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血と聖水と名において9

レイモンド・シュタットフェルト・ブラッディ。

通称悪魔王ディアブロのレイモンド。

それが、ソアラ・シュタットフェルト・ブラッディという名ももつ、浮竹の父である、ヴァンパイアマスターの名であった。

甘い蜂蜜のように優しく、時には氷の刃のように冷たく。

父親としては、育児をメイドに任せきりにさせていたのでだめだったのかもしれない。だが、師として見るなら、超一流であった。

浮竹は剣術や体術、それに使役魔・・・・精霊使いとしての訓練も、父から受けた。

父は、魔法が使えて、それは浮竹も同じだった。

魔法が使えるものは限られている。

昔には、古代魔法文明があり、人類の全てが魔法を使えたとされているが、今の人間は全体の5%程度しか魔法が使えなかった。

なので、魔法の才能がある者は出世を約束されたようなものだ。魔法を使える者は王立の学園に入ることができる。魔法の才能の高い者は宮廷魔法士になれたりした。少しの火の魔法しか使えないような者でも、一応魔法が使えるので魔法に関係ある職につけた。

ヴァンパイアやヴァンピール、ドラゴンなどはほとんどが魔法を使えた。

ヴァンパイアは、花嫁にしたい者が意にそぐわないとき、チャームの魔法を使ったりして無理やり花嫁にする時がある。

まぁ、そんな風に花嫁にされた者は、人形のように生きるか死を選ぶかの二択だった。

それはさておき。

ヴァンパイアのアイゼアなる者を倒して、気絶したドラゴンサモナーの浮竹は、パートナードラゴンの京楽が見ている中、ゲストルームで眠っていた。

『ねぇ、神父のボクを放置して帰ったけど、よかったの?』

「あの場には、フェンリルを残らせた。フェンリルに乗ってそのうち帰ってくるだろうさ」

「はい、その通りです!帰ってきたよ!」

「はや!!!」

むちゅーとたこのように吸い付いてこようとする京楽を、浮竹はハリセンではたく。

「しっぽり!今すぐしっぽりしよう!」

「却下。ドラゴンサモナーの俺の意識が戻り、彼らが館から出るまではしっぽりしない」

「二人とも、今すぐ帰って?」

『いや、浮竹が目覚めてないんだけど』

『う・・・・・』

そこで、ドラゴンサモナーの浮竹が目を覚ました。

『よかった、浮竹、大丈夫?』

ちびドラゴンの体であるパートナードラゴンの京楽を見てから、浮竹はキッチンに行く。

『のどが、かわいた。水を・・・・・・』

「オレンジ水だ。ほのかに甘い。疲労回復の効果がある」

浮竹がキッチンから、オレンジ水の入った氷の浮かんだコップをもってくる。すると、ドラゴンサモナーの浮竹はそれを受け取って一気に飲み干して、おかわりももらった。

『ああ、生き返るようだ。ありがとう。俺は、どのくらい眠っていた?』

「4時間ってとこだね。もう外も暗いし、泊まってういけば・・・・・って、泊まられたらしっぽりできない。今すぐ出てけーーー」

そんな京楽をハリセンで黙らせて、浮竹は京楽に四人分の夕飯を作るように言って、京楽はしぶしぶそれを承諾する。

『ごめんね、食事まで世話になちゃって』

『明日には出ていくから、その後は好きにしっぽりしまくってくれ』

「しっぽりしたいのは京楽だけだ。俺は別にしたいわけじゃない」

京楽がいないので、断言する。

もしもここに京楽がいたら「酷い、ボクとのことは遊びだったのね!」とか言い出しそうだなと浮竹は思った。

「酷い、ボクとのことは遊びだったのね!浮竹のだアホおおおおおおおお」

しっぽりしたいので、冷凍食品を解凍しただけの京楽がそこにいて、わんわん泣き出すものだから、浮竹は困って京楽に明日しっぽりしていいと約束した。

「ぐひひひひ。約束しちゃった」

『計画的犯行だね』

『そうだな』

「まったく、お前は・・・・・」

浮竹は、額に手を当てて天を仰ぐ。

「じゃあ、夕飯にしよう。解凍しただけだけど、この前ボクが作ったものだから味はいいはずだよ」

メニューは、海鮮パスタとカレーであった。

『あ、このオレンジ水まだあるか?』

「気に入ったのか?俺が作ったんだが、気に入ったのなら2L入りのペットボトルのを持って帰るといい」

『すごくおいしい。水にオレンジを混ぜただけじゃあこうはならないだろう』

「ああ。魔法を使っている」

「魔法か。ヴァンピールだものな。使えて当たり前か」

ちなみに、京楽は魔法は使えない。

だから、剣術と銃の腕に特化していた。

ドラゴンサモナーの浮竹とパートナードラゴンの京楽は、一晩だけ泊まって帰っていった。

館に、訪問者がいた。

京楽がしっぽりしようと、風呂からあがったところで遭遇した。

「ぎゃあああああ、裸みられたああ!花嫁になってるけど、もう花嫁にいけない!」

「ぐおおお、汚いものをみたあああ」

やってきたのは、昨日の昼に倒したヴァンパイア、アイゼアの兄だった。

「どうした!?ぎゃあああ、なぜ京楽はフルチンなんだ!せめて股間は隠せ!」

「恥ずかしいから、顔隠すね」

「股間を隠せーーー!!」

仕方ないので、浮竹がバスタオルを京楽の腰にまきつける。

「俺はアイゼアの兄のライゼア。昨日は、弟を倒してくれてありがとう。あいつは、誰かれかまわず花嫁にするから、一族が追放しようとしていたところだったんだ。手間が省けた」

「弟の敵討ちじゃ、ないんだな」

「あんな弟、血が繋がっているとも考えたくない。二つ名のも色欲だしな」

「ああああ、浮竹が浮気してる!」

「なぜそうなる!会話してるだけだ!」

「浮気者おおお。うわあああんんん」

腰のバスタオルをとって、京楽はフルチンで館を走り回り、メイドの伊勢に叱られて服を着せられていた。

「これは、一族からアイゼアにかけられていた報酬金だ。受け取ってくれ」

「分かった、もらっておこう。あの古城には、またヴァンパイアが住むのか?」

「俺たちの一族の一部が住む予定だ。人間とは共存協定を結んでいるから、心配はない」

共存協定。人とヴァンパイアが、互いに争いあわずに手を取り合って暮らしていく協定であった。

「浮竹、しっぽりしよ!」

「ああ、なんかすまないな。俺はこれで帰る。しっぽりでもなんでもしてくれ」

ライゼアは、金を渡して消えてしまった。

「浮竹、しっぽり!」

「だアホ!」

「おぶ!」

鳩尾を殴られて、京楽は涙をためる。

「しっぽり、するまで、粘るんだから、ね!」

「本当に仕方のないやつだ。しっぽりを許してやろう」

「やったああああ」

その晩、京楽は久しぶりに浮竹と甘い夜を過ごした。



「ソアラ・シュタットフェルト・ブラッディ。悪魔王ディアブロのレイモンド・シュタットフェルト・ブラッディの一人息子にして、三人のヴァンパイアマスターの後から追加された、血の帝国ブラッディアの皇位継承者」

くすくすと、その人影は笑う。

「今は、浮竹十四郎。花嫁は、あの夜叉の京楽」

その人影は、ゆっくりと闇に溶けていくのであった。




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