翡翠に溶ける あの時の姿で
秋になった。
芸術の秋。
学院では、選択形式で美術の授業があった。美術の他は、書道、茶道、華道。
浮竹は美術を選択した。自然と、京楽も美術を選択する。
肌も露わば女性のスケッチだった。
顔を朱くしながらも、スケッチしていく。
「もう少し脱いでくれないかな」
「こら、京楽!」
「だって女性はそこにいるだけで華だよ。もっと煽情的なポーズのほうが描きやすい」
「ばかいってないで、デッサン続けるぞ」
その日の美術の授業が終了する。
「ぶっ、何それ」
京楽が、浮竹のデッサンを見て笑った。
「微笑む女性------------そう名付けた」
まるで、ピカソの絵のようだった。
京楽の絵を見ると、綺麗になデッサンの絵があった。
「う・・・お前、絵まで上手いとか反則だ」
美術に雇われた臨時教師が、浮竹の絵を見た。
「ほほう、これは素晴らしい。シュール中に微笑む女性がいる。浮竹君といったかね・・・絵で食べていくことはしないのかね?」
「え、あいえ、死神希望なので・・・・・・」
「勿体ない。たまに絵を描きなさい。素晴らしい腕だ」
褒められて、浮竹もまんざらではなさそうだった。
「僕のは?」
「京楽君の絵か・・・うまいが、それだけだね。光るものがない」
そう言われて、京楽はがっくりとなった。
「やっぱり、分かる人には俺の絵は分かるんだ」
「君の絵、子供の悪戯描きのようじゃない。どこがいいんだかさっぱり分からない」
「ふ、俺の芸術は奥が深いんだ」
その日から、時折暇を見つけては浮竹は絵を描いた。何かにのめりこむのはいいことなので、京楽もつられて同じ題材の絵を描いた。
それが、山じいの目に留まった。
山じいを描いたのだが、まるで写真のようだと褒められた。
「春水の絵は、文句なしに上手いのう。十四郎の絵は、少し独特じゃな」
「元柳斎先生、これは絵なのです。上手ければいいというのじゃありません」
「ふうむ。そう言われると、十四郎の絵は深くて芸術とういかんじがするのう」
「そうでしょう、先生!」
「いや、下手なだけでしょ」
「なんだと!」
「いやごめん、ほんとのこと言ちゃった」
怒ってぽかぽか殴ってくる浮竹はかわいかった。
「ごめん、ごめんってば」
「十四郎も、春水と打ち解けたようで何よりじゃ」
「先生、京楽のやつ意地悪ばかりしてくるんです!」
「いやー、そんなことないよ。愛だよ、愛」
「先生、いつか俺は京楽に美味しくいただかれてしまいます」
「美味しく味わうよ~。時間かけてたっぷり味わうから」
「この京楽が!」
「やったな、浮竹!」
山じいの理事室で、ものを投げ合う二人。
「春水、十四郎、そこまでじゃ!」
山じいの恫喝に、動きが止まった。
「仲がよいのはよい。だが、それで道を見誤らぬように」
「はい」
「勿論だよ」
そのまま、寮の自室に戻った。
「ねぇ。君の絵を描きたいから、モデルになってくれない?」
そう京楽に言われて、アルバイト代を出すならいいと答えていた。
「じゃあ、これくらいでどう?」
その提示された金額に驚いて、引き受けてしまった。
「じゃあ、この服着てちょっと肩を露出させてね。エロ本を始めて見た時のような、恥じらいの表情がほしいな。髪は軽く結って・・・よし、これでいい」
「おい、京楽、この格好・・・・・」
「あ、気づいた?君が遊女の時にしてた恰好に近いものを選んだんだよ。何せ、今思えばあれが初恋だったのかもしれない」
遊女の恰好ではあるが、自分でいうのもなんだが、随分と煽情的な恰好になっていた。
「恥じらないの表情、忘れないで」
どうすればよく分からなかったが、ちょっと照れたように笑ってみた。
「いいね、いいね。ああ、いい絵が描けそうだ」
シャッシャッと鉛筆でデッサンを描いて、陰影をつけていく。
ただ姿と留めるだけなら写真があるが、あえて手描きで、浮竹との出会いを思い出すように絵を描いていく。
「できた」
2時間ほどで、絵は完成した。鉛筆によるデッサン絵だったので、それほど時間はかからなかった。
「ねぇ。お小遣い余計にあげるから、今日1日その恰好でいてくれないかな」
遊女の恰好は、昔から売られかけるたびにさせられていたので、抵抗はなかった。
「別にいいが、露出はしないぞ」
「うん、いいよ」
遊女の恰好のまま、生足が太腿まで露わになるのも気にせず、ベッドに横になる浮竹に、京楽はごくりと唾を飲みこんだ。
「好きだよ・・・・・」
「知ってる」
「大好きだよ・・・・・」
白い足を手が這う。
「やっ」
女ではない。そう分かっていても、止まらなかった。
「ああっ!」
太腿から這い上がった手が、敏感な場所を刺激する。
「や、やめろ!」
浮竹の白い足が、京楽の顔を蹴った。
「おぷ・・・ぐはっ」
京楽は、鼻血を出して気絶した。
「危なかった・・・・」
パンツは死守した。
本当に、俺が欲しいんだ。
そう思うと、顔から火が噴きそうだった。
今後、同じ寮の同じ室内ということが、吉と出るか凶と出るかわからなかった。
今の浮竹には、まだ京楽を受け入れる覚悟はなかった。
「あれ?僕どうしたの」
「俺に襲い掛かってきた」
「え、あ・・・・・・・」
思い出した。
白い足があまりに艶めかしいので、手を這わせて下着に手をかけようとして、顔を蹴られた。
そして、撃沈した。
「ごめん、僕が悪かった!」
「もう、気にしてない」
寝る前だったので、浮竹は遊女の姿からパジャマに着替えていた。
「ねぇ。あの恰好、またしてくれていったら、着てくれる?」
「報酬しだいなら」
浮竹は貧乏だ。薬代のせいで、仕送りは消えてしまう。食費もぎりりで、いつも安いものばかりを食べていたのだが、最近は京楽が資金援助してくれるので、助かっていた。
それでも、個人的に本などの欲しいは出てくる。
それまで京楽に買わせるわけにもいかなくて、我慢していた。
今回、モデルとなったのと、遊女の恰好でいたこと対する報酬で、節約すれば半年は買い物に困りそうにないと思った。
京楽春水。女好きで、廓によく通う上流貴族。
浮竹は知らない。廓で買う女が、どこか浮竹に似ていることを。京楽が、浮竹の代わりに女を抱いていることを。けれど、それを最近ぱったりやめてしまったことを。
芸術の秋。
学院では、選択形式で美術の授業があった。美術の他は、書道、茶道、華道。
浮竹は美術を選択した。自然と、京楽も美術を選択する。
肌も露わば女性のスケッチだった。
顔を朱くしながらも、スケッチしていく。
「もう少し脱いでくれないかな」
「こら、京楽!」
「だって女性はそこにいるだけで華だよ。もっと煽情的なポーズのほうが描きやすい」
「ばかいってないで、デッサン続けるぞ」
その日の美術の授業が終了する。
「ぶっ、何それ」
京楽が、浮竹のデッサンを見て笑った。
「微笑む女性------------そう名付けた」
まるで、ピカソの絵のようだった。
京楽の絵を見ると、綺麗になデッサンの絵があった。
「う・・・お前、絵まで上手いとか反則だ」
美術に雇われた臨時教師が、浮竹の絵を見た。
「ほほう、これは素晴らしい。シュール中に微笑む女性がいる。浮竹君といったかね・・・絵で食べていくことはしないのかね?」
「え、あいえ、死神希望なので・・・・・・」
「勿体ない。たまに絵を描きなさい。素晴らしい腕だ」
褒められて、浮竹もまんざらではなさそうだった。
「僕のは?」
「京楽君の絵か・・・うまいが、それだけだね。光るものがない」
そう言われて、京楽はがっくりとなった。
「やっぱり、分かる人には俺の絵は分かるんだ」
「君の絵、子供の悪戯描きのようじゃない。どこがいいんだかさっぱり分からない」
「ふ、俺の芸術は奥が深いんだ」
その日から、時折暇を見つけては浮竹は絵を描いた。何かにのめりこむのはいいことなので、京楽もつられて同じ題材の絵を描いた。
それが、山じいの目に留まった。
山じいを描いたのだが、まるで写真のようだと褒められた。
「春水の絵は、文句なしに上手いのう。十四郎の絵は、少し独特じゃな」
「元柳斎先生、これは絵なのです。上手ければいいというのじゃありません」
「ふうむ。そう言われると、十四郎の絵は深くて芸術とういかんじがするのう」
「そうでしょう、先生!」
「いや、下手なだけでしょ」
「なんだと!」
「いやごめん、ほんとのこと言ちゃった」
怒ってぽかぽか殴ってくる浮竹はかわいかった。
「ごめん、ごめんってば」
「十四郎も、春水と打ち解けたようで何よりじゃ」
「先生、京楽のやつ意地悪ばかりしてくるんです!」
「いやー、そんなことないよ。愛だよ、愛」
「先生、いつか俺は京楽に美味しくいただかれてしまいます」
「美味しく味わうよ~。時間かけてたっぷり味わうから」
「この京楽が!」
「やったな、浮竹!」
山じいの理事室で、ものを投げ合う二人。
「春水、十四郎、そこまでじゃ!」
山じいの恫喝に、動きが止まった。
「仲がよいのはよい。だが、それで道を見誤らぬように」
「はい」
「勿論だよ」
そのまま、寮の自室に戻った。
「ねぇ。君の絵を描きたいから、モデルになってくれない?」
そう京楽に言われて、アルバイト代を出すならいいと答えていた。
「じゃあ、これくらいでどう?」
その提示された金額に驚いて、引き受けてしまった。
「じゃあ、この服着てちょっと肩を露出させてね。エロ本を始めて見た時のような、恥じらいの表情がほしいな。髪は軽く結って・・・よし、これでいい」
「おい、京楽、この格好・・・・・」
「あ、気づいた?君が遊女の時にしてた恰好に近いものを選んだんだよ。何せ、今思えばあれが初恋だったのかもしれない」
遊女の恰好ではあるが、自分でいうのもなんだが、随分と煽情的な恰好になっていた。
「恥じらないの表情、忘れないで」
どうすればよく分からなかったが、ちょっと照れたように笑ってみた。
「いいね、いいね。ああ、いい絵が描けそうだ」
シャッシャッと鉛筆でデッサンを描いて、陰影をつけていく。
ただ姿と留めるだけなら写真があるが、あえて手描きで、浮竹との出会いを思い出すように絵を描いていく。
「できた」
2時間ほどで、絵は完成した。鉛筆によるデッサン絵だったので、それほど時間はかからなかった。
「ねぇ。お小遣い余計にあげるから、今日1日その恰好でいてくれないかな」
遊女の恰好は、昔から売られかけるたびにさせられていたので、抵抗はなかった。
「別にいいが、露出はしないぞ」
「うん、いいよ」
遊女の恰好のまま、生足が太腿まで露わになるのも気にせず、ベッドに横になる浮竹に、京楽はごくりと唾を飲みこんだ。
「好きだよ・・・・・」
「知ってる」
「大好きだよ・・・・・」
白い足を手が這う。
「やっ」
女ではない。そう分かっていても、止まらなかった。
「ああっ!」
太腿から這い上がった手が、敏感な場所を刺激する。
「や、やめろ!」
浮竹の白い足が、京楽の顔を蹴った。
「おぷ・・・ぐはっ」
京楽は、鼻血を出して気絶した。
「危なかった・・・・」
パンツは死守した。
本当に、俺が欲しいんだ。
そう思うと、顔から火が噴きそうだった。
今後、同じ寮の同じ室内ということが、吉と出るか凶と出るかわからなかった。
今の浮竹には、まだ京楽を受け入れる覚悟はなかった。
「あれ?僕どうしたの」
「俺に襲い掛かってきた」
「え、あ・・・・・・・」
思い出した。
白い足があまりに艶めかしいので、手を這わせて下着に手をかけようとして、顔を蹴られた。
そして、撃沈した。
「ごめん、僕が悪かった!」
「もう、気にしてない」
寝る前だったので、浮竹は遊女の姿からパジャマに着替えていた。
「ねぇ。あの恰好、またしてくれていったら、着てくれる?」
「報酬しだいなら」
浮竹は貧乏だ。薬代のせいで、仕送りは消えてしまう。食費もぎりりで、いつも安いものばかりを食べていたのだが、最近は京楽が資金援助してくれるので、助かっていた。
それでも、個人的に本などの欲しいは出てくる。
それまで京楽に買わせるわけにもいかなくて、我慢していた。
今回、モデルとなったのと、遊女の恰好でいたこと対する報酬で、節約すれば半年は買い物に困りそうにないと思った。
京楽春水。女好きで、廓によく通う上流貴族。
浮竹は知らない。廓で買う女が、どこか浮竹に似ていることを。京楽が、浮竹の代わりに女を抱いていることを。けれど、それを最近ぱったりやめてしまったことを。
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