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色のない世界番外編

季節は冬。

今年も、椿の花が咲き乱れる。

花の神、椿の狂い咲きの王は、ゆっくりと目覚めた。

愛しい二人となった愛児の様子を水底から見つめる----------------。



「京楽、愛している」

「僕も愛してるよ、浮竹」

いつものように、毎日が始まろうとしていた。

朝餉を一緒にとり、一緒に仕事をし終えて、瀞霊廷を見回ったり、甘味屋にいったり、あるいはルキアや苺花と会話したり。

「シロさんは、今日も美人だね。髪を結い上げてかわいいね」

苺花に褒められて、浮竹は頬を染めた。

「京楽が結ってくれたんだ」

翡翠の髪飾りをしていたし、首には翡翠のお守り石をペンダントにしたものを、ぶら下げていた。

「翡翠より、綺麗・・・・・シロさんの瞳」

緑色の中にある光彩が、オパールのような虹色を放っていて。螺鈿細工の中に翡翠が浮かんでいるようで、とても美しかった。

「それに、花のいい匂い・・・・・京楽総隊長も最近、花の匂いがする・・・・」

苺花に話したところで、理解できないだろう。

一度死を選んだ二人は、花の神の力によって蘇った。愛児となった二人は、祝福を受けて甘い花の香をさせるようになった。

苺花は、浮竹の髪を手で触る。

「こら苺花!」

それに、ルキアが注意する。

「ああ、別にいいんだ朽木・・・・・・」

「しかし浮竹隊長・・・・・」

ルキアは、京楽総隊長にも気軽に話かける苺花を叱ったことがあるが、何故叱られるのか分かっていないようだった。

上下関係をくっきりさせないと。そう思って教育してきたが、チカさんと呼ばれる弓親の存在に大分影響されているようだ。

「またね、シロさん、京楽総隊長」

「ああ、またな、朽木、苺花ちゃん」

「浮竹隊長も、京楽総隊長も、これで失礼します。また後で」

苺花の手を握って、ルキアは去っていく。

「子供か・・・・いいな・・・・」

その浮竹のつぶやきに、京楽が反応する。

「養子でももらうかい?それとも、涅隊長に頼んで、子供を生み出してもらうとか・・・・」

「いや、いいんだ。少し羨ましかっただけだから。自然のままが一番だ」

京楽の手をとって、歩き出す。

今日は、特別な日だった。

二人とも、正装していた。

護廷13番隊の隊長、副隊長が見守る中、二人は結婚式を挙げた。

七緒が、二人の上からたくさんの花びらを降り注ぎ、降り注ぎすぎて、京楽は花びらで埋もれていた。

リーンゴーン。

教会の鐘がなる。

西洋風の結婚式だった。指輪を交換しあい、誓いの言葉を口にして、キスをする。

「おめでとうございます、京楽総隊長、浮竹隊長!」

「おめでとうございます!」

ルキアは泣いていた。恋次が寄り添い、二人に同じような祝福の言葉をかける。

「おめでとう、京楽さん浮竹さん」

「一護君・・・来てくれたのか。ありがとう」

わざわざ、現世から尸魂界に、一護が祝福にきてくれたのだ。

浮竹は、ウェディングブーケを持っていた。

それを放りなげる。松本がめちゃくちゃとりたそうにしていたが、苺花の手に落ちた。

「わあ、あたしチカさんと式をあげていい?」

「いや、苺花ちゃん、僕らはまだ早いって」

焦った弓親が、苺花の手からブーケをとりあげて、もう一度放り投げる。

それは、砕蜂の手に落ちた。

「夜一様と、式をあげろということか・・・・・・」

砕蜂は、顔を真っ赤にした。隣に佇んでいた夜一が、面白そうに笑う。

「わしと砕蜂は、式をあげんでもいいだろう」

「夜一様!」

完全に二人の世界に入った二人を無視して、京楽と浮竹は手を繋いで歩きだす。

今日で、京楽と浮竹が、花の神からもう一度命をもらって、ちょうど一年経った日だった。

「みんなありがとう」

「お幸せに」

「もう十分幸せだ」

浮竹は、嬉し涙を零しながら、歩き出す。

空から、花の雨が降ってきた。

「え、何!?」

「なんだ?」

みんな騒ぎ出すが、浮竹と京楽は、花の神の祝福であるとすぐに気づいた。

「椿の狂い咲きの王の名にかけて、永遠を誓う」

「同じく」

京楽と浮竹が花の神にそう誓うと、まもなくして花の雨は止んだ。

永久(とこしえ)を、この伴侶と共に。

京楽と浮竹の、新しい光の道が描かれる。






水底に沈んでいた花の神の元に、椿の花が落ちてきた。

結婚式を挙げた二人が、もう今はない浮竹の墓の前にきてから、池に椿の花を投げ入れたのだ。

「ありがとう、愛児たち---------------------」

花の神が愛する椿の姫は、冬だけに咲く。

これからも永久を誓う二人に、花の神は微笑む。

もう、院生の頃の京楽の姿をとっていなかった。

花の神は、薄紅色の髪に瞳、白い肌をして、流れる花のイメージの衣装を着ていた。

ゆらりと波紋だけを残して、椿の狂い咲きの王は、時空を渡る。

また、違う世界で愛児たちに会おう----------。

花の神は世界を震わせた。

世界は廻る。

時空を翔けた花の神は、もう水底にはいなかった。

次の世界へ。


世界はまた廻りだす。

運命と時をこえて。



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