翡翠に溶ける 院生時代の夏
2回生の夏。
その日、朝礼があった。
ミーンミンミンと蝉の鳴く声はうるさく。
直射日光が、カッと地面を照らしていた。
「はいはい、どいて」
そう言って、京楽が浮竹に近づくのと、浮竹が倒れるのはほぼ同時。
「浮竹倒れたんで医務室に運んできます」
全校生徒の視線が集まる中、浮竹をお姫様抱っこして医務室にまで運んだ。
「熱中症だね。体をひやして、水分を与えて安静にしていれば、下校時間にはよくなるよ」
保険医の言葉に、水で冷やしたタオルを額に乗せてやった。
「ん・・・水・・・・・」
「特別だよ」
その保険医は、氷雪系の斬魄刀らしく、生ぬるいはずの麦茶に、氷が入った。
「はい、これ飲んで」
「ありがとうございます」
「ありがとう、先生」
冷たい麦茶を飲んで、生き返ったかんじの浮竹がいた。
「吐き気はない?」
「ありません」
「喉はかわいいてる?」
「はい」
「仕方ないねぇ。僕が氷雪系の斬魄刀をもっているのは内緒だよ。知られたら、涼みにくるばかがでるから」
「はい」
麦茶の入ったコップに、氷が浮かぶ。京楽の分もあった。
「君もこの暑い中、浮竹君を運んできたんでしょう。念んもために水分をとりなさい」
「はい・・・・」
つめたい麦茶は、水を欲していた体を潤した。
浮竹は麦茶を3杯飲んで、やっと一心地ついたのか、ベッドに横になった。
「お陰で随分ましになった・・・・昼からの授業にはでる」
「無理しないでね?」
京楽は、何処までも優しかった。
浮竹は、2時間ほど休憩した後、午後から授業に出た。ちゃんと食堂で昼飯も食った。
「浮竹、ほんとに大丈夫なの?」
「ああ、もう平気だ。熱が出ているわけでもなく、直射日光にやられただけだから」
なるべく、日陰を歩いた。
次の授業は剣での斬り合いだった。
刃をつぶした刀で斬り合う。事故防止のために、4番隊の席官が控えていた。
浮竹と京楽はいつも手合わせしているから、今日は他のクラスメイトたちと斬り合いをした。
京楽も浮竹も、片手だけで他の生徒たちを倒していく。
その圧倒的な力の差に、生徒たちの顔が歪む。
「なんでそんなに強いんだよ、お前ら」
悔し紛れで、そう口にした生徒にこう言う。
「生まれ持っての技量の差と、鍛錬の違いかな。僕らは、山じいの猛烈な剣技を受けている」
「そんなのずるいぞ!ずるだ!」
「そうなれる要素があるから、山じいが目をかけてくれるんだよ。力のない僕らだったら、山じいは僕らを放りだしてた」
「おれも山本総隊長に・・・・」
「大けがするから、やめといたほうがいいよ。山じいは、半端じゃないからね」
「くそ・・・・・」
愚痴を零す生徒を無視して、クラスメイトを全員叩き伏せた京楽と浮竹はにっと笑って、どちらともなしに刃のつぶれた刀を振り下ろした。
キンキンカキン。
金属同士のぶつかる音が道場に鳴り響く。
そのあまりの迫力に、見ていた教師さえ声をかけられないでいた。
「ちょっと、腕落ちたんじゃないの」
「ぬかせ!まだまだこれからだ!」
浮竹は、斬り合いの途中でも蹴りを入れてくる。
それをなんとか交わしながら、斬り結びあう。
「君、前から思ってたけど足癖悪いよ」
「これは護身術の一種だ。蹴術。蹴りに重点を置いた攻めだ。敵との切り合いに、手加減は禁物だ。だから、俺も本気だ」
「あわわ!」
鳩尾を蹴られて、ぐらりと傾いだところに、浮竹の刀が京楽の喉元に。
「勝負あり!勝者浮竹!」
わああああああと、二人の斬り合いを見ていたクラスメイトたちが歓声をあげた。
「はぁ・・今回は、僕の負けだよ」
前回は、浮竹が負けた。
二人の力は拮抗していた。
「僕も、ちょっと山じいに稽古つけてもらおうかな」
その言葉に、浮竹が顔を輝かせた。
「京楽が先生に稽古をつけてもらいなら、俺もいくぞ」
「いや、これは言葉の過ち・・・・・・・」
今日の授業は、もう終わりだった。
嫌がる京楽をずるずると引っ張りながら、山本総隊長の元へいく。
「どうした、十四郎、春水」
「先生に、直々の剣の指導を受けにやってまいりました」
「違うんだよ、僕は違うからね山じい!」
「その覚悟あっぱれ。よし、儂が鍛錬してやろう」
浮竹は、道場で刃の潰した刀で斬り合うが、山本総隊長は片手だけで全てを防いでしまった。
「しっ」
蹴り足元にいれると、ひょいとジャンプして交わされた。
「ちい!」
斬撃の合間に蹴りを何度も入れるが、山本総隊長はびくともしなかった。
反撃をなんとか防いでいが、刀が折れてしまった。
「降参です、先生」
「ふむ。次春水!」
逃げ出そうとしている京楽の尻に、山本総隊長は流刃若火で、火をつけた。
「あちちちち!」
「春水、どうしてお前はそうなのじゃ!十四郎を少し見習ったらどうしゃ!」
「僕は僕、浮竹は浮竹だよ」
嫌々ながら、刃のつぶれた刀を手に取る。
目つきが変わった。
「ほう」
いつもの飄々とした京楽はそこにはいなかった。
「そこだ!」
「甘い!」
キーーン。
大きな音がした。京楽は酷薄な笑みを浮かべて山本総隊長に斬りかかる。
それを、山本総隊長は全て片手にもつ刃で受け止めた。
「この!」
放った斬撃は、山本総隊長が瞬歩で京楽の後ろにいき、手刀をくわえたことで終わった。
「山じい・・・もっと普通に相手してよ」
倒れることこそなかったが、方膝を床につけていた。
「この勝負、儂の勝ちじゃな」
「山じいの意地悪」
「先生、お見事でした」
「浮竹、僕への心配ごとはなしかい!?」
「京楽は一度殺したときでも死なない。大丈夫だろ」
「酷い!」
「ふむ。愛割らず仲が良さそうで何よりじゃ。
2回生の夏も、過ぎ去ろうとしていた。
その日、朝礼があった。
ミーンミンミンと蝉の鳴く声はうるさく。
直射日光が、カッと地面を照らしていた。
「はいはい、どいて」
そう言って、京楽が浮竹に近づくのと、浮竹が倒れるのはほぼ同時。
「浮竹倒れたんで医務室に運んできます」
全校生徒の視線が集まる中、浮竹をお姫様抱っこして医務室にまで運んだ。
「熱中症だね。体をひやして、水分を与えて安静にしていれば、下校時間にはよくなるよ」
保険医の言葉に、水で冷やしたタオルを額に乗せてやった。
「ん・・・水・・・・・」
「特別だよ」
その保険医は、氷雪系の斬魄刀らしく、生ぬるいはずの麦茶に、氷が入った。
「はい、これ飲んで」
「ありがとうございます」
「ありがとう、先生」
冷たい麦茶を飲んで、生き返ったかんじの浮竹がいた。
「吐き気はない?」
「ありません」
「喉はかわいいてる?」
「はい」
「仕方ないねぇ。僕が氷雪系の斬魄刀をもっているのは内緒だよ。知られたら、涼みにくるばかがでるから」
「はい」
麦茶の入ったコップに、氷が浮かぶ。京楽の分もあった。
「君もこの暑い中、浮竹君を運んできたんでしょう。念んもために水分をとりなさい」
「はい・・・・」
つめたい麦茶は、水を欲していた体を潤した。
浮竹は麦茶を3杯飲んで、やっと一心地ついたのか、ベッドに横になった。
「お陰で随分ましになった・・・・昼からの授業にはでる」
「無理しないでね?」
京楽は、何処までも優しかった。
浮竹は、2時間ほど休憩した後、午後から授業に出た。ちゃんと食堂で昼飯も食った。
「浮竹、ほんとに大丈夫なの?」
「ああ、もう平気だ。熱が出ているわけでもなく、直射日光にやられただけだから」
なるべく、日陰を歩いた。
次の授業は剣での斬り合いだった。
刃をつぶした刀で斬り合う。事故防止のために、4番隊の席官が控えていた。
浮竹と京楽はいつも手合わせしているから、今日は他のクラスメイトたちと斬り合いをした。
京楽も浮竹も、片手だけで他の生徒たちを倒していく。
その圧倒的な力の差に、生徒たちの顔が歪む。
「なんでそんなに強いんだよ、お前ら」
悔し紛れで、そう口にした生徒にこう言う。
「生まれ持っての技量の差と、鍛錬の違いかな。僕らは、山じいの猛烈な剣技を受けている」
「そんなのずるいぞ!ずるだ!」
「そうなれる要素があるから、山じいが目をかけてくれるんだよ。力のない僕らだったら、山じいは僕らを放りだしてた」
「おれも山本総隊長に・・・・」
「大けがするから、やめといたほうがいいよ。山じいは、半端じゃないからね」
「くそ・・・・・」
愚痴を零す生徒を無視して、クラスメイトを全員叩き伏せた京楽と浮竹はにっと笑って、どちらともなしに刃のつぶれた刀を振り下ろした。
キンキンカキン。
金属同士のぶつかる音が道場に鳴り響く。
そのあまりの迫力に、見ていた教師さえ声をかけられないでいた。
「ちょっと、腕落ちたんじゃないの」
「ぬかせ!まだまだこれからだ!」
浮竹は、斬り合いの途中でも蹴りを入れてくる。
それをなんとか交わしながら、斬り結びあう。
「君、前から思ってたけど足癖悪いよ」
「これは護身術の一種だ。蹴術。蹴りに重点を置いた攻めだ。敵との切り合いに、手加減は禁物だ。だから、俺も本気だ」
「あわわ!」
鳩尾を蹴られて、ぐらりと傾いだところに、浮竹の刀が京楽の喉元に。
「勝負あり!勝者浮竹!」
わああああああと、二人の斬り合いを見ていたクラスメイトたちが歓声をあげた。
「はぁ・・今回は、僕の負けだよ」
前回は、浮竹が負けた。
二人の力は拮抗していた。
「僕も、ちょっと山じいに稽古つけてもらおうかな」
その言葉に、浮竹が顔を輝かせた。
「京楽が先生に稽古をつけてもらいなら、俺もいくぞ」
「いや、これは言葉の過ち・・・・・・・」
今日の授業は、もう終わりだった。
嫌がる京楽をずるずると引っ張りながら、山本総隊長の元へいく。
「どうした、十四郎、春水」
「先生に、直々の剣の指導を受けにやってまいりました」
「違うんだよ、僕は違うからね山じい!」
「その覚悟あっぱれ。よし、儂が鍛錬してやろう」
浮竹は、道場で刃の潰した刀で斬り合うが、山本総隊長は片手だけで全てを防いでしまった。
「しっ」
蹴り足元にいれると、ひょいとジャンプして交わされた。
「ちい!」
斬撃の合間に蹴りを何度も入れるが、山本総隊長はびくともしなかった。
反撃をなんとか防いでいが、刀が折れてしまった。
「降参です、先生」
「ふむ。次春水!」
逃げ出そうとしている京楽の尻に、山本総隊長は流刃若火で、火をつけた。
「あちちちち!」
「春水、どうしてお前はそうなのじゃ!十四郎を少し見習ったらどうしゃ!」
「僕は僕、浮竹は浮竹だよ」
嫌々ながら、刃のつぶれた刀を手に取る。
目つきが変わった。
「ほう」
いつもの飄々とした京楽はそこにはいなかった。
「そこだ!」
「甘い!」
キーーン。
大きな音がした。京楽は酷薄な笑みを浮かべて山本総隊長に斬りかかる。
それを、山本総隊長は全て片手にもつ刃で受け止めた。
「この!」
放った斬撃は、山本総隊長が瞬歩で京楽の後ろにいき、手刀をくわえたことで終わった。
「山じい・・・もっと普通に相手してよ」
倒れることこそなかったが、方膝を床につけていた。
「この勝負、儂の勝ちじゃな」
「山じいの意地悪」
「先生、お見事でした」
「浮竹、僕への心配ごとはなしかい!?」
「京楽は一度殺したときでも死なない。大丈夫だろ」
「酷い!」
「ふむ。愛割らず仲が良さそうで何よりじゃ。
2回生の夏も、過ぎ去ろうとしていた。
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