おはぎ
「ごほごほっ」
ああ、また咳込んでいる。
そう思って、雨乾堂の中を覗くと、いつも通り京楽に背中を撫でられている上司がいた。
また来てる。
無理をさせるようなことをしなければいいが。
一抹の不安を残して、海燕はその場を去った。
3時間後、浮竹のことが心配で、また様子を見に行った。睦みあったのか、衣服を乱した浮竹が京楽の腕の中で眠っていた。
ああ、やっぱり無理をさせている。
「京楽隊長・・・・あんまり浮竹隊長に、無理をさせないでくださいね」
「ああ、分かっているよ海燕君」
本当に、分かっているのだろうか?
でも、京楽はとても幸せそうな顔をしていた。浮竹は、もっと幸せそうな顔をしていた。
二人の仲に口出しするのも悪いが、せめて隊長が体の調子が悪い時くらい、そっとしてあげられないものかと思った。
でも、その後に聞くことになるが、浮竹から求めてきたそうだ。
次の日、甘味屋にいって、隊長が好きなおはぎをたくさん買ってきた。
「隊長、生きてますか」
「ほどほどに生きてる」
「おはぎ買ってきました。食べませんか」
「食べる」
海燕が雨乾堂に入るより前に、ひょいっと立ち上がった浮竹が、重箱の中のおはぎを一つとって、ぱくりと食べた。
「行儀悪いですよ」
「俺とお前しかいないんだ。気にしなくてよし」
海燕も、お茶をだしながらおはぎを食べた。
本当に、この細い体の何処に入るのだろうという甘味物を、浮竹は食べる。3人前はあったのを、ぺろりと平らげてしまった。
「海燕・・・・あんこついてる」
「え、どこですか」
ぺろりと、浮竹がなめとっていく。
「ななななな、何してるんすかあんたは!」
いきなりの行動に、真っ赤になる海燕。
「ああ、京楽にされているから、つい癖で」
「呼んだかい?」
ひょいっと、入口の暖簾を避けて、京楽がやってきた。
「おはぎか。あちゃータイミングが悪かったね。僕もおはぎ持ってきちゃったんだ」
「食べる」
「大丈夫かい?食べすぎはよくないよ」
「大丈夫だ。甘味物は別腹だから」
「別腹すぎるでしょう」
海燕が、呆れた声を出す。
あれだけ食べたのに、更に食べようとは、ちょっと食い意地がはっていないか。
「お茶、いれてきます・・・・・」
止めても無駄だろうから、この前京楽にもらった玉露のお茶を3人分もってきた。
茶をすすっていると、浮竹が言葉を出す。
「なんか、京楽と海燕って、嫁と姑みたいだな」
ぶばーー!
海燕は、茶を吹き零した。
「な、何言ってるんですか」
「嫁は僕かな?」
「そうそう。それで口をすっぱくする海燕が姑」
「俺は、別に」
「顔に書いてあるぞ。京楽めって」
確かに、京楽が来ることにあまり喜びはしない。むしろ、また隊長の病状を悪化させたりしないだろうかと、心配にはなる。
「まぁ、でも、僕は別に海燕君を姑のようにはみてないから。そうだね、浮竹の世話をやく好々爺ってかんじかな」
「どんだけ老けてるんですか俺は」
「まぁまぁ、二人ともその辺にしとけ」
浮竹が、二人の間を取り持つ。
「浮竹隊長は京楽隊長に甘すぎます」
「そういう浮竹は、海燕君の前で素を出し過ぎじゃないかな」
「ああ、もう」
浮竹は頭を抱えこんで、二人の口におはぎを詰め込んだ。
「むぐっ」
「むっ」
「イライラしている時は甘いものでも食って、疲れを癒せ」
そういう問題ではないのだが。
でも、浮竹の楽しそうな様子を見ていると、どうでもよくなってきた。
京楽が浮竹のことをとても大切にしているのは知っているし、海燕の存在を蔑ろにすることもない。
京楽隊長というのは、浮竹隊長よりよくできた人だと思った。
こんな、子供みたいな浮竹隊長と長く付き合うことができるのだから、そうなるのも自然かもしれないが。
「ああ、太陽が眩しい」
そう言って、窓のカーテンを閉めた。
浮竹は、太陽のような人だ。陽だまりで、暖かくて。それに、京楽が吸い寄せられて、結局海燕も吸い寄せられる。
「睦みあうのはいいですが、ほどほどにしてくださいね。雨乾堂の前を通ると、声が聞こえる時があります」
浮竹と京楽が同時に赤くなった。
「すまない・・・・」
「ごめん・・・・」
「まぁ、うちの隊の全員が二人の関係知ってるので、特に何かを言い出す人はいませんが、他の隊長が訪れてきた時とかやばそうですから」
海燕のさりげない一撃は、二人に大いに効いた。
それからしばらくの間は、浮竹と京楽は体を重ね合わせてもなるべく声を出さないようにしていた。でも、物足りないのですぐに甘い声を浮竹はあげるようになる。
雨乾堂の前にきて、ああ、その最中かと分かって、引き返す。
京楽隊長のことは、嫌いではないが、好きになれそうもなかった。
何度言っても、微熱がある程度なら抱いてしまうのだ。浮竹を。
それを快く思っていない自分に気づいて、苦笑した。
「また、今度おはぎでももっていくか・・・・・・・」
今度は、京楽の分も含めて。
そう思う海燕であった。
ああ、また咳込んでいる。
そう思って、雨乾堂の中を覗くと、いつも通り京楽に背中を撫でられている上司がいた。
また来てる。
無理をさせるようなことをしなければいいが。
一抹の不安を残して、海燕はその場を去った。
3時間後、浮竹のことが心配で、また様子を見に行った。睦みあったのか、衣服を乱した浮竹が京楽の腕の中で眠っていた。
ああ、やっぱり無理をさせている。
「京楽隊長・・・・あんまり浮竹隊長に、無理をさせないでくださいね」
「ああ、分かっているよ海燕君」
本当に、分かっているのだろうか?
でも、京楽はとても幸せそうな顔をしていた。浮竹は、もっと幸せそうな顔をしていた。
二人の仲に口出しするのも悪いが、せめて隊長が体の調子が悪い時くらい、そっとしてあげられないものかと思った。
でも、その後に聞くことになるが、浮竹から求めてきたそうだ。
次の日、甘味屋にいって、隊長が好きなおはぎをたくさん買ってきた。
「隊長、生きてますか」
「ほどほどに生きてる」
「おはぎ買ってきました。食べませんか」
「食べる」
海燕が雨乾堂に入るより前に、ひょいっと立ち上がった浮竹が、重箱の中のおはぎを一つとって、ぱくりと食べた。
「行儀悪いですよ」
「俺とお前しかいないんだ。気にしなくてよし」
海燕も、お茶をだしながらおはぎを食べた。
本当に、この細い体の何処に入るのだろうという甘味物を、浮竹は食べる。3人前はあったのを、ぺろりと平らげてしまった。
「海燕・・・・あんこついてる」
「え、どこですか」
ぺろりと、浮竹がなめとっていく。
「ななななな、何してるんすかあんたは!」
いきなりの行動に、真っ赤になる海燕。
「ああ、京楽にされているから、つい癖で」
「呼んだかい?」
ひょいっと、入口の暖簾を避けて、京楽がやってきた。
「おはぎか。あちゃータイミングが悪かったね。僕もおはぎ持ってきちゃったんだ」
「食べる」
「大丈夫かい?食べすぎはよくないよ」
「大丈夫だ。甘味物は別腹だから」
「別腹すぎるでしょう」
海燕が、呆れた声を出す。
あれだけ食べたのに、更に食べようとは、ちょっと食い意地がはっていないか。
「お茶、いれてきます・・・・・」
止めても無駄だろうから、この前京楽にもらった玉露のお茶を3人分もってきた。
茶をすすっていると、浮竹が言葉を出す。
「なんか、京楽と海燕って、嫁と姑みたいだな」
ぶばーー!
海燕は、茶を吹き零した。
「な、何言ってるんですか」
「嫁は僕かな?」
「そうそう。それで口をすっぱくする海燕が姑」
「俺は、別に」
「顔に書いてあるぞ。京楽めって」
確かに、京楽が来ることにあまり喜びはしない。むしろ、また隊長の病状を悪化させたりしないだろうかと、心配にはなる。
「まぁ、でも、僕は別に海燕君を姑のようにはみてないから。そうだね、浮竹の世話をやく好々爺ってかんじかな」
「どんだけ老けてるんですか俺は」
「まぁまぁ、二人ともその辺にしとけ」
浮竹が、二人の間を取り持つ。
「浮竹隊長は京楽隊長に甘すぎます」
「そういう浮竹は、海燕君の前で素を出し過ぎじゃないかな」
「ああ、もう」
浮竹は頭を抱えこんで、二人の口におはぎを詰め込んだ。
「むぐっ」
「むっ」
「イライラしている時は甘いものでも食って、疲れを癒せ」
そういう問題ではないのだが。
でも、浮竹の楽しそうな様子を見ていると、どうでもよくなってきた。
京楽が浮竹のことをとても大切にしているのは知っているし、海燕の存在を蔑ろにすることもない。
京楽隊長というのは、浮竹隊長よりよくできた人だと思った。
こんな、子供みたいな浮竹隊長と長く付き合うことができるのだから、そうなるのも自然かもしれないが。
「ああ、太陽が眩しい」
そう言って、窓のカーテンを閉めた。
浮竹は、太陽のような人だ。陽だまりで、暖かくて。それに、京楽が吸い寄せられて、結局海燕も吸い寄せられる。
「睦みあうのはいいですが、ほどほどにしてくださいね。雨乾堂の前を通ると、声が聞こえる時があります」
浮竹と京楽が同時に赤くなった。
「すまない・・・・」
「ごめん・・・・」
「まぁ、うちの隊の全員が二人の関係知ってるので、特に何かを言い出す人はいませんが、他の隊長が訪れてきた時とかやばそうですから」
海燕のさりげない一撃は、二人に大いに効いた。
それからしばらくの間は、浮竹と京楽は体を重ね合わせてもなるべく声を出さないようにしていた。でも、物足りないのですぐに甘い声を浮竹はあげるようになる。
雨乾堂の前にきて、ああ、その最中かと分かって、引き返す。
京楽隊長のことは、嫌いではないが、好きになれそうもなかった。
何度言っても、微熱がある程度なら抱いてしまうのだ。浮竹を。
それを快く思っていない自分に気づいて、苦笑した。
「また、今度おはぎでももっていくか・・・・・・・」
今度は、京楽の分も含めて。
そう思う海燕であった。
PR
- トラックバックURLはこちら