忍者ブログ

プログ

小説掲載プログ
02 2025/03 3 6 7 89 10 11 12 13 14 1516 17 18 19 20 21 2223 24 25 26 27 28 2930 31 04

花の神

朝になった。

京楽の寝所で起きる。いつものように、何もしないでただ一緒に眠っただけの朝。

チチチチチチ。

小鳥の鳴き声が聞こえて、浮竹は夜着のままベッドからおりて、小鳥用のえさをいれた皿を、いつもの窓辺の下においた。

チチチチチ。

小鳥は、シロとクロと、あと二羽いた。

「ヒナが生まれたのか!」

二羽のヒナは、シロとクロから餌をねだり、大きな口をあけてぴよぴよと鳴いていた。

「おい、京楽!」

浮竹は、京楽を起こした。

「んー今何時」

「それより、シロとクロがヒナを連れてきたんだ!」

「えっ、ヒナかい?」

京楽も興味をそそられたようで、そっと窓辺の下を見る。二羽のヒナは精一杯口を大きくあけて、餌をねだっていた。

「あと半月もしないうちに、巣立ちだろうねぇ」

「そうだな」

この間、綿をおいておいたら、巣作りのために運んではいたが、あれからもう1か月はたつのだろうか。

卵を産んで、ヒナが育ち、巣立ちを目の前にしていた。

「時間が過ぎるのって、結構早いね」

「ああ」

このまま生き続ければ、いずれシロとクロとも別れがくるだろう。でも、その子供たちがいる。しっかりと絆は受け継がれていく。

「今日の予定は?」

「今日は何もないよ」

「珍しいな」

「たまには総隊長にも休暇がないと、やってけないからね」

京楽の、総隊長としての仕事を一緒にすることが多い浮竹には、嬉しいことだった。

いつもは京楽が総隊長としての仕事に追われて、日が落ちる頃に自由になる。昔のくせで、仕事をほっぽりだして浮竹をでかけることはあったが、翌日にはその前の日の分も仕事に追われて、夜になるのだ。

「何する?」

「さぁ、休日だと思っていなかったから、いつものように日番谷隊長のところに遊びに行こうかと思ってた」

「じゃあ、二人で遊びに行こうか」

「ああ、そうしよう」

総隊長が、10番隊の執務室に遊びにいくというのも変だが、とにかく二人は日番谷のところにやってきた。

「何の用だ、この暇人のおっさんどもが!」

日番谷は、京楽と浮竹の姿を見ると、眉間にしわを寄せた。

「まぁまぁ、いいじゃないの日番谷隊長」

京楽が、松本のいれたお茶をすすりながら、茶菓子として置かれていたわかめ大使を食べる。

「このわかめ大使も、大部尸魂界に浸透したねぇ」

朽木白哉が考案したわかめ大使というお菓子は、見た目のせいであまり人気がなかった。浮竹がよくもらいにくるので、浮竹を通じて尸魂界に浸透したといっていいだろう。

「俺は、昔から好きだぞ、このわかめ大使」

あんこがくどくなくて美味いのだと、浮竹はいう。

「仕事でもしてろよおっさんども」

「いや、それが今日は仕事のない日なんだ」

浮竹が、お茶をすする。すでに、マイ湯呑・・・・専用の湯呑があるくらい、日番谷の執務室に出入りしていた。

「菓子食って茶を飲んだら帰れ。俺は用があるんだ」

「まぁまぁ、そう言わずに・・・・・・・・」

京楽が、外から感じる霊圧ににまにましだした。

「これだね?」

小指を立てる。・

「うっせぇ!」

京楽の頭を、どこからもちだしたのか分からないスリッパではたいて、日番谷は執務室の扉をあけた。

「シロちゃん、こんにちわ・・・・って、京楽総隊長に浮竹元隊長!?」

小指の意味に、遅まきに浮竹が気づく。

「すまない、デートがあるならそうはっきり言ってくれ日番谷隊長!」

「ななななな、べ、別にデートじゃねぇ!」

にまにましている京楽を引きずって、浮竹は10番隊の執務室を後にした。

することがなくなって、二人で甘味屋にいく。日番谷と雛森も入ってきたので、二人して遠くの席に移動して、若いカップルを見学する。

分かったことは、雛森は思っていたよりよく食べるのと、日番谷は抹茶アイスばかり食べていた、ことくらいだろうか。


午後になった。

「暇だな」

「暇だね」

二人して、木陰の下で寝転んで、あまりの暇さに午睡をはじめた。

「京楽総隊長!浮竹隊長!」

名を呼ばれ、ゆり動かされて、目覚める。

「ルキアちゃん?」

「ん、朽木か?」

「あたしもいるよー」

苺花と手を繋いで、買い物帰りらしかった。

「こんなところで寝ていると風邪をひきますよ」

「いやぁ、あまりに暇で」

「同じく」

「そんなに暇なら、我が家にきますか?歓迎します」

席官クラスの者たちの屋敷が並んでいる通りに、ルキアの家はあった。恋次の金では買えるはずもない大きさに、朽木という名のもつ意味を知った。

「今は、屋敷の者はいませんので・・・・」

きょろきょろと、ルキアの家の中を見ていく。いたるところに、チャッピー人形が置いてあった。

「ここ、あたしの部屋!入っちゃだめ!チカさんにもまだ見せてないんだよ」

苺花が通せんぼするので、その部屋には入らなかった。

談笑していると、時間が経つのも早くて、恋次が帰宅してきた。

「うわっ、京楽総隊長に浮竹元隊長!なんでこんなとこにいるんすか!」

「いやぁ、あまりに暇だったのでお呼ばれしちゃったの」

「右に同じく」

京楽と浮竹は、阿散井家の団欒にまじって、夕食を食べさせてもらい、1番隊の隊首室に帰ってきた。

湯あみをすませると、もう9時を過ぎていた。

「今日は、日番谷隊長と暇森副隊長のデートも見れたし、阿散井家で楽しく過ごせたし、悪くない一日だった」

浮竹の長い、膝裏まで伸びてしまった髪をドライヤーで乾かしながら、京楽も頷く。

「悪くない一日だったね」

「こんな平和もいいものだな。暇すぎるのはあれだが、明日は久しぶりに朽木のところに遊びにいこうかな。仙太郎と話しもしたいし」

「僕の仕事が終わるまで、待ってくれるかい?」

「勿論だ」

浮竹は、そう笑みを零した。

今はもう雨乾堂はない。そこは、死んでしまった浮竹の墓になっている。

まだ、自分の墓にはいったことがない。

あの墓の前から、今の浮竹は出てきた。花の神に、新しい命を与えられて。

あの墓にいけば、自分が消滅しそうな気がして怖いのだ。

だから、わざと避けている。それを知ってか、京楽も浮竹の墓参り、という行為をやめてしまった。

「今度の休みの日には、山じいの墓参りにいこうか」

「ああ、そうだな」

京楽は、浮竹の墓参りに行こうとは言わない。今ここに、浮竹が生きて動いているからだ。

次の休みがいつになるか分からない。

でも、いつか、と思う。

自分の墓を見て、一区切りつけたい。

赤子の頃、花の神の愛児として祝福を受けた。その花の神の力で生き返った。神掛をしたことに悔いはないが、京楽を残して逝ってしまったことにはとても後悔している。

花の神に愛され、浮竹は生きる。

今を。


ふと、花の神は目覚めた。存在をなくし、意識をなくし、名をなくしていた、

「浮竹十四郎・・・・・・・・」

花の神は、愛児の名を呼ぶ。

それにこたえる者は、誰もいなかった-------------。


拍手[0回]

PR
URL
FONT COLOR
COMMENT
Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
PASS

TRACK BACK

トラックバックURLはこちら
新着記事
(03/05)
(03/04)
(03/04)
(03/02)
(03/01)
"ココはカウンター設置場所"