血と聖水1-1
むせ返るような血の匂い。錆びた鉄の匂いが空気に四散している。
浮竹は、無残にもヴァンパイアに血を吸われた死体を検分していた。
「まだ生暖かい」
死体は、まだ先ほどまで生きていたのだろう。
「血と聖水の名において・・・アーメン」
浮竹に信じる神はない。
浮竹は、もっていた銃で、死体の頭部を撃ち抜いた。
銃の弾丸は銀でできていた。
そうしないと、「ヴァンピール」という、ヴァンパイアの下等な、本能で血を求めるだけのヴァンパイアとして蘇ってしまう可能性があるからだ。
ヴァンピールも一応はヴァンパイアだ。知能はゼロだが、並外れた身体能力を有する場合が多い。
本当なら、心臓に杭をさして聖水をかけ、墓地に埋葬しなければいけなかったが、そんなことをしている時間はない。
死体の血をすすった、ヴァンパイアがまだ近くにいるはずだ。
銃の銀の弾丸が、聖水のかわりになってくれる。頭部を銀の弾丸でうちぬけば、ヴァンピールは死ぬ。
「美しい人・・・・このような荒れ果てた町へようこそ」
背後から声がした。
浮竹は飛んでいた。
地面から体が離れ、ほんの一瞬浮遊感を味わったかと思うと、家のレンガに叩きつけられていた。
「匂いがする・・・・銀の匂いが。ヴァンパイアハンターか」
ぎりっと、長く細い手が伸びて、浮竹の細い首を絞めた。
「かはっ」
目の前にいたのは、美しい容姿をした20代後半のヴァンパイア。
黒一色の服をまとい、血の色のマントをしていた。一般的なヴァンパイアの服装だ。
「それにしても美しいな・・・・」
恍惚とした表情で、ヴァンパイアは浮竹を見た。
浮竹は、目の前のヴァンパイアよりさらに美しかった。長い白髪に、翡翠の瞳、白い肌。
ヴァンパイアの手が、浮竹の喉から外れる。
浮竹は酸素を求めて大きく呼吸すると、いっきに駆け出した。
「血と聖水の名において・・・アーメン!」
長い真紅のコートの下から銀の短剣を取り出し、ヴァンパイアに向かって投げる。
ヴァンパイアは余裕でそれをかわし、一度無数のこうもりの姿になる。それにむかって、銀の短剣を投げる。
「106人目の生贄となってもらおうか」
1000人の人間の生き血を飲むと、ヴァンパイアは完全なる存在となり、銀の武器も、聖水もきかなくなるという。
朝日を浴びて灰になることさえない。
普通の日光の下でも、ヴァンパイアは活動できるが、朝日だけは浴びると必ず灰となった。
朝日の光を浴びても灰にならぬ、その完全存在をヴァンパイアたちはヴァンパイアロードと呼んだ。
浮竹が跳躍し、ヴァンパイアと距離をとる。
ヴァンパイアは、浮竹の影に潜んでいた。
「な!」
ビリビリ。
真紅のコートが凄まじい力で破られ、白い肌が露になる。その首筋に、ヴァンパイアが牙をたてる。
「くっ!」
抗うが、凄まじい力にはなす術もない。
浮竹は、血を吸われ、そしてゆっくりと微笑んだ。
「俺の血を飲んだな?」
「うぐああああ、喉が、喉がやけるうう!」
浮竹の血には、銀が混じっていた。
「血と聖水の名において、出でよフェンリル!」
もがくヴァンパイアに向かって、銀の短剣を投げて描いた陣で、使役魔を呼び出した。
フェンリルと名づけた狼は、氷を司る精霊だ。凍てつく氷のブレスを受けて、ヴァンパイアは凍結した。
氷の彫像と化したヴァンパイアに、浮竹は銀の弾丸を撃ち込んだ。
ガラガラと、氷の彫像が崩れ、そして灰になっていく。
「血と聖水の名において」
灰を小さなカプセルの中に入れ、ヴァンパイアを倒した証とする。灰と引き換えに、ヴァンパイアハンターは報酬金をもらっていた。
「あ。ごめん。戻ってくれ」
呼び出したフェンリルに、ペコリと浮竹はお辞儀した。
でも、フェンリルは実体化したまま尻尾をふって、浮竹にじゃれてくる。
「すまない。戻ってくれないだろうか」
「わん」
「狼なので、わんと咆えないでくれ」
「にゃあ」
「いや、もっと違うから・・・」
浮竹は、銃をホルダーに直し、カプセルを懐にしまうと、ため息をついた。
いつもこんなかんじで、いつまでたっても一流のヴァンパイアハンターになれない。
使役魔の数は他のヴァンパイアハンターと比べてもひけをとらないが、使役魔は主に服従絶対であるのに、浮竹の使役魔は時々いうことを聞いてくれない。
他のヴァンパイアハンターに、バカにされることもしばしばだ。
もう十年もヴァンパイアハンターを続けているのに、未だに字(あざな)をもらえない。
年下の朽木白哉や日番谷冬獅郎は、七つ星をもつ一流のヴァンパイアハンターで、字も持っているのに。
浮竹は、無残にもヴァンパイアに血を吸われた死体を検分していた。
「まだ生暖かい」
死体は、まだ先ほどまで生きていたのだろう。
「血と聖水の名において・・・アーメン」
浮竹に信じる神はない。
浮竹は、もっていた銃で、死体の頭部を撃ち抜いた。
銃の弾丸は銀でできていた。
そうしないと、「ヴァンピール」という、ヴァンパイアの下等な、本能で血を求めるだけのヴァンパイアとして蘇ってしまう可能性があるからだ。
ヴァンピールも一応はヴァンパイアだ。知能はゼロだが、並外れた身体能力を有する場合が多い。
本当なら、心臓に杭をさして聖水をかけ、墓地に埋葬しなければいけなかったが、そんなことをしている時間はない。
死体の血をすすった、ヴァンパイアがまだ近くにいるはずだ。
銃の銀の弾丸が、聖水のかわりになってくれる。頭部を銀の弾丸でうちぬけば、ヴァンピールは死ぬ。
「美しい人・・・・このような荒れ果てた町へようこそ」
背後から声がした。
浮竹は飛んでいた。
地面から体が離れ、ほんの一瞬浮遊感を味わったかと思うと、家のレンガに叩きつけられていた。
「匂いがする・・・・銀の匂いが。ヴァンパイアハンターか」
ぎりっと、長く細い手が伸びて、浮竹の細い首を絞めた。
「かはっ」
目の前にいたのは、美しい容姿をした20代後半のヴァンパイア。
黒一色の服をまとい、血の色のマントをしていた。一般的なヴァンパイアの服装だ。
「それにしても美しいな・・・・」
恍惚とした表情で、ヴァンパイアは浮竹を見た。
浮竹は、目の前のヴァンパイアよりさらに美しかった。長い白髪に、翡翠の瞳、白い肌。
ヴァンパイアの手が、浮竹の喉から外れる。
浮竹は酸素を求めて大きく呼吸すると、いっきに駆け出した。
「血と聖水の名において・・・アーメン!」
長い真紅のコートの下から銀の短剣を取り出し、ヴァンパイアに向かって投げる。
ヴァンパイアは余裕でそれをかわし、一度無数のこうもりの姿になる。それにむかって、銀の短剣を投げる。
「106人目の生贄となってもらおうか」
1000人の人間の生き血を飲むと、ヴァンパイアは完全なる存在となり、銀の武器も、聖水もきかなくなるという。
朝日を浴びて灰になることさえない。
普通の日光の下でも、ヴァンパイアは活動できるが、朝日だけは浴びると必ず灰となった。
朝日の光を浴びても灰にならぬ、その完全存在をヴァンパイアたちはヴァンパイアロードと呼んだ。
浮竹が跳躍し、ヴァンパイアと距離をとる。
ヴァンパイアは、浮竹の影に潜んでいた。
「な!」
ビリビリ。
真紅のコートが凄まじい力で破られ、白い肌が露になる。その首筋に、ヴァンパイアが牙をたてる。
「くっ!」
抗うが、凄まじい力にはなす術もない。
浮竹は、血を吸われ、そしてゆっくりと微笑んだ。
「俺の血を飲んだな?」
「うぐああああ、喉が、喉がやけるうう!」
浮竹の血には、銀が混じっていた。
「血と聖水の名において、出でよフェンリル!」
もがくヴァンパイアに向かって、銀の短剣を投げて描いた陣で、使役魔を呼び出した。
フェンリルと名づけた狼は、氷を司る精霊だ。凍てつく氷のブレスを受けて、ヴァンパイアは凍結した。
氷の彫像と化したヴァンパイアに、浮竹は銀の弾丸を撃ち込んだ。
ガラガラと、氷の彫像が崩れ、そして灰になっていく。
「血と聖水の名において」
灰を小さなカプセルの中に入れ、ヴァンパイアを倒した証とする。灰と引き換えに、ヴァンパイアハンターは報酬金をもらっていた。
「あ。ごめん。戻ってくれ」
呼び出したフェンリルに、ペコリと浮竹はお辞儀した。
でも、フェンリルは実体化したまま尻尾をふって、浮竹にじゃれてくる。
「すまない。戻ってくれないだろうか」
「わん」
「狼なので、わんと咆えないでくれ」
「にゃあ」
「いや、もっと違うから・・・」
浮竹は、銃をホルダーに直し、カプセルを懐にしまうと、ため息をついた。
いつもこんなかんじで、いつまでたっても一流のヴァンパイアハンターになれない。
使役魔の数は他のヴァンパイアハンターと比べてもひけをとらないが、使役魔は主に服従絶対であるのに、浮竹の使役魔は時々いうことを聞いてくれない。
他のヴァンパイアハンターに、バカにされることもしばしばだ。
もう十年もヴァンパイアハンターを続けているのに、未だに字(あざな)をもらえない。
年下の朽木白哉や日番谷冬獅郎は、七つ星をもつ一流のヴァンパイアハンターで、字も持っているのに。
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