血と聖水と名において3
浮竹と京楽は、ウィキティの町の外れにある、大きな洋館に住んでいた。
必要最低限の部屋しか使わず、月に一度メイドさんを雇って大掃除をしてもらっていた。
「にゃんにゃん」
フェンリルが、猫の声を出してチュールをねだる。
浮竹は仕方ないので、チュールをあげた。
「もっとくれにゃん」
フェンリルの知能は高い。人の言葉を解すなど、造作もないことであった。
浮竹が、初めに契約した使役魔であった。
同じヴァンパイアハンターは、使役魔といってもせいぜい烏、鷹とかフクロウ、ネズミといった鳥か小型動物しか使役魔にできない。
精霊を使役できるのは、浮竹だけだった。
冒険者としてのほうが向いているのだろうが、ヴァンパイアハンターを続けていた。京楽の存在もあるし、ヴァンパイアが人に害をなすのは嫌いだった。
偉大なるヴァンパイアたちの父でもあるヴァンパイアマスターと、当時聖女であった女性との間に生まれたのが浮竹であった。
一方、京楽は孤児で、生きていくためにヴァンパイアハンターの道を選び、神父はついでだからなった。こんな色欲魔人の神父がいてたまるか、が浮竹の口癖でもあった。
「はぁ。腰が痛い。京楽のやつ、手加減せず抱きやがって」
痛む腰をおさえつつ、フェンリルを中庭に出して遊ばせる。
ボールを放り投げると、しっぽをぶんぶんふってとってくる。いつもは子犬サイズだが、本当は
3メートルがあるであろう体躯をもつ。
たまに移動手段としても使われた。
「京楽はどうしたにゃ?」
「買い物に行かせた。俺はしっぽりのせいであまり動けないからな」
「しっぽりかにゃん。京楽は年中発情期何だにゃん」
「ああ、その通りだな」
「ただいまー」
「ちっ、戻ってきた]
[ちょ、酷くない?」
「お前がしっぽりしすぎるから、今日は仕事は休みだ」
京楽は、悪びれもせずに、浮竹に口づける。
「回復魔法かけたでしょ?」
「それでも痛いんだ!」
「ありゃ」
京楽は昨日のことを重い出して、ふにゃふにゃした顔になっていた。
「次の仕事の目星をつけたい。ハンターギルドに行って、何か退治依頼を引き受けてきてくれ。今回は、俺のA級にランクが上がるのがかかっているんだ。倒せそうだけど、強すぎないやつを見つけてこい」
「わがままだねぇ」
「俺だって、自分でギルドに行って選びたい。だが、誰かのせいで腰が痛いし、治癒魔法は効かないし、最悪だ」
「まぁまぁ。今、お茶入れるから。お茶したら、ギルドでめぼしい退治依頼引き受けてくるよ」
京楽の入れるお茶と、作る菓子は絶品だった。
今日の茶菓子はアップルパイだった。
「早く、行って来い」
「でも、この間の浮竹にそっくりなドラゴンサモナーの存在も気になるねぇ」
「どうでもいい。似ているからたまに間違われるのが嫌だ」
浮竹は、ペロリとアップルパイを京楽の分まで食べてしまった。
「後のことは任せたぞ」
「うん」
浮竹は、具合も悪かったので寝室のベッドで横になって眠る。
「マスター、ねちゃったかにゃん?」
「ああ、フェンリルか。もう、おかわりのチュールはないぞ。ああ、京楽に買いに行かせたものの中にあったかな」
「ちゅーる食べるにゃん!もってくるから、あけてほしいにゃん」
フェンリルは、京楽が買い物してきた荷物の中から器用にチュールを出すと、浮竹の元に走る。
「ちゅーる、あけてにゃん」
「すまん、ちょっと血をくれ」
「仕方ないにゃんね?マスターは精霊の血を摂取しないと、精霊を扱えないからにゃん」
ごく少量だけ、フェンリルから血を分けてもらい、浮竹はフェンリルに、いつもは1日1個だけの約束のチュールをお礼に2個あげた。
「おや、モンスターが暴れているみたいだね。まぁ、放置しても冒険者もいっぱいいる町だし、悪目立ちするのは避けたいしね」
京楽は、魔法で翼を出して空を飛んでギルドまでやってくる。
「浮竹はどうした?A級昇格のテストになるんだぞ」
ギルドマスターが、京楽を見る。
「ちょっといろいろあってね。ボクが代役で、仕留めるヴァンパイアを選びにきたの」
「夜叉の京楽が選ぶのか。この前はヴァンピール退治で、ハンターとして復活したというのは本当だったんだな」
「まぁ、ぼちぼちね。今は浮竹のサポート役さ」
ギルドマスターは、うんうんと首を縦に振る。
「浮竹は、精霊を使役できる貴重なハンターだからな。慎重に選べよ」
「この、鮮血のカスタトロフというのにするよ」
「鮮血のか。もうハンターを4人も殺している」
「ボクもサポートするから大丈夫。じゃあ、これ退治するってことで、クエスト引き受けるね」
「ああ、ピンチになったら逃げろよ・・・・おっと、夜叉の京楽も一緒にいくんだな。それなら安心か」
「ボクは、あくまでもサポート役だからね。倒すのは、浮竹さ」
京楽は、鮮血のカスタトロフを選んで帰ってきた。
「鮮血か。まあ、倒せなくもないだろう」
数日が経ち、浮竹は京楽と巨大化したフェンリルの背に乗って、鮮血のカスタトロフのいる古城にやってきた。
「くくくく、今宵も愚かなヴァンパイアハンターが二人も。血をすすって、殺してやろう」
浮竹は、マントの下から銀の短剣を引き抜くと、カスタトロフに投げる。
「くくく、私に銀はそうそう効かない」
「く、特異体質か。ならば・・・・出でよ、ジルフェ!」
「あーなんだー。かったりぃ」
「いいから、あいつを攻撃しろ」
「後で、フルーツジュース10人前な」
ジルフェは風の上位精霊だ。
「ウィドカッター」
「ぐおおおおお」
ジルフェに前足を風の魔法で切り飛ばされて、鮮血のカスタトロフは地面に膝をつく。
「この俺が、ヴァンパイアハンターごときに!」
「その調子だよ、浮竹」
京楽は、離れたところで見守っていた。
「ダークフェニックス!あのヴァンパイアを、闇の炎で燃やし尽くせ!」
ただのフェニックスだと、周りの建物にも被害が及ぶので、ダークフェニックスを召喚して使役する。
「ぎいやあああああああ」
鮮血のカスタトロフは、悲鳴を残して灰となった。
その灰をカプセルに入れて、帰り路もフェンリルにのって、ウィキティの町にあるヴァンパイアハンターギルドに行き、灰の入ったカプセルを提出する。
「京楽の手助けは?」
「受けていない」
「うむ、嘘は言っていないようだな。水銀の浮竹、お前をA級ヴァンパイアハンターとする!」
「やった!!」
「よかったね、浮竹。お祝いに、帰ったらしっぽりしようね?」
「アホか。誰がするか。A級になったら、報酬金もあがるし、Aランクのクエストの退治依頼を引き受けれる。ばりばりやっつけるぞ」
「くすん。しっぽりしたいよう」
そんな京楽を足で蹴って、浮竹は京楽を放置して自宅に帰る。
「お前、尻にしかれまくりだな。何で、浮竹の花嫁になったんだ?」
ギルドマスターに声をかけられる。
「だって、10年前になるけど、一目ぼれだったんだよ。ボクがヴァンパイアだったら、浮竹を花嫁にしてたけど、ボクは人間だったから。浮竹に頼んで、花嫁にしてもらって契りあい、契約を交わしたのさ」
「まぁ、最近ヴァンパイアどもの活動が活発になってきているからな。S級の京楽、お前が復帰してくれたことは、大きなプラスになる」
「まぁ、半分隠居だけどね」
「そう言わず、どんどん倒してくれ。まだ、あの洋館の金、払いきれていないんだろう?」
浮竹と京楽の住む大きな洋館は、元々浮竹の父のもので、いなくなって競売にかけられて、浮竹が競り落としたのだ。
その頃はすでに母は他界していたし、父もいなくなったが、成人していたので屋敷を競り落とすことができた。
思い出のいっぱいつまった洋館を手放すことはしたくなかった。
値段が値段だけに、今でもちまちまと返済をしていた。
「A級になったし、稼ぎまくって、負債を取り消しにするぞー」
「そうだのだにゃー」
「あれ、京楽は?」
「置いて毛ぼりくらって、ギルドで隅っこでいじけいたにゃ」
「まぁ、腹がすいたらそのうち帰ってくるだろう。フェンリル、今後もよろしくな」
「任せてなのにゃ。マスターの初めての使役精霊として、ビシバシ働くから、チュールは1日2本にしてほしいにゃ「
「仕方ないやつだなぁ」
浮竹は、フェンリルをもふりまくるのであった。
ちなみに、京楽は帰ってきていたが、存在に気付いてもらえなかったそうな。
必要最低限の部屋しか使わず、月に一度メイドさんを雇って大掃除をしてもらっていた。
「にゃんにゃん」
フェンリルが、猫の声を出してチュールをねだる。
浮竹は仕方ないので、チュールをあげた。
「もっとくれにゃん」
フェンリルの知能は高い。人の言葉を解すなど、造作もないことであった。
浮竹が、初めに契約した使役魔であった。
同じヴァンパイアハンターは、使役魔といってもせいぜい烏、鷹とかフクロウ、ネズミといった鳥か小型動物しか使役魔にできない。
精霊を使役できるのは、浮竹だけだった。
冒険者としてのほうが向いているのだろうが、ヴァンパイアハンターを続けていた。京楽の存在もあるし、ヴァンパイアが人に害をなすのは嫌いだった。
偉大なるヴァンパイアたちの父でもあるヴァンパイアマスターと、当時聖女であった女性との間に生まれたのが浮竹であった。
一方、京楽は孤児で、生きていくためにヴァンパイアハンターの道を選び、神父はついでだからなった。こんな色欲魔人の神父がいてたまるか、が浮竹の口癖でもあった。
「はぁ。腰が痛い。京楽のやつ、手加減せず抱きやがって」
痛む腰をおさえつつ、フェンリルを中庭に出して遊ばせる。
ボールを放り投げると、しっぽをぶんぶんふってとってくる。いつもは子犬サイズだが、本当は
3メートルがあるであろう体躯をもつ。
たまに移動手段としても使われた。
「京楽はどうしたにゃ?」
「買い物に行かせた。俺はしっぽりのせいであまり動けないからな」
「しっぽりかにゃん。京楽は年中発情期何だにゃん」
「ああ、その通りだな」
「ただいまー」
「ちっ、戻ってきた]
[ちょ、酷くない?」
「お前がしっぽりしすぎるから、今日は仕事は休みだ」
京楽は、悪びれもせずに、浮竹に口づける。
「回復魔法かけたでしょ?」
「それでも痛いんだ!」
「ありゃ」
京楽は昨日のことを重い出して、ふにゃふにゃした顔になっていた。
「次の仕事の目星をつけたい。ハンターギルドに行って、何か退治依頼を引き受けてきてくれ。今回は、俺のA級にランクが上がるのがかかっているんだ。倒せそうだけど、強すぎないやつを見つけてこい」
「わがままだねぇ」
「俺だって、自分でギルドに行って選びたい。だが、誰かのせいで腰が痛いし、治癒魔法は効かないし、最悪だ」
「まぁまぁ。今、お茶入れるから。お茶したら、ギルドでめぼしい退治依頼引き受けてくるよ」
京楽の入れるお茶と、作る菓子は絶品だった。
今日の茶菓子はアップルパイだった。
「早く、行って来い」
「でも、この間の浮竹にそっくりなドラゴンサモナーの存在も気になるねぇ」
「どうでもいい。似ているからたまに間違われるのが嫌だ」
浮竹は、ペロリとアップルパイを京楽の分まで食べてしまった。
「後のことは任せたぞ」
「うん」
浮竹は、具合も悪かったので寝室のベッドで横になって眠る。
「マスター、ねちゃったかにゃん?」
「ああ、フェンリルか。もう、おかわりのチュールはないぞ。ああ、京楽に買いに行かせたものの中にあったかな」
「ちゅーる食べるにゃん!もってくるから、あけてほしいにゃん」
フェンリルは、京楽が買い物してきた荷物の中から器用にチュールを出すと、浮竹の元に走る。
「ちゅーる、あけてにゃん」
「すまん、ちょっと血をくれ」
「仕方ないにゃんね?マスターは精霊の血を摂取しないと、精霊を扱えないからにゃん」
ごく少量だけ、フェンリルから血を分けてもらい、浮竹はフェンリルに、いつもは1日1個だけの約束のチュールをお礼に2個あげた。
「おや、モンスターが暴れているみたいだね。まぁ、放置しても冒険者もいっぱいいる町だし、悪目立ちするのは避けたいしね」
京楽は、魔法で翼を出して空を飛んでギルドまでやってくる。
「浮竹はどうした?A級昇格のテストになるんだぞ」
ギルドマスターが、京楽を見る。
「ちょっといろいろあってね。ボクが代役で、仕留めるヴァンパイアを選びにきたの」
「夜叉の京楽が選ぶのか。この前はヴァンピール退治で、ハンターとして復活したというのは本当だったんだな」
「まぁ、ぼちぼちね。今は浮竹のサポート役さ」
ギルドマスターは、うんうんと首を縦に振る。
「浮竹は、精霊を使役できる貴重なハンターだからな。慎重に選べよ」
「この、鮮血のカスタトロフというのにするよ」
「鮮血のか。もうハンターを4人も殺している」
「ボクもサポートするから大丈夫。じゃあ、これ退治するってことで、クエスト引き受けるね」
「ああ、ピンチになったら逃げろよ・・・・おっと、夜叉の京楽も一緒にいくんだな。それなら安心か」
「ボクは、あくまでもサポート役だからね。倒すのは、浮竹さ」
京楽は、鮮血のカスタトロフを選んで帰ってきた。
「鮮血か。まあ、倒せなくもないだろう」
数日が経ち、浮竹は京楽と巨大化したフェンリルの背に乗って、鮮血のカスタトロフのいる古城にやってきた。
「くくくく、今宵も愚かなヴァンパイアハンターが二人も。血をすすって、殺してやろう」
浮竹は、マントの下から銀の短剣を引き抜くと、カスタトロフに投げる。
「くくく、私に銀はそうそう効かない」
「く、特異体質か。ならば・・・・出でよ、ジルフェ!」
「あーなんだー。かったりぃ」
「いいから、あいつを攻撃しろ」
「後で、フルーツジュース10人前な」
ジルフェは風の上位精霊だ。
「ウィドカッター」
「ぐおおおおお」
ジルフェに前足を風の魔法で切り飛ばされて、鮮血のカスタトロフは地面に膝をつく。
「この俺が、ヴァンパイアハンターごときに!」
「その調子だよ、浮竹」
京楽は、離れたところで見守っていた。
「ダークフェニックス!あのヴァンパイアを、闇の炎で燃やし尽くせ!」
ただのフェニックスだと、周りの建物にも被害が及ぶので、ダークフェニックスを召喚して使役する。
「ぎいやあああああああ」
鮮血のカスタトロフは、悲鳴を残して灰となった。
その灰をカプセルに入れて、帰り路もフェンリルにのって、ウィキティの町にあるヴァンパイアハンターギルドに行き、灰の入ったカプセルを提出する。
「京楽の手助けは?」
「受けていない」
「うむ、嘘は言っていないようだな。水銀の浮竹、お前をA級ヴァンパイアハンターとする!」
「やった!!」
「よかったね、浮竹。お祝いに、帰ったらしっぽりしようね?」
「アホか。誰がするか。A級になったら、報酬金もあがるし、Aランクのクエストの退治依頼を引き受けれる。ばりばりやっつけるぞ」
「くすん。しっぽりしたいよう」
そんな京楽を足で蹴って、浮竹は京楽を放置して自宅に帰る。
「お前、尻にしかれまくりだな。何で、浮竹の花嫁になったんだ?」
ギルドマスターに声をかけられる。
「だって、10年前になるけど、一目ぼれだったんだよ。ボクがヴァンパイアだったら、浮竹を花嫁にしてたけど、ボクは人間だったから。浮竹に頼んで、花嫁にしてもらって契りあい、契約を交わしたのさ」
「まぁ、最近ヴァンパイアどもの活動が活発になってきているからな。S級の京楽、お前が復帰してくれたことは、大きなプラスになる」
「まぁ、半分隠居だけどね」
「そう言わず、どんどん倒してくれ。まだ、あの洋館の金、払いきれていないんだろう?」
浮竹と京楽の住む大きな洋館は、元々浮竹の父のもので、いなくなって競売にかけられて、浮竹が競り落としたのだ。
その頃はすでに母は他界していたし、父もいなくなったが、成人していたので屋敷を競り落とすことができた。
思い出のいっぱいつまった洋館を手放すことはしたくなかった。
値段が値段だけに、今でもちまちまと返済をしていた。
「A級になったし、稼ぎまくって、負債を取り消しにするぞー」
「そうだのだにゃー」
「あれ、京楽は?」
「置いて毛ぼりくらって、ギルドで隅っこでいじけいたにゃ」
「まぁ、腹がすいたらそのうち帰ってくるだろう。フェンリル、今後もよろしくな」
「任せてなのにゃ。マスターの初めての使役精霊として、ビシバシ働くから、チュールは1日2本にしてほしいにゃ「
「仕方ないやつだなぁ」
浮竹は、フェンリルをもふりまくるのであった。
ちなみに、京楽は帰ってきていたが、存在に気付いてもらえなかったそうな。
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