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小説掲載プログ
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始祖なる者、ヴァンパイアマスター3

ヴァンピール。

ヴァアンパイアと人間の間に生まれ落ちた、呪われし子。

通常、ヴァンパイアと人間の間に子は生まれない。時折生まれるも、普通のヴァンパイアを凌ぐ力を持って生まれてきて、その力に溺れて、制御できなくなって命を落とす。

そんなヴァンピールの少年が、捨てられた。

名前は日番谷冬獅郎。

父がヴァンパイアで、母が人間だった。

父親であったヴァンパイアは、冬獅郎の母親を無理やり犯して、妻として迎え入れた。通常、花嫁になる者は血を与えられて、ヴァンパイアにされる。

それを、冬獅郎の父は人間のまま妻として迎え、犯して子を何人も産ませた。

冬獅郎の母は、珍しい血を持っていて、ヴァンパイアの子を孕んで産むことができた。

父親は、力になるヴァンピールを求めていた。

自分の手足として動く、力あるヴァンピールを。

冬獅郎には5人の兄弟姉妹がいた。

4人とも、力に溺れて自分の力を制御できずに、幼くして死んでいった。

唯一生き残った冬獅郎は、父親に期待されていた。

けれど、母親であった人間の母は、冬獅郎を連れて父親の元から逃げ出した。

父親は、母親を殺した。もう、子は必要ないと。

冬獅郎さえいれば、それでいいと。

冬獅郎は、気づけば父親を殺していた。

親殺しのヴァンピールと蔑まれて、生きてきた。仲間であるヴァンパイアたちは、孤児(みなしご)である冬獅郎を、蔑みはしても一応は育ててくれた。

でもある日、ヴァンパイアの、冬獅郎と同じくらいの少女が、氷漬けになって死んだ。

それは、冬獅郎が自分の力の制御に失敗したせいだった。

ヴァンパイアたちは、冬獅郎を殺そうとした。

それを、気づけば冬獅郎が返り討ちにしていた。

俺は、いらない子。この世界に不必要。

血の帝国の外で生まれた冬獅郎は、血の帝国という存在を知り、そこに行きたかった。

女帝を殺して、この世界から血の帝国をなくして、世界からヴァンパイアを駆逐したかった。

冬獅郎は、血の帝国に入り、そこで同じヴァンピールである黒崎一護と出会った。

一護は、ヴァンピールであるのに、皇族の朽木ルキアの守護騎士であった。

鮮烈だった。

守護騎士になれるヴァンピールが存在するのか。

とてつもなく惹かれた。

ヴァンピールである自分も、生きていていいんじゃないかと思った。

そこに、女帝ブラッディ・ネイが介入してきて、ルキアと一護を、冬獅郎ともども、浮竹と京楽の住む古城に押し付けた。

「あー。朝っぱらから、厄介なことを。ブラッディ・ネイめ、覚えてろ」

浮竹は、突然の訪問者たちに、ただ実の妹であるブラッディ・ネイを恨んだ。

「ブラッディ・ネイもやってくれるね。厄介ごとを、僕たちに押し付けるなんて」

浮竹の隣で紅茶を飲んでいた京楽は、浮竹を見た。

浮竹は頭を抱えて、唸っていた。

やってきた訪問者は三人。皇女である朽木ルキアと、その守護騎士黒崎一護、そしてブラッディ・ネイの命を狙った孤児のヴァンピール日番谷冬獅郎。

古城で、お茶を飲むルキアの隣に座って、一護はルキアを守護していた。いつも魔剣を所持していた。

甘いケーキの茶菓子を、生まれて始めて食べる冬獅郎は、その甘さに目を丸くしていた。

「甘い。美味い」

「あ、おかわりあるぞ?」

まだ子供の冬獅郎に、浮竹は甘かった。

「おかわり、もらっていいか?」

ヴァンピールは、人の血を吸わない。人と同じ食事で生きていける。それに、ヴァンパイアのように太陽の下にいても、普通に生活できる。

ルキアもまた、皇族であり、ブラッディ・ネイの血を引く存在のヴァンパイアロードだったので、太陽の光は大丈夫だった。

「眠い・・・」

ルキアは、大きな欠伸をした。

夜型の生活のルキアと一護にとって、朝という時間は、今から寝る時間である。

「俺の城にきたからには、日中活動にしてもらう。ここは血の帝国じゃない。夜は眠る時間だ。昼に寝たら、たたき起こすからな」

「ふぁい」

半分眠りかけながら、ルキアは返事した。

一護は、そんなルキアに毛布をかけてやろうとして、京楽にスリッパで頭をはたかれていた。

「姫であっても、たたき起こしなさいな。浮竹のいるこの古城では、浮竹のとる生活時間で成り立っている」

「京楽さん、ルキアは昨日眠っていないんだ。血の帝国からここにくるのに、空間転移魔法陣を展開するのに時間をかけて、不眠不休のままだった。ちょっとだけ、眠らせてやりたい」

「仕方ないねぇ。三時間だよ。それ以上寝たら、叩き起こすから」

「ああ」

「浮竹、んでどうするのさ」

「んー。とりあえず、血の帝国と転移魔法で行き来が可能になっているから、ブラッディ・ネイに抗議の嫌がらせ魔法を含ませた式でも飛ばしておく」

「転移魔法ができるようになったなんて、前回僕らが苦労して血の帝国に行ったのはなぜだったんだろう」

京楽が、一人でツッコミを入れていた。

「始祖である俺が、血の帝国に入ったことで、停滞していた神の魔法が使えるようになった。転移魔法は神の魔法だからな。転移装置を動かすのにも、力がいる。よほど魔力が高くないと、転移魔法陣は動かない。今回は、ルキア君のお陰で無事こちら側にこれたようだが」

浮竹は、始祖ヴァンパイアだ。

始祖と知って、冬獅郎は威嚇しだした。

でも、のほほんとお茶を飲むただの麗人に、毒気を抜かれた顔をして、勧められるままに茶菓子を口にする。

「美味しい・・・・・・」

クッキーを口にして、冬獅郎は浮竹の前で初めて笑った。

「あ、今笑ったな?写真、写真とろう」

「うるさい、始祖ジジイ」

「始祖ジジイ・・・・」

ぷっと、京楽が吹き出した。

笑いをこらえているその頭に拳を炸裂させて、浮竹は眠るルキアとそれを見守る一護を見て、最後に冬獅郎を見た。

「冬獅郎君は、力の制御の仕方を覚える必要があるな。あと、一護君も基礎になるかもしれないが、冬獅郎君と一緒に力の制御の仕方を学んで、彼に教えてやってほしい」

「はぁ・・・・・」

一護は、気乗りしないようであった。

「修行に付き合ってくれたら、俺の血をやろう。君の力を増幅させるだろう」

「始祖の、血ですか。でも、眷属になるのでは?」

「眷属にならないように、魔法をかけたものをあげよう」

「力が増すのなら、俺は構いません。引き受けます。ルキアを守れるのであれば」

ルキアの守護騎士一護は、ブラッディ・ネイからルキアを守る必要があった。

ブラッディ・ネイは、ルキアを手に入れようとしつこい。

ルキアが断っても、ルキアを後宮に入れたがっていた。ルキアが聖女であるので、ルキアは後宮に入らずにすんでいる。

だが、もしもブラッディ・ネイが本気でルキアを手に入れようとすれば、どんな手を使ってくるか分からない。

一護は、どうてもルキアを守りたかった。

「ブラッディ・ネイはルキア君にご執心のようだ。始祖の血から生み出される力の前では、いくらブラッディ・ネイでも抗えない」

ごくりと、一護が唾を飲みこんだ。

「始祖の血の力・・・・・・」

「始祖はこの世界で俺だけだからな。ブラッディ・ネイでも、俺の血の力の前では抗えない」

神の寵児、始祖の浮竹と、呪われしヴァンピール、一護、冬獅郎。

その関係は、対極のようで、でも近い。

浮竹は、神の寵児である。だが、神の呪いを受けている。永遠に死ねない呪い。不死の呪いに。


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「人間がいっぱいだ」

隣町に足を運んだ一行の中で、ルキアが目を輝かせた。

もう何度か外の世界に出ているので、浮竹も京楽も人の多い人間社会には慣れていた。

「人間なんて、珍しくもなんともねぇ」

冬獅郎は、つまらなさそうに人ごみを見ていた。

最初、みんな黒いフード付きのマントを被っていたのだが、人数が多いので逆に悪目立ちしてしまうので、普通の服装で外にいた。

ルキアは、白いワンピース姿に麦わら帽子をかぶっていた。

一護は、普通のシャツとズボン。冬獅郎も似たような恰好だ。

浮竹と京楽もラフな格好で、外の世界で買い物をした。

「まずは、ルキア君と一護君、冬獅郎君も外の人間社会に慣れてもらう」

浮竹が、三人を連れて、いろいろと町の中を案内した。京楽は、念のために見張りをしていた。

一護は魔剣をぶら下げていた。

街の中で武装している者は冒険者が多いので、一護たちは冒険者と思われているようだった。

「どうせだから、人間の冒険者ギルドにでも行って、冒険者登録してダンジョンでも潜るか?」

浮竹の言葉に、京楽が頷いた。

「ああ、それいいかもね。モンスター相手なら、力が暴走しても平気だし」

「おい、俺は修行なんてしないぞ」

嫌がる冬獅郎を引きずって、浮竹たちは冒険者ギルドに移動した。

「初めてのご登録では、銀貨二枚が必要になります」

「金とるのかよ」

一護が、文句を言った。

ギルドの受付嬢は、にこにこした笑顔で冒険者登録用紙を、五人分渡してきた。

浮竹が、銀貨十枚を支払った。

銀貨二枚とは、舐められたものだ。新米の冒険者だと、登録できない値段だ。普通、銅貨五枚とかが相場なのだが、この町はインフレが起きているのか、他の街に比べて物価が高かった。

「名前とか適当でいいんすか?」

「今後も利用するかもしれないから、名前とかは本名でいいだろう。ただ、魔力測定があるから、そこは力をセーブして測定されるように」

「浮竹、ずっと前に登録しようとして、魔力がSランクだって言われて、慌てて逃げてたからね」

クスクスと、京楽が笑った。

「とにかく、魔力はほぼない状態で測定されるように」

「魔力がほぼない?どうやってやるんだ?」

「ああ、冬獅郎君はコントロールがまだできないだろうから、素のままでもいい。多分、Aランクの魔力とか言われるけど、測定器の故障ということにされるだろうから」

見た目が12、13歳の冬獅郎が、魔力がAランクなはずはないと、結局は本当に測定器が壊れたということになった。

浮竹のジョブは魔法使い。京楽が剣士で、ルキアが神官、一護が魔剣士だった。冬獅郎は、精霊使いになっていた。

「氷の魔法を使うなら、精霊魔法が一般的だからな。実際、契約しているんだろう?」

「ああ。フェンリルと氷女を使役している」

「その年でフェンリルを使役できるなんて、才能にあふれてるな」

浮竹が、羨ましそうにしていた。

「浮竹も、フェニックスとなら契約してるじゃない。イフリートには振られちゃったけど」

「振られたわけじゃない。フェニックスと契約しているなら、私はいらないなって、去っていっただけだ」

「それを振られたっていうんだよ」

「違う」

「僕は魔法はからっきしだから、それでも羨ましいけどね」

「京楽は俺の血族だろう。魔力はあるから、その気になれば魔法は使えるはずだ」

「適性の問題なんだよね。覚えれた魔法は身体強化とかエンチャント系の魔法で、浮竹みたいに炎を操ったり、冬獅郎クンみたいに氷を操ったりできないから」

京楽は、身体強化の魔法を使ってみせた。

「あ、俺も同じっス。属性系の魔法は使えません」

「おお、一護クン。同志だね」

「俺はエンチャント系も身体強化の魔法も使えないっす。魔力はあるけど、魔法は使えないみたいで・・・・・・」

「一護君の場合、魔剣に魔力を吸わせているから、魔剣がなんらかの属性を持っているんじゃないか?」

「あ、そうですね。雷系の魔剣です」

「魔剣を使うことで魔法も使えるはずだ」

「そうなんすか?」

「冒険者登録もすませたし、修行のためにダンジョンへ行こう。初心者向けだと人目があるから、A級ダンジョンに行こうか」

「A級ダンジョンだと、見張りの兵士がいるよ。どうするの」

京楽の問いに、浮竹が答える。

「眠りの魔法をかける」

「君、炎の魔法以外も使えたの」

「炎が一番適性が高いだけで、一応どの属性の魔法も使えるぞ。さすがに回復魔法はないが」

「君って、そんなに力あったんだ」

「これでも始祖だからな」

浮竹は、ふふんと鼻で笑った。

結局、皆はA級ダンジョンへやってきた。

見張りの兵士には、浮竹が眠りの魔法をかけて、ついでにいい夢がみれるようにルキアが好きな夢を見れる魔法をかけた。

「あはん!いいわ、いいわ!」

びくり。

もだえだした兵士に、皆驚いた。A級ダンジョンにもぐって1分もしないうちに、モンスターと出くわした。

A級ダンジョンといっても、一階層は雑魚でできていた。

「ゴブリンだ。さして強くない。日番谷君、ゴブリンを殺さない程度の魔法を使ってみろ」

「殺さない程度・・・・難しいな」

冬獅郎は、氷の刃を作り出して、ゴブリンを攻撃した。

それは、ゴブリンの首をはねてゴブリンを氷漬けにして、殺してしまった。

「うーん、魔力が過剰すぎるね。もっと、押し殺すかんじてだしてみて・・・・あ、宝箱!」

浮竹が、宝箱を見つけた。

「浮竹、きっとミミックだからやめたほうがいいよ」

「いや、たとえミミックでも中に何か持っているはずだ。ゴミに見えても、けっこういいものだったり・・・・・・」

浮竹は宝箱をあけた。

ミミックだった。

「暗い~怖い~狭い~息苦しい~~~」

「ほーら、いわんこっちゃない」

「京楽、助けてくれ~~~」

浮竹をひっぱるけど、なかなか出てこない。、

「あ、ひっぱるのがだめなら押し込んでくれ。ミミックがおえってなって、離れるはずだから」

京楽は、浮竹をミミックに押し込んだ。

ミミックはおえっとなって、浮竹を吐き出した。

「ファイアボール」

めらめらと燃えたミミックの後に、古い金貨が残された。

「やった!古い金貨だ」

「それ、価値あるの?」

「いや、金貨だろ?金貨だから・・・・」

「古すぎて使えないよ?」

京楽の言葉に、浮竹が困惑する。

「金だから、溶かせば何かに」

「たった一枚の金貨を溶かして、何を作るの。そもそも、そんなことをしてくれる人がどこにいるの」

「京楽がいじめる!」

浮竹は、ルキアに抱き居ついた。

「ちょ、浮竹さん、ルキアに抱き着かないでくれ」

「浮竹殿、その、離してもらえないだろうか」

「バカじゃないのか」

冬獅郎は、そんな面子を見て、先に進んだ。

「あ、だめだよ、そこは罠・・・・・・」

「え」

ごろごろごろ。

大きな丸い岩が転がってきた。

「うわあ、お約束!どうやって・・・・」

「破壊するぞ。ルキア、下がっててくれ」

「一護、無理はするなよ!」

一護は、魔剣を抜き放って、大きな丸い岩を細切れ状に斬り裂いていた。

「凄いね」

「うん」

浮竹と京楽は、まだ年若いヴァンピールである一護が、此処まで強いとは思っていなかったのだ。

「一護君の魔力の流し方は完璧だ。冬獅郎君、一護君みたいにできるか?」

「分からない。ただ、魔法の力のセーブの仕方は少し分かった気がする」

出てくるゴブリンを倒しながら、一行は先へと進む。

訓練のために、一護と冬獅郎に討伐させた。

「冬獅郎君、半殺しにできるかい?」

「やってみる」

氷の刃でゴブリンの両足を斬り裂いた。

ゴブリンはうぎゃぁと叫んで、自分の血の海に沈んだ。

「上出来だ。その調子で、魔力のコントロールを覚えるんだ。それが、力のセーブに繋がる・・・・・・あ、また宝箱!」

「いや、どうせまたミミックでしょ。って浮竹、あけないの!」

「うわー、ミミックだぁ!暗い~怖い~狭い~息苦しい~~~」

「はいはい、引っ張るんじゃなくって押し込むね」

京楽は、もう慣れたようで、浮竹をミミックから解放していた。

ミミックを倒した後には、魔法書が残った。

「何々、静電気で感電死する魔法?使えないね」

「好事家には、涎ものだ!新しい魔法だぞ!持って帰る!」

浮竹は、アイテムポケットに魔法書を入れてしまった。

一階層で、浮竹は5回ミミックに食われた。

ミミックは、必ず何かしらの宝物を残した。

古代の遺物とか、どう見てもゴミな代物を、浮竹は宝物だといって、アイテムポケットにいれた。

神代(かみよ)の時代から生きるヴァンパイアの感覚って分からないと、皆思うのであった。

2階層に移動した。

「あ、宝箱」

「てやっ」

ルキアが、結界魔法を反転させた魔法で、ミミックをこじ開けた。

ミミックは、悲鳴をあげると宝物を落とした。

「どうしたの、浮竹」

「ミミックに食われないと、宝物を得たかんじがしない。なのでルキア君、宝物は俺に任せてくれ。あ、あっちにも宝箱・・・・・・」

ルキアは京楽を見た。

京楽は、首を横に振った。放置しておけということだった。

「暗い~怖い~狭い~息苦しい~~~」

「はいはい、今出してあげるから」

京楽は、もうそんな浮竹が可愛く見えて、わざわざ付き合っていた。

「今度の宝物は、メダルか。そういえば、さっきの別れ道でメダルをはめるような場所があったな。きっと宝物のある隠し部屋への鍵だ!」

「はいはい、先に進むよ」

「京楽、宝物が先だ!宝物、宝物!ミミックでいいから、宝物!」

地団駄を踏む浮竹に、皆ため息をつきつつ、この始祖ってかわいいと思うのであった。

結局、隠し部屋にいき、宝箱がたくさんあった。

けれどミミックはいなくて、浮竹はがっかりした。

「ミミックのいない宝箱なんて魅力を感じない」

「あんた、どんだけミミックが好きなんだ」

一護が、呆れた声を出していた。

京楽が、浮竹の代わりに宝箱をあけていく。毒矢が飛び出してきたり、罠がしかけられていた。

「これだと、ミミックの方がましかもねぇ」

出た宝物は、武器や防具で、浮竹は興味をそそられななかった。

「この肩当て、ミスリルでできてる。売れば結構な額になりそうだ」

一護が、ミスリルの肩当てを人工の光に掲げてみてた。

「それ、呪わているぞ、一護!」

「え、まじか!」

ルキアの言葉に、一護がミスリルの肩当てを落とした。

「身に着けたら、ステータスに衰弱がつく。HPが徐々に減っていく。解呪には、幸い私は使えるが神聖魔法が必要だ」

ルキアは呪文を唱えて、白い清浄な光で解呪した。

「もう大丈夫だぞ。解呪しておいた。呪いはない」

「そうは言われても・・・・・まぁいいか、浮竹さん、アイテムポケットに」

「俺のアイテムポケットは、そんな武器防具を入れるためにあるんじゃない。武器防具は京楽のアイテムポケットでも使え」

つーんとそっぽを向く浮竹に苦笑しつつ、京楽が一護から武器防具を受けとってアイテムポケットにしまった。

一護とルキア、それに冬獅郎はダンジョンの潜るなんてはじめてで、冒険者が持っていて当たり前のアイテムポケットがなかった。

浮竹と京楽のアイテムポケットは特別製で、屋敷がまるまる入る容量をほこる。

売れば金貨百枚はくだらないだろう。

浮竹は、アイテムポケットから何やら怪しいものを取り出しては、それをモンスターに投げたり、罠の解除をしたりしていた。

分厚い本も出した。

地図が自動的にマッピングされる魔法書で、これまた金貨五十枚はするだろう代物だった。

「この先を右にいこう」

2階層のモンスターは、ホブゴブリンとゴブリンシャーマン、それにふわふわの何か分からない毛玉だった。

ふわふわの毛玉は、現れてはぽんぽんはねるだけで、かわいかった。

「浮竹、だめだよモンスターだよ!」

「元々精霊もモンスターだろう」

浮竹はそっとふわふわの毛玉に触れてみた。毛玉は牙をむき、浮竹の腕を噛んで血を啜った。

「浮竹!」

「やばい、血を吸われた。始祖の血をとりこんだモンスターは厄介だ」

ゴゴゴゴゴ。

毛玉は震えて巨大になっていく。牙をむきだしにした、醜悪な姿になった。

「浮竹さん、下がって!ここは俺と冬獅郎でなんとかする!」

「何故俺まで入っている!」

「力の制御、大分できるようになったんだろ?」

「そりゃまぁ・・・・・・」

「きしゃああああああ」

有無を言わせずモンスターが襲い掛かってきた。それを魔剣で斬り捨てるが、傷はすぐに再生した。

「俺の、始祖の血をとりこんだから再生力が無尽蔵なんだ。炎でもやしつくすくらいか・・・ああ、冬獅郎君、力を爆発させる勢いで、その化け物に氷の魔法を放ってごらん」

「どうなっても、知らないからな」

冬獅郎は、もてる魔力のほとんどを氷にして、化け物にむけた。

「ぎいいいい」

化け物は氷の彫像になった。でも、まだ生きている。ちなみに、周囲の空間も氷漬けになった。

「俺に任せろ!」

一護が、氷漬けになったモンスターに魔剣をふりおろして、粉々に砕いた。モンスターはまだ生きていた。

「再生する。俺が燃やす」

「浮竹殿は手を出さないでください。私がなんとかします」

ルキアが前に出て、呪文を唱える。

モンスターの肉の破片が、灰になっていく。

「ルキア君、すごいな。聖女と言われるだけある。ヴァンパイアが神聖魔法を使うと知ったら、ヴァンパイアハンターの連中が嘘だっていうだろうな」

浮竹は、ルキアが聖女であるいことに、納得がいったようだった。

「浮竹さん、始祖の血ってすごいっすね。あんな大人しそうなモンスターが、たった数滴吸っただけで、再生力の無尽蔵な化け物になるなんて」

「ふん、元をただせばあんなモンスターに血をとられる浮竹のせいだ」

「こら、冬獅郎!」

一護が冬獅郎を怒るが、冬獅郎はそっぽを向いた。

「ふん」

「それにしても寒いね。冬獅郎クン大丈夫?大分魔力を使ったようだけど」

京楽が、周囲まで凍らせてしまった冬獅郎を見た。

「どうって、こと、ない・・・・・」

「冬獅郎殿、魔力を回復させる魔法をかける」

「朽木ルキア・・・・余計なことを」

「こら、冬獅郎!ルキアが癒してくれるなんて、普通なら1回金貨200枚なんだぞ」

「そんな大金、もってねぇ」

「ふふ、私も冬獅郎殿からとりたてるような真似はせぬ」

魔力回復の魔法をかけられたお陰か、冬獅郎の顔色もよくなった。

ヴァンパイアの力の源は血。その血を使った術の他に、魔法を使えた。人間の魔法より遥かに強力で、ヴァンパイアが恐れられる原因の一つになっていた。

一護は、冬獅郎に力の制御についてあれこれと教えて、時折ルキアが説明の足りない部分をカバーしたり、実際に魔法を使って見せたりした。

浮竹と京楽は、そんな三人をほっこりしながら見ていた。

「ブラッディ・ネイに式を放ったのは悪かったかな。たまにはこんな、知り合いと冒険もいいな」

「まぁ、ブラッディ・ネイの真意はどうであれ、冬獅郎クンの力の制御はなんとかなりそうだね。これなら、もう暴走する心配もないだろう」

「だが、その存在をどうするかだ。いっそ、俺たちの子として引き取るか?ブラッディ・ネイのいる血の帝国は嫌いなようだし」

ぎゃあぎゃあ言っていた三人が、浮竹を見た。

「浮竹、俺は血の帝国に入る。ルキアの守護騎士見習いになることにした」

「え、そこまで話すすんでたの」

「ああ、冬獅郎は筋がいい。同じヴァンピールだし、冬獅郎は行く当てもないみたいだから」

「僕らの古城で、住んでもいいんだよ?」

京楽の甘い誘いを、冬獅郎は蹴った。

「お前らみたいな平和ボケしたヴァンパイアと生活してたら、こっちまで怠惰になる。一護と一緒にルキアを守りたい」

「冬獅郎殿、無理はしないでいいのだぞ」

「俺が決めたことだ。俺は、ルキア、お前に忠誠を誓う」

すっと片方の足を跪かせて、冬獅郎はルキアの手に接吻した。

「あ、冬獅郎てめぇ、ルキアに何してやがる!」

「ふん。ヴァンパイアの、花嫁にするための行動だろう?俺は、ルキアに求愛している」

「冬獅郎殿!」

ルキアが真っ赤になった。

すると、反対の手に一護が片足を跪かせて接吻した。

「もてもてだねぇ、ルキアちゃん」

「もてもてだな」

「京楽殿、それに浮竹殿まで!」


「あれ、いいね。僕も君に求婚するよ」

さっとその場で片足を膝まづかせて、京楽は浮竹の右手をとって、接吻した。

「僕の花嫁になってくれるかい」

「いやだ」

「振られちゃった・・・・・」

がっくりと項垂れる京楽に、浮竹が言う。

「お前が嫁に来い」

「え、そっちなの?そっちならOKなの?」

「俺はお前を血族にした。俺が求婚すべきだろう」

「まぁ、どっちでもいいけどね」

一行は、結局3回層まで進んで、ダンジョンを後にした。

途中で、浮竹がミミックに食われること、実に十二回。

もう、みんな浮竹はミミックに食われるものだと思った。浮竹はミミックから京楽に助けられてはファイアーボールでミミックを倒し、宝物を手にした。

武器防具は捨てていくので、京楽が回収する。

魔法書を、浮竹は特に喜んだ。始祖は、多彩な魔法を使う。炎属性が一番適性があるので炎の魔法を好むが、闇や光の魔法も使えた。

後は、呪術やら式を使役したりもしていた。

一行はダンジョンを出て、戦利品を冒険者ギルドに売った。初級冒険者がミスリルの防具を持っていたことに、受付嬢は驚きはしたが、一護の魔剣を見て納得したようだった。とてつもない魔力を帯びているのを、肌で感じ取ることができた。

「Eランクですが、Bランクへの昇格試験を受けてはどうですか?」

「興味ないからいい」

一護は、そっけなかった。

「では、他の方々もCランクへの昇格試験を・・・・・・・」

「いや、別に冒険者稼業やっていくわけじゃないから」

「右に同じだよ。浮竹が受けないなら、僕も受けない」

「私もいらぬ」

「俺もいらねぇ」


いきなりEランクからCクラスやBクラスに昇格試験を受けるのは、相当な手練れだということだ。

それを断るとは。

ざわめく冒険者を無視して、モンスターの素材やら魔石、あとは宝箱から出た武器防具を売り払って、金貨40枚になった。

「5人で分けると、金貨8枚か。しけてるな」

冬獅郎の言葉に、受付嬢は顔を引き攣らせた。


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それから4週間は、ルキア、一護、冬獅郎は浮竹と京楽の住む古城で世話になった。

浮竹が、つきっきりで冬獅郎に、力の制御を教えた。

ルキアは一護と一緒に、ダンジョンに潜ったりしていた。モンスター討伐が楽しいらしい。

A級ダンジョンの最深部まで攻略したと聞いて、浮竹も京楽も驚いた。

「あのA級ダンジョンの最深部のボスはドラゴンだろう。大丈夫だったのか?」

「それが、古代語であるならば理解する知恵あるドラゴンでした。友人になりました」

「そうなんだよ、ルキアのやつ、危ないからやめとけっていってるのに、ドラゴンに近づいて話しかけて・・・びっくりしたけど、害のないモンスターだった」

友人の証である、ドラゴンの宝玉のネックレスを見せられて、浮竹も京楽も冷や汗をかいた。

さすがに力の強いヴァンピールである一護に守られてるとはいえ、ドラゴン相手だと殺される可能が高い。

ドラゴンは、始祖ヴァンパイアと同じで、始祖ドラゴンがいる。その始祖から誕生した血脈のドラゴンは、とにかくめちゃくちゃ強い。

A級ダンジョンに住まうドラゴンは、始祖の血脈である。

始祖同士は神代(かみよ)の時代から生きていて仲がいい。ルキアから始祖の匂いを感じ取ったドラゴンは、好意的であった。


時が流れるのは早く、冬獅郎は完全に力の制御の仕方を覚えた。もう、暴走させることはないだろう。ルキアの元で守護騎士見習いとして、一護のサポートをするらしい。

「では、浮竹殿も京楽殿も、達者で。短い期間でしたが、ありがとうございました」:

「ルキア君、堅苦しいことはなしだ。血の帝国とは空間転移魔法で行き来が可能だから、俺たちも近いうちに、また血の帝国にいくさ」

「その時はぜひ、遊びにきてください!」

ぱっと顔を輝かせたルキアの背後で、守護騎士の制服に身を包んだ一護と冬獅郎の姿があった。

「お前たちも元気でな!」

「ルキアちゃんを、ブラッディ・ネイから守ってね!」

「当たり前だ!あ、浮竹さん、血をもらうの忘れてた!」

「あ、俺も忘れてた。ほら、これがそうだよ」

小さな瓶に入った浮竹の血液を受け取って、一護は浮竹に礼を言った。

「ありがとうございました!また、遊びにきます!」

「その血には、魔法をかけてあるから、悪用はできない。一護君の力を増す役割を果たすし、ブラッディ・ネイにも魔剣の力が届くようになるだろう」

ブラッディ・ネイは始祖ではないが、始祖の次に生まれた、神代から生きる、転生を繰り返すヴァンパイアだ。その体に通常攻撃は効かず、ブラッディ・ネイを倒すには魂を、精神体を攻撃する必要があった。

もっとも、精神体を攻撃されてもダメージを受け、依代である肉体を離れて休息に入るだけで、ブラッディ・ネイを殺せるのは、実の兄である始祖の浮竹だけだ。

ブラッディ・ネイはいろいろ、年端もいかぬ少女を後宮に入れて、欲を満たしたりしてだめなところもあるが、あれでも統治者としては優れている。

八千年もの間、伊達に血の帝国に女帝として君臨しているわけでない。

空間転移の魔法陣は、浮竹の古城の地下にあった。

ルキアが祈りをこめて、魔力を流す。こちら側に来たときは初めて神の魔法に触れたので、一昼夜かかったが、浮竹も魔力を流してくれたので、すぐに転移魔法陣は動きだした。

「では、お元気で」

「またな」

「浮竹さん、京楽さん、本当にありがとう!」


転移魔法が発動し、三人の姿が消えていく。

浮竹と京楽は、去っていった三人に向かって、手を振るのだった。


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「んっ」

京楽に、ベッドに押し倒されていた。

「京楽?」

「やっと邪魔者たちが去ったんだ・・・今夜は寝かさないよ」

「春水、愛してる」

「僕も愛してるよ、十四郎」

互いを貪りあうよう、深い口づけを繰り返して、京楽の下で浮竹は乱れた。


「朝食の用意ができているよ。今日は僕が作ってみたんだ。早く起きて」

浮竹の長い白髪を手ですきながら、京楽は浮竹の眠るベッドに腰かけた。

「ん・・・誰かさんが、明け方までしつこかったからまだ眠い」

「朝食とってから、また寝たら?」

「そうする」

バスローブのガウン姿で、浮竹は起きて、京楽の首に手を回し、キスをした。

「誰かにいっぱい血を吸われたせいで、くらくらする」

「人工血液剤あるよ」

「五錠ほど、くれ」

独特の苦みがある人工血液剤を噛み砕いて飲み干すと、貧血はすぐに治まった。

「また寝るから、着替えはいいか」

浮竹は起きだして、京楽に手をひっぱられてダイニングルームまできた。

「おいしそうな匂いがする」

「オムライス作ってみた。隠し味に、処女の血を数滴」

「誰の血だ」

「昨日、町に買い物ににいったら幼い孤児の少女が身を売っていたので、注射器で血を少々いただいて、金貨10枚を握らせて、孤児院に置いてきた」

「誰にも見られなかっただろうな。最近、隣町の近くにまでヴァンパイアハンターがきているらしい」

「冒険者ギルドにも、懸賞金がかかって乗ってたよ。普通のヴァンパイアだけど、処女の幼い少女を六人も殺しているそうだよ」

「京楽、見つけ次第駆除しろ。俺たちの生活を脅かす存在は、人間であろうがヴァンパイアであろうが、許さない」

浮竹の翡翠の瞳が、真紅になっていた。

始祖の血が、敵は排除しろと疼く。

ふっと、怒りを鎮めて、浮竹はオムライスを食べた。

「案外うまいな」

「戦闘人形のメイドに、作り方教えてもらったからね」

「処女の血の隠し味がうまい。やっぱり、俺もヴァンパイアだな。人工血液も好きだが、人間の血もうまい」

「それは、どのヴァンパイアでも同じだよ。血の匂い嗅いでたら、君の血が欲しくなった」

「昨日、あれだけ吸血しておいて・・・・・」

「食べてもいい?」

「ああもう、好きにしろ。人工血液を、用意しておけ」

始祖の血は、中毒性のある甘美な麻薬。

それにすっかり虜になっている京楽は、浮竹が嫌がるまで吸血した。


「もお、やぁっ」

セックスをしながらの吸血行為は、酷く快感を吸われる者に与える。

「あ、や・・・・・」

ズチュリと中を侵す熱に、意識が飛びそうになる。

「昨日、あれだけ抱いておいてまだ足りないのか」

「一カ月ぶりだよ。君を抱くの。以前は一週間に一度は抱かせてくれてたじゃない。ああ、君の血は甘い。毒だね、まるで」

「始祖の血をここまで飲めるのは、お前くらいだ」

過去に血族にした者もいたが、渇きを覚えるたびに血を与えたことはなかった。

ぐちゅっと音をたてて、結腸にまで入り込んできた京楽のものに、意識をもっていかれそうになる。

「あああーーーー!!」

中でいくことを覚えた体は、射精せずとも高みへと浮竹を導いた。

「あ、だめぇ、いってるのに、吸血は、だめぇ」

浮竹の太ももに牙を立てて、京楽は血を啜った。

その快感は浮竹には大きすぎた。

射精しながら、びくんびくんと体を震わせた後、意識を失った。

京楽は、浮竹の胎の奥に子種を注ぎ込む。

「君は、僕だけのものだ。君の血も、僕だけのもの・・・・」

浮竹が一護に、浮竹の血の入った小瓶を渡すのに、嫉妬を覚えたなんていえない。

浮竹の白い頬を手でなでて、その白い長い髪を手ですいていく。


ざわり。

浮竹の張った結界に侵入者を探知して、京楽は衣服を整えると、浮竹にガウンを着せて、窓を開け放った。

「ヴァンパイアハンターか・・・・」

銀の匂いに、眉を顰めた。







































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