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翡翠に溶ける 海燕の死

海燕が死んだ。

数日の間、浮竹はあまり眠らず、食事をとらなかった。

倒れるまで。

点滴の管に繋がれた浮竹見て思う。

それほどまでに、海燕の存在は、浮竹の中で大きくなっていたのだ。

一緒にいたのは僅か数十年であるが、京楽もまた彼の死にショックを受けた。

京楽が見殺しにしたのだと、噂が立っていた。

それを、浮竹は否定するわけでもなく、受け入れていた。

「大丈夫?過労で倒れたんだよ」

目をあけた浮竹の顔色は酷いものだった。目の下の隈も、まだ完全にとれていない。

「いけたかな?」

「え?」

「海燕は、天国にいけたかな?」

涙が、ぽろりと零れた。

「大丈夫・・・・妻も都ちゃんだっけ。あの子と一緒に今頃天国で微笑んでるよ」

「朽木に・・・酷い仕打ちをしてしまった」

「ああ、朽木隊長の義妹のルキアちゃんね。大丈夫、始めは茫然自失になって、そのうち自分を責めだしたけど、君の姿を見て大人しくなったよ。「辛いのは私だけではない」と言っていたよ」

ルキアの姿を思い出す。アメジストの瞳に、涙をためていた。

「朽木を、呼んでくれないか?」

「いいけど、もう大丈夫なの?」

「ああ・・・・久しぶりに睡眠をまとめてとったから、気分がいい」

「ならいいけど・・・・」

地獄蝶を使い、ルキアを呼び出した。

「浮竹隊長!倒れたそうですが、大丈夫ですか!」

ルキアも、顔色がよくなかった。あまり眠れていないのだろう。目の下に濃い隈があった。

「すまなかった・・・・・巻き込んでしまって・・」

「いえ・・・・いいえ、あれは海燕殿の意思だったんです。私の手にかかって死ぬことを望んでおられた」

「それでも、すまない。あの虚を、海燕と出会わせる前に俺が倒しておけば・・・・」

「それは可能性の逃げ話になってしまいます。海燕殿は、心はここに置いていけると仰っていました。心は、私と浮竹隊長の中で、受け継がれていくんだと思います」

「そうか・・・・・・・」

浮竹は納得したように、頷いた。

「海燕は、俺たちの心の中にいる。いつまでも、一緒だ」

できれば海燕の葬儀に出たかったが、志波家から拒絶されていた。部下を見殺しにする隊長やその仲間になどきてほしくはないと。

霊圧をけして、遠くから海燕と妻である都が、荼毘に付されるのを遠くから見ていた。天に昇っていく煙を確認して、数日後に浮竹は過労で倒れ、今に至る。

浮竹は、また眠ってしまった。

深い眠りに入っているようだった。

「ルキアちゃん、この薬あげる」

「これは?」

「僕が不眠時に使っている眠剤だよ。あまり眠れてないんでしょ?それ飲んで、よく眠って疲れをとりなさい」

「はい・・・・・」

ルキアは、朽木家に戻っていった。

3日が経ち、すっかり持ち直した浮竹が姉乾堂に帰ってきた。

まだ完全に海燕の死を受け入れたわけではないが、彼が死んだとちゃんと認識していた。

入院する前は、海燕の名を時折呼んでいた。

「今度、海燕の墓参りにいこうと思うんだ」

「それはいいね。葬儀には出られなかったんでしょう?」

「ああ。海燕の姉が、死神は大嫌いだと誰も参加させす、身内だけで葬儀を行ったらしい。俺は遠くから、荼毘に付される様子を見ていたが、花をささげることもできなかったしな」

「そうだね。手配するから、立派な菊の花に酒に、海燕君が好きだったおはぎをそえて・・・今週の週末は空いてるかい?」

「ああ。今週末にでも、墓参りにいこう」

やがて週末になり、海燕の墓にいった。

立派な廟堂の中にあった。

流石、元5大貴族だけであって、墓だけが立派なだった。

菊の花を活けて、酒を墓石に注ぎ、おはぎを供えた。

線香に火をつけると、ゆらりと煙が揺れた。

「あっちでも、達者でいろよ。そのうち、俺たちもお前たちの方へいくから」

「こら浮竹、縁起でもないこと言わないでよ」

「ああすまん。訂正だ。しばらくそっちにはいけそうもないが、どうか天国から見守っていてくれ」

没落してしまっていたので、墓以外は質素で、海燕は家をもっていたが、席官クラスが館を構える場所に、海燕とその妻都の家はあった。

姉がすでに遺品を引き取りにきた後だったので、あまりめぼしいものはなかったが、ふと瑪瑙の簪を見つけた。

それは浮竹が、妻の都に贈るようにとあげた、結婚式祝いのものだった。

「海燕、都・・・この簪をもらっていく」

その館には、もう次に入る者が決まっていた。

海燕の姉が、わざと残していったのだろう。

そんな気がした。

それからしばらくて、山総隊長より数人の次の副官候補から、副官にしたい者を選べと言われた。

「元柳斎先生。すみませんが、当分の間は、副官を置きません」

「なんじゃと」

「海燕の死は俺の責任でもあります。もう、あんな目に誰も合わせたくないのです」

「お主のせいではない。悪いのは虚じゃ。副官は本当にいらぬのか?」

「はい」

「では、3席を2名おけ。副官の代わりになるような者を」

そう言われて、浮竹が選んだのは当時3席のままの清音と、4席だった仙太郎だった。

「この2名を、副官の代わりに置きます」

「ふうむ。まぁよいじゃろう。時間が経てば、いつか副官を選んでもらうぞ」

「はい」

仙太郎は感激していたが、清音が同じ3席になるということで、ライバル心を燃やしていた。

「この不細工!はげ!」

清音の言葉に、仙太郎が売られた喧嘩は買うように、叫んだ。

「はん、ブーーーーーーース!」

「なんですってぇ!私のほうが、長く3席をしているのよ!副官補佐は渡さないんだから!」

「ブスブスブーース!!!」

「きいいいいいいいい」

二人は、仲が良くなかった。

人選間違えたかなと思いながらも、3席の2人に今までの海燕ほどではないが、世話をみてもった。

やがて時は経ち、ルキアが空座町の担当死神になった。

「本当にいいのか?白哉に知らせなくて」

「はい。兄様は、この程度のことと言われるでしょう」

朽木家の養子にいったルキアが、義兄の白哉とうまくいっていないとは聞いていた。だが、ルキアが13番隊に入るにあたって、白哉から直々に副官にしないよにと、強く言われていた。

席官になればなるほど、命の危険も大きくなる。

「白哉も素直じゃないな・・・・・」

「え、浮竹隊長?」

「いや、分かった。それじゃあ、現世にいってこい。達者でな」

「はい!」

ルキアは、空座町に向かう。

そして、黒崎一護と運命の出会いを果たすのだ。

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