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小説掲載プログ
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翡翠に溶ける 錦鯉

目覚めると、一糸まとわむ姿だった。

隣は、白銀音羽と京楽が、同じく裸で眠っていた。

自分の体をチェックする。

痛いところも何もない。

とりあえず、散らばっていた自分の服を着た。

「おい、起きろ二人とも」

「あー頭痛い・・・・・」

「んーまだ眠い・・・」

「なんで裸なんだ!」

浮竹が叫ぶと、じゃんけんをして負けていった者が脱ぐという脱衣じゃんけんをした結果とのとこだった。

浮竹は、全然覚えていなかった。

「とにかく、二人とも服を着ろ」

「おっと失礼」

「裸のままじゃ、風邪ひくしな」

二人は服を着た。

ここは、雨乾堂だった。

2組の布団の上で、3人は仲良くまっぱのフルチンで寝ていたのだ。

「俺、行かないと・・・・アタマいてぇ。仕事に遅れる。じゃあ浮竹隊長、また後程」

「あ、ああ・・・・・・」

「京楽はいかないのか?」

「んー。今日は僕、休暇をもらっているんだよね。雨乾堂で、浮竹といちゃいちゃする」

「言っておくが、俺は仕事がある」

「うん。仕事しながら、いちゃつこう」

浮竹は、長い溜息を出した。

副官に、朝餉を二人分出してもらって、食べる。

「前から思ってたけど、13番隊のご飯って、質素過ぎない?」

卵焼きと、味噌汁と、たくあんと白飯だった。

「金がないからな・・・・前の隊長が派手好きで、隊の金を使ってしまったんだ」

「こんなんじゃ、美味しくないでしょう。僕がお金補助してあげる」

「いいのか?」

「うん。僕もよくここに泊まって、食事世話になるからね」

「なんだかすまないな・・・・」

「僕がしたいんだから、いいんだよ」

午前中は、浮竹は仕事に没頭した。

京楽が面白半分に、浮竹の長い白髪を三つ編みにしてきたが、無視して仕事をした。

昼飯を食べて、また仕事をして3時の昼休憩をいれた。

「ほら、おはぎだよ」

3時になる前に、京楽は外出して甘味屋でおはぎを10個ほど買ってきてくれていた。

「ありがとう」

京楽は3つほど食べた。残りの7個は、浮竹がペロリと平らげてしまった。

「せっかくお前が遊びにきているのだし、今日の仕事はこの辺にしとくか」

「何、構ってくれるの?」

「ああ」

「わーーい。浮竹、大好きだよ」

すり寄ってくるがたいのでかい男は、重かった。

「重い・・・・・・」

「あ、ごめん」

浮竹をひょいっと抱きあげて、京楽の足に上に座らせた。

「重いだろう」

「浮竹は軽いよ」

まるで猫のように甘えてくる京楽の頭を撫でてやった。

「そうだ。京楽、そろそろ俺の髪を切ってほしい。腰より長くなってしまった」

「いいよ」

浮竹の髪を切るのは、いつも京楽の役目だった。

浮竹を、椅子に座らせた。

螺鈿細工の櫛で髪をとかしていく。

浮竹の髪はさらさらだった。

「勿体ないけど、あんまり長すぎるのもあれだしね」

万能鋏で、ちょきんちょきんと切っていく。

ぱさぱさと、畳の上に浮竹の切られた髪が落ちた。

「こんなものかなぁ」

「もう少し、切ってくれ」

「え、腰より短くするの?」

「最近暑くて・・・・いっそ院生になる前の短い髪にしたいが、お前が嫌だろう?」

「うん。浮竹には長い髪でいてもらいたい」

頷く京楽に、ならばと。

「すぐ伸びるんだ。もう少し切ってくれ」

10センチほど、さっきより短くした。

「うん、大分すっきりした」

「勿体ない・・・・綺麗な白い髪なのに」

「そんなこと言うの、お前くらいだ」

浮竹は、溜息をついた。

散らかった髪をほうきでまとめて、ちりとりでとって、ごみ箱に捨てた。

「忘れてた。鯉に餌をやらないと」

前乾堂のすぐ近には大きな池がある。錦鯉が泳いでいた。

エサをもらえると、ぱくぱくと口をあけて水面に顔を出す。

たくさん餌をまいた。

「僕にもやらせて」

エサをもって移動すると、鯉もついてきた。

「なんだか面白いね」

「かわいいだろう」

「うーん。鯉の顔、あんまり好きじゃないからかわいいとは思えないけど、面白い。色は美しいけどね」

「みんな、処分前だったんだ。色が滲んでいたり、濁っていたりで」

「十分、綺麗だとは思うけど・・・・言われてみると、上流貴族の池にいる鯉のような綺麗さはないね」

「ああ。値打ちにならないからと、食べられる寸前だったんだ。隊長権限を使ってしまったが、食べるくらいしか価値がないから、いらないともらわれてきた子たちばかりだ」

だから、余計にかわいいのだ。

要らない子。

まるで、浮竹みたいだった。

両親は愛してくれてはいたが、かさむ借金にお前など要らぬ子だ、と言われたことを今で覚えている。

今は、両親と兄弟たちのために、給料のほとんどを仕送りしている。肺の薬代をだしてしまえば、手元に残る金は僅かだ。

飲食代も京楽に出してもらっている有様だった。

「俺は、高くて綺麗な錦鯉よりも、色が濁った出来損ないの錦鯉のほうが好きだ。まるで、俺みたいで」

「浮竹は出来損ないじゃないよ。ちゃんと立派に隊長をしているじゃないか」

「それでも、この身を蝕む病からは逃れられない」

「愛しているよ・・・君の病さえ、愛しい」

口づけられた。

「ううん・・・」

深く激しい、口づけだった。

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