紫陽花と我儘
「我儘をいっていいか、京楽」
「なんだい」
「俺の傍にいてくれ・・・・・」
院生時代の6回生の時、そう言った。
「いるよ。君の傍に。ずっといるよ・・・・」
浮竹にとっては、ただ親友として、友人として傍にいてほしいという願い。
でも、それは京楽にとっては恋人として一緒にいたいという願いだった。
すぐに卒業式がきて、お互い離れ離れになったが、暇な時間を見つけては一緒に過ごした。
「んっ」
ある日、京楽が浮竹に口づけた。
「なんでだ・・・・京楽。俺じゃなくても、相手はいっぱいいるだろう」
浮竹は、頬を朱く染めながらも、京楽の口づけを否定した。
「僕には、浮竹しかいない。いろんな女の子と付き合ったり、廓にいったりしたけど、やっぱり浮竹、君がいいんだ」
「俺は、男だ」
そう言って、その日浮竹は去ってしまった。
まずい別れ方をした。そう思った。
京楽はあれから、一緒に過ごさなくなった。浮竹を見つけても、避けるようになっていた。
「ああもう!」
浮竹から、行動を起こすことにした。
京楽のいる8番隊にいって、当時まだ副隊長だった京楽を引っ張り出して、近くの居酒屋に入った。
「お前の求める意味で、傍にいたいならそれでもいい。頼むから、俺を見てくれ。拒絶しないでくれ。拒絶されるのが一番堪える」
「僕は・・・・・・恋愛感情で、浮竹のことが好きなんだよ?」
「それでもいいから。俺も、きっと京楽のことを好きになる。だから、傍にいてくれ」
京楽は、浮竹に口づけた。でも、浮竹が拒絶することはなかった。
「浮竹・・・・大好きだよ」
「ああ・・・」
俺も、とはまだ言えなかったけれど。
そのまま時は流れ、二人は若くして隊長にまで登りつめた。学院を卒業して、50年も経っていなかった。
「浮竹、行くよ」
「ああ」
虚退治に8番隊と13番隊で出かけていた。
尸魂界に2つしかない、二対一刀の斬魄刀を持つ二人は、院生からの付き合いだ。お互いの背中を預けて、始解をして虚の群れを退治していく。
「危ない!」
大虚(メノスグランデ)が現れた。
なんとか攻撃は避けたが、その大きさに眩暈を覚えた。
ただの大虚ではない、小さめの虚が出現する。それは、大虚の中でも、最下位のギリアンより上のアジューカスだった。
「RRRRRRRRRRRRRRRR!!!」
もはや、叫び声も理解できない。
元々虚はしゃべることもできるが、戦闘に特化したそのアジューカスは、とにかく強かった。
滅多に卍解しない浮竹が卍解して、一撃を加えるが、それが効いているかも謎だった。
「浮竹、離れていて・・・・・僕が卍解する」
もうすでに、席官クラスも含めて、死神たちには退避を言い渡してあるので、花天狂骨の卍解も可能だった。
京楽が卍解する。その範囲の外にでて、結末を見守るしかない。
アジューカスと同じ傷を、京楽が背負う。
けれど、最後に立っていたのは京楽だった。
アジューカスは霊子の塵となり、一緒に現れたギリアンの大虚と一緒に消えていった。
ふらりと、京楽の体が傾ぐ。血が吹き出た。それを支えて、叫ぶ。
「酷い怪我だ!すぐ、4番隊のところにいこう!」
なんとか回道で止血だけをして、京楽に肩をかして瞬歩で移動する。
「ねぇ、浮竹」
「しゃべるな、怪我に響くぞ。俺の回道では止血で精いっぱいだ」
「僕は君がずっと好きだった。死ぬ前に、君にいっておきたい。君を愛してる」
「死ぬなんていうな!俺もお前が好きだ!愛してる!だから、簡単に死ぬなんて言うな!」
「君からその言葉だけでも、聞けて、よかった・・・・・・」
そのまま、京楽は意識を失った。
卯ノ花に診てもらったが、容体は芳しくないようだった。
集中治療室に運ばれて行った京楽の命が助かるように、縋る神などいないのに、神に祈った。
「浮竹・・・?」
浮竹の回道の血止めがきいたせいで、京楽は九死に一生を得ることとなった。
「気づいたのか、京楽!」
京楽は順調に回復して、2か月ほどで退院を迎えた。
「あのな、京楽・・・・・・」
「なんだい、浮竹」
伝えたいことはいっぱいあったが、何から伝えればいいのか分からなくて、こう言っていた。
「お前の回復祝いに、飲もう!」
雨乾堂にまで京楽を招き入れて、他の隊士を近づけないようにした。
「ああ、いいね。もう2か月以上も飲んでないから」
「京楽が好きそうな酒、買っておいたんだ」
京楽は、喉が焼けるような日本酒を好む。高いので、少し粗悪なものになったが、それでも高い値段の酒をもってきた。
「お前の好きな、強い日本酒だ。俺も飲むぞ」
酒に強いわけでもないのに、京楽のために買った酒を、浮竹ものんだ。
「おいおい、大丈夫かい?」
京楽は、酒を飲んでいて、何か甘ったるいものが混じっていることに気づく。
「浮竹、このお酒・・・・」
「媚薬入りだ。こうでもしないと、俺は勇気が出せない。お前に抱かれたい」
「浮竹・・・・・・」
京楽が、目を見開いた。
「君、本当にいいの?」
「ああ。ずっとお前の傍にいると誓った。愛している、京楽」
京楽も、次期に媚薬が回ってきたのか、苦しそうにしていた。
「俺を抱け、京楽」
隊長羽織と、死覇装を脱ぎ去る浮竹。
その白い髪と同じくらい白い肌に、京楽は夢中になった。
「あっ・・・・・」
鎖骨のあたりにキスマークを残す。
「もう、後戻りはできないよ?」
「構わない」
体が熱かった。
浮竹は、このときのために買ってあった潤滑油を京楽に渡した。
「その気はあると、とっていいんだね?」
深い口づけを繰り返した。
「ああっ」
潤滑油まみれの指が、浮竹の蕾を出入りし、ぐちゃぐちゃと音を立てた。
前立腺ばかり刺激されて、浮竹は始めて後ろでいった。
「あ!」
びゅるると、勢いよく精子が飛び出す。
「たまっていたんだね」
「すまない・・・・その、こういうことも自虐もあまりしない性質で」
「君の初めてをもらうよ」
「んっ」
指を引き抜かれて、かわりに熱い熱をあてられた。
ゆっくりと侵入してくる。
「んああああああ!」
先端を入れおわると、後はすんなり入った。
「あ!」
前立腺を突き上げられる。太ももを両肩に乗せられて、あられもない姿勢で貪られた。
「ひあっ」
中で抉られて、突き上げられる位置が変わった。
「ひっ」
経験もしたことがないような深さを抉られる。
「あああ・・・・・」
最奥で、京楽の熱が弾けるのを感じた。
「ん・・・・・」
ゆっくりと引き抜かれて、やがて口づける。
まだ、媚薬はきいていたが、泥のように眠気が襲ってきた。浮竹も京楽も、一度交わっただけでそのまま眠ってしまった。
「おい、起きろ京楽!」
「ん・・・僕、寝ていたのか」
「体液がかわいてかぴかぴになってる!お互いべとべとだし・・・一緒に湯あみするぞ」
「一緒になんて、また襲っちゃうよ?」
「お前の好きなようにしろ」
結局、湯あみをしながらもう一度抱き合った。
「愛してるよ、浮竹・・・・・」
「俺も愛してる、京楽・・・・・」
髪を京楽に洗ってもらい、浮竹は上機嫌だった。
櫛削られていく白髪は、とても長い。腰の位置まである。
「浮竹、もう少し、髪を切らないかい?」
「いいぞ。いっそ、お前が切ってくれ」
そう言われて、京楽は手鏡と鋏をとりだした。ちょきちょきと、器用に浮竹の髪を切っていく。
10センチばかり切られただろうか。腰より少し上の位置で整えられた。
「うん、この長さなら、座っても地面につかないでしょ」
「ああ、ありがとう」
盆栽をいじったり、けっこう土いじりが好きな浮竹は、白い髪の先をよく泥で汚していることがあったので、前から切りたかったのだ。
「京楽、これからも傍にいてくれるか?」
「僕の命が果てるまで、傍にいると誓うよ」
「じゃあ、俺もこの命が果てるまで、傍にいると誓う」
誓い合うように、口づけた。
「なんか、結婚式みたいでおかしいな」
「そうかな。愛を誓い合うのは本当は大変なことなんだよ」
「そうだな・・・・・・」
雨乾堂の庭には、早くも紫陽花が咲いていた。
その色が目に優しくて、一房鋏で切って、花瓶に生けた。
「紫陽花か・・・・もう、そんな季節なんだね」
「6月は、現世では結婚式の季節だそうだぞ」
「なんなら、僕らも式を挙げるかい?」
「そのうちな」
浮竹が笑う。
紫陽花のように、優しい色の笑顔だった。
「なんだい」
「俺の傍にいてくれ・・・・・」
院生時代の6回生の時、そう言った。
「いるよ。君の傍に。ずっといるよ・・・・」
浮竹にとっては、ただ親友として、友人として傍にいてほしいという願い。
でも、それは京楽にとっては恋人として一緒にいたいという願いだった。
すぐに卒業式がきて、お互い離れ離れになったが、暇な時間を見つけては一緒に過ごした。
「んっ」
ある日、京楽が浮竹に口づけた。
「なんでだ・・・・京楽。俺じゃなくても、相手はいっぱいいるだろう」
浮竹は、頬を朱く染めながらも、京楽の口づけを否定した。
「僕には、浮竹しかいない。いろんな女の子と付き合ったり、廓にいったりしたけど、やっぱり浮竹、君がいいんだ」
「俺は、男だ」
そう言って、その日浮竹は去ってしまった。
まずい別れ方をした。そう思った。
京楽はあれから、一緒に過ごさなくなった。浮竹を見つけても、避けるようになっていた。
「ああもう!」
浮竹から、行動を起こすことにした。
京楽のいる8番隊にいって、当時まだ副隊長だった京楽を引っ張り出して、近くの居酒屋に入った。
「お前の求める意味で、傍にいたいならそれでもいい。頼むから、俺を見てくれ。拒絶しないでくれ。拒絶されるのが一番堪える」
「僕は・・・・・・恋愛感情で、浮竹のことが好きなんだよ?」
「それでもいいから。俺も、きっと京楽のことを好きになる。だから、傍にいてくれ」
京楽は、浮竹に口づけた。でも、浮竹が拒絶することはなかった。
「浮竹・・・・大好きだよ」
「ああ・・・」
俺も、とはまだ言えなかったけれど。
そのまま時は流れ、二人は若くして隊長にまで登りつめた。学院を卒業して、50年も経っていなかった。
「浮竹、行くよ」
「ああ」
虚退治に8番隊と13番隊で出かけていた。
尸魂界に2つしかない、二対一刀の斬魄刀を持つ二人は、院生からの付き合いだ。お互いの背中を預けて、始解をして虚の群れを退治していく。
「危ない!」
大虚(メノスグランデ)が現れた。
なんとか攻撃は避けたが、その大きさに眩暈を覚えた。
ただの大虚ではない、小さめの虚が出現する。それは、大虚の中でも、最下位のギリアンより上のアジューカスだった。
「RRRRRRRRRRRRRRRR!!!」
もはや、叫び声も理解できない。
元々虚はしゃべることもできるが、戦闘に特化したそのアジューカスは、とにかく強かった。
滅多に卍解しない浮竹が卍解して、一撃を加えるが、それが効いているかも謎だった。
「浮竹、離れていて・・・・・僕が卍解する」
もうすでに、席官クラスも含めて、死神たちには退避を言い渡してあるので、花天狂骨の卍解も可能だった。
京楽が卍解する。その範囲の外にでて、結末を見守るしかない。
アジューカスと同じ傷を、京楽が背負う。
けれど、最後に立っていたのは京楽だった。
アジューカスは霊子の塵となり、一緒に現れたギリアンの大虚と一緒に消えていった。
ふらりと、京楽の体が傾ぐ。血が吹き出た。それを支えて、叫ぶ。
「酷い怪我だ!すぐ、4番隊のところにいこう!」
なんとか回道で止血だけをして、京楽に肩をかして瞬歩で移動する。
「ねぇ、浮竹」
「しゃべるな、怪我に響くぞ。俺の回道では止血で精いっぱいだ」
「僕は君がずっと好きだった。死ぬ前に、君にいっておきたい。君を愛してる」
「死ぬなんていうな!俺もお前が好きだ!愛してる!だから、簡単に死ぬなんて言うな!」
「君からその言葉だけでも、聞けて、よかった・・・・・・」
そのまま、京楽は意識を失った。
卯ノ花に診てもらったが、容体は芳しくないようだった。
集中治療室に運ばれて行った京楽の命が助かるように、縋る神などいないのに、神に祈った。
「浮竹・・・?」
浮竹の回道の血止めがきいたせいで、京楽は九死に一生を得ることとなった。
「気づいたのか、京楽!」
京楽は順調に回復して、2か月ほどで退院を迎えた。
「あのな、京楽・・・・・・」
「なんだい、浮竹」
伝えたいことはいっぱいあったが、何から伝えればいいのか分からなくて、こう言っていた。
「お前の回復祝いに、飲もう!」
雨乾堂にまで京楽を招き入れて、他の隊士を近づけないようにした。
「ああ、いいね。もう2か月以上も飲んでないから」
「京楽が好きそうな酒、買っておいたんだ」
京楽は、喉が焼けるような日本酒を好む。高いので、少し粗悪なものになったが、それでも高い値段の酒をもってきた。
「お前の好きな、強い日本酒だ。俺も飲むぞ」
酒に強いわけでもないのに、京楽のために買った酒を、浮竹ものんだ。
「おいおい、大丈夫かい?」
京楽は、酒を飲んでいて、何か甘ったるいものが混じっていることに気づく。
「浮竹、このお酒・・・・」
「媚薬入りだ。こうでもしないと、俺は勇気が出せない。お前に抱かれたい」
「浮竹・・・・・・」
京楽が、目を見開いた。
「君、本当にいいの?」
「ああ。ずっとお前の傍にいると誓った。愛している、京楽」
京楽も、次期に媚薬が回ってきたのか、苦しそうにしていた。
「俺を抱け、京楽」
隊長羽織と、死覇装を脱ぎ去る浮竹。
その白い髪と同じくらい白い肌に、京楽は夢中になった。
「あっ・・・・・」
鎖骨のあたりにキスマークを残す。
「もう、後戻りはできないよ?」
「構わない」
体が熱かった。
浮竹は、このときのために買ってあった潤滑油を京楽に渡した。
「その気はあると、とっていいんだね?」
深い口づけを繰り返した。
「ああっ」
潤滑油まみれの指が、浮竹の蕾を出入りし、ぐちゃぐちゃと音を立てた。
前立腺ばかり刺激されて、浮竹は始めて後ろでいった。
「あ!」
びゅるると、勢いよく精子が飛び出す。
「たまっていたんだね」
「すまない・・・・その、こういうことも自虐もあまりしない性質で」
「君の初めてをもらうよ」
「んっ」
指を引き抜かれて、かわりに熱い熱をあてられた。
ゆっくりと侵入してくる。
「んああああああ!」
先端を入れおわると、後はすんなり入った。
「あ!」
前立腺を突き上げられる。太ももを両肩に乗せられて、あられもない姿勢で貪られた。
「ひあっ」
中で抉られて、突き上げられる位置が変わった。
「ひっ」
経験もしたことがないような深さを抉られる。
「あああ・・・・・」
最奥で、京楽の熱が弾けるのを感じた。
「ん・・・・・」
ゆっくりと引き抜かれて、やがて口づける。
まだ、媚薬はきいていたが、泥のように眠気が襲ってきた。浮竹も京楽も、一度交わっただけでそのまま眠ってしまった。
「おい、起きろ京楽!」
「ん・・・僕、寝ていたのか」
「体液がかわいてかぴかぴになってる!お互いべとべとだし・・・一緒に湯あみするぞ」
「一緒になんて、また襲っちゃうよ?」
「お前の好きなようにしろ」
結局、湯あみをしながらもう一度抱き合った。
「愛してるよ、浮竹・・・・・」
「俺も愛してる、京楽・・・・・」
髪を京楽に洗ってもらい、浮竹は上機嫌だった。
櫛削られていく白髪は、とても長い。腰の位置まである。
「浮竹、もう少し、髪を切らないかい?」
「いいぞ。いっそ、お前が切ってくれ」
そう言われて、京楽は手鏡と鋏をとりだした。ちょきちょきと、器用に浮竹の髪を切っていく。
10センチばかり切られただろうか。腰より少し上の位置で整えられた。
「うん、この長さなら、座っても地面につかないでしょ」
「ああ、ありがとう」
盆栽をいじったり、けっこう土いじりが好きな浮竹は、白い髪の先をよく泥で汚していることがあったので、前から切りたかったのだ。
「京楽、これからも傍にいてくれるか?」
「僕の命が果てるまで、傍にいると誓うよ」
「じゃあ、俺もこの命が果てるまで、傍にいると誓う」
誓い合うように、口づけた。
「なんか、結婚式みたいでおかしいな」
「そうかな。愛を誓い合うのは本当は大変なことなんだよ」
「そうだな・・・・・・」
雨乾堂の庭には、早くも紫陽花が咲いていた。
その色が目に優しくて、一房鋏で切って、花瓶に生けた。
「紫陽花か・・・・もう、そんな季節なんだね」
「6月は、現世では結婚式の季節だそうだぞ」
「なんなら、僕らも式を挙げるかい?」
「そのうちな」
浮竹が笑う。
紫陽花のように、優しい色の笑顔だった。
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