忍者ブログ

プログ

小説掲載プログ
10 2024/11 14 2324 28 29 30 12

翡翠に溶ける 親睦会

夏休みも終わり、新学期が始まった。

クラスメイトの中にも、編入であまり顔の知らない生徒も出てきた。

頃合いかなと思って、親睦会という名の宴会が開けられることになった。主催は京楽で、お金も全部京楽が負担してくれる。

ただというだけあって、ほとんどのクラスメイトが顔を出した。

美味い酒に美味い料理。全てただなのだ。

クラスメイトたちは、思い思いに羽を伸ばす。

「ねぇ、浮竹君。京楽君とはどこまでいってるの?もう食べられちゃった?」

ぶーーー。

浮竹が、女生徒の質問に酒を吹き出した。

「な、なんだって?」

「だから、どこまで進んでるのかなーと思って。その調子だと、まだ最後までいってないのね」

きゃあきゃあと、黄色い声をだす女生徒に、浮竹は囲まれた。

「色白い~。お肌すべすべ~」

「白い髪も綺麗。柔らかい。そういえば、浮竹君学院に入ってから髪の毛切ってないよね?伸ばしてるの?」

「ん、ああ。京楽が長いほうが似合うから切るなと」

きゃあああと、女生徒からまた黄色い声があがった。

「京楽君のために髪を伸ばしてるのね・・・すてき♡」

「いや、別にそういうわけじゃあ」

そこに、京楽が割って入ってきた。

「そうそう、浮竹は僕のために髪を伸ばしてくれてるの」

「京楽君、今日はありがとう!こんな高い店なのに、全員分払うって太っ腹!さすが大貴族京楽家ね」

京楽は上流貴族だが、その中でも4大貴族に近い。

「みんな、楽しんでいってね」

浮竹を連れ出す。

「はぁ・・・・最近の女子は、男と男の関係が気になるのか」

「じゃあさ、間近で女の子と女の子ができてたらどうする?」

「うわ、それはすごく気になるな。話してみたくなる」

「それと一緒さ」

「なるほど・・・・」

浮竹は納得してしまった。

浮竹を誘い、料理を食べていく。

酒も飲ませたが、ほろ酔い程度にしておいた。

「おい、京楽。もっと酒を飲ませろー」

ほろ酔いのつもりが、けっこう酔っていた。

浮竹の好む果実酒を用意していたのだが、女生徒たちから強いお酒を飲まされたのだ。

「京楽君、今日はチャンスよ。このまま浮竹君を食べちゃえばいいの」

「気持ちはありがたいけど、こんな酔った浮竹を抱いても、後悔が残るだけだよ。僕は浮竹を大事にしたいんだ」

「純愛ね!」

「ピュアだわ~」

「こら、京楽、女子といちゃついてないで酒もってこーーーい。うぃっく」

「浮竹君、それ以上飲まないほうがいいよ」

「大丈夫大丈夫。酔いつぶれたら、京楽が持って帰ってくれる」

ここまで酔ってしまっては変わらないかと、京楽は浮竹に追加の酒を飲ませた。

それから数分もしないうちに、限界がきたのか寝てしまった。

「あら、浮竹君寝ちゃったの」

「この子、酔うけど、酒を飲みすぎると寝るんだ」

「むふふふ。いいこと聞いちゃった」

「ちょっと、浮竹を酔わせてどうのこうのなんて考えないでよ?」

「大丈夫よ。1回生の吉祥寺桜のようにはなりたくないもの」

懐かしい名前だった。

京楽にまといつき、浮竹をはめた女だ。山じいの手により退学処分になって、風の噂では京楽よりは劣るが、それなりの上流貴族の男を婿入りさせたらしい。

少しだけ、浮竹が目覚めた。

「京楽・・・キスして」

「寮に帰ったらね」

「今がいい」

「仕方ないね」

触れるだけのキスをすると、女生徒が黄色い悲鳴をあげた。

「きゃああああ!生よ、生!」

「眼福~!来て良かった!」

男子生徒たちは、何とも言えない顔をしていたが、かわいい浮竹の様子に頬を赤らめる子もいた。

「浮竹はほんとにかわいいから、僕は心配なんだよ」

「それ分かる~。浮竹君、そこらの女より美人なんだもん。京楽君と付き合う前は、よく同性に告白されてたなー」

「もう、なくなったでしょ」

「ああ、そう言えばそうね」

「京楽~だっこ~~~」

とりあえず、浮竹がこんなかんじだし、時間も遅いので解散ということになった。

女子生徒たちは、浮竹と京楽を最後まで見届けようと、何人かが残っていた。

「世界が、廻ってる・・・京楽のせいだ・・・・・・ZZZZZZZZZZ」

浮竹が眠りだす。

それなりの甘い空気を漫喫できたのか、女生徒たちも帰っていった。

「さてと」

酔っぱらった浮竹を背負って、寮に戻る。

「ん・・・・」

「浮竹、起きたの?」

「水を・・・・・」

コップに水を入れて渡すと、それを全て飲みほした。

「京楽、こっちにこい」

手招きされて、近寄るとぎゅっと抱きしめられた。

「どうしたの」

苦笑する京楽。

「苦しいよ」

「傍にいてくれ。一人は嫌だ」

幼い頃を思い出す。僅か3歳で肺病にかかり、ミミハギ様を宿した。

その肺ではなく、心が痛かった。

幼い頃はまだ兄弟もおらず、友達もおらず、両親は浮竹の薬代を出すために共働きだった。

よく、一人の夜を過ごした。

もう、一人の夜を過ごさなくていい-----------------そう安堵して、浮竹はまた眠りについた。

浮竹に抱きしめられた格好の京楽は、寝てしまった浮竹を起こさないようにその腕をどけた。

それから、ちゃんとパジャマに着替えて・・・・浮竹はまぁ仕方ないので院生の服のままだったが、京楽は浮竹の眠っているベッドに入る。

夏の終わりだ。

まだじわりとした暑さはあるが、夜は大分涼しくなってきた。

浮竹が風邪をひかないように、肩まで薄い布団を被せてあげた。

そして、京楽は浮竹を腕の中に閉じ込めるようにして、眠るのだった。

拍手[0回]

PR
URL
FONT COLOR
COMMENT
Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
PASS

TRACK BACK

トラックバックURLはこちら
新着記事
(11/27)
(11/26)
(11/25)
(11/25)
(11/22)
"ココはカウンター設置場所"