翡翠Ⅱ(IF
「あった・・・・」
遺品を整理していると、かつて大切にしていた翡翠のお守り石をみつけた。
京楽がもっているかもしれないと聞いてみたのだが、君を思い出して辛いから遺品の中にそのままにしておいてあると言われて、探していたのだ。
屋敷が数件建つ値段の翡翠は、時を経ても変わらぬ煌めきをもっていた。
遺品の中には、京楽とのたくさんの思い出がつまっていた。翡翠の簪、螺鈿細工の櫛、共に酒を飲みあうときに使っていた杯。
「こんなものまであるのか」
京楽にあげた、手作りの栞・・・・。
遺品自体、京楽の屋敷で大切に保管されていた。
京楽は、浮竹を失っても記憶がいろあせないように、いろいろと残してくれているらしかったが、翡翠の石はもっているのがつらいのか、遺品の中にあった。
ペンダントになっていて、チェーンを外せばただのお守り石になる。それを首にかけて、京楽の元にいくと、京楽は驚いていた。
「その翡翠・・・・・」
「そう、かつてお前がくれたものだ」
「そうか。遺品の中から見つけたんだね」
「ああ」
「その石は・・・・持っているとあまりに辛くて、君との思い出がつまった大切なものなのに置き去るようにしていたよ・・・・ごめんね」
「謝るのは俺のほうだ。お前を一人にして・・・辛い目に合わせてしまった、すまない」
でも、今は互いに傍に在る。
この前、紅瑠璃をあしらった、浮竹が作ったペンダントを京楽にあげた。拙い作りであったが、京楽は喜んでくれて今でも身に着けている。お返しにと、蒼瑠璃があしらわれた金細工の髪飾りをもらった。普段はつけることはないけれど、いつも懐に大切にもっていた。
この翡翠も、また大切にしよう。
京楽が翡翠を手に取って、浮竹の首につけてくれた。
「懐かしいねぇ。一度喧嘩して、池に放り投げられたっけ」
「あの時は本当にすまなかった」
「君は、見つかるまで池から出ないといって、冬の中水に入って。結局は一緒に探してくれた清音ちゃんがみつけてくれたんだっけ」
「ああ」
「次の日には、やっぱり高熱をだして倒れたね」
「自業自得だった」
「すごく心配したんだよ」
「知っている」
「懐かしいなぁ。20年近くも前のことなのに、昨日のことのように思い出すよ」
色あせない記憶がそこにある。
「この翡翠、お気に入りだったんだ。俺と同じ瞳の色をしている」
「だから、君にあげたんだよ」
そう耳元で囁かれて、浮竹は瞳を伏せた。長い睫毛が、頬に影を作り出す。
「もう、離れ離れにはなりたくない」
「何があっても、君を離さないよ」
腕の中の浮竹の、花の香にくらりときた。
「このまま、君を食べてしまってもいいかい?」
最近、浮竹の花の香がきつくなっている気がしたが、気のせいだろうか。
蜜蜂がむらがるように、京楽は浮竹を求める。
「好きにしろ・・・・・」
「花の香がするね・・・・・・」
浮竹は、自分から花の香がするのを昔から知っていた。なんでも、赤子の頃に花の神に捧げられて愛されたらしい。
花の神というのは、図書館で調べたか地方の伝統ある神で、別名椿の狂い咲きの王と呼ばれる。
浮竹と京楽は、もつれあいながらベッドに倒れた。
ふと、腕の中の浮竹の姿がぶれて、目をこする。
花の神は目覚める。
「愛児を、返せ-----------」
椿の狂い咲きの王は、ゆっくりと愛児の名を呼ぶ。
「京楽、呼んだか?」
「いいや?どうしたの」
「誰かに、名を呼ばれた気がしたが・・・・気のせいみたいだ」
花に狂った人の子よ。花天狂骨を持つ者よ。
お前に、愛児を愛する資格はあるか-------------?
遺品を整理していると、かつて大切にしていた翡翠のお守り石をみつけた。
京楽がもっているかもしれないと聞いてみたのだが、君を思い出して辛いから遺品の中にそのままにしておいてあると言われて、探していたのだ。
屋敷が数件建つ値段の翡翠は、時を経ても変わらぬ煌めきをもっていた。
遺品の中には、京楽とのたくさんの思い出がつまっていた。翡翠の簪、螺鈿細工の櫛、共に酒を飲みあうときに使っていた杯。
「こんなものまであるのか」
京楽にあげた、手作りの栞・・・・。
遺品自体、京楽の屋敷で大切に保管されていた。
京楽は、浮竹を失っても記憶がいろあせないように、いろいろと残してくれているらしかったが、翡翠の石はもっているのがつらいのか、遺品の中にあった。
ペンダントになっていて、チェーンを外せばただのお守り石になる。それを首にかけて、京楽の元にいくと、京楽は驚いていた。
「その翡翠・・・・・」
「そう、かつてお前がくれたものだ」
「そうか。遺品の中から見つけたんだね」
「ああ」
「その石は・・・・持っているとあまりに辛くて、君との思い出がつまった大切なものなのに置き去るようにしていたよ・・・・ごめんね」
「謝るのは俺のほうだ。お前を一人にして・・・辛い目に合わせてしまった、すまない」
でも、今は互いに傍に在る。
この前、紅瑠璃をあしらった、浮竹が作ったペンダントを京楽にあげた。拙い作りであったが、京楽は喜んでくれて今でも身に着けている。お返しにと、蒼瑠璃があしらわれた金細工の髪飾りをもらった。普段はつけることはないけれど、いつも懐に大切にもっていた。
この翡翠も、また大切にしよう。
京楽が翡翠を手に取って、浮竹の首につけてくれた。
「懐かしいねぇ。一度喧嘩して、池に放り投げられたっけ」
「あの時は本当にすまなかった」
「君は、見つかるまで池から出ないといって、冬の中水に入って。結局は一緒に探してくれた清音ちゃんがみつけてくれたんだっけ」
「ああ」
「次の日には、やっぱり高熱をだして倒れたね」
「自業自得だった」
「すごく心配したんだよ」
「知っている」
「懐かしいなぁ。20年近くも前のことなのに、昨日のことのように思い出すよ」
色あせない記憶がそこにある。
「この翡翠、お気に入りだったんだ。俺と同じ瞳の色をしている」
「だから、君にあげたんだよ」
そう耳元で囁かれて、浮竹は瞳を伏せた。長い睫毛が、頬に影を作り出す。
「もう、離れ離れにはなりたくない」
「何があっても、君を離さないよ」
腕の中の浮竹の、花の香にくらりときた。
「このまま、君を食べてしまってもいいかい?」
最近、浮竹の花の香がきつくなっている気がしたが、気のせいだろうか。
蜜蜂がむらがるように、京楽は浮竹を求める。
「好きにしろ・・・・・」
「花の香がするね・・・・・・」
浮竹は、自分から花の香がするのを昔から知っていた。なんでも、赤子の頃に花の神に捧げられて愛されたらしい。
花の神というのは、図書館で調べたか地方の伝統ある神で、別名椿の狂い咲きの王と呼ばれる。
浮竹と京楽は、もつれあいながらベッドに倒れた。
ふと、腕の中の浮竹の姿がぶれて、目をこする。
花の神は目覚める。
「愛児を、返せ-----------」
椿の狂い咲きの王は、ゆっくりと愛児の名を呼ぶ。
「京楽、呼んだか?」
「いいや?どうしたの」
「誰かに、名を呼ばれた気がしたが・・・・気のせいみたいだ」
花に狂った人の子よ。花天狂骨を持つ者よ。
お前に、愛児を愛する資格はあるか-------------?
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