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花街恋話3

花街の椿亭に色子として売られて、3か月が経とうとしていた。

初見世を京楽に買ってもらい、抱かれぬまま時を過ごす。他の色子のように、毎晩のように違う男に抱かれることもなく。

京楽は、浮竹を色子として買っていたが、実際はハグやキス程度の仲で、よく飴玉やらチョコやら、お菓子をもらった。

ある時、京楽に抱いてもいいと言い出した。

きっと、京楽はこんな子供の俺を不憫に思っているだけなのかと思ったら、意外と性欲の対象に見られていて、それがなぜか嬉しくあった。

最近、花魁の椿が荒れていた。

「最近、京楽の坊ちゃんが来てくれない。なのに翡翠、なんであんたのとこにはくるの!」

「知らない」

「あんたが京楽坊ちゃんをそそのかしたんでしょ!」

「言いがかりだ」

椿は、京楽以外にも馴染の客がいる。でも、京楽に身請けされることを望んでいた。

多分、京楽は椿なんて花魁を身請けはしないだろうなと、思った。

感情の幅が激しい。京楽は、きつい性格の子より、大人しめの性格の子のほうが好きだと思った。

「翡翠、お前生意気だよ!新入りのくせに!」

パンっと、頬を叩かれた。長い爪で頬に傷跡ができて、血が流れた。

「何しているんだい椿!おちつきなさい」

主人の松村が止めに入るが、椿は激高して浮竹を蹴り上げた。

「ぐ・・・・・げほっげほっ」

肺を蹴られて、治まっていた肺の発作が起こる。

ボタボタと吐血して血が畳の上に広がり、大変だと松村は医者を呼びにいった。花魁の椿は、浮竹を傷つけたことで咎められて、お仕置きされた。

それがより一層、椿を暴力的にさせていた。

「なんで花魁のあたしがお仕置きされなきゃいけないのさ!」

軽い仕置きだったが、それでも椿は言うことを捻じ曲げず、反省の色もなかった。

「翡翠、なるべく椿に近づいてはいけないよ」

松村の言葉通り、血を吐いて倒れた浮竹は、椿を避けた。

食事の時間もずらして、湯あみの時間もずらした。

その二日後、京楽がやってきた。

「大丈夫なの?血を吐いたってきいたけど」

「慣れている。もう大丈夫だ」

「これ、新しい肺の薬。苦いかもしれないけど飲んでみて」

新しく4番隊で作られという薬を飲んだ。苦かったが、肺がすっとしたような気がした。

「新薬は高いだろう」

「なに、翡翠のためと思えば出費なんてなんでもない」

「今夜、君を抱くよ?いいかい?怖いならやめるけど」

「怖くなんてない」

京楽の前では、強がりをするだけ無駄だ。

「少し、怖い・・・・・」

「大丈夫、優しくするから・・・・」

今日が、本当の意味での初見世になるのだ・

褥に横たえられた。

肩までの長さの髪に触れてくる。そのまま抱き締められ、深い口づけをうける。

「んうっ」

ぬるりと、咥内に舌が入り込んでくる。おずおずと答えると、飲み込み切れなかった唾液が顎を伝った。

遊女の着物を脱がされて襦袢姿にされ、それも脱がされていく。

シミ一つない白い裸体が、露わになった。

右手首には、包帯を巻いたままだ。

それを外そうとする京楽を、止めた。

「これはいいんだ・・・・」

「どうしたの、この傷。ずっと前から気になってたんだけど」

「13歳になる2日前、一度死のうとした」

「ええ!」

衝撃の告白に、京楽がおろおろしだす。

「もう大丈夫なんだ。俺には京楽、お前がいるから」

「そうかい。よかった・・・・。続きしてもいいかな?」

「お好きなように」

京楽の唇が、喉、鎖骨、胸、臍へと降りてくる。

「んっ」

胸の先端を指でつままれると、かすかに電流が流れたようなかんじがした。

そのまま、何度も舐め挙げられて、京楽は精通を迎えてまだ間もない浮竹の花茎を口に含んだ。

「ああっ」

「君のは、幼いからかわいいサイズだね」

「ばかっ・・・あああっ!」

何度も吸い上げられ、愛撫されているうちに、吐精してしまった。

それをごくんと飲みこんだ京楽の頭を殴る。

「そんなもの、飲み込むな」

「君のは、味が淡泊な気がする。他に飲んだことないから分からないけど」

「あっ」

潤滑油で濡らされた指が体内に侵入してくる。

「ううんっ」

ばらばらに動かされて、前立腺を刺激されると、まだ若い浮竹のものは反応した。

「ああっ」

「ここがいいの?」

「やだっ、またくる!」

前立腺をいじられてばかりいるのが悔しくて、大きな京楽のものに手をかけた。

「翡翠?」

「俺もする・・・・・」

京楽の大さにどきまぎしながら、舌を這わせた。先端を口に含み、それ以外は手を動かしてじゅぷじゅぷと音がたつまで刺激していると、一際京楽のものが大きくなった。

「出るから、離れて」

浮竹は咥内でそれを受け止めた。びゅるるるると出される勢いにまけて、飲み込みきれずに零す。

「あああ、飲まなくていいのに」

「変な味がする」

浮竹は、京楽の精液を綺麗になめとった。

「僕が恥ずかしい!」

「続き、しないのか?」

「するよ・・・・力抜いて」

潤滑油を己の欲望に塗りまくって、幼い体の蕾にあてがい、一気にではなくゆっくりと挿入していった。

「んあ・・・でかいな」

「ここが入りきればあとは大丈夫だから」

「ああっ」

抑えがきかなくなって、京楽は浮竹の体の奥まで突き上げてしまった。

「ごめん、優しくするって言ったのに・・・・・君の中があまりにもきもりよくて、先に果てそうだ」

京楽もまだ若い。浮竹の最奥に射精した。

「あ、あ、ああああ!」

京楽が、浮竹を突き上げる。そのたびに、結合部から卑猥な水の音がした。

「やだっ」

前立腺ばかりを突き上げられて、浮竹がまた精を放ちたくなっていた。

「もうちょっと我慢して・・・・・」

浮竹の花茎を戒めて、京楽は突き上げた。

「ひあああああ!」

前立腺をこすりあげ、最奥まで突き上げるのと一緒に、戒めを解放する。浮竹の2回目の射精は、一度目の時より量が多かった。

「ん・・・まだいけそう?」

「んあ・・・・」

ずちゅっと音がして、体位を変えられる。

背後から貫かれた。

「あっ」

そのまま何度か貫かれて揺さぶられているうちに、3回目の射精を迎え、京楽も浮竹の中に欲望をぶちまけた。

お互い、横になって呼吸を整える。

「ごめん、はじめてなのに、無理させちゃったね・・・・・・」

「そんなに乱暴じゃなかった。大丈夫だ」

浮竹は、情事の後の気だるい感覚を覚えた。

「動ける?」

「少しなら」

「支えるから、湯あみしにいこう。このままじゃべとべとだ。褥も変えよう」

襦袢をきて、同じく襦袢姿の京楽に抱きかかえられて、湯殿にいって体を清め、京楽が浮竹の体内にだしたもをかきだされた。どろりと、けっこうな量が出た。

「また今度、抱いてもいいかい?」

「俺を買っているのだろう。俺は色子だ。お前だけの。お前になら、抱かれてもいい」

「・・・・本当に、この子は」

ちゅっと音のなるキスを頬にされた。湯あみを終えて、襦袢を着換え、お互い新しい衣服を着る。

「君の服、普通なのないの?」

浮竹の服は、遊女のものだった。といっても、とても小柄なものだが。

「なんでも、この前身請けされた人気のあった遊女がとても小さい子だったらしくて、その人が残していった着物が、俺にぴったりなんだそうだ」

「そうか。まぁリサイクル精神はいいけど、今度僕が君専用の着物を誂(あつら)えてあげる。男物と女物、両方作ってあげるから、好きな方を着るといいよ」

「俺は、別に女物でも構わない。色子だし・・・女物のほうが、俺には似合うだろう?俺を買いたいという男はみんな、俺が女物の着物を着ている時にいうんだ」

「なんだって。君を買いたいだって?」

「ああ、暇だから他の遊女や色子の世話をしている。その時に、声をかけられるんだ。全部断ってるし、松村様が許さない」

「そりゃね。君は僕のものってことにしてるから。君を買うお金も随分かかってるけど、君を他の男に抱かせないためのお金のほうがかかってるからね」

「搾り取れるだけ搾り取れ、だそうだ」

「ふふん、この程度で僕のお金を搾り取ろうだなんて甘いよ。その気になったら、廓ごと余裕で買いとれるんだから」

「そしたら、お前が廓の主人になるのか?」

「いや、僕は死神だから、ちょっと廓の主人は無理かなぁ」

くすくすと、浮竹は笑った。

「翡翠、おいで」

手招きされて、京楽の膝の上に乗る。

「これをあげる」

それは、翡翠でできた首飾りだった。一番いい石を使っていると、素人の目でもわかるほどの輝きだった。

「こんな高そうなもの、もらえない」

「受け取りなさい。京楽からの命令だよ」

「仕方ないな・・・・・・」

「かしてごらん。つけてあげるから」

翡翠のペンダントは、浮竹によく似合った。浮竹が今している髪飾りも、螺鈿細工のもので、京楽が買い与えたものだった。


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