色のない世界番外編「椿」
冬になった。
花の神、椿の狂い咲きの王のために、たくさんの椿を、白哉の了承を得てつむと、花の神が眠る池に沈めた。
「今年も寒いね」
「ああ、そうだな」
死覇装の上に京楽は一番隊の隊長羽織を着て、浮竹は何も書かれていない白い羽織を着て、そこに上着を着て、マフラーを巻いて手袋をして耳当てをして。
防寒対策はばっちりだった。
京楽は、浮竹のマフラーを巻きなおす。
「寒くないかい?」
「ああ。こんだけもこもこ着ていれば、さすがにあまり寒くない。まぁ、露出している部分は少し寒いが、ホッカイロまでもってるしな」
浮竹が花の神によって、尸魂界に姿を現してもう10年以上が経過していた。
一度、浮竹の墓石はなくなってしまったが、せっかくなのだからと、京楽はまた墓石を建てて、そこに気が向いたら浮竹と、墓参りにきた。
浮竹にしてみれば、自分の墓参りというのは微妙な感覚であるが、花の神も眠っていると思うと、つい足を向けたくなる。
特に冬は、花の神が眠る雨乾堂の傍にある池に、椿を沈めた。
花の神の名は「椿の狂い咲きの王」
その名の通り、椿に恋い焦がれて狂った孤独な王。通称花の神。
地方で信仰されている、小さな存在であるが、二人にとっては奇跡をおこしてくれた恩人である。
椿をたくさん沈めると、ゆらりと水面が揺らいだ。
「愛児らよ・・・・・元気にしておるか?」
「元気だよ」
「ああ、元気だ」
「そうか。椿の花をありがとう」
ゆらりと揺れる花の神は、以前姿を現した京楽の若い頃の姿でも、小鳥の姿でもなく、薄紅色の瞳と髪をした、とても美しい姿をしていた。
神と名のつくだけあって、人外の美貌だった。
「いろんな世界軸で、愛児らを見てきたが、絆が深いな」
「こことは、違う世界ってこと?」
「そうだ。私の器となって、半神になった京楽のいる世界もある」
「僕が器だって?」
「そうだ。愛しい愛児の浮竹のために、何でも言うことを聞くというので、器にした」
「その世界では、浮竹は生きているの?」
「ああ、生きている。この世界のように、仲良く二人で」
「そっか。ならいいんだ」
京楽は、椿の花を花の神に渡して、微笑む。
「椿の花、受け取って」
浮竹は、終始無言で、京楽と花の神とのやり取りを見ていた。
「どうしたの、浮竹」
「いや・・・なんか、どことなく花の神が京楽と似ている気がして・・・・」
自分を愛してくれるところとか、とは言えなくて、浮竹は少し照れて俯いた。
「愛児らよ。愛している。どうか永久(とこしえ)を・・・私のように孤独な王になるなよ」
ちらちらと、花の神は散っていく。
桜の花びらになって散っていく花の神を見てから、浮竹は叫んだ。
「お前は一人じゃない!俺たちがいるから!孤独じゃない!俺たちも、花の神を愛している!」
それに応えるように、花びらは浮竹の周りをくるくると回って、消えていった。
「浮竹?」
気づけば、浮竹は涙を流していた。
「なんだろう・・・花の神の意識かな。すごく寂しいって感じた」
「僕がいるでしょ?花の神にも僕らがいる。孤独なんかじゃないよ」
「ああ、そうだな」
この世界で、生きられた。
京楽の隣で、これからも二人で生きていく。
「春になれば、結婚記念日になるね。そしたら、ちょっと現世に旅行にいこうか」
「大丈夫なのか?」
「まぁ、なんとかなるでしょ」
ふわりふわり。
桜の花びらが、風に流れていった。
水底で、また眠りにつきながら花の神は、そうか、もう自分は孤独ではないのかと、ゆらりと笑うのだった。
花の神、椿の狂い咲きの王のために、たくさんの椿を、白哉の了承を得てつむと、花の神が眠る池に沈めた。
「今年も寒いね」
「ああ、そうだな」
死覇装の上に京楽は一番隊の隊長羽織を着て、浮竹は何も書かれていない白い羽織を着て、そこに上着を着て、マフラーを巻いて手袋をして耳当てをして。
防寒対策はばっちりだった。
京楽は、浮竹のマフラーを巻きなおす。
「寒くないかい?」
「ああ。こんだけもこもこ着ていれば、さすがにあまり寒くない。まぁ、露出している部分は少し寒いが、ホッカイロまでもってるしな」
浮竹が花の神によって、尸魂界に姿を現してもう10年以上が経過していた。
一度、浮竹の墓石はなくなってしまったが、せっかくなのだからと、京楽はまた墓石を建てて、そこに気が向いたら浮竹と、墓参りにきた。
浮竹にしてみれば、自分の墓参りというのは微妙な感覚であるが、花の神も眠っていると思うと、つい足を向けたくなる。
特に冬は、花の神が眠る雨乾堂の傍にある池に、椿を沈めた。
花の神の名は「椿の狂い咲きの王」
その名の通り、椿に恋い焦がれて狂った孤独な王。通称花の神。
地方で信仰されている、小さな存在であるが、二人にとっては奇跡をおこしてくれた恩人である。
椿をたくさん沈めると、ゆらりと水面が揺らいだ。
「愛児らよ・・・・・元気にしておるか?」
「元気だよ」
「ああ、元気だ」
「そうか。椿の花をありがとう」
ゆらりと揺れる花の神は、以前姿を現した京楽の若い頃の姿でも、小鳥の姿でもなく、薄紅色の瞳と髪をした、とても美しい姿をしていた。
神と名のつくだけあって、人外の美貌だった。
「いろんな世界軸で、愛児らを見てきたが、絆が深いな」
「こことは、違う世界ってこと?」
「そうだ。私の器となって、半神になった京楽のいる世界もある」
「僕が器だって?」
「そうだ。愛しい愛児の浮竹のために、何でも言うことを聞くというので、器にした」
「その世界では、浮竹は生きているの?」
「ああ、生きている。この世界のように、仲良く二人で」
「そっか。ならいいんだ」
京楽は、椿の花を花の神に渡して、微笑む。
「椿の花、受け取って」
浮竹は、終始無言で、京楽と花の神とのやり取りを見ていた。
「どうしたの、浮竹」
「いや・・・なんか、どことなく花の神が京楽と似ている気がして・・・・」
自分を愛してくれるところとか、とは言えなくて、浮竹は少し照れて俯いた。
「愛児らよ。愛している。どうか永久(とこしえ)を・・・私のように孤独な王になるなよ」
ちらちらと、花の神は散っていく。
桜の花びらになって散っていく花の神を見てから、浮竹は叫んだ。
「お前は一人じゃない!俺たちがいるから!孤独じゃない!俺たちも、花の神を愛している!」
それに応えるように、花びらは浮竹の周りをくるくると回って、消えていった。
「浮竹?」
気づけば、浮竹は涙を流していた。
「なんだろう・・・花の神の意識かな。すごく寂しいって感じた」
「僕がいるでしょ?花の神にも僕らがいる。孤独なんかじゃないよ」
「ああ、そうだな」
この世界で、生きられた。
京楽の隣で、これからも二人で生きていく。
「春になれば、結婚記念日になるね。そしたら、ちょっと現世に旅行にいこうか」
「大丈夫なのか?」
「まぁ、なんとかなるでしょ」
ふわりふわり。
桜の花びらが、風に流れていった。
水底で、また眠りにつきながら花の神は、そうか、もう自分は孤独ではないのかと、ゆらりと笑うのだった。
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