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色子と京楽春水

京楽春水は、上流貴族だった。

色事に長けていて、護廷13隊の8番隊隊長であった。

よく花街に出入りしていた。

その日も、いつもの馴染み廓、桜亭で花魁の桜姫(おうき)を抱いていた。

普通の遊女ならともかく、花魁はとにかく金がかかる。話をするだけでも、一般庶民の数日分の稼ぎが消えていった。

そんな花魁と火遊びをしていて、ふと桜姫が最近の話題に上っている、色子花魁のことを口にした。

「翡翠っていってね。色子なのに、花魁なの」

「花魁の色子?」

「隣の椿亭に居る子なの。とっても綺麗でね。私より美しいかもしれない」

「君より美しいって、どれだけ綺麗な子なのか、興味がわくね」

桜姫に、その色子についていろいろ教えてもらった。

京楽は、色子には興味なかったが、色子が花魁をしていると聞いて興味を持った。

次の日、桜姫の元にはいかず、椿亭にやってきた。

「色子の花魁に会いたいんだけど」

廓の女将に、じろじろと見られた。それから、女将は京楽が上流貴族であるのを知って、にこやかに笑って、色子花魁の翡翠を呼んだ。

「翡翠、お客さんだよ」

「女将、俺は今日は眠いんだ。微熱もあるし、休みをもらいたい」

「会うだけ、会ってやってくれないかい。上流貴族のお偉いさんだよ。頼むよ翡翠。後で、甘いもの好きなだけ食べさせてあげるから」

「女将がそこまで言うなら・・・・」

京楽は、奥の間に通された。

そこに、色子花魁はいた。

長い白い髪を結い上げて、いくつもの上等な簪をさしていた。

首飾りには大きな翡翠があしらわれていた。着物は椿模様の、金糸の縫い取りのある上等なものを着ていた。

美しかった。白粉や紅をさした様子もないのに、肌は色白で、唇は桜色をしていて、思わず吸い付きたい感覚を覚える。

長い白髪を持っていて、瞳が名前の通り翡翠色だった。

「俺が、色子花魁の翡翠だ」

「翡翠・・・・源氏名だね。本名は?」

「浮竹十四郎」

「綺麗だね。君みたいな綺麗な子が色子なんて、信じられない」

京楽は、浮竹に触ろうとして、浮竹に止められた。

「俺は、今日は誰にも抱かれるつもりはない」

「口づけもだめなのかい?」

「金をたっぷりとるぞ」

「それでもいいよ」

「んっ」

色子花魁の翡翠こと浮竹を抱きしめて、そっと唇を重ねた。

桜色の唇は、紅をさしていなかったが、甘い味がした。

「甘いね・・・」

「さっきまで、甘露水を飲んでいたから。肺を患っていて、あまり客の相手ができない。なのに、廓の女将は俺を色子花魁にして、金もうけをしている」

「君の客は多いのかい」

「ほどほどに。馴染みの旦那も、何人かいる」

「僕も、その中に入れるかな」

「金次第だ」

京楽は、もう一度浮竹を抱きしめて、口づけた。

シャランと、浮竹の髪に飾られた簪が音を立てる。

「ちょっと、しつこいぞ。しつこい客は嫌いだ」

「ごめん。あんまりにも綺麗なものだから」

そっと、京楽は離れた。

色子花魁に魅入られると、もう他の花魁じゃあ勃たなくなると、隣の桜亭の桜姫が言っていたのを思い出す。

本当に、その通りかもしれない。

浮竹に夢中になった京楽は、次の日から毎日のように、浮竹の元に通うようになっていた。


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もう、通い始めて半月が過ぎていた。

かなりの金が飛んでいった。色子でも花魁であるから、客の選り好みはできる。

元々体が弱く、よく熱を出したり、酷い時は発作をおこして吐血するので、酒を飲んで他愛のない話をして、夜は過ぎていく。

「今度君を抱きたい。いいかい?」

「もう、通い始めてくれて半月だからな。いいぞ。いつにする?」

「3日後に。お代は、女将に先に払っておくから」

「分かった」

ついに、浮竹を自分のものにできるのだと、京楽はドキドキする胸を押さえて、浮竹と別れた。

浮竹は、その次の日に血を吐いて倒れた。

約束の3日後も、臥せったままだった。

「約束破ってしまってすまない・・・・・」

布団に横になり、会うだけだと廓の女将に念押しされて、京楽は浮竹と会った。

「君の肺の病、治らないのかい?」

「今の医学では無理だそうだ。死ぬわけじゃあないし、人にうつるものでもないから、花魁としてまだ在れるが、こうも臥せりがちだと、そのうち花魁じゃなくなってしまうかもな」

「じゃあ、僕が君を身請けしても問題ないね?」

「は?おい、まだ俺を抱いたこともないだろう」

「君が好きだ。身請けしたい」

「せめて抱いて、もっと考えてからにしたらどうだ」

布団の横になりながら、話を進める京楽に、浮竹は呆れていた。

「君が、他の男に抱かれるのが嫌だ」

「そんな子供みたいな・・・・・・」

「五億環。これだけあったら、身請けできる?」

五億環。

浮竹の身請け金は二億環だ。

「そんな大金・・・・確かに俺を身請けできるが、そんな大金を俺につぎ込んで大丈夫なのか?」

「僕は上流貴族だよ。君のためなら、全財産をなげうっててもいい」

「その話、女将にはするなよ。身請けの金額を釣り上げるだろ、あいつは。今日はとにかく、もう帰れ。今度来た時、身請けの話を聞く」

「うん、分かった」

京楽は、浮竹の口づけると、椿亭を後にした。

次に京楽が来た時、浮竹は元気そうだった。

「京楽、来てくれたのか」

浮竹は、京楽に抱き着いた。

「俺を身請け、本当にしてくれるのか?お前になら、身請けされてもいい」

酒を飲み料理を食べながら、そんな話をしていた。

「女将に、身請けについて相談したよ。2億環でいいと言われた」

「俺が売られた金額が3千万環だからな。随分稼いだし、病気もあるから身請け金はこれ以上値上がらないと思うんだが」

「明日、二億環をもってくるよ」

「気をつけろ。最近、身請けの金を巡っての強盗が流行っている」

「僕は護廷13隊の8番隊隊長だよ?」

「そうだったな。お前は隊長さんだった」

浮竹は、安堵したかのように胸をなでおろした。

翌日、京楽は馬車でやってきた。

「いろいろ、持っていくものも多いでしょ」

「こんな豪華な馬車、見たのは初めてだ」

「僕の屋敷で所有しているものの中で、一番立派なやつを持ってきた」

「ばか、余計なことしてると・・・・・」

「翡翠の身請け話、ちょっと先延ばしにさせてほしいの。値段を間違えていたわ」

椿亭の女将が、にまにまとしながら、浮竹を京楽から奪い、男たちに身を預けさせた。

「約束が違う」

「あら、そんな約束したかしら」

「女将、いい加減にしろ。京楽が上流貴族だからって、搾り取ろうとするな」

「翡翠は黙っていなさい」

男に口を塞がれて、浮竹は身を捩った。

京楽は、馬車の扉をあけると、そこから金塊やら宝石と札束を取り出して、地面に無造作に放り投げた。

「十億環分ある。浮竹は、身請けするよ」

一億環で、現世でいう一億円になる。それの十倍だ。

女将は、欲望に顔をたぎらせて、店の者と一緒になって、地面に転がされた金塊やら宝石、札束を拾っていた。

「金よ、金だわ!あはははは、翡翠、せいぜいその旦那に尽くすことね。大金だわ、あはははは!」

浮竹は、京楽のもつ馬車に揺られて、京楽の屋敷にやってきた。

京楽の屋敷の広さに驚きながら、浮竹は物珍しげにきょろきょろと周囲を見ていた。

色子になるまで、下級貴族の長男として育てられた。薬代がかさみ、借金のかたに売られた。

13の時に売られて、客をすぐに取るようになった。

そんな色子稼業を続けて18歳になっていた。

京楽は、20代前半くらいだろうか。

精悍な引き締まった体をもつ、美丈夫だった。

一方の浮竹は、18歳。病気のせいもあり、年齢も見た目より幼く見えて、見た目は15歳くらいだった。

「ばか、あんな大金払う必要なかったのに!」

「僕にとって、君はあの金以上に魅力がある。今度こそ、本当に抱くよ。いいね?」

「ああもう、好きにしろ。お前に身請けされた瞬間から、俺はもう、お前のものだ」


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「あ、あ、あ」

じゅぷじゅぷと音をたてて、京楽のものが浮竹の中を出入りする。

男を銜え込むことを覚えた体であったが、京楽のものは大きすぎて、全部を受け入れるのに一苦労した。

「あ、いい、そこ、もっと!」

「ここかい?」

そこを突き上げられて、浮竹は全身を震わせながら、精液を放っていた。

「やっ、俺ばっかり・・・・京楽も、いけ。俺の中で」

京楽のものをわざと締め上げると、京楽は少しうめいて、浮竹の胎の奥に、精液をびゅるびゅると注いでいた。

それに、ぺろりと浮竹は自分の唇を舐めて、京楽に口づけると、騎乗位になった。

「身請けされた分、体で払うから」

浮竹が動き出す。

そのテクニックに京楽はすぐに果てた。

「ああ、君をじっくり味わいたいのに」

「そうか、それを先に言ってくれ」

浮竹は、京楽の上からどいた。

浮竹の蕾から、京楽の出したものが滴り落ちてくる。

「もっといっぱい、しよ?」

色子花魁といわれるだけあって、性的なことは浮竹のほうが数段と上だった。

「俺を本気にさせてみろ。んっ、ああ、いい。そこ、そこいい。んっ」

正常位で浮竹を突き上げて、いいという場所をしつこく突きあげて抉り、最奥まで犯した。

「ああああーーーー!!」

浮竹が背を弓なりに反らせて、射精することなくいっていた。

ふと悪戯心をくぐすられて、浮竹のものを扱いて射精させると、浮竹は涙を零した。

「やあ、二重はだめぇっ!いってるのに、いってるのに・・ああああ!!!」

ブレーカーが落ちるように、ガクリと浮竹は意識を失った。

「十四郎、十四郎?」

ぺちぺちと頬を叩くと、浮竹は気づいた。

「あ、俺は意識を失っていたのか?」

「うん」

「お前、凄いな。こんな大きな一物をもっているだけじゃなくって、テクもすごい。男抱くの、始めだろう?」

「そうなるね」

「何人の女を泣かせてきたんだか」

「今は君を啼かせたいね」

「すでに、十分啼いた。もう、今日はしまいでいいか」

「まだ余力あるんだけど」

「嘘だろう。あれだけ抱いておきながら、まだするのか?」

「だめかな?」

「仕方ない、俺が口でしうてやる」

ぴちゃぴちゃと、自分のものを舐めあげる浮竹は、情欲に濡れた瞳のままだった。

「翡翠」

「何だ?俺の名前、翡翠で呼びたいのか?」

「いや、違う。ただ、君の瞳の色は本当に翡翠色で綺麗だと思って」

「お前の瞳の色も綺麗だ」

鳶色の京楽の目を見あげながらも、浮竹は京楽に奉仕していた。

「んっ、もういくから、離して」

「俺の口の中で出せ」

色子としてのテクニックは健在で、京楽は浮竹の口の中に出していた。

「何度も出したのに、まだ濃いな。まさか、まだ抱くとか言わないよな?」

「だとしたら?」

「簡便してくれ。俺は体が弱いんだ。手加減というものを覚えてくれないと、今後抱かせてやらないぞ」

「我慢する。ちょっと、風呂場で抜いてくるよ」

「俺がいるのに、風呂場で抜いたりするな。もう一度、口で奉仕してやるから」

もう一度奉仕されて、京楽もさすがに出すものがなくなった。

風呂に入り、清めて中に出したものをかきだされて、シーツを変えた布団で、浮竹はクスクスと笑っていた。

「上機嫌そうだね」

「お前、男を抱くのは初めての割にはうまかったな。きもちよかった」

「勉強したからね」

「他に色子でも抱いていたか?」

「いや、書物で」

また、浮竹はクスクスと笑った。

「君には、笑顔が似合う」

ふと思い出して、近くにあったたんすの引き出しから、翡翠細工の髪飾りを出してきて、それを浮竹の髪に飾った。

「似合うね。君のために買ったものだったけど、渡すのを忘れていたよ。10億環出すのに、屋敷を一軒売ったからね」

「痛い出費だったか?」

「いや?屋敷はまだいくつもあるから」

浮竹は、京楽に口づけた。

「旦那様って呼ぼうか?」

「いや、春水でいいよ」

「じゃあ、春水、これからもよろしくな」

「うん」

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「楽しそうだね」

「ああ、新しい鬼道を習ったんだ。詠唱破棄でもけっこうな威力が出るから」

「学院は楽しいかい?」

浮竹は霊圧が高かった。

真央霊術院に入り、今2回生になっていた。

将来、死神になって、京楽と同じ8番隊に所属するのだと、嬉しそうだった。

「特進クラスだからな。あと1年で、卒業できるって言われてる。学院は楽しいぞ。友達もたくさんできたしな」

「誰も、君を元色子花魁だと思う者はいないだろうね」

「まぁ、ばれないほうがいい。色子だったことがばれると、いろいろ言われそうだ」

「僕と君だけの、秘密だね」

甘い毒を共有しあった。

京楽ははっきりと、周囲に浮竹を娶ることを公言していた。両親は大反対をしていたので、連絡はとっていない。

「卒業したら、結婚しよう」

「本当に、こんな俺でいいのか?」

「君だから、結婚したいんだよ」

もう、そこに色子花魁と言われていた少年の姿はなかった。

美しいが、死神見習いであった。

「君が卒業したら、8番隊にくるように根回ししておくから」

「その、総隊長に何か言われないか?」

「山じいのお説教には慣れているからね」

手を握り合って、啄むようなキスを繰り返した。

「俺は、幸せだ。お前に身請けされてよかった」

「君の幸せは、僕の幸せでもある」

その後、1年経って浮竹は学院を卒業し、死神となって八番隊に入り、よく京楽の傍にいた。

やがて出世して、席官となる。

それでも、京楽の傍にいるのだった。

二人は、比翼の鳥のように、日々を過ごすのであった。










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