薬
「本当に、この薬を飲めば?」
「君もしつこいネ。説明通りだといっているだろう」
涅マユリに、全財産をはたいて作らせた薬・・・・・一種の惚れ薬のようなものを手にその女死神はこれで願いが叶うとうれし気だった。
愛する京楽隊長を手に入れることができると。
あとはどうやって京楽に飲ますかだ。
「飲ませればいいのね?」
「スプレー状にして吹きかけても効果はあるヨ」
「本当に!?」
「こんなことで嘘をついてもなんにもならないからネ。ただ、スプレー状だと効果は薄いヨ。直接飲ませることだネ」
マユリは、もう興味はないのだと、女死神を追い払った。
京楽は、浮竹と一緒に甘味屋にきていた。
この時を待っていたのだ。
いつかこの甘味屋にくる浮竹に付き添って、京楽がくる可能性は非常に高い。いきなり飲みものをといって薬いりのものを差し出しても、飲んでくれない可能性がある。
女死神は、京楽の分のお冷の中に薬を流しこんだ。
「ふふ、これで・・・・・・・」
「おい、そこでぼーっとしてないで注文とってこい」
店主にせかされて、接客係として前から甘味屋で働いてた女死神は、急いでお冷とおしぼりをもって京楽と浮竹のところにきた。
「お汁粉を2つ。それから抹茶アイスと白玉あんみつも2つずつ」
注文をメモする。
京楽と浮竹にお冷をだすと、二人ともなんの疑いもせずにそれを口にした。
「甘い・・・・?」
京楽が、首を傾げていた。
「なんだ?何か変なのか?」
「いや、別になんでもないよ」
京楽が薬入りのお冷を飲んだのを確認して、女死神は厨房に注文を伝えるために去って行った。
京楽と浮竹は、何事もなかったように甘味屋で食事をして出て行った。
これでいいのだと、女死神は仕事を放棄して二人の跡をつけた。
「じゃあ、俺は先に雨乾堂に帰っているから」
「ああ、仕事をすませたらまたよるよ」
京楽を尾行する。
人通りもなくなった場所で、女死神は笛を吹いた。
それが合図だった。
「・・・・・・浮竹?」
薬を飲まされた京楽の目には、女死神が浮竹として映っていた。
「京楽隊長・・・・じゃない、京楽。少しあそこに寄って行こう」
女死神が指示した場所は、安めの宿屋。
「こんな真昼からどうしたんだい。大胆だね」
嬉しそうに、京楽は女死神の腰に手を回す。
「好きだぞ、京楽」
「僕も好きだよ、浮竹」
二人はそのまま安宿屋に入っていった。
急いで着物を脱いでいく。既成事実を作ってしまえば、こっちのものだ。このときのために、確実に妊娠する薬をマユリに別に作らせておいた。
それを飲み干して、女死神は、ベッドの上に転がった。
「・・・・・・浮竹?」
京楽が、いつもよりあまりに積極的な浮竹に首を傾げる。
「京楽、こい」
女死神は、裸になっていた。
薬は確実にきいている。その証拠に、京楽もその気になっていた。
「あんっ・・・・」
まさぐられ、甘い声をだした女死神。
「本当にどうしたんだい浮竹・・・・・・・」
「お前がほしい・・・・・早くきてくれ」
「こんな急に・・・それに潤滑油もなしじゃあ・・・」
「そんなものいらないわ、早く!」
浮竹のふりをするのを忘れて、女死神はしまったと思った。
「君・・・・・浮竹じゃない?浮竹からはいつも甘い花の香がするのに・・・君からは、薔薇の香水の匂いする」
「た、たまたまプレゼントにもらったものをつけただけだ。俺は浮竹だ!」
熱弁して、京楽の衣服を脱がせようとする。
「浮竹はね、香水なんてつけないよ」
浮竹・・・・いや、京楽には浮竹に見えている女死神の手を振り払う。
「京楽!俺が分からないのか!」
もう一度、笛を吹いた。反応がないので、女死神は何度も笛をふいた。
「・・・・・・・」
眩暈がして、ぐらりと、京楽の体が傾ぐ。なんとか膝をついて、荒い呼吸を繰り返す。
京楽は、刀を出すとそれで自分の太ももを突き刺した。
「・・・・・・幻覚系の薬か何かだね」
傷の痛みのせいで、薬の効果は切れてしまった。
裸になって縋り付いててくる女を突き飛ばす。
「服着なよ。僕はその気はないから」
「待って!」
女死神は、京楽の背後から抱き着いた。
「抱いて!一度だけでいいから!」
「僕は、その気がないと言っている。こんなバカな真似をする女を、同情でも抱く気はしないね。それに、僕には浮竹がいる」
もう一度、ベッドのほうに突き飛ばすと、女死神は狂気に似た光を瞳に宿らせていた。
「乱暴されたって言いふらしてやる!」
「好きにすれば?君が僕に薬か何かをもったことを、僕は公言するね。それに、僕が浮竹以外に手を出すなんて、瀞霊廷のみんなが信じないと思うけどね」
それだけ、京楽と浮竹の関係は知られているのだ。
「じゃあね」
それだけ言い残すと、京楽は瞬歩で雨乾堂まできていた。
「京楽!?」
太ももから血を流している京楽を見つけて、浮竹が驚く。
「すぐ手当てするから!清音、救急箱を!」
「はい、隊長!」
雨乾堂で控えていた清音に、すぐに救急箱をもってきてもらって、傷口をみるために服を脱がせていく。
「一体どうしたんだ、この怪我は!」
深くはない。4番隊に見てもらうほどではないが、血が出ているのは確かだ。
止血して、消毒してからガーゼを当てて、包帯を巻いていく。
浮竹は、兄弟がよく怪我して帰ってくるので、応急処置の仕方とかに詳しかった。
「手当は一通り済ませた・・・・・・・京楽?」
「薬をもられたらしいんだ・・・・・・君は、ちゃんと甘い花の香がするね。本物だ」
京楽の口から、女死神のしでかしたことを聞かされて、浮竹は女死神の捕縛を命じた。
ほどなくして、女死神は安宿の近くで逮捕された。
浮竹はかんかんに怒っていた。中央四十六室から、後に判決がくだされるだろう。
「痛くないか、京楽?」
念のため、薬がぬけきるまで京楽を雨乾堂の布団に横たえて、心配する浮竹に京楽は苦笑を零す。
「まさか、いきなり薬を盛られるなんて思ってなかったからね。惚れ薬じゃなくてよかったよ。しかも涅隊長が個人用に作った薬には、欠陥品が多いからね」
あんな女を、短い時間とはいえ愛しい浮竹と間違えて認識していた自分に、腹を立てていた。
惚れ薬の一種らしいが、飲んだ相手を笛の音を合図に、愛しい相手と誤認させるという薬だった。本物の惚れ薬を盛られていたら、いくらなんでも洒落にならない。
まぁ、涅マユリが惚れ薬を作ることなど、まずはないだろうが。作っていたなら、今頃瀞霊廷はどこかで大騒ぎになっているだろう。
今回の薬も欠陥品だ。痛みですぐ解けたし、何より笛の音を何度もきくと眩暈を覚えた。
「全く、涅隊長は!」
ぷんすか怒る浮竹がかわいくて、その白い髪をひっぱった。
「なんだ、京楽?」
ちゅっと、音をたてキスされて、浮竹が朱くなる。
「ばか!」
「ああこの反応・・・・本物だって思うなぁ。君からは、いつも甘い花の香がするしね」
「これは、赤子の頃に花の神とやらに捧げられたせいで・・・・・・」
また、髪をひっぱってくる。
「なんだ?」
京楽は、その髪の匂いをかいだ。
「何してる?」
「本物だと思って」
半身を起き上がらせた京楽に、抱き寄せられた。
口づけられて、浮竹の手が京楽の背中に回される。
「今度から、気をつけろよ」
「それは君もだよ。君を狙う男死神もけっこういるみたいだしね」
「とにかく、まだ薬がぬけきっていない可能性があるから、寝てろ」
「傍にいてくれるかい?」
「ここは俺の住処だぞ。傍にいるのは当たり前だ」
夜が更けて、一緒に眠った。
布団は別々にしいたけど、結局一組の布団で寝た。
後日、女死神には強制労働と官席クラスの剥奪の命令が、中央四十六室から降りた。
「君もしつこいネ。説明通りだといっているだろう」
涅マユリに、全財産をはたいて作らせた薬・・・・・一種の惚れ薬のようなものを手にその女死神はこれで願いが叶うとうれし気だった。
愛する京楽隊長を手に入れることができると。
あとはどうやって京楽に飲ますかだ。
「飲ませればいいのね?」
「スプレー状にして吹きかけても効果はあるヨ」
「本当に!?」
「こんなことで嘘をついてもなんにもならないからネ。ただ、スプレー状だと効果は薄いヨ。直接飲ませることだネ」
マユリは、もう興味はないのだと、女死神を追い払った。
京楽は、浮竹と一緒に甘味屋にきていた。
この時を待っていたのだ。
いつかこの甘味屋にくる浮竹に付き添って、京楽がくる可能性は非常に高い。いきなり飲みものをといって薬いりのものを差し出しても、飲んでくれない可能性がある。
女死神は、京楽の分のお冷の中に薬を流しこんだ。
「ふふ、これで・・・・・・・」
「おい、そこでぼーっとしてないで注文とってこい」
店主にせかされて、接客係として前から甘味屋で働いてた女死神は、急いでお冷とおしぼりをもって京楽と浮竹のところにきた。
「お汁粉を2つ。それから抹茶アイスと白玉あんみつも2つずつ」
注文をメモする。
京楽と浮竹にお冷をだすと、二人ともなんの疑いもせずにそれを口にした。
「甘い・・・・?」
京楽が、首を傾げていた。
「なんだ?何か変なのか?」
「いや、別になんでもないよ」
京楽が薬入りのお冷を飲んだのを確認して、女死神は厨房に注文を伝えるために去って行った。
京楽と浮竹は、何事もなかったように甘味屋で食事をして出て行った。
これでいいのだと、女死神は仕事を放棄して二人の跡をつけた。
「じゃあ、俺は先に雨乾堂に帰っているから」
「ああ、仕事をすませたらまたよるよ」
京楽を尾行する。
人通りもなくなった場所で、女死神は笛を吹いた。
それが合図だった。
「・・・・・・浮竹?」
薬を飲まされた京楽の目には、女死神が浮竹として映っていた。
「京楽隊長・・・・じゃない、京楽。少しあそこに寄って行こう」
女死神が指示した場所は、安めの宿屋。
「こんな真昼からどうしたんだい。大胆だね」
嬉しそうに、京楽は女死神の腰に手を回す。
「好きだぞ、京楽」
「僕も好きだよ、浮竹」
二人はそのまま安宿屋に入っていった。
急いで着物を脱いでいく。既成事実を作ってしまえば、こっちのものだ。このときのために、確実に妊娠する薬をマユリに別に作らせておいた。
それを飲み干して、女死神は、ベッドの上に転がった。
「・・・・・・浮竹?」
京楽が、いつもよりあまりに積極的な浮竹に首を傾げる。
「京楽、こい」
女死神は、裸になっていた。
薬は確実にきいている。その証拠に、京楽もその気になっていた。
「あんっ・・・・」
まさぐられ、甘い声をだした女死神。
「本当にどうしたんだい浮竹・・・・・・・」
「お前がほしい・・・・・早くきてくれ」
「こんな急に・・・それに潤滑油もなしじゃあ・・・」
「そんなものいらないわ、早く!」
浮竹のふりをするのを忘れて、女死神はしまったと思った。
「君・・・・・浮竹じゃない?浮竹からはいつも甘い花の香がするのに・・・君からは、薔薇の香水の匂いする」
「た、たまたまプレゼントにもらったものをつけただけだ。俺は浮竹だ!」
熱弁して、京楽の衣服を脱がせようとする。
「浮竹はね、香水なんてつけないよ」
浮竹・・・・いや、京楽には浮竹に見えている女死神の手を振り払う。
「京楽!俺が分からないのか!」
もう一度、笛を吹いた。反応がないので、女死神は何度も笛をふいた。
「・・・・・・・」
眩暈がして、ぐらりと、京楽の体が傾ぐ。なんとか膝をついて、荒い呼吸を繰り返す。
京楽は、刀を出すとそれで自分の太ももを突き刺した。
「・・・・・・幻覚系の薬か何かだね」
傷の痛みのせいで、薬の効果は切れてしまった。
裸になって縋り付いててくる女を突き飛ばす。
「服着なよ。僕はその気はないから」
「待って!」
女死神は、京楽の背後から抱き着いた。
「抱いて!一度だけでいいから!」
「僕は、その気がないと言っている。こんなバカな真似をする女を、同情でも抱く気はしないね。それに、僕には浮竹がいる」
もう一度、ベッドのほうに突き飛ばすと、女死神は狂気に似た光を瞳に宿らせていた。
「乱暴されたって言いふらしてやる!」
「好きにすれば?君が僕に薬か何かをもったことを、僕は公言するね。それに、僕が浮竹以外に手を出すなんて、瀞霊廷のみんなが信じないと思うけどね」
それだけ、京楽と浮竹の関係は知られているのだ。
「じゃあね」
それだけ言い残すと、京楽は瞬歩で雨乾堂まできていた。
「京楽!?」
太ももから血を流している京楽を見つけて、浮竹が驚く。
「すぐ手当てするから!清音、救急箱を!」
「はい、隊長!」
雨乾堂で控えていた清音に、すぐに救急箱をもってきてもらって、傷口をみるために服を脱がせていく。
「一体どうしたんだ、この怪我は!」
深くはない。4番隊に見てもらうほどではないが、血が出ているのは確かだ。
止血して、消毒してからガーゼを当てて、包帯を巻いていく。
浮竹は、兄弟がよく怪我して帰ってくるので、応急処置の仕方とかに詳しかった。
「手当は一通り済ませた・・・・・・・京楽?」
「薬をもられたらしいんだ・・・・・・君は、ちゃんと甘い花の香がするね。本物だ」
京楽の口から、女死神のしでかしたことを聞かされて、浮竹は女死神の捕縛を命じた。
ほどなくして、女死神は安宿の近くで逮捕された。
浮竹はかんかんに怒っていた。中央四十六室から、後に判決がくだされるだろう。
「痛くないか、京楽?」
念のため、薬がぬけきるまで京楽を雨乾堂の布団に横たえて、心配する浮竹に京楽は苦笑を零す。
「まさか、いきなり薬を盛られるなんて思ってなかったからね。惚れ薬じゃなくてよかったよ。しかも涅隊長が個人用に作った薬には、欠陥品が多いからね」
あんな女を、短い時間とはいえ愛しい浮竹と間違えて認識していた自分に、腹を立てていた。
惚れ薬の一種らしいが、飲んだ相手を笛の音を合図に、愛しい相手と誤認させるという薬だった。本物の惚れ薬を盛られていたら、いくらなんでも洒落にならない。
まぁ、涅マユリが惚れ薬を作ることなど、まずはないだろうが。作っていたなら、今頃瀞霊廷はどこかで大騒ぎになっているだろう。
今回の薬も欠陥品だ。痛みですぐ解けたし、何より笛の音を何度もきくと眩暈を覚えた。
「全く、涅隊長は!」
ぷんすか怒る浮竹がかわいくて、その白い髪をひっぱった。
「なんだ、京楽?」
ちゅっと、音をたてキスされて、浮竹が朱くなる。
「ばか!」
「ああこの反応・・・・本物だって思うなぁ。君からは、いつも甘い花の香がするしね」
「これは、赤子の頃に花の神とやらに捧げられたせいで・・・・・・」
また、髪をひっぱってくる。
「なんだ?」
京楽は、その髪の匂いをかいだ。
「何してる?」
「本物だと思って」
半身を起き上がらせた京楽に、抱き寄せられた。
口づけられて、浮竹の手が京楽の背中に回される。
「今度から、気をつけろよ」
「それは君もだよ。君を狙う男死神もけっこういるみたいだしね」
「とにかく、まだ薬がぬけきっていない可能性があるから、寝てろ」
「傍にいてくれるかい?」
「ここは俺の住処だぞ。傍にいるのは当たり前だ」
夜が更けて、一緒に眠った。
布団は別々にしいたけど、結局一組の布団で寝た。
後日、女死神には強制労働と官席クラスの剥奪の命令が、中央四十六室から降りた。
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