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虫歯(1期)

「痛い」

「何処がだ?」

ティエリアが、右の頬に手をあてて、ロックオンを睨んでいた。

「虫歯・・・・かもしれない。あなたの虫歯がうつったのかもしれない」

「おいおいおい勘弁してくれよ。俺の虫歯は半年前に治ったぞ」

人間、歯を磨いていても完璧じゃありません。磨いていても虫歯になる時はなるのです。

ティエリアはここ数日じくじくと痛み、熱いものや冷たいものを摂取すると染みる右奥歯が、虫歯ではないかと思い始めていた。

「ドクター・モレノは虫歯の治療もできるだろうか?」

「いや、それより地上におりて歯医者いけって」

「いやだ」

「お前さんの地上嫌いはほんと難儀だなあ」

ロックオンは、がしがしとティエリアの紫紺の髪を撫でてから、ベッドに腰かけた。膝の上にティエリアを乗せる。それに無言で従うティエリア。

もうべったべたに甘いので、過剰なスキンシップにも慣れていた。

「ちょっと見せてみろ。はいあーん」

「あーん」

言葉に素直に従うティエリアが可愛くて仕方なくて、ロックオンはついキスをしそうになったが、自重した。

ティエリアの歯は綺麗な白で、歯並びもいい。しかし、確かに右奥歯には虫歯らしき影が見えた。

「あー。けっこうでかいな。こりゃ痛いだろう。俺も降りるから、一緒に歯医者に・・・・」

「嫌だ。地上に降りるなんて嫌だ。まして歯医者にいくなんてもっと嫌だ!」

あのウィーンと歯を削る音と消毒の匂いを想像しただけで、ティエリアの脳裏に、ロックオンの歯の治療につきそっていった光景が蘇る。

ロックオンは叫んでいた。

「痛ぇーーー」

と。


その時どれほどの痛みなのか分からなかったが、麻酔をうけるほどに痛いと聞いて、歯医者になど行きたくないとティエリアは思った。

現在の医学では、歯の再生治療もできるため、重症の虫歯は抜くのが普通である。

歯をぬかれる・・・・想像しただけでも余計に右の奥歯が痛くなってきた。

「ドクター・モレノに歯の再生治療を頼む!」

ティエリアは、そう決断した。

専用器具などないので、地上で歯を抜いてもらったほうが安全なのに、ティエリアは盲目的にドクター・モレノの腕を信じていた。

「歯医者いけって・・・・・」

「ドクター・モレノがいる!」

「まあドクター・モレノでもなんとかしてくれるかもしれないけどなぁ・・・」

ロックオンは、ティエリアのさらさらの髪を指ですきながら、思案する。

ティエリアの地上嫌いは今に始まったことではない。だが、専用器具がないことを考えると、地上の歯医者にいくのが安全であった。

今は任務が休暇中であるため、時間もある。

「ドクター・モレノのところにいってくる!」

ティエリアは、ジャボテンダーさんをぶんと振り回した。毎回のようにロックオンの顔にあたる。

「はいはい。ついていけばいいんでしょうお姫様」

「そうだ」

ロックオンは、ティエリアの手をとってベッドから立ち上がった。二人は、この後同じく休暇中でバカンスに出ていこうとしていたドクター・モレノを捕まえて、無理やり歯の治療を頼み込み、専用機器をドクター・モレノは集める羽目になった。

これで、いつ虫歯になっても安心である。

何気にジャンクフードばかり食べて、お菓子も食べている刹那の歯もやばいかもしれないとか、ロックオンは麻酔されてるのに痛い痛いを連発するティエリアの姿を見て思った。

歯は・・・・・5分くらいきちんとしっかり磨こうね。

良い子のみんな。

磨きましょう。

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