血と聖水と名において14
「何故、私の花嫁であることを拒絶する?」
「いやなものは、いやだからだ。花嫁にされた記憶は消されたが、一度お前の花嫁になってしまったのも事実だ。だが、幸福感などなかった。絶望感だけがあったのを、なんとなく覚えている」
京楽に、藍染にされたことの記憶を消してもらった浮竹であったが、自分の身に何が起こったのかは知っていた。
「私の花嫁になりたくないと?」
「当り前だ」
「ソアラ。神さえ使役できるお前の力があれば、私はブラッディアの皇帝となり、やがて神へと至る」
「妄想癖があるようだな。そんなことにはならない。お前が皇帝になるくらいなら、俺が皇帝になる!」
浮竹は、自分がブラッディア帝国の皇位継承者であることを、認めた。
「消えろ!」
浮竹が、フェニックスを召喚して藍染に向けると、藍染は渋い顔をしながら、フェニックスの業火に燃やされていく。
どうやら分身体のようで、灰さえ残らなかった。
「京楽、大丈夫か!?」
「うん。ちょっと、腹に大穴あいただけ」
「ライフ、顕現せよ!」
京楽は、体がヴァンパイア化しているので、腹に穴が開いたくらいでは死なないが、痛みは確実にある。
「そのライフって精霊、神でもあるんでしょ?」
「ああ。綺麗に治ったな」
「ライフってすごいね。その気になれば、死者さえ復活させれるんでしょう?」
「ああ。生贄が必要だがな」
「もしもの時は、ボクを生贄に・・・・・」
「しない。絶対に、そんなことしないし、そんなことにもさせない」
浮竹は涙をにじませて、京楽を抱きしめた。
「ライフで、父であるレイモンドは、奴隷を生贄に使って、俺に母様の蘇りを強制した。でも、生贄にされた奴隷が死んだだけで、母様は生き返らなかった。その後から、父は俺を疎ましく思うようになる時もあるし、目に入れても痛くないくらいかわいがる時もある、二面性を持つようになった・・・・・・・」
「うん」
「ライフの精霊を、自分で使役しようとしたんだ。その後遺症だ」
浮竹は、悲しそうな顔をした。
「そうなの。大変だったんだね」
「ああ。今も、俺に皇位継承権を与えたのは父だ」
「レイモンド・・・・・悪魔王ディアブロのレイモンド。数百年S級ヴァンパイアハンターたちを退けてきた、ヴァンパイアマスター」
「ああ」
浮竹は頷く。
「ボクも何度か戦ったことあるけど、全部引き分け」
「父と引き分けでいけるのがお前のすごいところだ」
「え、そうかな?」
京楽はデレデレして、むちゅーとキスをしようとしてくるのをハリセンではたいてから、浮竹と京楽はブラッディア帝国に入る。
「ソアラ様!」
レイモンドの執事が、駆け寄ってくる。
「ブラッディアにようこそおこしくださいました。館を用意してございます。皇帝候補の方一人につき、一つの館が与えられます」
「俺のくるかなり前に、黒崎一護というヴァンぽイアマスターが、朽木ルキアというメイドとこなかったか?」
「ああ、黒崎様ですね。青の館に滞在中でございます。ルキア様も、同じく」
「そうか。無事ならいいんだ」
浮竹は、京楽と共に安堵する。
「藍染様とレイモンド様は、時折館に泊まられますが、基本は外で活動しておいでです」
「俺も、そうなると思う。ずっと滞在はできない」
「そうでございますか。残念です。ソアラ様に与えられるのは、緑の館です。レイモンド様の子ということで、黒崎様や藍染様の館より、かなり豪華にしております。時折レイモンド様もお泊りになります」
「父に、会いたくない」
浮竹は、苦虫を嚙み潰したような表情になる。
「そのように、取り計らいましょう。レイモンド様のご帰還は、一週間後となっております」
「三日だけ滞在する」
「短いですね?」
「ひとまず、ブラッディアという帝国を見て回りたい」
「ボクも、興味あるな」
京楽がそう言うと、レイモンドの執事は眼鏡をくいっと手であげる。
「そちらが、花嫁の京楽春水様でございますね?」
「ああ」
「レイモンド様がおしゃっておりました。花嫁にさせたのは、失敗だったと」
「京楽、怒るなよ」
「怒らないよ。でも、レイモンドのお陰で君に出会えた。そのことは、感謝しているよ?」
「レイモンド様を呼び捨てとは!」
「いい。俺が許す」
「はい、生意気な口をきいてすみませんでした、ソアラ様」
執事に、緑の館を案内された。
王宮じゃないのかという豪華さだった。
「金、かけまくってるな」
「先代の皇帝ルキオラ様の離宮でもありましたから」
「ルキオラ皇帝って、確か美少女ばかりを花嫁にした好色のヴァンパイアマスターだよね。でも、子供はできなかった」
京楽が、うろ覚えの知識を出す。
「はい。一応、二人ほど御子は誕生なさいましたが、はやり病ですぐにお亡くなりになりました。ルキオラ様には子種がないと分かって、子を産んだ花嫁は断頭台の露に消えましたが」
「こわっ」
京楽は、浮竹が皇帝になってしまったらどうしようと、少し、いやかなり心配であった。
「京楽、心配しなくても俺は皇帝になんてならない。たとえなったとしても、あの館で一緒に暮らす」
「可能でございますよ?皇帝は権力の象徴であるだけ。統治は長老たちがなさっておいでです。帝国を覆う、ドーム状の日光をいれない結界を維持する、血液を注ぎ、魔力を特殊なオーブにありったけ注げば、それでよいのです。ですから、ソアラ様が皇帝になり、外の世界で生活して半年に一度ほど。ブラッディアに帰還して魔力の補填をするのであれば、外での生活も許されましょう。ただし、贅沢などはできませんが」
「贅沢なんかしない」
「レイモンド様は、金を湯水のように使いなさるんので、ソアラ様とは反対でございますね。こちらが寝室となっております。京楽様とお過ごしになるなら、この豪奢なベッドをお使いください。レイモンド様が、若かりし頃に使っていた、由緒正しき製作者が、特別に魔力を注いで作ったベッドとなっております」
「早い話が、お下がりってことだろう?」
「このベッド一つで、奴隷が百人は買えます」
「無駄に金かけてる。ブラッディアは、奴隷制度を廃止したんだろう?」
浮竹が怪訝そうな顔をする。
「それでも、人間やヴァンピールの底辺の者たちが奴隷として売買されております。ヴァンパイアと、戸籍のある人間の奴隷化は廃止されましたが、スラムに住む住民は戸籍がないため、奴隷として捕まれば売られていきます」
「変えたい。そんな帝国を」
「浮竹・・・・・」
京楽が、浮竹の手を握る。
「ならば、皇帝になられるとよいでしょう。皇帝の案であれば、通りましょうぞ」
「父がなればいい。父に、進言する」
「それは無理でございましょう、ソアラ様。レイモンド様は、ソアラ様を皇帝に立候補なさっておいでです」
「なんだって!」
「ああ、言っておりませんでしたか」
レイモンドが、ソアラこと浮竹を駒にするために、皇帝になることを推しているのだとは、まだほとんどの者が知らない。
「皇帝になれば、相応の力を得ます。ソアラ様の母君、ブリュンヒルデ様の蘇生を、レイモンド様は願っておいでです。どうか、命の神ライフを大切にしてください」
「ライフは、死者を蘇らすのに生贄を。たくさんの命を必要とする」
「それならば、ヴァンパイアロードの罪人を数人ささげるだけですみましょう」
「俺は、嫌だからな!絶対に、皇帝になったりしない」
「それは、分かりませんよ?」
執事は、何かいいたげであったが、口をつむぐ。
まさか、皇帝にならばければ、京楽の命の灯が危ういなど、その時の浮竹は知らなかった。
「いやなものは、いやだからだ。花嫁にされた記憶は消されたが、一度お前の花嫁になってしまったのも事実だ。だが、幸福感などなかった。絶望感だけがあったのを、なんとなく覚えている」
京楽に、藍染にされたことの記憶を消してもらった浮竹であったが、自分の身に何が起こったのかは知っていた。
「私の花嫁になりたくないと?」
「当り前だ」
「ソアラ。神さえ使役できるお前の力があれば、私はブラッディアの皇帝となり、やがて神へと至る」
「妄想癖があるようだな。そんなことにはならない。お前が皇帝になるくらいなら、俺が皇帝になる!」
浮竹は、自分がブラッディア帝国の皇位継承者であることを、認めた。
「消えろ!」
浮竹が、フェニックスを召喚して藍染に向けると、藍染は渋い顔をしながら、フェニックスの業火に燃やされていく。
どうやら分身体のようで、灰さえ残らなかった。
「京楽、大丈夫か!?」
「うん。ちょっと、腹に大穴あいただけ」
「ライフ、顕現せよ!」
京楽は、体がヴァンパイア化しているので、腹に穴が開いたくらいでは死なないが、痛みは確実にある。
「そのライフって精霊、神でもあるんでしょ?」
「ああ。綺麗に治ったな」
「ライフってすごいね。その気になれば、死者さえ復活させれるんでしょう?」
「ああ。生贄が必要だがな」
「もしもの時は、ボクを生贄に・・・・・」
「しない。絶対に、そんなことしないし、そんなことにもさせない」
浮竹は涙をにじませて、京楽を抱きしめた。
「ライフで、父であるレイモンドは、奴隷を生贄に使って、俺に母様の蘇りを強制した。でも、生贄にされた奴隷が死んだだけで、母様は生き返らなかった。その後から、父は俺を疎ましく思うようになる時もあるし、目に入れても痛くないくらいかわいがる時もある、二面性を持つようになった・・・・・・・」
「うん」
「ライフの精霊を、自分で使役しようとしたんだ。その後遺症だ」
浮竹は、悲しそうな顔をした。
「そうなの。大変だったんだね」
「ああ。今も、俺に皇位継承権を与えたのは父だ」
「レイモンド・・・・・悪魔王ディアブロのレイモンド。数百年S級ヴァンパイアハンターたちを退けてきた、ヴァンパイアマスター」
「ああ」
浮竹は頷く。
「ボクも何度か戦ったことあるけど、全部引き分け」
「父と引き分けでいけるのがお前のすごいところだ」
「え、そうかな?」
京楽はデレデレして、むちゅーとキスをしようとしてくるのをハリセンではたいてから、浮竹と京楽はブラッディア帝国に入る。
「ソアラ様!」
レイモンドの執事が、駆け寄ってくる。
「ブラッディアにようこそおこしくださいました。館を用意してございます。皇帝候補の方一人につき、一つの館が与えられます」
「俺のくるかなり前に、黒崎一護というヴァンぽイアマスターが、朽木ルキアというメイドとこなかったか?」
「ああ、黒崎様ですね。青の館に滞在中でございます。ルキア様も、同じく」
「そうか。無事ならいいんだ」
浮竹は、京楽と共に安堵する。
「藍染様とレイモンド様は、時折館に泊まられますが、基本は外で活動しておいでです」
「俺も、そうなると思う。ずっと滞在はできない」
「そうでございますか。残念です。ソアラ様に与えられるのは、緑の館です。レイモンド様の子ということで、黒崎様や藍染様の館より、かなり豪華にしております。時折レイモンド様もお泊りになります」
「父に、会いたくない」
浮竹は、苦虫を嚙み潰したような表情になる。
「そのように、取り計らいましょう。レイモンド様のご帰還は、一週間後となっております」
「三日だけ滞在する」
「短いですね?」
「ひとまず、ブラッディアという帝国を見て回りたい」
「ボクも、興味あるな」
京楽がそう言うと、レイモンドの執事は眼鏡をくいっと手であげる。
「そちらが、花嫁の京楽春水様でございますね?」
「ああ」
「レイモンド様がおしゃっておりました。花嫁にさせたのは、失敗だったと」
「京楽、怒るなよ」
「怒らないよ。でも、レイモンドのお陰で君に出会えた。そのことは、感謝しているよ?」
「レイモンド様を呼び捨てとは!」
「いい。俺が許す」
「はい、生意気な口をきいてすみませんでした、ソアラ様」
執事に、緑の館を案内された。
王宮じゃないのかという豪華さだった。
「金、かけまくってるな」
「先代の皇帝ルキオラ様の離宮でもありましたから」
「ルキオラ皇帝って、確か美少女ばかりを花嫁にした好色のヴァンパイアマスターだよね。でも、子供はできなかった」
京楽が、うろ覚えの知識を出す。
「はい。一応、二人ほど御子は誕生なさいましたが、はやり病ですぐにお亡くなりになりました。ルキオラ様には子種がないと分かって、子を産んだ花嫁は断頭台の露に消えましたが」
「こわっ」
京楽は、浮竹が皇帝になってしまったらどうしようと、少し、いやかなり心配であった。
「京楽、心配しなくても俺は皇帝になんてならない。たとえなったとしても、あの館で一緒に暮らす」
「可能でございますよ?皇帝は権力の象徴であるだけ。統治は長老たちがなさっておいでです。帝国を覆う、ドーム状の日光をいれない結界を維持する、血液を注ぎ、魔力を特殊なオーブにありったけ注げば、それでよいのです。ですから、ソアラ様が皇帝になり、外の世界で生活して半年に一度ほど。ブラッディアに帰還して魔力の補填をするのであれば、外での生活も許されましょう。ただし、贅沢などはできませんが」
「贅沢なんかしない」
「レイモンド様は、金を湯水のように使いなさるんので、ソアラ様とは反対でございますね。こちらが寝室となっております。京楽様とお過ごしになるなら、この豪奢なベッドをお使いください。レイモンド様が、若かりし頃に使っていた、由緒正しき製作者が、特別に魔力を注いで作ったベッドとなっております」
「早い話が、お下がりってことだろう?」
「このベッド一つで、奴隷が百人は買えます」
「無駄に金かけてる。ブラッディアは、奴隷制度を廃止したんだろう?」
浮竹が怪訝そうな顔をする。
「それでも、人間やヴァンピールの底辺の者たちが奴隷として売買されております。ヴァンパイアと、戸籍のある人間の奴隷化は廃止されましたが、スラムに住む住民は戸籍がないため、奴隷として捕まれば売られていきます」
「変えたい。そんな帝国を」
「浮竹・・・・・」
京楽が、浮竹の手を握る。
「ならば、皇帝になられるとよいでしょう。皇帝の案であれば、通りましょうぞ」
「父がなればいい。父に、進言する」
「それは無理でございましょう、ソアラ様。レイモンド様は、ソアラ様を皇帝に立候補なさっておいでです」
「なんだって!」
「ああ、言っておりませんでしたか」
レイモンドが、ソアラこと浮竹を駒にするために、皇帝になることを推しているのだとは、まだほとんどの者が知らない。
「皇帝になれば、相応の力を得ます。ソアラ様の母君、ブリュンヒルデ様の蘇生を、レイモンド様は願っておいでです。どうか、命の神ライフを大切にしてください」
「ライフは、死者を蘇らすのに生贄を。たくさんの命を必要とする」
「それならば、ヴァンパイアロードの罪人を数人ささげるだけですみましょう」
「俺は、嫌だからな!絶対に、皇帝になったりしない」
「それは、分かりませんよ?」
執事は、何かいいたげであったが、口をつむぐ。
まさか、皇帝にならばければ、京楽の命の灯が危ういなど、その時の浮竹は知らなかった。
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