は眠ってしまった隊長の横顔を、眠くなるまでずっと眺めているのであった。





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