翡翠に溶ける 新婚旅行・前編
死神になり、1年が経過した。
ある日、浮竹は学院の桜の下に呼び出された。
「どうしたんだ、こんな場所に呼び出したりして」
桜の雨が、今年も綺麗にちらちらと降っていた。
「君に渡したいものがある」
「また髪飾りか簪か何かか?」
よく、院生時代に翡翠の装身具をもらった。
「今日は、これを・・・・」
指輪だった。翡翠があしらわれているが、小ぶりで、指輪の内側にSYUNSUIとローマ字で彫ってあった。
「これは?」
「エンゲージリング。君に、永遠の愛を」
「京楽・・・・・」
涙が零れた。
浮竹の細い長い指に、エンゲージリングが光る。
「僕の分、君がはめてくれないかな」
「喜んで・・・・・」
JYUSHIROUと裏に彫られた、浮竹とお揃いのリングを、京楽の指にはめた。
「僕ら、男同士だから結婚はできないけど、これを結婚だと思って欲しい」
「新婚旅行にでもいくか」
笑ってそう言うと、浮竹は真面目な顔でこう言った。
「浮竹のところにも、土日を入れて4日分の休みを申請して通らせておいた。近場だけど、瀞霊廷内の温泉に、二泊三日の予約をとってある。それが新婚旅行だよ」
「本当に、新婚旅行に行くのか?」
「嫌だった?もっと違う場所が良かった?」
「いや、瀞霊廷の温泉で十分だ。日頃の疲れも癒したいし」
そして、いざ新婚旅行の日がやってきた。
浮竹はがちがちに固まっていた。
「ほら、近場なんだしそんなに硬くならないで。気楽にいこうよ」
「でも、新婚旅行なんだぞ?」
「山じいにも話は通しておいたから。仕事に追われることはないよ」
「お前、先生にまで・・・・・あーー、もう、なるようになれ」
浮竹と京楽は、その温泉にまでやってきた。
「京楽ぼっちゃん、よくぞお越しくださいました。そちらが、伴侶であられる浮竹様ですね?」
「おい、京楽!」
「いいのいいの。この人は、もともと京楽家お抱えの家人だった人だから」
「だからって・・・」
「今更じゃない。僕らが席官入りする時、山じいが僕らは付き合っているけど、波風をたてないようにって広めておいてくれたお陰で、僕らは尸魂界でも公認のカップルだよ」
「そうだったのか・・・・」
がくりと、膝をつく浮竹を見る。
「どうしたの」
「今まで、お前との関係があまりばれないように気を配っていたんだ。徒労だったのかと思って」
「あはは、これからはもっと堂々としてればいいよ」
「そうする」
浮竹は、部屋に荷物を置くと、下着とバスタオルと浴衣と温泉グッズを手に、早速露天風呂に入りにいった。
「もう、せっかちなんだから」
京楽も、一式を手に露天風呂に向かう。
「あー、極楽だ」
長い白髪を結い上げて、露天風呂に入らないよにしながら温泉に浸かる浮竹の姿があった。
「貸し切りだから、髪がお湯に触れてもいいよ」
「いや、マナーは守らないと」
「こっちおいで。髪洗ってあげる」
肩甲骨の下より長くなった髪を、髪飾りをとられて、さらりと背中に白い髪がかかる。
シャワーで、浮竹の髪を濡らしてやりながら、いつも使っている匂いのいいシャンプーで洗ってやった。
「そういえば、京楽も髪が伸びたな?伸ばすのか?」
「うーん、悩んでる」
「じゃあ、お揃いにするために伸ばそう」
「それより、僕の髪も洗って」
京楽のシャンプーは、薬用シャンプーで匂いは控えめだった。
京楽からは、いつも柑橘系の香水の匂いがしていたが、今日はつけてこなかったらしい。
これといった匂いはしない。反対に浮竹は、赤子の頃の花の神に捧げられ、愛されたせい甘い花の香をいつでもさせていた。
体も洗いあう。
お互い裸が見飽きていたので、隠すことはしなかった。
浮竹はまた髪をまとめて、湯船に浸かる。
「僕はもうあがるけど、のぼせないようにね」
「ああ」
10分ほど遅く、浮竹があがってきた。
「ほら」
フルーツ牛乳を手渡されて、服を着た後に腰に手を当てて一気飲みした。
「ぷはぁ、生き返る!」
風呂場で流した汗の、水分補給だった。
「夕飯はカニ鍋だって」
「カニ鍋!食べるの、何年ぶりだろう」
院生時代に数回カニ鍋を、京楽の料理人の手によって食べたことがあるが、死神になってからが食べていなかった。
6回生の頃も食べなかったので、実に2年ぶりだろうか。
「今からわくわくする」
やがて夕飯の時間になり、カニ鍋とカニの天ぷら、刺身が出された。天ぷらは、足の身の部分だけをあげていて、刺身も足の部分だけだった。
カニ鍋も食し、おまけの雑炊まで平らげると、もう流石にお腹いっぱいだった。
「今日は、疲れているだろうから寝ようか」
「いいのか?新婚なんだぞ?初夜は?」
「初夜は、明日のお楽しみだよ」
そ言われて、浮竹は頬を膨らませた。
「お楽しみなんてしてない!」
「またまたぁ。久しぶりに僕に抱かれるものあから、体が疼いてるんでしょ」
図星、だった。
「お前なんて知らない」
浮竹は、早々にしかれていた布団の中に入り、眠ってしまった。
「愛してるよ、浮竹--------------------」
京楽の囁きは、夜の闇に紛れていった。
ある日、浮竹は学院の桜の下に呼び出された。
「どうしたんだ、こんな場所に呼び出したりして」
桜の雨が、今年も綺麗にちらちらと降っていた。
「君に渡したいものがある」
「また髪飾りか簪か何かか?」
よく、院生時代に翡翠の装身具をもらった。
「今日は、これを・・・・」
指輪だった。翡翠があしらわれているが、小ぶりで、指輪の内側にSYUNSUIとローマ字で彫ってあった。
「これは?」
「エンゲージリング。君に、永遠の愛を」
「京楽・・・・・」
涙が零れた。
浮竹の細い長い指に、エンゲージリングが光る。
「僕の分、君がはめてくれないかな」
「喜んで・・・・・」
JYUSHIROUと裏に彫られた、浮竹とお揃いのリングを、京楽の指にはめた。
「僕ら、男同士だから結婚はできないけど、これを結婚だと思って欲しい」
「新婚旅行にでもいくか」
笑ってそう言うと、浮竹は真面目な顔でこう言った。
「浮竹のところにも、土日を入れて4日分の休みを申請して通らせておいた。近場だけど、瀞霊廷内の温泉に、二泊三日の予約をとってある。それが新婚旅行だよ」
「本当に、新婚旅行に行くのか?」
「嫌だった?もっと違う場所が良かった?」
「いや、瀞霊廷の温泉で十分だ。日頃の疲れも癒したいし」
そして、いざ新婚旅行の日がやってきた。
浮竹はがちがちに固まっていた。
「ほら、近場なんだしそんなに硬くならないで。気楽にいこうよ」
「でも、新婚旅行なんだぞ?」
「山じいにも話は通しておいたから。仕事に追われることはないよ」
「お前、先生にまで・・・・・あーー、もう、なるようになれ」
浮竹と京楽は、その温泉にまでやってきた。
「京楽ぼっちゃん、よくぞお越しくださいました。そちらが、伴侶であられる浮竹様ですね?」
「おい、京楽!」
「いいのいいの。この人は、もともと京楽家お抱えの家人だった人だから」
「だからって・・・」
「今更じゃない。僕らが席官入りする時、山じいが僕らは付き合っているけど、波風をたてないようにって広めておいてくれたお陰で、僕らは尸魂界でも公認のカップルだよ」
「そうだったのか・・・・」
がくりと、膝をつく浮竹を見る。
「どうしたの」
「今まで、お前との関係があまりばれないように気を配っていたんだ。徒労だったのかと思って」
「あはは、これからはもっと堂々としてればいいよ」
「そうする」
浮竹は、部屋に荷物を置くと、下着とバスタオルと浴衣と温泉グッズを手に、早速露天風呂に入りにいった。
「もう、せっかちなんだから」
京楽も、一式を手に露天風呂に向かう。
「あー、極楽だ」
長い白髪を結い上げて、露天風呂に入らないよにしながら温泉に浸かる浮竹の姿があった。
「貸し切りだから、髪がお湯に触れてもいいよ」
「いや、マナーは守らないと」
「こっちおいで。髪洗ってあげる」
肩甲骨の下より長くなった髪を、髪飾りをとられて、さらりと背中に白い髪がかかる。
シャワーで、浮竹の髪を濡らしてやりながら、いつも使っている匂いのいいシャンプーで洗ってやった。
「そういえば、京楽も髪が伸びたな?伸ばすのか?」
「うーん、悩んでる」
「じゃあ、お揃いにするために伸ばそう」
「それより、僕の髪も洗って」
京楽のシャンプーは、薬用シャンプーで匂いは控えめだった。
京楽からは、いつも柑橘系の香水の匂いがしていたが、今日はつけてこなかったらしい。
これといった匂いはしない。反対に浮竹は、赤子の頃の花の神に捧げられ、愛されたせい甘い花の香をいつでもさせていた。
体も洗いあう。
お互い裸が見飽きていたので、隠すことはしなかった。
浮竹はまた髪をまとめて、湯船に浸かる。
「僕はもうあがるけど、のぼせないようにね」
「ああ」
10分ほど遅く、浮竹があがってきた。
「ほら」
フルーツ牛乳を手渡されて、服を着た後に腰に手を当てて一気飲みした。
「ぷはぁ、生き返る!」
風呂場で流した汗の、水分補給だった。
「夕飯はカニ鍋だって」
「カニ鍋!食べるの、何年ぶりだろう」
院生時代に数回カニ鍋を、京楽の料理人の手によって食べたことがあるが、死神になってからが食べていなかった。
6回生の頃も食べなかったので、実に2年ぶりだろうか。
「今からわくわくする」
やがて夕飯の時間になり、カニ鍋とカニの天ぷら、刺身が出された。天ぷらは、足の身の部分だけをあげていて、刺身も足の部分だけだった。
カニ鍋も食し、おまけの雑炊まで平らげると、もう流石にお腹いっぱいだった。
「今日は、疲れているだろうから寝ようか」
「いいのか?新婚なんだぞ?初夜は?」
「初夜は、明日のお楽しみだよ」
そ言われて、浮竹は頬を膨らませた。
「お楽しみなんてしてない!」
「またまたぁ。久しぶりに僕に抱かれるものあから、体が疼いてるんでしょ」
図星、だった。
「お前なんて知らない」
浮竹は、早々にしかれていた布団の中に入り、眠ってしまった。
「愛してるよ、浮竹--------------------」
京楽の囁きは、夜の闇に紛れていった。
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