翡翠に溶ける 浮竹の見合い
死神になり、2年が経とうとしていた。
3席であることも堂々とてきたある日、京楽ではなく浮竹の元に、見合い話がもちこまれた。
上流貴族の姫君で、浮竹は断ったのだが、権力を振りかざされて、受けることとなった。
「白銀香と申します」
「白銀・・・・・?」
「兄が、5席ですの。よく浮竹様のことを話すので、気になって見たのですが、一目惚れです。どうか、嫁にもらってください」
「俺は、京楽と結婚してるんです」
エンゲージリングを見せると、香は笑ってこういう。
「京楽様と付き合ったままでかまいません。どうか、嫁に」
「すみません。俺では、あなたを幸せにはできないし、きっと子供も作れない」
「どしててもダメですか」
「ええ」
「では、京楽様の命をいただきます」
「なんだと!」
浮竹が叫んだ。
「白銀家は隠密機動を率いています。秘密裏に、京楽様を屠れます」
「その時は、俺も自害する」
「そんな・・・・・・・」
香は、へなへなと座り込んだ。
本気で京楽に手をかけるつもりはなかったし、隠密機動を少し動かせる権力があるだけで、率いているわけでもない。
「このことは内密にしておくので、諦めてください」
「私はあなたが好きです!」
「俺は、あなたが嫌いだ。権力を振りかざす輩に、まともな者はいない」
香は泣き出した。
「あなたの兄、音羽殿のためにこのことは内密にしてさしあげますから、諦めてください」
「浮竹、浮竹はいるかい!?」
「そんな、京楽様・・・・閉じ込めておいたのに、何故」
香は、慌てだした。
「京楽、こっちだ!」
浮竹の声がする方へ、京楽がやってくる。
「5席の白銀音羽君に助けられた。愚かな妹を処罰しないで欲しいと言われたけど、これは山じいの耳に入れておいた方がいいね。浮竹、怪我はないかい?」
「京楽の方こそ。無事で良かった」
香は、泣きながら浮竹の方を見た。
「来世では、夫婦になりましょう!」
「何を!」
止めようとしたが、遅かった。
香は、刀で喉の動脈を切り裂いて、こと切れてしまった。
「香殿!」
ぶしゅああああと、部屋中が血の海になる。その中に、香は満足した顔で沈んでいた。
「香殿!」
「もうだめだよ、死んでる」
「そんな・・・・俺のせいか・・・・ぐ。ごほっごほっ」
「浮竹!」
浮竹はショックのあまり、肺の発作を引き起こした。
すぐに4番隊の席官が呼ばれて、回道を受けた。
幸いにも軽い発作で、薬を飲んでなんとかなった。
香の遺体はもっていかれ、音羽が茫然自失の状態で現れた。
「すまなかった・・・・愚かな妹を、許してやってほしい」
ぼろぼろと泣き出す音羽を、京楽の目の前で抱き締めた。
「事故だったんだ。誰にも、止められなかった」
「香!かおるーーーーーー!!!」
音羽は浮竹に泣きついて、自決してしまった妹を思った。
しばらくして、冷静になったのか、音羽が浮竹から離れた。
「すまなかった。伴侶の前で・・・・・」
「いや、いいんだ」
それからが忙しかった。
香の葬式に、白銀一族から香を殺したと糾弾された。
音羽と京楽が庇ってくれた。
しばらくの間は、浮竹は死神として仕事を休めと言い渡されて、自宅で大人しくしていた。
香の死を、白銀家の両親が四十六室にもちこんで、裁判沙汰になりそうなのを、山元総隊長が止めてくれた。
「白銀香は自決。誰のせいでもない。悪いのは、自決した香自身である。もしも十四郎の家族や十四郎を傷つけたりすれば、護廷13隊の総隊長である儂を敵に回したと思うがよかろう」
山本総隊長の言葉に、浮竹は救われた。
死神の業務にも戻り、音羽も通常通り5席として仕事に復帰していた。
「香の遺言なんだ。これを君に」
「?」
受け取ったのは、白銀家の家紋の入った螺鈿細工の櫛だった。
「香は、はじめから自決する気でいたしい。遺言だ。どうか、それをもらってほしい。時折でいいから、白銀香という姫がいたと、思い出して欲しい」
「分かった。大切にする」
音羽は、満足したように、泣きながら微笑んだ。
「白銀、泣くな。こちらまで、泣きそうになる」
「すまない。愚かな妹であったが、愛していたのだ」
「家族を愛するのは当り前だ」
音羽は、一度も浮田を責めなかった。
それが、浮竹には辛かった。
京楽や浮竹には、その後に見合いの話が何度か紛れ込んだが、二人とも断固として拒否した。
もう、白銀香のような者を出すのも、誰かが悲しむ姿を見るのも嫌だった。
3席であることも堂々とてきたある日、京楽ではなく浮竹の元に、見合い話がもちこまれた。
上流貴族の姫君で、浮竹は断ったのだが、権力を振りかざされて、受けることとなった。
「白銀香と申します」
「白銀・・・・・?」
「兄が、5席ですの。よく浮竹様のことを話すので、気になって見たのですが、一目惚れです。どうか、嫁にもらってください」
「俺は、京楽と結婚してるんです」
エンゲージリングを見せると、香は笑ってこういう。
「京楽様と付き合ったままでかまいません。どうか、嫁に」
「すみません。俺では、あなたを幸せにはできないし、きっと子供も作れない」
「どしててもダメですか」
「ええ」
「では、京楽様の命をいただきます」
「なんだと!」
浮竹が叫んだ。
「白銀家は隠密機動を率いています。秘密裏に、京楽様を屠れます」
「その時は、俺も自害する」
「そんな・・・・・・・」
香は、へなへなと座り込んだ。
本気で京楽に手をかけるつもりはなかったし、隠密機動を少し動かせる権力があるだけで、率いているわけでもない。
「このことは内密にしておくので、諦めてください」
「私はあなたが好きです!」
「俺は、あなたが嫌いだ。権力を振りかざす輩に、まともな者はいない」
香は泣き出した。
「あなたの兄、音羽殿のためにこのことは内密にしてさしあげますから、諦めてください」
「浮竹、浮竹はいるかい!?」
「そんな、京楽様・・・・閉じ込めておいたのに、何故」
香は、慌てだした。
「京楽、こっちだ!」
浮竹の声がする方へ、京楽がやってくる。
「5席の白銀音羽君に助けられた。愚かな妹を処罰しないで欲しいと言われたけど、これは山じいの耳に入れておいた方がいいね。浮竹、怪我はないかい?」
「京楽の方こそ。無事で良かった」
香は、泣きながら浮竹の方を見た。
「来世では、夫婦になりましょう!」
「何を!」
止めようとしたが、遅かった。
香は、刀で喉の動脈を切り裂いて、こと切れてしまった。
「香殿!」
ぶしゅああああと、部屋中が血の海になる。その中に、香は満足した顔で沈んでいた。
「香殿!」
「もうだめだよ、死んでる」
「そんな・・・・俺のせいか・・・・ぐ。ごほっごほっ」
「浮竹!」
浮竹はショックのあまり、肺の発作を引き起こした。
すぐに4番隊の席官が呼ばれて、回道を受けた。
幸いにも軽い発作で、薬を飲んでなんとかなった。
香の遺体はもっていかれ、音羽が茫然自失の状態で現れた。
「すまなかった・・・・愚かな妹を、許してやってほしい」
ぼろぼろと泣き出す音羽を、京楽の目の前で抱き締めた。
「事故だったんだ。誰にも、止められなかった」
「香!かおるーーーーーー!!!」
音羽は浮竹に泣きついて、自決してしまった妹を思った。
しばらくして、冷静になったのか、音羽が浮竹から離れた。
「すまなかった。伴侶の前で・・・・・」
「いや、いいんだ」
それからが忙しかった。
香の葬式に、白銀一族から香を殺したと糾弾された。
音羽と京楽が庇ってくれた。
しばらくの間は、浮竹は死神として仕事を休めと言い渡されて、自宅で大人しくしていた。
香の死を、白銀家の両親が四十六室にもちこんで、裁判沙汰になりそうなのを、山元総隊長が止めてくれた。
「白銀香は自決。誰のせいでもない。悪いのは、自決した香自身である。もしも十四郎の家族や十四郎を傷つけたりすれば、護廷13隊の総隊長である儂を敵に回したと思うがよかろう」
山本総隊長の言葉に、浮竹は救われた。
死神の業務にも戻り、音羽も通常通り5席として仕事に復帰していた。
「香の遺言なんだ。これを君に」
「?」
受け取ったのは、白銀家の家紋の入った螺鈿細工の櫛だった。
「香は、はじめから自決する気でいたしい。遺言だ。どうか、それをもらってほしい。時折でいいから、白銀香という姫がいたと、思い出して欲しい」
「分かった。大切にする」
音羽は、満足したように、泣きながら微笑んだ。
「白銀、泣くな。こちらまで、泣きそうになる」
「すまない。愚かな妹であったが、愛していたのだ」
「家族を愛するのは当り前だ」
音羽は、一度も浮田を責めなかった。
それが、浮竹には辛かった。
京楽や浮竹には、その後に見合いの話が何度か紛れ込んだが、二人とも断固として拒否した。
もう、白銀香のような者を出すのも、誰かが悲しむ姿を見るのも嫌だった。
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