色のない世界 番外編 山じい
「おはよう」
「ああ、おはよう」
今日も、二人の何気ない一日が始まろうとしていた。
季節は春。
うらかかな日差しを浴びて、植物たちが芽吹き花を咲かせる。
今はなくなってしまった、雨乾堂の浮竹の墓の前まできていた。
墓石がった場所に酒を注いで、桜の花を添えた。
「何か、意味があるのか?」
「一応、君の墓であったことに変わりはないからね」
花の神の力で、もう一度生命を与えられた二人は、愛された証の甘い花の香をさせながら、生きた。
結婚式を挙げた。
今日は、3回目の結婚記念日だった。
「花の神は・・・・桜は嫌いかな?」
雨乾堂があった場所のすぐそばにある池に、桜を沈めた。
椿の狂い咲きの王が欲する椿はもう散ってしまった。椿は冬にしか咲かない。
以前は毎年冬のなると椿を沈めた。
この前は、夢魔に襲われたのを、花の神の助けを受けて現実世界に帰ってきた。
存在理由をなくした花の神であるが、愛児である浮竹と京楽が生きることで、また自分の存在理由を取り戻し、力を取り戻した。
「さぁ、いこうか」
桜が沈んでいったことを確認して、京楽は浮竹と手を繋ぎながら歩きだす。
「結婚記念日だけど、特にすることがないね」
「そうだな」
京楽は総隊長だ。
今日は休暇をとっているが、二人で何処かへ旅行にいけるほど、休みはもらえそうにない。
総隊長としての日々は忙しく、浮竹も仕事を手伝っていた。
「元柳斎先生に、結婚のことを報告するのはどうだろう?」
「ああ、いいね。山じいの墓参り最近行ってなかったし・・・・」
また、酒を用意して、桜の枝を折って、山本元柳斎重國の墓参りをした。
「山じい・・・尸魂界は見ての通り復興して、僕らもぼちぼち幸せにやっているよ。僕たち、ついに結婚したんだ」
「元柳斎先生・・・結婚しました。よりにもよって京楽ですが、毎日楽しくやってます」
「よりにもよってって酷くない?」
「だって、元柳斎先生はいつも京楽のことを叱っていただろう」
「そうだね。浮竹には甘かった・・・・あの差は、今でも悔しいなぁ」
ふと、猛烈な眠気に誘われて、浮竹も京楽もその場に倒れこんでしまった。
「こりゃ春水!十四郎!」
「え、元柳斎先生!?」
「山じい!?」
「ちょいと、お前たちの神様とやらに頼んでな。こうやって、夢の中で言葉を送っておるんじゃ」
「元柳斎先生!」
「山じい!」
二人な涙を零しながら、親のようであった山本元柳斎重國に抱き着いた。
「こりゃ春水、十四郎。この程度のことで泣きだすなど、鍛錬がたりんぞ!」
「平和になったからねぇ、自己鍛錬くらいで、山じいと一緒に戦っていた頃のようにはいかないよ」
「俺は一度死んだのに蘇って・・・・もう隊長じゃなくなったったので、自己鍛錬もあんまりしてないです。すみません」
「まぁよい。結婚じゃと?」
「うん」
「はい」
「はぁ・・・わしは、お主らの子を見るのをずっと楽しみにしておったのじゃがのう。十四郎が死に、春水は身を固めるかと思ったら、十四郎を思うあまりに独り身で。まぁよいわ。二人の元気な姿をみれただけでもよしとするかのう」
山本元柳斎重國は、笑った。
自分の死後、確かに尸魂界は息づいている、
今は平和すぎて、大戦の記憶もない者も多い。新しく生まれてくる命は、大戦のことを知らない。阿散井苺花のように。
「地獄は、あまりよくないが、卯ノ花とまぁまぁぼちぼちやっておる。十四郎も一時はいたので、覚えおるじゃろう」
「それが、元柳斎先生。死んだ後の記憶なんてないんです」
「そうか。ないほうがよじゃろうな。地獄は、生きにくいところじゃて」
色のない世界だ、そこは。
隊長クラスの者は、死ぬと地獄に落ちる。霊子が高すぎるために。山本元柳斎重國、卯ノ花烈、浮竹十四郎と、たて続けに地獄に霊子があふれ、一時期地獄の蓋があき、ザエルアポロといった亡霊が出没した。
それもなんとかなり、尸魂界はまた平穏を取り戻した。
「十四郎。地獄で嘆いておったな。京楽も一緒に落としたいと」
「元柳斎先生!」
「まぁ、その頃の記憶がないのは幸いじゃ。地獄は地獄。お主らは、当分死ぬなよ。死なれては、また地獄の蓋が開く」
「はい、元柳斎先生」
「山じい・・・山じいは、心残りとかないの?」
「あったとも。今目の前にいるお主らじゃ。尸魂界はきっと大丈夫じゃと信じておったらその通りになった。じゃが、死んでしまった十四郎の引きずられるように、こちら側にきそうな春水、お主のことを心配しておったのじゃ」
「山じい・・・」
「じゃが、花の神にまた十四郎を与えられた。もうわしも心に思い残すことは何もない。春水も十四郎も、寿命を全うしてからやってこい。地獄は気安いところではないが、まぁ戦いには飽きるこはなかろうて」
「絶対死なない。地獄なんてやだ」
「俺も嫌です」
「ふふふ・・・まぁ、わしが伝えたいのはそれだけじゃ」
ふわりと、音もなく花の神が山本元柳斎重國の隣に立った。
「もう、二度と言葉は交わせない。言っておくことは、他にないか?」
「元柳斎先生、お元気で!」
「そうそう、山じい、元気でね!霊子が巡り、やがて何かに生まれ変わったらまた会おう!」
「うむ」
山本元柳斎重國も、花の神も花びらとなって散っていく。
「桜の花、悪くなかった----------------」
はっと、二人して目が覚めた。
「夢?」
「いや、夢の中の現実だな」
もってきた桜の枝よりも多い、桜の花びらに二人は埋もれていた。
「山じい、元気そうだったね」
「ああ、そうだな」
もう一度、山本元柳斎重國の墓に酒を注ぎ、冥福を祈った。
「行こうか」
「ああ」
一度、浮竹は死んだ。京楽もだ。
花の神に二度目の命をもらい、今を生きている。
「また、冬になれば椿の花を沈めよう・・・・・」
「そうだね」
花の神、椿の狂い咲きの王のために。
世界は廻る。
軋む音を立てて。
一度終わった生をまた繰り返す浮竹。浮竹のために一度は命を手放した京楽。
花の神に愛されて、二人は同じ世界で同じ道を歩む。
もう、色のない世界はない。
世界は、色づいていた。
「ああ、おはよう」
今日も、二人の何気ない一日が始まろうとしていた。
季節は春。
うらかかな日差しを浴びて、植物たちが芽吹き花を咲かせる。
今はなくなってしまった、雨乾堂の浮竹の墓の前まできていた。
墓石がった場所に酒を注いで、桜の花を添えた。
「何か、意味があるのか?」
「一応、君の墓であったことに変わりはないからね」
花の神の力で、もう一度生命を与えられた二人は、愛された証の甘い花の香をさせながら、生きた。
結婚式を挙げた。
今日は、3回目の結婚記念日だった。
「花の神は・・・・桜は嫌いかな?」
雨乾堂があった場所のすぐそばにある池に、桜を沈めた。
椿の狂い咲きの王が欲する椿はもう散ってしまった。椿は冬にしか咲かない。
以前は毎年冬のなると椿を沈めた。
この前は、夢魔に襲われたのを、花の神の助けを受けて現実世界に帰ってきた。
存在理由をなくした花の神であるが、愛児である浮竹と京楽が生きることで、また自分の存在理由を取り戻し、力を取り戻した。
「さぁ、いこうか」
桜が沈んでいったことを確認して、京楽は浮竹と手を繋ぎながら歩きだす。
「結婚記念日だけど、特にすることがないね」
「そうだな」
京楽は総隊長だ。
今日は休暇をとっているが、二人で何処かへ旅行にいけるほど、休みはもらえそうにない。
総隊長としての日々は忙しく、浮竹も仕事を手伝っていた。
「元柳斎先生に、結婚のことを報告するのはどうだろう?」
「ああ、いいね。山じいの墓参り最近行ってなかったし・・・・」
また、酒を用意して、桜の枝を折って、山本元柳斎重國の墓参りをした。
「山じい・・・尸魂界は見ての通り復興して、僕らもぼちぼち幸せにやっているよ。僕たち、ついに結婚したんだ」
「元柳斎先生・・・結婚しました。よりにもよって京楽ですが、毎日楽しくやってます」
「よりにもよってって酷くない?」
「だって、元柳斎先生はいつも京楽のことを叱っていただろう」
「そうだね。浮竹には甘かった・・・・あの差は、今でも悔しいなぁ」
ふと、猛烈な眠気に誘われて、浮竹も京楽もその場に倒れこんでしまった。
「こりゃ春水!十四郎!」
「え、元柳斎先生!?」
「山じい!?」
「ちょいと、お前たちの神様とやらに頼んでな。こうやって、夢の中で言葉を送っておるんじゃ」
「元柳斎先生!」
「山じい!」
二人な涙を零しながら、親のようであった山本元柳斎重國に抱き着いた。
「こりゃ春水、十四郎。この程度のことで泣きだすなど、鍛錬がたりんぞ!」
「平和になったからねぇ、自己鍛錬くらいで、山じいと一緒に戦っていた頃のようにはいかないよ」
「俺は一度死んだのに蘇って・・・・もう隊長じゃなくなったったので、自己鍛錬もあんまりしてないです。すみません」
「まぁよい。結婚じゃと?」
「うん」
「はい」
「はぁ・・・わしは、お主らの子を見るのをずっと楽しみにしておったのじゃがのう。十四郎が死に、春水は身を固めるかと思ったら、十四郎を思うあまりに独り身で。まぁよいわ。二人の元気な姿をみれただけでもよしとするかのう」
山本元柳斎重國は、笑った。
自分の死後、確かに尸魂界は息づいている、
今は平和すぎて、大戦の記憶もない者も多い。新しく生まれてくる命は、大戦のことを知らない。阿散井苺花のように。
「地獄は、あまりよくないが、卯ノ花とまぁまぁぼちぼちやっておる。十四郎も一時はいたので、覚えおるじゃろう」
「それが、元柳斎先生。死んだ後の記憶なんてないんです」
「そうか。ないほうがよじゃろうな。地獄は、生きにくいところじゃて」
色のない世界だ、そこは。
隊長クラスの者は、死ぬと地獄に落ちる。霊子が高すぎるために。山本元柳斎重國、卯ノ花烈、浮竹十四郎と、たて続けに地獄に霊子があふれ、一時期地獄の蓋があき、ザエルアポロといった亡霊が出没した。
それもなんとかなり、尸魂界はまた平穏を取り戻した。
「十四郎。地獄で嘆いておったな。京楽も一緒に落としたいと」
「元柳斎先生!」
「まぁ、その頃の記憶がないのは幸いじゃ。地獄は地獄。お主らは、当分死ぬなよ。死なれては、また地獄の蓋が開く」
「はい、元柳斎先生」
「山じい・・・山じいは、心残りとかないの?」
「あったとも。今目の前にいるお主らじゃ。尸魂界はきっと大丈夫じゃと信じておったらその通りになった。じゃが、死んでしまった十四郎の引きずられるように、こちら側にきそうな春水、お主のことを心配しておったのじゃ」
「山じい・・・」
「じゃが、花の神にまた十四郎を与えられた。もうわしも心に思い残すことは何もない。春水も十四郎も、寿命を全うしてからやってこい。地獄は気安いところではないが、まぁ戦いには飽きるこはなかろうて」
「絶対死なない。地獄なんてやだ」
「俺も嫌です」
「ふふふ・・・まぁ、わしが伝えたいのはそれだけじゃ」
ふわりと、音もなく花の神が山本元柳斎重國の隣に立った。
「もう、二度と言葉は交わせない。言っておくことは、他にないか?」
「元柳斎先生、お元気で!」
「そうそう、山じい、元気でね!霊子が巡り、やがて何かに生まれ変わったらまた会おう!」
「うむ」
山本元柳斎重國も、花の神も花びらとなって散っていく。
「桜の花、悪くなかった----------------」
はっと、二人して目が覚めた。
「夢?」
「いや、夢の中の現実だな」
もってきた桜の枝よりも多い、桜の花びらに二人は埋もれていた。
「山じい、元気そうだったね」
「ああ、そうだな」
もう一度、山本元柳斎重國の墓に酒を注ぎ、冥福を祈った。
「行こうか」
「ああ」
一度、浮竹は死んだ。京楽もだ。
花の神に二度目の命をもらい、今を生きている。
「また、冬になれば椿の花を沈めよう・・・・・」
「そうだね」
花の神、椿の狂い咲きの王のために。
世界は廻る。
軋む音を立てて。
一度終わった生をまた繰り返す浮竹。浮竹のために一度は命を手放した京楽。
花の神に愛されて、二人は同じ世界で同じ道を歩む。
もう、色のない世界はない。
世界は、色づいていた。
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