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小説掲載プログ
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鴉の濡れた羽のように

その柔らかく、少し長い黒髪が、鴉の濡れた羽のように美しかった。

俺は、そっと眠っている隊長の桜色の唇に触れる。

「ん・・・恋次・・・・」

びくりとなった。

気づかれたかと思った。

隊長は、スースーと静かな寝息をたてて眠っていた。

今日は睦みあわず、ただ一緒に眠ることにした。

そんな時もある。隊長が乗り気でない時に誘っても、あまり触れさせてもらえずにお預けをくらうことも多々あった。

10年ばかりこの関係を続けてきるが、隊長の心を手に入れたのはつい最近だ。

「恋次?」

隊長が目覚めて、不安げな視線を送ってきた。

「そんな不安そうな目をしなくても、何もしないし傍にいます」

その言葉に安堵するかのように、薄く微笑む隊長。

「私の隣に来い」

空いているスペースを手で叩かれて、素直に隊長の隣で寝た。

「恋次の匂いがする・・・」

抱き着かれて、この人は本当に今日はしないつもりなのかと疑問に思う。

自分に対して劣情を抱いている相手に、気を許しすぎだし無防備だ。

「隊長、キスでしてもいいですか」

「キスだけなら」

いつも、キスから始まった。

それ以上のことは考えず、隊長の桜色の唇を奪う。

「ふあっ・・・・・」

声だけでいけそうだ。

「もう1回・・・・・・・」

「んあっ」

隊長はキスが好きだ。舌が絡み合うような深いやつが。

そっと舌を引き抜くと、銀の糸が引いた。

「隊長、好きです」

そういって抱きしめると、背中に隊長の手が回ってきた。

「今の私には、もう貴様だけなのだ・・・・」

愛しい義妹であるルキアは、一護の元へ行ってしまった。

ルキアに対して何も思っていないのかと聞かれると、多分好きだったんだろう。幼馴染で、子供の頃はルキアに憧れた。

ルキアを養子に迎えてきた隊長の姿を一目みて、恋に落ちた。

いずれ護廷13隊の死神になるのなら、あの人の下がいいと思った。

初めは違う隊に所属されたが、やがて6番隊の副隊長に任命されて喜んだ。

でも、隊長はとても冷たい人で。

でも、冷たく見せかけているだけなのだと気づいた。

俺が、冬に肩に毛布をかけてやると、「すまぬ」と言って微笑んだ。

茶をいれると「ご苦労」とって目を細めた。

隊長。

俺はあんたに出会って変わった。確かにルキアを処刑しようとしたあんたに牙を向けて、その喉笛を嚙みちぎろうとした。

でも、隊長に己の牙はかろじで届いたくらいで。

その圧倒的な力の差に、絶望を感じたのは確かだ。

誰もいない夜に、あんたが卍解して一人鍛錬をしてるのを知っていた。

あんたは強い。でも、俺ももっと強くなる。

ユーハバッハの侵略で、俺も隊長もどうしようもないくらいの大怪我を負った。零番隊の湯治のお蔭で命を拾い、鍛錬して敵を撃破するくらいに強くなった。

俺は、それでもまた隊長に届かない。

「愛しています・・・・・」

そう言って抱きしめれば、隊長も目を細めてこう言う。

「私も、愛している・・・・」

あんたを口説き落とすのに3年。全てを手にれるのに7年。

そしてあんたの全てを手にれて1年。

10年以上この関係を続けて、つい最近やっと隊長の全てを手に入れた。

「もう、二度と手放さない。あんたを守る。死ぬときは一緒です」

ユーハバッハの侵略によって、死にかけた時のような真似はもうさせない。

どんな敵がきても、俺の蛇尾丸で守ってみせる。

「平和になったのだ。それに、私は貴様に守られるほど弱くはない」

「それでも!」

強くその頭を胸にかき抱くと、隊長は俺の頭を撫でた。

「心配はいらぬ恋次。私は貴様を残していきはせぬ」

「約束ですよ、隊長」

それは、守れるかどうかも分からぬ約束。

それでもずっとあんたの傍にいたい。

あんたを抱いて啼かせてやりたい。

「もう、寝る・・・・・」

隊長の、濡れた鴉の羽のような艶のある黒髪を手ですいた。

柔らかくて、シャンプーのいい匂いがした。

眠りだした隊長の暖かい体温を感じながら、俺もゆっくりと瞼を閉じた。

「おやすみなさい・・・・」

俺の意識も、闇に落ちていくのだった。

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