紅瑠璃(IF
チチチチチチ。
小鳥が鳴いていた。
「ん・・・もう、朝か」
窓から勝手に入ってきた小鳥は、浮竹の裸の肩に止まった。
「京楽、おい京楽」
揺さぶると、ぴくりと隣にいた同じく裸の男が目覚めた。
「今何時だい?」
「6時だな」
「あと2時間はねれる。おやすみ」
そういって、一人だけまた夢の中に旅立ってしまった。
「怠惰なやつだな」
もう、それにも慣れてしまった。いつもは浮竹も惰眠を貪るのだが、昨日は早めに寝たせいか眠くなかった。
睦みあったのは、夜の9時頃から。湯あみも終わらせて、面倒なので裸で眠ってしまったのが11時前。
睦みあったとはいえ、かなり軽くだったので、行為自体は1時間とかからなかった。
「服着なきゃ・・・・」
襦袢だけとりあえず身につけて、クローゼットを開ける。タンスもあったが、服がしわになるからとクローゼットをよく利用していた。
いつもと同じ色の、黒い死覇装に、何もない白の羽織を着る。
顔を洗って、歯を磨く。髪を櫛でといて、軽く結うと七緒が隊首室のほうから顔をのぞかせた。
「浮竹元隊長、京楽総隊長は起きていますか?」
隊首室にもベッドはあるのだが、寝室のほうがベッドが大きいので、いつも京楽と浮竹は、寝室のベッドで共に眠りについた。
「まだ寝ている。起こそうか?」
「いえ、まだ6時ですし。8時に起こしてください」
隊長や総隊長の朝は早い・・・・ようで、普通だった。大体7時頃におきて1時間ほど余裕をもってから、8時に朝食をとって8時半から仕事をしだす。
副隊長はもう少し遅くて、9時からの出勤だ。
中には7時頃から仕事をしだす元気な隊長副隊長もいるが、大体が8時以降から仕事に・・・主に、書類整理など雑務に精を出すのだ。
浮竹は、待っているシロに、餌をいれた皿をだす。窓から、クロも入ってきた。
窓はいつも開けっ放しにされている。小鳥たちのためだ。
「京楽、おい起きろ京楽」
「んーあと5分」
そう言って、腰に抱き着いてくる京楽の頭をはたいた。
「あいたっ。・・・・・おはよう」
「もう8時過ぎだぞ」
「え、まじで?やばい、七緒ちゃんと6番隊のことについて話し合う予定だったんだ」
いそいそと服を着て、適当に髪を髭を整える。昔のように笠をかぶって、京楽は執務室に向かった。
そこで、七緒とあれこれ会話をしだす。長引きそうだったし、邪魔をしては悪いと思い、一人で一番隊の隊舎を後にした。
「日番谷隊長、いるかい?」
そっと、10番隊の執務室に入ってみると、時間が経っても背が伸びる様子のない、小柄な体を文机に向かわせ、何かを書いていた。
「ああ、浮竹か。暇で遊びにきたのなら、松本とでも遊んでろ」
「隊長、それひっどーい。あたしだって、ちゃんと仕事してるんですからね」
みれば、松本も書類を整理していた。
「年のくれだしな。いろいろ処分しとかねぇといけない案件が多くて、嫌になるぜ」
2時間ほど、お茶菓子を食べたり、松本が入れてくれたお茶を飲んでいたり、最新の女性死神協会の会誌などを読んで時間をつぶしていると、日番谷がやってきた。
「今日の仕事は終わりだ。珍しいな、一人なのか?京楽のおっさんは?」
「仕事で、伊勢副隊長と話し込んでいた。暇なのでここに遊びにきたけど、ここも暇だな」
「まぁ、浮竹は仕事の邪魔をあまりしてこないからいいが・・・京楽と一緒にはくるなよ?」」
昔、二人のせいで執務室を何度も半壊させた。
「甘味屋にいかないか?」
日番谷を誘うと、日番谷はいいぞと答えてくれた。
それが嬉しくて、頭を撫でると
「子供扱いするんじゃねぇ」
と怒られてしまった。
「隊長!浮竹元隊長も!あたしも一緒に甘味屋にいきたい」
「お前はまだ整理する書類が残ってるだろ!仕事しろ、仕事を!」
「あーん、こんな仕事はやく片付けたいー」
浮竹は、日番谷と並んで歩きだす。
甘味屋につくと、すでに人だかりができていた。
「ああ、そういえば今日はアイスの新商品が発売で・・・違う甘味屋にいこうか」
「ああ、別にどこでもいいが・・・・」
全ての戦いが終わって、尸魂界も変わった。特に瀞霊廷は、現世の家電を取り入れたせいで、急激に変わりつつあった。
「ここ、何気に好きなんだ」
「こんなとこに甘味屋が?」
流魂街の外れにある、その甘味屋は、閑散としていたが、数人の客がいた。
「浮竹様!またきてくださってのでありんすか」
色街の、遊女の言葉遣いの女性がお冷とおしぼりをもってきてくれた。
「知り合いか?」
日番谷が、浮竹に聞くと浮竹は頷いた。
「昔、身請けした遊女で、カナという」
ブーーーーーーー!
日番谷がお冷を吹き出した。
「お、お前、京楽に知られたら!」
「大丈夫だ。京楽の金で身請けした、幼馴染なんだ。中流貴族と結婚したけど、姑との関係がうまくいかずに飛び出して、今に至る」
「浮竹様、こちらの方はどなたでありんすか」
「10番隊隊長の、日番谷冬獅郎だ」
日番谷が名乗った。
こそこそと耳打ちしてくる。
「本当に、ただの幼馴染なんだな?浮気相手だったら、俺があのおっさんに殺される」
「はははは日番谷隊長は心配性だなぁ。浮気相手なら、京楽が日番谷隊長を手にかけるまえに、京楽が彼女を惨たらしく殺している」
笑顔で怖い話をされて、日番谷は身震いした。
「お汁粉を二つ。後おはぎと羊羹も二つずつ。あと持ち帰りで甘納豆を一人前」
適当に注文していく浮竹を見る。
「お前のおごりだと思って、金をもってきていないが、持ち合わせはあるな?」
「いや、俺も忘れた」
「おい!」
「つけがきくし・・・まぁ問題はない」
そう言い切られて、注文された品を食べていく。
「ありがとうでありんす。お勘定ですが・・・・・」
「これで、足りるだろうか」
浮竹は、紅瑠璃を見せた。尸魂界でしかとれない、とても珍しい石で、小粒ではあったが注文した内容を30回頼んでもおつりが出る。
「こんな高価なもの!お代はいいでありんすよ」
「いいから、受け取ってくれ。暮らしの足しにしてほしい」
そう言われて、カナという元遊女は紅瑠璃をもらい、手をふった。
「またきてほしいでありんす~」
「ああ、またくる」
「あの紅瑠璃、どうしたんだ?」
「京楽にもらった金で買ったんだ。何か、細工物を作って浮竹にあげようかと思って。でも小粒だったし、もっといい石が手に入って完成したから」
「お前と京楽の金使いには、眩暈がする」
甘味屋をでると、そこには京楽がいた。
ぞくりと、背筋が凍る気がした。
「もう、なるべくあの子と関わらないって決めてたんじゃないの?」
周囲を威圧するような霊圧に、日番谷は言葉をなくした。
「甘味屋で働いていただけだ。やましいことは何もない」
「声、聞こえてたよ。紅瑠璃をあげたんだって?石の意味知ってて?」
「変わらぬ愛、だろう?ここにちゃんとある」
そう言って、大粒の紅瑠璃をはめこんだ首飾りを、浮竹は京楽に与えた。
「これは・・・・・・?」
「拙くてすまない。俺が作ったんだ。変わらない愛を、お前に」
「浮竹!」
京楽は、浮竹を抱き寄せて口づけを交わした。
「日番谷隊長は、昔のように斬魄刀を解放しないのか?」
「もう、お前らのいちゃつきで解放する斬魄刀なんてねーよ」
それだけ、日番谷も大人になったのだろう。何より、一度大切なものを失った京楽が哀れすぎて、総隊長でありながら、幽霊のような存在に、憐れみを覚えすぎていた。これ以上ないくらいの嬉しそうな笑みを刻む京楽の幸せを、つぶすような真似はするまいと、日番谷も彼なりに気を使っているのだ。
「いやぁ、嬉しいねぇ。普通のプレゼントも嬉しいけど、手作りとかもう本当に嬉しいよ。このまま、高級料亭にいこう。日番谷隊長もおいで」
「おい、俺はお前らがいくような、高級料亭にいける金なんてないぞ」
例え、給料が出ても、とても使うような額ではないので、首を振ると、京楽は嬉し気こういう。
「僕のおごりだよ」
「のった!」
京楽の選ぶ高級料亭に外れはない。甘味ものでお腹はあまり減っていないが、久しぶりに高級な美味しいものをただで食べれる機会なのだ。
無碍にすることもないだろう。
ちゃりん。
紅瑠璃で作られた首飾りはいつまでも京楽の首にかけられて、紅色の光を放ち、石の言葉通りの変わらぬ愛を奏でるのであった。
小鳥が鳴いていた。
「ん・・・もう、朝か」
窓から勝手に入ってきた小鳥は、浮竹の裸の肩に止まった。
「京楽、おい京楽」
揺さぶると、ぴくりと隣にいた同じく裸の男が目覚めた。
「今何時だい?」
「6時だな」
「あと2時間はねれる。おやすみ」
そういって、一人だけまた夢の中に旅立ってしまった。
「怠惰なやつだな」
もう、それにも慣れてしまった。いつもは浮竹も惰眠を貪るのだが、昨日は早めに寝たせいか眠くなかった。
睦みあったのは、夜の9時頃から。湯あみも終わらせて、面倒なので裸で眠ってしまったのが11時前。
睦みあったとはいえ、かなり軽くだったので、行為自体は1時間とかからなかった。
「服着なきゃ・・・・」
襦袢だけとりあえず身につけて、クローゼットを開ける。タンスもあったが、服がしわになるからとクローゼットをよく利用していた。
いつもと同じ色の、黒い死覇装に、何もない白の羽織を着る。
顔を洗って、歯を磨く。髪を櫛でといて、軽く結うと七緒が隊首室のほうから顔をのぞかせた。
「浮竹元隊長、京楽総隊長は起きていますか?」
隊首室にもベッドはあるのだが、寝室のほうがベッドが大きいので、いつも京楽と浮竹は、寝室のベッドで共に眠りについた。
「まだ寝ている。起こそうか?」
「いえ、まだ6時ですし。8時に起こしてください」
隊長や総隊長の朝は早い・・・・ようで、普通だった。大体7時頃におきて1時間ほど余裕をもってから、8時に朝食をとって8時半から仕事をしだす。
副隊長はもう少し遅くて、9時からの出勤だ。
中には7時頃から仕事をしだす元気な隊長副隊長もいるが、大体が8時以降から仕事に・・・主に、書類整理など雑務に精を出すのだ。
浮竹は、待っているシロに、餌をいれた皿をだす。窓から、クロも入ってきた。
窓はいつも開けっ放しにされている。小鳥たちのためだ。
「京楽、おい起きろ京楽」
「んーあと5分」
そう言って、腰に抱き着いてくる京楽の頭をはたいた。
「あいたっ。・・・・・おはよう」
「もう8時過ぎだぞ」
「え、まじで?やばい、七緒ちゃんと6番隊のことについて話し合う予定だったんだ」
いそいそと服を着て、適当に髪を髭を整える。昔のように笠をかぶって、京楽は執務室に向かった。
そこで、七緒とあれこれ会話をしだす。長引きそうだったし、邪魔をしては悪いと思い、一人で一番隊の隊舎を後にした。
「日番谷隊長、いるかい?」
そっと、10番隊の執務室に入ってみると、時間が経っても背が伸びる様子のない、小柄な体を文机に向かわせ、何かを書いていた。
「ああ、浮竹か。暇で遊びにきたのなら、松本とでも遊んでろ」
「隊長、それひっどーい。あたしだって、ちゃんと仕事してるんですからね」
みれば、松本も書類を整理していた。
「年のくれだしな。いろいろ処分しとかねぇといけない案件が多くて、嫌になるぜ」
2時間ほど、お茶菓子を食べたり、松本が入れてくれたお茶を飲んでいたり、最新の女性死神協会の会誌などを読んで時間をつぶしていると、日番谷がやってきた。
「今日の仕事は終わりだ。珍しいな、一人なのか?京楽のおっさんは?」
「仕事で、伊勢副隊長と話し込んでいた。暇なのでここに遊びにきたけど、ここも暇だな」
「まぁ、浮竹は仕事の邪魔をあまりしてこないからいいが・・・京楽と一緒にはくるなよ?」」
昔、二人のせいで執務室を何度も半壊させた。
「甘味屋にいかないか?」
日番谷を誘うと、日番谷はいいぞと答えてくれた。
それが嬉しくて、頭を撫でると
「子供扱いするんじゃねぇ」
と怒られてしまった。
「隊長!浮竹元隊長も!あたしも一緒に甘味屋にいきたい」
「お前はまだ整理する書類が残ってるだろ!仕事しろ、仕事を!」
「あーん、こんな仕事はやく片付けたいー」
浮竹は、日番谷と並んで歩きだす。
甘味屋につくと、すでに人だかりができていた。
「ああ、そういえば今日はアイスの新商品が発売で・・・違う甘味屋にいこうか」
「ああ、別にどこでもいいが・・・・」
全ての戦いが終わって、尸魂界も変わった。特に瀞霊廷は、現世の家電を取り入れたせいで、急激に変わりつつあった。
「ここ、何気に好きなんだ」
「こんなとこに甘味屋が?」
流魂街の外れにある、その甘味屋は、閑散としていたが、数人の客がいた。
「浮竹様!またきてくださってのでありんすか」
色街の、遊女の言葉遣いの女性がお冷とおしぼりをもってきてくれた。
「知り合いか?」
日番谷が、浮竹に聞くと浮竹は頷いた。
「昔、身請けした遊女で、カナという」
ブーーーーーーー!
日番谷がお冷を吹き出した。
「お、お前、京楽に知られたら!」
「大丈夫だ。京楽の金で身請けした、幼馴染なんだ。中流貴族と結婚したけど、姑との関係がうまくいかずに飛び出して、今に至る」
「浮竹様、こちらの方はどなたでありんすか」
「10番隊隊長の、日番谷冬獅郎だ」
日番谷が名乗った。
こそこそと耳打ちしてくる。
「本当に、ただの幼馴染なんだな?浮気相手だったら、俺があのおっさんに殺される」
「はははは日番谷隊長は心配性だなぁ。浮気相手なら、京楽が日番谷隊長を手にかけるまえに、京楽が彼女を惨たらしく殺している」
笑顔で怖い話をされて、日番谷は身震いした。
「お汁粉を二つ。後おはぎと羊羹も二つずつ。あと持ち帰りで甘納豆を一人前」
適当に注文していく浮竹を見る。
「お前のおごりだと思って、金をもってきていないが、持ち合わせはあるな?」
「いや、俺も忘れた」
「おい!」
「つけがきくし・・・まぁ問題はない」
そう言い切られて、注文された品を食べていく。
「ありがとうでありんす。お勘定ですが・・・・・」
「これで、足りるだろうか」
浮竹は、紅瑠璃を見せた。尸魂界でしかとれない、とても珍しい石で、小粒ではあったが注文した内容を30回頼んでもおつりが出る。
「こんな高価なもの!お代はいいでありんすよ」
「いいから、受け取ってくれ。暮らしの足しにしてほしい」
そう言われて、カナという元遊女は紅瑠璃をもらい、手をふった。
「またきてほしいでありんす~」
「ああ、またくる」
「あの紅瑠璃、どうしたんだ?」
「京楽にもらった金で買ったんだ。何か、細工物を作って浮竹にあげようかと思って。でも小粒だったし、もっといい石が手に入って完成したから」
「お前と京楽の金使いには、眩暈がする」
甘味屋をでると、そこには京楽がいた。
ぞくりと、背筋が凍る気がした。
「もう、なるべくあの子と関わらないって決めてたんじゃないの?」
周囲を威圧するような霊圧に、日番谷は言葉をなくした。
「甘味屋で働いていただけだ。やましいことは何もない」
「声、聞こえてたよ。紅瑠璃をあげたんだって?石の意味知ってて?」
「変わらぬ愛、だろう?ここにちゃんとある」
そう言って、大粒の紅瑠璃をはめこんだ首飾りを、浮竹は京楽に与えた。
「これは・・・・・・?」
「拙くてすまない。俺が作ったんだ。変わらない愛を、お前に」
「浮竹!」
京楽は、浮竹を抱き寄せて口づけを交わした。
「日番谷隊長は、昔のように斬魄刀を解放しないのか?」
「もう、お前らのいちゃつきで解放する斬魄刀なんてねーよ」
それだけ、日番谷も大人になったのだろう。何より、一度大切なものを失った京楽が哀れすぎて、総隊長でありながら、幽霊のような存在に、憐れみを覚えすぎていた。これ以上ないくらいの嬉しそうな笑みを刻む京楽の幸せを、つぶすような真似はするまいと、日番谷も彼なりに気を使っているのだ。
「いやぁ、嬉しいねぇ。普通のプレゼントも嬉しいけど、手作りとかもう本当に嬉しいよ。このまま、高級料亭にいこう。日番谷隊長もおいで」
「おい、俺はお前らがいくような、高級料亭にいける金なんてないぞ」
例え、給料が出ても、とても使うような額ではないので、首を振ると、京楽は嬉し気こういう。
「僕のおごりだよ」
「のった!」
京楽の選ぶ高級料亭に外れはない。甘味ものでお腹はあまり減っていないが、久しぶりに高級な美味しいものをただで食べれる機会なのだ。
無碍にすることもないだろう。
ちゃりん。
紅瑠璃で作られた首飾りはいつまでも京楽の首にかけられて、紅色の光を放ち、石の言葉通りの変わらぬ愛を奏でるのであった。
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