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小説掲載プログ
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般若の海燕

「隊長、いい加減に起きて下さい!」

「ぬおおおおお、あと1時間は寝る!」

布団を死守する浮竹を、海燕がどけようとする。

「もう9時ですよ!他の隊長たちはとっくに起きて仕事してます。さぁ、あんたもいい加減に起きて仕事しろおおおお!!」

10分ほど格闘したであろうか。

海燕は、大きなため息をついて布団を手放した。

「もう、好きなだけ寝てください。でも、今日は夕餉抜きですからね!ちゃんと罰与えなきゃ癖になりそうだし・・・・・」

「もう一度寝れる・・・・むにゃむにゃ」

そのまま、浮竹は惰眠を貪った。

「いい加減に起きろこの野郎!」

海燕が、再び起こしにやってきた。

「あんた、昼餉も食べないつもりか!」

「このまま寝る~~」

「ああ、もう知りません。今日は放置しますよ」

海燕は、自堕落すぎる上司に愛想をつかせてしまった。

「んー・・・起きる・・・」

もそもそと、浮竹が起きだしたのは午後の2時だった。

顔を洗って、服を着替える。

お腹がすいた。

「海燕、ご飯ーー!」

何度呼んでも海燕はきてくれなかった。

仕方なしに、13番隊の厨房にいくと、今日は浮竹の分の食事は夕餉を含めてないという。

「海燕め・・・・・」

そんなことで、反省するような浮竹ではない。

仕事は明日するということにして、8番隊の執務室にいき、仕事をしている京楽に飯がでないんだと手短に説明すると、少し遅めだが昼餉が用意された。

それを食べて、さらに京楽を伴って甘味屋でバカ食いした。

お弁当屋さんで、夕餉の代わりの弁当を買った。

「なんか、海燕君が哀れだね・・・・」

「ふん、海燕のやつ、俺を飯ぬきにしようとしているらしいが、そうは問屋が卸すものか」

京楽を伴って、雨乾堂にいく、角の生えた海燕がいた。

「あんた、仕事さぼって8番隊で昼餉をごちそうになったそうですね」

「さらに、京楽と一緒に甘味屋まで行ったぞ」

カッ。

海燕は般若になった。

「1か月、3時のおやつぬき!」

「ええっ!海燕、俺が悪かった~~~」

こんな他愛なことで、反省する浮竹を京楽はかわいいと思った。

海燕も、怒りながらかわいいと思ってしまった。

「ちゃんと、俺の言うことききますか」

「きく。ちゃんと8時には起きるし、仕事もさぼらない」

「約束ですよ」

「ああ、約束だ」

その日の夕餉は結局用意されなかたので、甘味屋に行ったついでに買った弁当を食べた。

「やっぱ13番隊のご飯のほがいい・・・」

同く弁当を口にして、京楽は言う。

「でもいいのかい?あんな口約束をして」

「俺は心を入れ替えるんだ」

京楽は、今日はお泊りだった。体はこの前重ねたので、ただ泊まるだけだった。

次の日の朝、京楽は仕事があるからと、8時には8番隊の執務室に戻ってしまった。

「あんたは~~昨日誓ったでしょう!8時に起きるって」

「あと2時間寝る~~~」

布団にへばりつく浮竹。

「だめです!」

布団をとりあげられた。

仕方なしに、のろのろと浮竹が起き出す。

朝餉を、食べた。

よし、一安心だと、海燕は膳を下げて、文机に向かった上司を心の中で褒めた。

「昼餉もってきました・・・・・」

返事がない。

熱でも出したのか、肺の発作でも起こしたのかと、必死になって浮竹の方を見ると、幸せそうに眠っていた。

仕事は途中で放りだされていた。

「起きろおおおお!!!!!」

浮竹を揺り動かすか、この上司、一度眠ると梃でも起きない。

「あああああ!!!」

海燕は頭を掻きむしった。

いっそ、水でもぶっかけてろうかとも思ったが、風邪をひかれて熱を出されては困る。

今日の3時にだそうと思っていたおはぎをもってくると、それを浮竹の近くまでもってきて、ぱたぱたろとうちわであおいだ。

「ん・・・・おはぎの匂いがする・・・・」

ゆっくりと、浮竹が翡翠の瞳をあける。

「おはぎ!」

食べようとするのを、さっともっていく。

「海燕、大人しくおはぎをよこせ」

「そういうあんたが、大人しく仕事をしてください!」

にじりにじり。

二人の間に緊張が走る。

「おーい、浮竹入るよーーー」

京楽の声がして、それに意識をもっていかれた一瞬だった。

さっと、皿からおはぎが消えていた。

もっきゅもっきゅとほうばる浮竹に舌打ちする。

「あんたは・・・・ちゃんと働け!」

「あれ、どうしたの海燕君」

「この上司、仕事放置して寝てたんですよ!」

「いいじゃないそれくらい」

「よくありません!」

「僕なんて、1か月分仕事ためて、七緒ちゃんに耳引っ張られて、無理やり仕事させられるけどなぁ」

「だらしないあんたと一緒にしないでください!うちの子はうちの子です!ちゃんと仕事してもらわないと!」

「これくらいの仕事の量、午後にするから昼餉にしてくれ。お腹減った」

「はぁ・・・・なんで、俺、こんな上司の副官になったんだろう」

溜息を強く零しながら、遊びに来た京楽の分まで昼餉を出した。

3時になっておやつの羊羹を手に雨乾堂にくると、浮竹と京楽は囲碁をしていた。

「あんた、仕事は」

「全部終わらせた」

「あの量を!?」

「そっちにあるだろう。できているかチェックするといい」

確かに、仕事は全部片付いていた、

「はぁ・・・・できるんなら、最初から言ってください」

「だからいつも言っている。「あのくらい午後でできる」と」

海燕は、浮竹の仕事処理能力に脱帽した。

これで、ちゃんとした時間に起きてくれれば文句はないのだが。

次の日、また11時くらいまで海燕と格闘の末に勝利して、惰眠を貪る浮竹の姿があった。

仕事ができるので、海燕もあまりしつこく起こさなくなった。

浮竹は、おはぎが大量にやってくる幸せな夢を見るのだった。



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