忍者ブログ

プログ

小説掲載プログ
10 2024/11 14 2324 29 30 12

紫陽花と我儘

「我儘をいっていいか、京楽」

「なんだい」

「俺の傍にいてくれ・・・・・」

院生時代の6回生の時、そう言った。

「いるよ。君の傍に。ずっといるよ・・・・」

浮竹にとっては、ただ親友として、友人として傍にいてほしいという願い。

でも、それは京楽にとっては恋人として一緒にいたいという願いだった。

すぐに卒業式がきて、お互い離れ離れになったが、暇な時間を見つけては一緒に過ごした。

「んっ」

ある日、京楽が浮竹に口づけた。

「なんでだ・・・・京楽。俺じゃなくても、相手はいっぱいいるだろう」

浮竹は、頬を朱く染めながらも、京楽の口づけを否定した。

「僕には、浮竹しかいない。いろんな女の子と付き合ったり、廓にいったりしたけど、やっぱり浮竹、君がいいんだ」

「俺は、男だ」

そう言って、その日浮竹は去ってしまった。

まずい別れ方をした。そう思った。

京楽はあれから、一緒に過ごさなくなった。浮竹を見つけても、避けるようになっていた。

「ああもう!」

浮竹から、行動を起こすことにした。

京楽のいる8番隊にいって、当時まだ副隊長だった京楽を引っ張り出して、近くの居酒屋に入った。

「お前の求める意味で、傍にいたいならそれでもいい。頼むから、俺を見てくれ。拒絶しないでくれ。拒絶されるのが一番堪える」

「僕は・・・・・・恋愛感情で、浮竹のことが好きなんだよ?」

「それでもいいから。俺も、きっと京楽のことを好きになる。だから、傍にいてくれ」

京楽は、浮竹に口づけた。でも、浮竹が拒絶することはなかった。

「浮竹・・・・大好きだよ」

「ああ・・・」

俺も、とはまだ言えなかったけれど。

そのまま時は流れ、二人は若くして隊長にまで登りつめた。学院を卒業して、50年も経っていなかった。

「浮竹、行くよ」

「ああ」

虚退治に8番隊と13番隊で出かけていた。

尸魂界に2つしかない、二対一刀の斬魄刀を持つ二人は、院生からの付き合いだ。お互いの背中を預けて、始解をして虚の群れを退治していく。

「危ない!」

大虚(メノスグランデ)が現れた。

なんとか攻撃は避けたが、その大きさに眩暈を覚えた。

ただの大虚ではない、小さめの虚が出現する。それは、大虚の中でも、最下位のギリアンより上のアジューカスだった。

「RRRRRRRRRRRRRRRR!!!」

もはや、叫び声も理解できない。

元々虚はしゃべることもできるが、戦闘に特化したそのアジューカスは、とにかく強かった。

滅多に卍解しない浮竹が卍解して、一撃を加えるが、それが効いているかも謎だった。

「浮竹、離れていて・・・・・僕が卍解する」

もうすでに、席官クラスも含めて、死神たちには退避を言い渡してあるので、花天狂骨の卍解も可能だった。

京楽が卍解する。その範囲の外にでて、結末を見守るしかない。

アジューカスと同じ傷を、京楽が背負う。

けれど、最後に立っていたのは京楽だった。

アジューカスは霊子の塵となり、一緒に現れたギリアンの大虚と一緒に消えていった。

ふらりと、京楽の体が傾ぐ。血が吹き出た。それを支えて、叫ぶ。

「酷い怪我だ!すぐ、4番隊のところにいこう!」

なんとか回道で止血だけをして、京楽に肩をかして瞬歩で移動する。

「ねぇ、浮竹」

「しゃべるな、怪我に響くぞ。俺の回道では止血で精いっぱいだ」

「僕は君がずっと好きだった。死ぬ前に、君にいっておきたい。君を愛してる」

「死ぬなんていうな!俺もお前が好きだ!愛してる!だから、簡単に死ぬなんて言うな!」

「君からその言葉だけでも、聞けて、よかった・・・・・・」

そのまま、京楽は意識を失った。

卯ノ花に診てもらったが、容体は芳しくないようだった。

集中治療室に運ばれて行った京楽の命が助かるように、縋る神などいないのに、神に祈った。

「浮竹・・・?」

浮竹の回道の血止めがきいたせいで、京楽は九死に一生を得ることとなった。

「気づいたのか、京楽!」

京楽は順調に回復して、2か月ほどで退院を迎えた。

「あのな、京楽・・・・・・」

「なんだい、浮竹」

伝えたいことはいっぱいあったが、何から伝えればいいのか分からなくて、こう言っていた。

「お前の回復祝いに、飲もう!」

雨乾堂にまで京楽を招き入れて、他の隊士を近づけないようにした。

「ああ、いいね。もう2か月以上も飲んでないから」

「京楽が好きそうな酒、買っておいたんだ」

京楽は、喉が焼けるような日本酒を好む。高いので、少し粗悪なものになったが、それでも高い値段の酒をもってきた。

「お前の好きな、強い日本酒だ。俺も飲むぞ」

酒に強いわけでもないのに、京楽のために買った酒を、浮竹ものんだ。

「おいおい、大丈夫かい?」

京楽は、酒を飲んでいて、何か甘ったるいものが混じっていることに気づく。

「浮竹、このお酒・・・・」

「媚薬入りだ。こうでもしないと、俺は勇気が出せない。お前に抱かれたい」

「浮竹・・・・・・」

京楽が、目を見開いた。

「君、本当にいいの?」

「ああ。ずっとお前の傍にいると誓った。愛している、京楽」

京楽も、次期に媚薬が回ってきたのか、苦しそうにしていた。

「俺を抱け、京楽」

隊長羽織と、死覇装を脱ぎ去る浮竹。

その白い髪と同じくらい白い肌に、京楽は夢中になった。

「あっ・・・・・」

鎖骨のあたりにキスマークを残す。

「もう、後戻りはできないよ?」

「構わない」

体が熱かった。

浮竹は、このときのために買ってあった潤滑油を京楽に渡した。

「その気はあると、とっていいんだね?」

深い口づけを繰り返した。

「ああっ」

潤滑油まみれの指が、浮竹の蕾を出入りし、ぐちゃぐちゃと音を立てた。

前立腺ばかり刺激されて、浮竹は始めて後ろでいった。

「あ!」

びゅるると、勢いよく精子が飛び出す。

「たまっていたんだね」

「すまない・・・・その、こういうことも自虐もあまりしない性質で」

「君の初めてをもらうよ」

「んっ」

指を引き抜かれて、かわりに熱い熱をあてられた。

ゆっくりと侵入してくる。

「んああああああ!」

先端を入れおわると、後はすんなり入った。

「あ!」

前立腺を突き上げられる。太ももを両肩に乗せられて、あられもない姿勢で貪られた。

「ひあっ」

中で抉られて、突き上げられる位置が変わった。

「ひっ」

経験もしたことがないような深さを抉られる。

「あああ・・・・・」

最奥で、京楽の熱が弾けるのを感じた。

「ん・・・・・」

ゆっくりと引き抜かれて、やがて口づける。

まだ、媚薬はきいていたが、泥のように眠気が襲ってきた。浮竹も京楽も、一度交わっただけでそのまま眠ってしまった。

「おい、起きろ京楽!」

「ん・・・僕、寝ていたのか」

「体液がかわいてかぴかぴになってる!お互いべとべとだし・・・一緒に湯あみするぞ」

「一緒になんて、また襲っちゃうよ?」

「お前の好きなようにしろ」

結局、湯あみをしながらもう一度抱き合った。

「愛してるよ、浮竹・・・・・」

「俺も愛してる、京楽・・・・・」

髪を京楽に洗ってもらい、浮竹は上機嫌だった。

櫛削られていく白髪は、とても長い。腰の位置まである。

「浮竹、もう少し、髪を切らないかい?」

「いいぞ。いっそ、お前が切ってくれ」

そう言われて、京楽は手鏡と鋏をとりだした。ちょきちょきと、器用に浮竹の髪を切っていく。

10センチばかり切られただろうか。腰より少し上の位置で整えられた。

「うん、この長さなら、座っても地面につかないでしょ」

「ああ、ありがとう」

盆栽をいじったり、けっこう土いじりが好きな浮竹は、白い髪の先をよく泥で汚していることがあったので、前から切りたかったのだ。

「京楽、これからも傍にいてくれるか?」

「僕の命が果てるまで、傍にいると誓うよ」

「じゃあ、俺もこの命が果てるまで、傍にいると誓う」

誓い合うように、口づけた。

「なんか、結婚式みたいでおかしいな」

「そうかな。愛を誓い合うのは本当は大変なことなんだよ」

「そうだな・・・・・・」

雨乾堂の庭には、早くも紫陽花が咲いていた。

その色が目に優しくて、一房鋏で切って、花瓶に生けた。

「紫陽花か・・・・もう、そんな季節なんだね」

「6月は、現世では結婚式の季節だそうだぞ」

「なんなら、僕らも式を挙げるかい?」

「そのうちな」

浮竹が笑う。

紫陽花のように、優しい色の笑顔だった。


拍手[0回]

PR
URL
FONT COLOR
COMMENT
Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
PASS

TRACK BACK

トラックバックURLはこちら
新着記事
(11/28)
(11/28)
(11/27)
(11/26)
(11/25)
"ココはカウンター設置場所"