翡翠に溶ける 寒い日には
2回生の冬。
その年は、いつもより寒かった。
浮竹は、いつも院生の服の上に上着を着ていた。他の院生たちも、違反ではないので冬になると上着を着て授業を受けていた。
だが、浮竹の場合でもこもこだった。
ふわふわの耳当てやらマフラーをつけている姿は愛らしかったが、夏に惜しげもなく肌を晒す季節が恋しくなった。
授業が終わり、浮竹は京楽とともに真っ直ぐ寮の部屋に戻って、火鉢で冷えた体を温めた。
浮竹は、それでも寒いのか毛布を被りだした。
「浮竹、そんなに寒いの?お風呂いれておいたから、温まってくれば?」
「ああ、ありがとう。少しお湯に浸かって、体温あげてくる」
そのまま、浮竹は浴室に消えた。
20分ほどして、いい匂いをさせた浮竹が現れた。風呂に入るついでに、髪と体を洗ったのだ。
「寒くなかったかい?」
「寒かったけど、どのみち風呂には入らないといけなから」
「ちゃんとぬくもった?」
「100数えた。湯がちょっと熱すぎて、水を入れた」
「そう。ちょっと熱かったか。ごめんよ」
自動で湯を沸かすのだが、温度設定が難しいのが欠点だった。
自動湯沸かし器が開発されて、数十年。みんなそれに世話になっているが、熱すぎることが多い。なんとか欠点をなくそうと、四苦八苦しているようだが、そもそもそんな便利なものが開発されたこと自体奇跡に近い。
他にも、尸魂界には独自で進化した冷蔵庫もあった。
寮の部屋にも、小さな冷蔵庫が備え付けられてあった。
だが、エアコンはまだない。冬に暖をとるといえ、まだ火鉢くらいしかなかった。
「髪、ちゃんと乾かさなきゃ」:
タオルで、水を滴らせている、肩より長くなった髪をふいてやった。
「ありがとう、京楽」
湯で大分あったまったのか、浮竹は暖かかった。
毛布をかぶり、火鉢にあたる。
京楽は、その毛布を半分ぶんどって、一緒に火鉢に当たった。
しばらくすると、外に出ていた寒さもやわらぎ、室内の温度に馴染みだす。
「そういえば、おやつにと思って、この前おはぎを買っておいたんだ」
「何、早くよこせ」
毛布を放りだす浮竹に苦笑しつつ、戸棚の中からおはぎをだした。
3個だった。
「3個か・・・・・・・」
「僕は1個でいいから、君が2個食べなよ」
「ありがたい。そうする」
浮竹は、ゆっくり味わいながらおはぎを食べた。
でも、2個はあっとう間で。
「足りない・・・・・」
「仕方ない、寒いけど甘味屋までいくかい?」
「行く!」
浮竹はふわふわの上着をきて、ふわふわの耳当てにマフラーをした。手だけは、上着のポケットに入れるので手袋はしていなかった。
よくなくすので、手袋はしない主義だった。
「行こうか」
京楽も上着を着るが、薄かった。
「そんな恰好で、寒くないのか」
「僕は北のほうの生まれだから。寒いのには慣れてるんだよ」
「俺は南のほうだから、寒さに弱い」
「だと思った。寒がりだからね」
亜愛ない会話をしながら、甘味屋までくると中に入る。まだ普及しはじめていないストーブがあって、その暖かさに目を見開く。
「これ、いいなぁ」
「ストーブか。電気を食うから、ちゃんとした発電機がないと使えないからね」
寮に備え付けられている発電機では、ストーブはつきそうもなかった。
「そうだ。今度こたつを購入することにしたから」
「こたつ!」
これも、開発されて間もないが、ストーブよりは安価だった。
「今から楽しみだ」
甘味屋で、浮竹はおはぎを10個食べて、ぜんざいと白玉餡蜜を3人分たべて、寒いのにバニラアイスを食べた。
「アイスなんて食べて平気かい?」
「ストーブの熱で、ちょうどいい気温なんだ」
上着を脱いでいた。
「学院でも、ストーブがあればいいんだけど」
学び舎である死神統学院には、そんなものない。
寒いなら、動いてあったまれという精神でできている。医務室にだけ、かろうじで火鉢があるくらいだ。
京楽の口の中に、バニラアイスをつっこむ。
口の中の熱でほろほろと溶けていき、甘い味がした。
「おいしいね・・・・」
「この店はアイスがうまいんだ。すみません、抹茶アイスを1人前」
「食べすぎて、お腹冷やさないようにね」
「限度は分かってる」
やってきた抹茶アイスを京楽の口にも運びながら、食べていく。
甘味屋で食べるだけ食べて満足して、そのまま本屋に向かった。
「本買うお金なんてあるの?僕が出そうか?」
「いや、いい。この前、絵のモデルをしたときにもらったお小遣いがけっこう残っているから」
「あんな金額、数日でとぶよ。よくもってるね」
「お前は、金の使い方が荒いんだ」
最近流行りのミステリーものと恋愛ものの小説を2つ買った。
印刷技術はそこそこにあるので、小説本は多かった。まだこの時代には、漫画はない。
京楽は、アダルトコーナーにいって、エロ本を購入していた。
「お前・・・こんな堂々と。俺がいながら・・・」
「いや、新しいエッチの仕方何かのってないかと思って」
「恥ずかしいやつ」
勘定を払い、二人で寮ではなく学院の食堂に向かった。
夕食の時刻だった。
甘味屋で食べた分は別腹なので、鮭の焼き魚定食を食べる。
「鮭はうまいな・・・・・」
「現世の、北の民族は、鮭を主食として暮らしているそうだよ」
「へぇ・・・・そんなにとれるのか」
海のない尸魂界では、鮭はとれない。現世でとった分を、尸魂界に流しているのだ。
久し振りに食べた鮭は美味かった。
食堂のおばちゃんに頼んで、焼いた鮭だけを二人前もらってきた浮竹は、白飯と味噌汁と一緒に、焼いた鮭の切り身を口に運ぶ。
「鮭、好きなの?」
「ああ。子供の頃、よく鮭の入ったお粥を食べた」
まだ8人兄弟になる前だった。妹や弟たちは、読み書きと算術を通常の初等部で学びながら、近所の畑仕事を手伝ったりして賃金を得ていた。
浮竹だけが、病弱なせいもあり、薬に金がかかるめんどくさい子だった。
それでも、両親は愛してくれた。でも、借金が重なって、とうとう妹が人買いに買われた。取り戻すために、遊女に化けて京楽に近づき、眠剤入りの酒を飲ませて、金目のものをとっていった。その金で、妹を買い戻すことには成功したが、金額が金額なので、京楽に返すあてがなく、京楽のものになると誓った。
無理やりではなかった。
現に、京楽は無理強いをしてこない。
その日の夜も、浮竹は素股で京楽の相手をした。京楽も浮竹を気持ちよくしてくれるので、本当のセックスではないが、似たようなものだった。
もう、体を重ねることに、抵抗感はなくなっていた。
その年は、いつもより寒かった。
浮竹は、いつも院生の服の上に上着を着ていた。他の院生たちも、違反ではないので冬になると上着を着て授業を受けていた。
だが、浮竹の場合でもこもこだった。
ふわふわの耳当てやらマフラーをつけている姿は愛らしかったが、夏に惜しげもなく肌を晒す季節が恋しくなった。
授業が終わり、浮竹は京楽とともに真っ直ぐ寮の部屋に戻って、火鉢で冷えた体を温めた。
浮竹は、それでも寒いのか毛布を被りだした。
「浮竹、そんなに寒いの?お風呂いれておいたから、温まってくれば?」
「ああ、ありがとう。少しお湯に浸かって、体温あげてくる」
そのまま、浮竹は浴室に消えた。
20分ほどして、いい匂いをさせた浮竹が現れた。風呂に入るついでに、髪と体を洗ったのだ。
「寒くなかったかい?」
「寒かったけど、どのみち風呂には入らないといけなから」
「ちゃんとぬくもった?」
「100数えた。湯がちょっと熱すぎて、水を入れた」
「そう。ちょっと熱かったか。ごめんよ」
自動で湯を沸かすのだが、温度設定が難しいのが欠点だった。
自動湯沸かし器が開発されて、数十年。みんなそれに世話になっているが、熱すぎることが多い。なんとか欠点をなくそうと、四苦八苦しているようだが、そもそもそんな便利なものが開発されたこと自体奇跡に近い。
他にも、尸魂界には独自で進化した冷蔵庫もあった。
寮の部屋にも、小さな冷蔵庫が備え付けられてあった。
だが、エアコンはまだない。冬に暖をとるといえ、まだ火鉢くらいしかなかった。
「髪、ちゃんと乾かさなきゃ」:
タオルで、水を滴らせている、肩より長くなった髪をふいてやった。
「ありがとう、京楽」
湯で大分あったまったのか、浮竹は暖かかった。
毛布をかぶり、火鉢にあたる。
京楽は、その毛布を半分ぶんどって、一緒に火鉢に当たった。
しばらくすると、外に出ていた寒さもやわらぎ、室内の温度に馴染みだす。
「そういえば、おやつにと思って、この前おはぎを買っておいたんだ」
「何、早くよこせ」
毛布を放りだす浮竹に苦笑しつつ、戸棚の中からおはぎをだした。
3個だった。
「3個か・・・・・・・」
「僕は1個でいいから、君が2個食べなよ」
「ありがたい。そうする」
浮竹は、ゆっくり味わいながらおはぎを食べた。
でも、2個はあっとう間で。
「足りない・・・・・」
「仕方ない、寒いけど甘味屋までいくかい?」
「行く!」
浮竹はふわふわの上着をきて、ふわふわの耳当てにマフラーをした。手だけは、上着のポケットに入れるので手袋はしていなかった。
よくなくすので、手袋はしない主義だった。
「行こうか」
京楽も上着を着るが、薄かった。
「そんな恰好で、寒くないのか」
「僕は北のほうの生まれだから。寒いのには慣れてるんだよ」
「俺は南のほうだから、寒さに弱い」
「だと思った。寒がりだからね」
亜愛ない会話をしながら、甘味屋までくると中に入る。まだ普及しはじめていないストーブがあって、その暖かさに目を見開く。
「これ、いいなぁ」
「ストーブか。電気を食うから、ちゃんとした発電機がないと使えないからね」
寮に備え付けられている発電機では、ストーブはつきそうもなかった。
「そうだ。今度こたつを購入することにしたから」
「こたつ!」
これも、開発されて間もないが、ストーブよりは安価だった。
「今から楽しみだ」
甘味屋で、浮竹はおはぎを10個食べて、ぜんざいと白玉餡蜜を3人分たべて、寒いのにバニラアイスを食べた。
「アイスなんて食べて平気かい?」
「ストーブの熱で、ちょうどいい気温なんだ」
上着を脱いでいた。
「学院でも、ストーブがあればいいんだけど」
学び舎である死神統学院には、そんなものない。
寒いなら、動いてあったまれという精神でできている。医務室にだけ、かろうじで火鉢があるくらいだ。
京楽の口の中に、バニラアイスをつっこむ。
口の中の熱でほろほろと溶けていき、甘い味がした。
「おいしいね・・・・」
「この店はアイスがうまいんだ。すみません、抹茶アイスを1人前」
「食べすぎて、お腹冷やさないようにね」
「限度は分かってる」
やってきた抹茶アイスを京楽の口にも運びながら、食べていく。
甘味屋で食べるだけ食べて満足して、そのまま本屋に向かった。
「本買うお金なんてあるの?僕が出そうか?」
「いや、いい。この前、絵のモデルをしたときにもらったお小遣いがけっこう残っているから」
「あんな金額、数日でとぶよ。よくもってるね」
「お前は、金の使い方が荒いんだ」
最近流行りのミステリーものと恋愛ものの小説を2つ買った。
印刷技術はそこそこにあるので、小説本は多かった。まだこの時代には、漫画はない。
京楽は、アダルトコーナーにいって、エロ本を購入していた。
「お前・・・こんな堂々と。俺がいながら・・・」
「いや、新しいエッチの仕方何かのってないかと思って」
「恥ずかしいやつ」
勘定を払い、二人で寮ではなく学院の食堂に向かった。
夕食の時刻だった。
甘味屋で食べた分は別腹なので、鮭の焼き魚定食を食べる。
「鮭はうまいな・・・・・」
「現世の、北の民族は、鮭を主食として暮らしているそうだよ」
「へぇ・・・・そんなにとれるのか」
海のない尸魂界では、鮭はとれない。現世でとった分を、尸魂界に流しているのだ。
久し振りに食べた鮭は美味かった。
食堂のおばちゃんに頼んで、焼いた鮭だけを二人前もらってきた浮竹は、白飯と味噌汁と一緒に、焼いた鮭の切り身を口に運ぶ。
「鮭、好きなの?」
「ああ。子供の頃、よく鮭の入ったお粥を食べた」
まだ8人兄弟になる前だった。妹や弟たちは、読み書きと算術を通常の初等部で学びながら、近所の畑仕事を手伝ったりして賃金を得ていた。
浮竹だけが、病弱なせいもあり、薬に金がかかるめんどくさい子だった。
それでも、両親は愛してくれた。でも、借金が重なって、とうとう妹が人買いに買われた。取り戻すために、遊女に化けて京楽に近づき、眠剤入りの酒を飲ませて、金目のものをとっていった。その金で、妹を買い戻すことには成功したが、金額が金額なので、京楽に返すあてがなく、京楽のものになると誓った。
無理やりではなかった。
現に、京楽は無理強いをしてこない。
その日の夜も、浮竹は素股で京楽の相手をした。京楽も浮竹を気持ちよくしてくれるので、本当のセックスではないが、似たようなものだった。
もう、体を重ねることに、抵抗感はなくなっていた。
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