色子と京楽春水
京楽春水は、上流貴族だった。
色事に長けていて、護廷13隊の8番隊隊長であった。
よく花街に出入りしていた。
その日も、いつもの馴染み廓、桜亭で花魁の桜姫(おうき)を抱いていた。
普通の遊女ならともかく、花魁はとにかく金がかかる。話をするだけでも、一般庶民の数日分の稼ぎが消えていった。
そんな花魁と火遊びをしていて、ふと桜姫が最近の話題に上っている、色子花魁のことを口にした。
「翡翠っていってね。色子なのに、花魁なの」
「花魁の色子?」
「隣の椿亭に居る子なの。とっても綺麗でね。私より美しいかもしれない」
「君より美しいって、どれだけ綺麗な子なのか、興味がわくね」
桜姫に、その色子についていろいろ教えてもらった。
京楽は、色子には興味なかったが、色子が花魁をしていると聞いて興味を持った。
次の日、桜姫の元にはいかず、椿亭にやってきた。
「色子の花魁に会いたいんだけど」
廓の女将に、じろじろと見られた。それから、女将は京楽が上流貴族であるのを知って、にこやかに笑って、色子花魁の翡翠を呼んだ。
「翡翠、お客さんだよ」
「女将、俺は今日は眠いんだ。微熱もあるし、休みをもらいたい」
「会うだけ、会ってやってくれないかい。上流貴族のお偉いさんだよ。頼むよ翡翠。後で、甘いもの好きなだけ食べさせてあげるから」
「女将がそこまで言うなら・・・・」
京楽は、奥の間に通された。
そこに、色子花魁はいた。
長い白い髪を結い上げて、いくつもの上等な簪をさしていた。
首飾りには大きな翡翠があしらわれていた。着物は椿模様の、金糸の縫い取りのある上等なものを着ていた。
美しかった。白粉や紅をさした様子もないのに、肌は色白で、唇は桜色をしていて、思わず吸い付きたい感覚を覚える。
長い白髪を持っていて、瞳が名前の通り翡翠色だった。
「俺が、色子花魁の翡翠だ」
「翡翠・・・・源氏名だね。本名は?」
「浮竹十四郎」
「綺麗だね。君みたいな綺麗な子が色子なんて、信じられない」
京楽は、浮竹に触ろうとして、浮竹に止められた。
「俺は、今日は誰にも抱かれるつもりはない」
「口づけもだめなのかい?」
「金をたっぷりとるぞ」
「それでもいいよ」
「んっ」
色子花魁の翡翠こと浮竹を抱きしめて、そっと唇を重ねた。
桜色の唇は、紅をさしていなかったが、甘い味がした。
「甘いね・・・」
「さっきまで、甘露水を飲んでいたから。肺を患っていて、あまり客の相手ができない。なのに、廓の女将は俺を色子花魁にして、金もうけをしている」
「君の客は多いのかい」
「ほどほどに。馴染みの旦那も、何人かいる」
「僕も、その中に入れるかな」
「金次第だ」
京楽は、もう一度浮竹を抱きしめて、口づけた。
シャランと、浮竹の髪に飾られた簪が音を立てる。
「ちょっと、しつこいぞ。しつこい客は嫌いだ」
「ごめん。あんまりにも綺麗なものだから」
そっと、京楽は離れた。
色子花魁に魅入られると、もう他の花魁じゃあ勃たなくなると、隣の桜亭の桜姫が言っていたのを思い出す。
本当に、その通りかもしれない。
浮竹に夢中になった京楽は、次の日から毎日のように、浮竹の元に通うようになっていた。
---------------------------------------
もう、通い始めて半月が過ぎていた。
かなりの金が飛んでいった。色子でも花魁であるから、客の選り好みはできる。
元々体が弱く、よく熱を出したり、酷い時は発作をおこして吐血するので、酒を飲んで他愛のない話をして、夜は過ぎていく。
「今度君を抱きたい。いいかい?」
「もう、通い始めてくれて半月だからな。いいぞ。いつにする?」
「3日後に。お代は、女将に先に払っておくから」
「分かった」
ついに、浮竹を自分のものにできるのだと、京楽はドキドキする胸を押さえて、浮竹と別れた。
浮竹は、その次の日に血を吐いて倒れた。
約束の3日後も、臥せったままだった。
「約束破ってしまってすまない・・・・・」
布団に横になり、会うだけだと廓の女将に念押しされて、京楽は浮竹と会った。
「君の肺の病、治らないのかい?」
「今の医学では無理だそうだ。死ぬわけじゃあないし、人にうつるものでもないから、花魁としてまだ在れるが、こうも臥せりがちだと、そのうち花魁じゃなくなってしまうかもな」
「じゃあ、僕が君を身請けしても問題ないね?」
「は?おい、まだ俺を抱いたこともないだろう」
「君が好きだ。身請けしたい」
「せめて抱いて、もっと考えてからにしたらどうだ」
布団の横になりながら、話を進める京楽に、浮竹は呆れていた。
「君が、他の男に抱かれるのが嫌だ」
「そんな子供みたいな・・・・・・」
「五億環。これだけあったら、身請けできる?」
五億環。
浮竹の身請け金は二億環だ。
「そんな大金・・・・確かに俺を身請けできるが、そんな大金を俺につぎ込んで大丈夫なのか?」
「僕は上流貴族だよ。君のためなら、全財産をなげうっててもいい」
「その話、女将にはするなよ。身請けの金額を釣り上げるだろ、あいつは。今日はとにかく、もう帰れ。今度来た時、身請けの話を聞く」
「うん、分かった」
京楽は、浮竹の口づけると、椿亭を後にした。
次に京楽が来た時、浮竹は元気そうだった。
「京楽、来てくれたのか」
浮竹は、京楽に抱き着いた。
「俺を身請け、本当にしてくれるのか?お前になら、身請けされてもいい」
酒を飲み料理を食べながら、そんな話をしていた。
「女将に、身請けについて相談したよ。2億環でいいと言われた」
「俺が売られた金額が3千万環だからな。随分稼いだし、病気もあるから身請け金はこれ以上値上がらないと思うんだが」
「明日、二億環をもってくるよ」
「気をつけろ。最近、身請けの金を巡っての強盗が流行っている」
「僕は護廷13隊の8番隊隊長だよ?」
「そうだったな。お前は隊長さんだった」
浮竹は、安堵したかのように胸をなでおろした。
翌日、京楽は馬車でやってきた。
「いろいろ、持っていくものも多いでしょ」
「こんな豪華な馬車、見たのは初めてだ」
「僕の屋敷で所有しているものの中で、一番立派なやつを持ってきた」
「ばか、余計なことしてると・・・・・」
「翡翠の身請け話、ちょっと先延ばしにさせてほしいの。値段を間違えていたわ」
椿亭の女将が、にまにまとしながら、浮竹を京楽から奪い、男たちに身を預けさせた。
「約束が違う」
「あら、そんな約束したかしら」
「女将、いい加減にしろ。京楽が上流貴族だからって、搾り取ろうとするな」
「翡翠は黙っていなさい」
男に口を塞がれて、浮竹は身を捩った。
京楽は、馬車の扉をあけると、そこから金塊やら宝石と札束を取り出して、地面に無造作に放り投げた。
「十億環分ある。浮竹は、身請けするよ」
一億環で、現世でいう一億円になる。それの十倍だ。
女将は、欲望に顔をたぎらせて、店の者と一緒になって、地面に転がされた金塊やら宝石、札束を拾っていた。
「金よ、金だわ!あはははは、翡翠、せいぜいその旦那に尽くすことね。大金だわ、あはははは!」
浮竹は、京楽のもつ馬車に揺られて、京楽の屋敷にやってきた。
京楽の屋敷の広さに驚きながら、浮竹は物珍しげにきょろきょろと周囲を見ていた。
色子になるまで、下級貴族の長男として育てられた。薬代がかさみ、借金のかたに売られた。
13の時に売られて、客をすぐに取るようになった。
そんな色子稼業を続けて18歳になっていた。
京楽は、20代前半くらいだろうか。
精悍な引き締まった体をもつ、美丈夫だった。
一方の浮竹は、18歳。病気のせいもあり、年齢も見た目より幼く見えて、見た目は15歳くらいだった。
「ばか、あんな大金払う必要なかったのに!」
「僕にとって、君はあの金以上に魅力がある。今度こそ、本当に抱くよ。いいね?」
「ああもう、好きにしろ。お前に身請けされた瞬間から、俺はもう、お前のものだ」
--------------------------------------------
「あ、あ、あ」
じゅぷじゅぷと音をたてて、京楽のものが浮竹の中を出入りする。
男を銜え込むことを覚えた体であったが、京楽のものは大きすぎて、全部を受け入れるのに一苦労した。
「あ、いい、そこ、もっと!」
「ここかい?」
そこを突き上げられて、浮竹は全身を震わせながら、精液を放っていた。
「やっ、俺ばっかり・・・・京楽も、いけ。俺の中で」
京楽のものをわざと締め上げると、京楽は少しうめいて、浮竹の胎の奥に、精液をびゅるびゅると注いでいた。
それに、ぺろりと浮竹は自分の唇を舐めて、京楽に口づけると、騎乗位になった。
「身請けされた分、体で払うから」
浮竹が動き出す。
そのテクニックに京楽はすぐに果てた。
「ああ、君をじっくり味わいたいのに」
「そうか、それを先に言ってくれ」
浮竹は、京楽の上からどいた。
浮竹の蕾から、京楽の出したものが滴り落ちてくる。
「もっといっぱい、しよ?」
色子花魁といわれるだけあって、性的なことは浮竹のほうが数段と上だった。
「俺を本気にさせてみろ。んっ、ああ、いい。そこ、そこいい。んっ」
正常位で浮竹を突き上げて、いいという場所をしつこく突きあげて抉り、最奥まで犯した。
「ああああーーーー!!」
浮竹が背を弓なりに反らせて、射精することなくいっていた。
ふと悪戯心をくぐすられて、浮竹のものを扱いて射精させると、浮竹は涙を零した。
「やあ、二重はだめぇっ!いってるのに、いってるのに・・ああああ!!!」
ブレーカーが落ちるように、ガクリと浮竹は意識を失った。
「十四郎、十四郎?」
ぺちぺちと頬を叩くと、浮竹は気づいた。
「あ、俺は意識を失っていたのか?」
「うん」
「お前、凄いな。こんな大きな一物をもっているだけじゃなくって、テクもすごい。男抱くの、始めだろう?」
「そうなるね」
「何人の女を泣かせてきたんだか」
「今は君を啼かせたいね」
「すでに、十分啼いた。もう、今日はしまいでいいか」
「まだ余力あるんだけど」
「嘘だろう。あれだけ抱いておきながら、まだするのか?」
「だめかな?」
「仕方ない、俺が口でしうてやる」
ぴちゃぴちゃと、自分のものを舐めあげる浮竹は、情欲に濡れた瞳のままだった。
「翡翠」
「何だ?俺の名前、翡翠で呼びたいのか?」
「いや、違う。ただ、君の瞳の色は本当に翡翠色で綺麗だと思って」
「お前の瞳の色も綺麗だ」
鳶色の京楽の目を見あげながらも、浮竹は京楽に奉仕していた。
「んっ、もういくから、離して」
「俺の口の中で出せ」
色子としてのテクニックは健在で、京楽は浮竹の口の中に出していた。
「何度も出したのに、まだ濃いな。まさか、まだ抱くとか言わないよな?」
「だとしたら?」
「簡便してくれ。俺は体が弱いんだ。手加減というものを覚えてくれないと、今後抱かせてやらないぞ」
「我慢する。ちょっと、風呂場で抜いてくるよ」
「俺がいるのに、風呂場で抜いたりするな。もう一度、口で奉仕してやるから」
もう一度奉仕されて、京楽もさすがに出すものがなくなった。
風呂に入り、清めて中に出したものをかきだされて、シーツを変えた布団で、浮竹はクスクスと笑っていた。
「上機嫌そうだね」
「お前、男を抱くのは初めての割にはうまかったな。きもちよかった」
「勉強したからね」
「他に色子でも抱いていたか?」
「いや、書物で」
また、浮竹はクスクスと笑った。
「君には、笑顔が似合う」
ふと思い出して、近くにあったたんすの引き出しから、翡翠細工の髪飾りを出してきて、それを浮竹の髪に飾った。
「似合うね。君のために買ったものだったけど、渡すのを忘れていたよ。10億環出すのに、屋敷を一軒売ったからね」
「痛い出費だったか?」
「いや?屋敷はまだいくつもあるから」
浮竹は、京楽に口づけた。
「旦那様って呼ぼうか?」
「いや、春水でいいよ」
「じゃあ、春水、これからもよろしくな」
「うん」
---------------------------------------------
「楽しそうだね」
「ああ、新しい鬼道を習ったんだ。詠唱破棄でもけっこうな威力が出るから」
「学院は楽しいかい?」
浮竹は霊圧が高かった。
真央霊術院に入り、今2回生になっていた。
将来、死神になって、京楽と同じ8番隊に所属するのだと、嬉しそうだった。
「特進クラスだからな。あと1年で、卒業できるって言われてる。学院は楽しいぞ。友達もたくさんできたしな」
「誰も、君を元色子花魁だと思う者はいないだろうね」
「まぁ、ばれないほうがいい。色子だったことがばれると、いろいろ言われそうだ」
「僕と君だけの、秘密だね」
甘い毒を共有しあった。
京楽ははっきりと、周囲に浮竹を娶ることを公言していた。両親は大反対をしていたので、連絡はとっていない。
「卒業したら、結婚しよう」
「本当に、こんな俺でいいのか?」
「君だから、結婚したいんだよ」
もう、そこに色子花魁と言われていた少年の姿はなかった。
美しいが、死神見習いであった。
「君が卒業したら、8番隊にくるように根回ししておくから」
「その、総隊長に何か言われないか?」
「山じいのお説教には慣れているからね」
手を握り合って、啄むようなキスを繰り返した。
「俺は、幸せだ。お前に身請けされてよかった」
「君の幸せは、僕の幸せでもある」
その後、1年経って浮竹は学院を卒業し、死神となって八番隊に入り、よく京楽の傍にいた。
やがて出世して、席官となる。
それでも、京楽の傍にいるのだった。
二人は、比翼の鳥のように、日々を過ごすのであった。
色事に長けていて、護廷13隊の8番隊隊長であった。
よく花街に出入りしていた。
その日も、いつもの馴染み廓、桜亭で花魁の桜姫(おうき)を抱いていた。
普通の遊女ならともかく、花魁はとにかく金がかかる。話をするだけでも、一般庶民の数日分の稼ぎが消えていった。
そんな花魁と火遊びをしていて、ふと桜姫が最近の話題に上っている、色子花魁のことを口にした。
「翡翠っていってね。色子なのに、花魁なの」
「花魁の色子?」
「隣の椿亭に居る子なの。とっても綺麗でね。私より美しいかもしれない」
「君より美しいって、どれだけ綺麗な子なのか、興味がわくね」
桜姫に、その色子についていろいろ教えてもらった。
京楽は、色子には興味なかったが、色子が花魁をしていると聞いて興味を持った。
次の日、桜姫の元にはいかず、椿亭にやってきた。
「色子の花魁に会いたいんだけど」
廓の女将に、じろじろと見られた。それから、女将は京楽が上流貴族であるのを知って、にこやかに笑って、色子花魁の翡翠を呼んだ。
「翡翠、お客さんだよ」
「女将、俺は今日は眠いんだ。微熱もあるし、休みをもらいたい」
「会うだけ、会ってやってくれないかい。上流貴族のお偉いさんだよ。頼むよ翡翠。後で、甘いもの好きなだけ食べさせてあげるから」
「女将がそこまで言うなら・・・・」
京楽は、奥の間に通された。
そこに、色子花魁はいた。
長い白い髪を結い上げて、いくつもの上等な簪をさしていた。
首飾りには大きな翡翠があしらわれていた。着物は椿模様の、金糸の縫い取りのある上等なものを着ていた。
美しかった。白粉や紅をさした様子もないのに、肌は色白で、唇は桜色をしていて、思わず吸い付きたい感覚を覚える。
長い白髪を持っていて、瞳が名前の通り翡翠色だった。
「俺が、色子花魁の翡翠だ」
「翡翠・・・・源氏名だね。本名は?」
「浮竹十四郎」
「綺麗だね。君みたいな綺麗な子が色子なんて、信じられない」
京楽は、浮竹に触ろうとして、浮竹に止められた。
「俺は、今日は誰にも抱かれるつもりはない」
「口づけもだめなのかい?」
「金をたっぷりとるぞ」
「それでもいいよ」
「んっ」
色子花魁の翡翠こと浮竹を抱きしめて、そっと唇を重ねた。
桜色の唇は、紅をさしていなかったが、甘い味がした。
「甘いね・・・」
「さっきまで、甘露水を飲んでいたから。肺を患っていて、あまり客の相手ができない。なのに、廓の女将は俺を色子花魁にして、金もうけをしている」
「君の客は多いのかい」
「ほどほどに。馴染みの旦那も、何人かいる」
「僕も、その中に入れるかな」
「金次第だ」
京楽は、もう一度浮竹を抱きしめて、口づけた。
シャランと、浮竹の髪に飾られた簪が音を立てる。
「ちょっと、しつこいぞ。しつこい客は嫌いだ」
「ごめん。あんまりにも綺麗なものだから」
そっと、京楽は離れた。
色子花魁に魅入られると、もう他の花魁じゃあ勃たなくなると、隣の桜亭の桜姫が言っていたのを思い出す。
本当に、その通りかもしれない。
浮竹に夢中になった京楽は、次の日から毎日のように、浮竹の元に通うようになっていた。
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もう、通い始めて半月が過ぎていた。
かなりの金が飛んでいった。色子でも花魁であるから、客の選り好みはできる。
元々体が弱く、よく熱を出したり、酷い時は発作をおこして吐血するので、酒を飲んで他愛のない話をして、夜は過ぎていく。
「今度君を抱きたい。いいかい?」
「もう、通い始めてくれて半月だからな。いいぞ。いつにする?」
「3日後に。お代は、女将に先に払っておくから」
「分かった」
ついに、浮竹を自分のものにできるのだと、京楽はドキドキする胸を押さえて、浮竹と別れた。
浮竹は、その次の日に血を吐いて倒れた。
約束の3日後も、臥せったままだった。
「約束破ってしまってすまない・・・・・」
布団に横になり、会うだけだと廓の女将に念押しされて、京楽は浮竹と会った。
「君の肺の病、治らないのかい?」
「今の医学では無理だそうだ。死ぬわけじゃあないし、人にうつるものでもないから、花魁としてまだ在れるが、こうも臥せりがちだと、そのうち花魁じゃなくなってしまうかもな」
「じゃあ、僕が君を身請けしても問題ないね?」
「は?おい、まだ俺を抱いたこともないだろう」
「君が好きだ。身請けしたい」
「せめて抱いて、もっと考えてからにしたらどうだ」
布団の横になりながら、話を進める京楽に、浮竹は呆れていた。
「君が、他の男に抱かれるのが嫌だ」
「そんな子供みたいな・・・・・・」
「五億環。これだけあったら、身請けできる?」
五億環。
浮竹の身請け金は二億環だ。
「そんな大金・・・・確かに俺を身請けできるが、そんな大金を俺につぎ込んで大丈夫なのか?」
「僕は上流貴族だよ。君のためなら、全財産をなげうっててもいい」
「その話、女将にはするなよ。身請けの金額を釣り上げるだろ、あいつは。今日はとにかく、もう帰れ。今度来た時、身請けの話を聞く」
「うん、分かった」
京楽は、浮竹の口づけると、椿亭を後にした。
次に京楽が来た時、浮竹は元気そうだった。
「京楽、来てくれたのか」
浮竹は、京楽に抱き着いた。
「俺を身請け、本当にしてくれるのか?お前になら、身請けされてもいい」
酒を飲み料理を食べながら、そんな話をしていた。
「女将に、身請けについて相談したよ。2億環でいいと言われた」
「俺が売られた金額が3千万環だからな。随分稼いだし、病気もあるから身請け金はこれ以上値上がらないと思うんだが」
「明日、二億環をもってくるよ」
「気をつけろ。最近、身請けの金を巡っての強盗が流行っている」
「僕は護廷13隊の8番隊隊長だよ?」
「そうだったな。お前は隊長さんだった」
浮竹は、安堵したかのように胸をなでおろした。
翌日、京楽は馬車でやってきた。
「いろいろ、持っていくものも多いでしょ」
「こんな豪華な馬車、見たのは初めてだ」
「僕の屋敷で所有しているものの中で、一番立派なやつを持ってきた」
「ばか、余計なことしてると・・・・・」
「翡翠の身請け話、ちょっと先延ばしにさせてほしいの。値段を間違えていたわ」
椿亭の女将が、にまにまとしながら、浮竹を京楽から奪い、男たちに身を預けさせた。
「約束が違う」
「あら、そんな約束したかしら」
「女将、いい加減にしろ。京楽が上流貴族だからって、搾り取ろうとするな」
「翡翠は黙っていなさい」
男に口を塞がれて、浮竹は身を捩った。
京楽は、馬車の扉をあけると、そこから金塊やら宝石と札束を取り出して、地面に無造作に放り投げた。
「十億環分ある。浮竹は、身請けするよ」
一億環で、現世でいう一億円になる。それの十倍だ。
女将は、欲望に顔をたぎらせて、店の者と一緒になって、地面に転がされた金塊やら宝石、札束を拾っていた。
「金よ、金だわ!あはははは、翡翠、せいぜいその旦那に尽くすことね。大金だわ、あはははは!」
浮竹は、京楽のもつ馬車に揺られて、京楽の屋敷にやってきた。
京楽の屋敷の広さに驚きながら、浮竹は物珍しげにきょろきょろと周囲を見ていた。
色子になるまで、下級貴族の長男として育てられた。薬代がかさみ、借金のかたに売られた。
13の時に売られて、客をすぐに取るようになった。
そんな色子稼業を続けて18歳になっていた。
京楽は、20代前半くらいだろうか。
精悍な引き締まった体をもつ、美丈夫だった。
一方の浮竹は、18歳。病気のせいもあり、年齢も見た目より幼く見えて、見た目は15歳くらいだった。
「ばか、あんな大金払う必要なかったのに!」
「僕にとって、君はあの金以上に魅力がある。今度こそ、本当に抱くよ。いいね?」
「ああもう、好きにしろ。お前に身請けされた瞬間から、俺はもう、お前のものだ」
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「あ、あ、あ」
じゅぷじゅぷと音をたてて、京楽のものが浮竹の中を出入りする。
男を銜え込むことを覚えた体であったが、京楽のものは大きすぎて、全部を受け入れるのに一苦労した。
「あ、いい、そこ、もっと!」
「ここかい?」
そこを突き上げられて、浮竹は全身を震わせながら、精液を放っていた。
「やっ、俺ばっかり・・・・京楽も、いけ。俺の中で」
京楽のものをわざと締め上げると、京楽は少しうめいて、浮竹の胎の奥に、精液をびゅるびゅると注いでいた。
それに、ぺろりと浮竹は自分の唇を舐めて、京楽に口づけると、騎乗位になった。
「身請けされた分、体で払うから」
浮竹が動き出す。
そのテクニックに京楽はすぐに果てた。
「ああ、君をじっくり味わいたいのに」
「そうか、それを先に言ってくれ」
浮竹は、京楽の上からどいた。
浮竹の蕾から、京楽の出したものが滴り落ちてくる。
「もっといっぱい、しよ?」
色子花魁といわれるだけあって、性的なことは浮竹のほうが数段と上だった。
「俺を本気にさせてみろ。んっ、ああ、いい。そこ、そこいい。んっ」
正常位で浮竹を突き上げて、いいという場所をしつこく突きあげて抉り、最奥まで犯した。
「ああああーーーー!!」
浮竹が背を弓なりに反らせて、射精することなくいっていた。
ふと悪戯心をくぐすられて、浮竹のものを扱いて射精させると、浮竹は涙を零した。
「やあ、二重はだめぇっ!いってるのに、いってるのに・・ああああ!!!」
ブレーカーが落ちるように、ガクリと浮竹は意識を失った。
「十四郎、十四郎?」
ぺちぺちと頬を叩くと、浮竹は気づいた。
「あ、俺は意識を失っていたのか?」
「うん」
「お前、凄いな。こんな大きな一物をもっているだけじゃなくって、テクもすごい。男抱くの、始めだろう?」
「そうなるね」
「何人の女を泣かせてきたんだか」
「今は君を啼かせたいね」
「すでに、十分啼いた。もう、今日はしまいでいいか」
「まだ余力あるんだけど」
「嘘だろう。あれだけ抱いておきながら、まだするのか?」
「だめかな?」
「仕方ない、俺が口でしうてやる」
ぴちゃぴちゃと、自分のものを舐めあげる浮竹は、情欲に濡れた瞳のままだった。
「翡翠」
「何だ?俺の名前、翡翠で呼びたいのか?」
「いや、違う。ただ、君の瞳の色は本当に翡翠色で綺麗だと思って」
「お前の瞳の色も綺麗だ」
鳶色の京楽の目を見あげながらも、浮竹は京楽に奉仕していた。
「んっ、もういくから、離して」
「俺の口の中で出せ」
色子としてのテクニックは健在で、京楽は浮竹の口の中に出していた。
「何度も出したのに、まだ濃いな。まさか、まだ抱くとか言わないよな?」
「だとしたら?」
「簡便してくれ。俺は体が弱いんだ。手加減というものを覚えてくれないと、今後抱かせてやらないぞ」
「我慢する。ちょっと、風呂場で抜いてくるよ」
「俺がいるのに、風呂場で抜いたりするな。もう一度、口で奉仕してやるから」
もう一度奉仕されて、京楽もさすがに出すものがなくなった。
風呂に入り、清めて中に出したものをかきだされて、シーツを変えた布団で、浮竹はクスクスと笑っていた。
「上機嫌そうだね」
「お前、男を抱くのは初めての割にはうまかったな。きもちよかった」
「勉強したからね」
「他に色子でも抱いていたか?」
「いや、書物で」
また、浮竹はクスクスと笑った。
「君には、笑顔が似合う」
ふと思い出して、近くにあったたんすの引き出しから、翡翠細工の髪飾りを出してきて、それを浮竹の髪に飾った。
「似合うね。君のために買ったものだったけど、渡すのを忘れていたよ。10億環出すのに、屋敷を一軒売ったからね」
「痛い出費だったか?」
「いや?屋敷はまだいくつもあるから」
浮竹は、京楽に口づけた。
「旦那様って呼ぼうか?」
「いや、春水でいいよ」
「じゃあ、春水、これからもよろしくな」
「うん」
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「楽しそうだね」
「ああ、新しい鬼道を習ったんだ。詠唱破棄でもけっこうな威力が出るから」
「学院は楽しいかい?」
浮竹は霊圧が高かった。
真央霊術院に入り、今2回生になっていた。
将来、死神になって、京楽と同じ8番隊に所属するのだと、嬉しそうだった。
「特進クラスだからな。あと1年で、卒業できるって言われてる。学院は楽しいぞ。友達もたくさんできたしな」
「誰も、君を元色子花魁だと思う者はいないだろうね」
「まぁ、ばれないほうがいい。色子だったことがばれると、いろいろ言われそうだ」
「僕と君だけの、秘密だね」
甘い毒を共有しあった。
京楽ははっきりと、周囲に浮竹を娶ることを公言していた。両親は大反対をしていたので、連絡はとっていない。
「卒業したら、結婚しよう」
「本当に、こんな俺でいいのか?」
「君だから、結婚したいんだよ」
もう、そこに色子花魁と言われていた少年の姿はなかった。
美しいが、死神見習いであった。
「君が卒業したら、8番隊にくるように根回ししておくから」
「その、総隊長に何か言われないか?」
「山じいのお説教には慣れているからね」
手を握り合って、啄むようなキスを繰り返した。
「俺は、幸せだ。お前に身請けされてよかった」
「君の幸せは、僕の幸せでもある」
その後、1年経って浮竹は学院を卒業し、死神となって八番隊に入り、よく京楽の傍にいた。
やがて出世して、席官となる。
それでも、京楽の傍にいるのだった。
二人は、比翼の鳥のように、日々を過ごすのであった。
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