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血と聖水と名において10

いつものような朝がやってくる。

今日は、月に一度のメイドさんによる大きな洋館の手入れの日だった。

一護と血の帝国ブラッディアに旅立った、メイドだったルキアと入れ替わりでメイドになった七緒が、リーダーとなってメイドたちをまとめあげて、普段使っていない部屋も掃除する。

庭では、男性が庭師をしていた。

男性といっても少年で、まだ子供だった。ヴァンピールで、孤児らしい。

名前は日番谷冬獅郎。

浮竹が、時折寄付する孤児院にいるヴァンピールだった。氷の適性が高く、氷雪系の魔法を使い、ダンジョンなどに単独でもぐって、フロアボスを倒して財宝を手に入れて、孤児院に帰ってくる。

同じ孤児のヴァンピールの少女、雛森桃と仲がいい。

雛森は、今日もメイドとして孤児院から派遣されていた。

ヴァンパイアの血を引いているため、二人は孤児院でも浮いていて、成長が遅いせいで長く孤児院にいて、労働を義務づけられていた。

「日番谷くん、休憩したらどうだ。甘納豆あるぞ」

「・・・・・もらう」

冬獅郎は、浮竹の館の手入れは賃金がいいので、庭師として昔働いていた経験を生かして、月に数回庭の手入れに来ていたが、今日はメイドたちも一緒だった。

メイドの多くは孤児院育ちの者が多かった。

ヴァンピールが住んでいるので、万が一のことがあってもいいように、孤児だった者を選ぶ。そんなメイドの組織は大嫌いだが、浮竹は孤児を歓迎した。

冬獅郎は、近いうちに冒険者として雛森と一緒に、人間のパーティーに入ってやっていく予定だった。

今は、武具を買う金をためるために働いていた。

「ダンジョンはどうだ。単独で10階のフロアボスを倒して、財宝を持って帰ったそうじゃないか」

「必要経費だと、没収された」

「なに!俺が・・・・」

「いい!俺は、雛森と静かに暮らしたいんだ。冒険者にはなるが、ヴァンピールが好きな人間と組むことになっている。孤児院の居心地は最低だ。早く、独立したい」

「そうか・・・・・」

「浮竹、もしかしてショタコン!?だから、ボクとあんまりしっぽりしないの!?」

「何をほざいている、このだアホが!」

京楽の頭をすぱーんとハリセンで殴ると、氷の彫像のようだった冬獅郎が少しだけ笑った。

「このだアホ、ほんとに手がかかるんだ。俺のパンツ盗んだり、食べ残し食べたりはまだいいが、食べ終わった食器を舐めたり」

「変態だな」

「ああ、変態なんだ」

浮竹は頷く。

「変態で悪い?」

京楽は堂々としていて、いっそ潔かった。変態であるが。

「シロちゃん、仕事終わったよ」

「ああ、こっちももうすぐ終わる」

そんな二人を、浮竹と京楽は暖かい眼差しで見守る。

「何かあったら、いつでも館にこい」

「ああ。なにかピンチの時は、頼らせてもらう」

その日は、それで終わった。


後日になって、冬獅郎が血まみれの雛森を抱いて、浮竹の元に助けてくれとやってきた。

「ふざけんな!あの人間のパーティー、俺と雛森をボスの気をそらすために使いやがった。雛森は助かりそうか!?」

「ああ、さすがにヴァンピールなだけある。致命傷はないし、出血の割には傷は浅い。傷跡も残さず、癒そう」

浮竹は、ライフの精霊をだして、雛森に治癒術を施す。

ライフの精霊は、命を扱う精霊だ。そんな精霊を使役できるのは、世界広しといえど浮竹くらいだろう。

「冬獅郎くんの傷も癒そう」

「ああ、頼む。お金は、出世払いでいいか」

「こんな子供から、金なんかとらんさ」

「そうだよ?浮竹、実はショタコンだから」

京楽が、浮竹の隣でうねうねしていた。

「うるさい、京楽。誰がショタコンだ!」

「だって、冬獅郎くんにはいつも優しいし甘いじゃない。ボクにも同じように接してよ」

「毎日しっぽりうるさい自主休業S級ハンターと比べたら、冬獅郎くんのほうがいい」

「酷い!酷すぎる!!」

京楽はさらにうねうねした。

「ああもう、うっとうしい!」

蹴り上げると、京楽はキャインと鳴いて、しくしくと泣きながら用があると、七緒に連れ去られていった。

「あいつ、あんたの花嫁なんだろう?よくあんなひけもじゃの同性を花嫁にしたな」

「あれでも、まだ容姿が十代の頃はそんなにもじゃもじゃじゃなかったし、それなりにかっこよかったんだ。今は見る影もないが」

「殺して、また好きな花嫁を迎えないのか?」

「俺は、これでもあんな京楽だけど愛しているんだ。花嫁にしたことを後悔したことは・・・・数え切れないな。あれ、おかしいな」

「はははは、あんたバカだろ」

「そうかもな」

浮竹も笑って、冬獅郎と雛森の分だと、お菓子をいっぱいあげた。

「孤児院には、別途で送っておいたから、取り上げられることはないはずだ。あと、君たちを捨て駒にしようとした冒険者は、冒険者ギルドのほうで、厳しい処罰を受けるように手配しておいた」

「俺、女だったら、きっとあんたに惚れてる」

「もう、シロちゃんたら!」

怪我が綺麗に癒えた雛森は、ぷくーっと頬を膨らませて、冬獅郎をポカポカと殴る。

「雛森、冗談だ」

「シロちゃんなんて知らない!先に帰る!」

「雛森、独立しよう。もう、あんな孤児院に帰るのはやめよう。稼ぎのほとんどをもってかれるし、あの冒険者たちを手配したのも孤児院だ。最初から、捨てるつもりだったんだ」

「でも、お金ないよ?どこに住むの?」

「俺と京楽が、昔住んでいた離れの小さい家でよければ、無料で貸そう」

「いいのか?」

「いいんですか?」

「ああ」

浮竹は、冬獅郎と雛森の頭を撫でる。

「同じヴァンピールだ。助け合わないとな」

「ありがとう。恩に着る。ちゃんとした仲間を見つけて、冒険者として成功してみせる。しばらくは雛森と二人きりだが」

「ランクの高いダンジュンに挑みたい時は、俺と京楽に声をかけろ。助っ人になろう」

「浮竹、助けてええええ!!七緒ちゃんが、ボクのチャーミングなひげ剃ろうとしてくるうううう」

「はいはい、今行く」

「ついでに、しっぽりもしよおおお」

「しない!俺がびげを剃るぞ」

「ああん、浮竹になら剃られていいかも。あそこの毛を」

浮竹は、ハリセンで京楽を殴りまくる。

「まぁ、こんな京楽だが、戦闘になるとかなり強い」

「何、夜の格闘戦!?」

「このだアホがああ!子供の前だぞおおおお」

「子供の前だろうがしっぽりできるよ。むしろ見せつけたい!」

京楽は、浮竹にキスをするが、拒否される。

「誰がするか!禁欲2週間だ!」

「うわあああん、酷いいいいいいい」

「酷いのは、お前の日ごろの態度だ!毎回毎回しっぽりしっぽりうるさい!」

「うわあああんんん」

京楽は、涙を浮竹のパンツで拭う。

「あ、それこの前買ったお気に入りのパンツ!お前というやつは!」

「うええええんん」



「家、借りるな。行こうか、雛森」

「うん、シロちゃん」

冬獅郎と雛森は、手を繋いで歩き出す。

あんな時代もあったなと、浮竹はすまきにした京楽を転がしながら、懐かしく思うのであった。





「ソアラ・・・・・・ブリュンヒルデと、私の子よ。ブラッディアの、皇位継承権をお前にも与えた」

レイモンド・シュタットフェルト・ブラッディは、闇夜に紛れて、クスクスと笑う。

「私の、愛児よ」

レイモンドは、妻で花嫁であった聖女ブリュンヒルデにますます似てきたわが子を、皇位継承の争いに巻き込もうとしているのであった。




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