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血と聖水1-2


「武器は・・・聖水と、銀の弾丸の入った銃、それに銀のナイフとビームサーベル。こんなものかな?あとは十字架に・・・」

ヴァンパイアハンターである浮竹の武器を、勝手に身につけていくその青年は、名を京楽春水といった。

浮竹のマスターである。

その昔、とある滅びた王国の公爵家の跡取り息子であったが、ヴァンパイアとなり、千人の人の生き血を啜って、ヴァンパイアロードになった。

ヴァンパイアロードである京楽に、通常の聖水や銀の弾丸、銀の武器、十字架は効かない。

だが、使うものの方法次第ではヴァンパイアロードにもダメージを与えれる。たとえば、心臓に何度も銀の弾丸を撃ち込めば、ヴァンパイアロードでも死ぬ場合がある。

ビームサーベルは、ハンター協会から七つ星以上の最高クラスのハンターにのみ与えられる武器だ。

浮竹は、生まれた時は七つ星クラスのヴァンパイアハンターだった。

だから、無条件で与えられたのだ。

だが、実際に狩りを行い、報告で3つ星にまで落とされた。こんなことは初めてだった。

いきなり4つも星を落とされるヴァンパイアハンターなんて聞いたことがないと、今でも笑い種だ。浮竹だって、特殊な生命体であるから無条件に七つ星にされただけであって、好き好んでそうなったわけではない。

浮竹は、ヴァンパイアロードである京楽に眷属にされた、ヴァンパイアであった。ヴァンパイアロードの特徴をもっていて、ヴァンパイアハンターをするヴァンパイアであった。

ヴァンパイアたちにとって、浮竹の存在は異質で、裏切者だった。

「なぁ、京楽。猫の缶詰なんて・・・フェンリルも連れて行くつもりか?」

「勿論。僕は猫は好きだよ」

「いや、フェンリルは氷の精霊でしかも狼・・・」

「にゃあ。にゃあにゃああ」

開けられた猫の缶詰を、おいしそうにフェンリルは食べていた。

「猫じゃらしも忘れずに、と」

まるで、どこか旅行にいくかのようだ。

これから、大物のヴァンパイアを倒しにいくとは、とても思えない。

浮竹は、使い魔のスズメで朽木百邪と連絡をとりあっていた。白哉の使い魔は、金色の鷹。すずめと鷹・・・ここらへんからして、力量の違いが見えているが、浮竹はくじけない。

朽木白哉も日番谷冬獅郎も、ヴァンパイアハンターとしての「覚醒」をすでに終えている。

浮竹はまだ覚醒していない。

昔、覚醒していなくても、白哉と冬獅郎は七つ星ハンターであった。

浮竹にとって、まぁ人生ほぼ不老不死で長いんだし、そのうちきっと強くなるよみたいなかんじで、焦ってはいなかった。

ヴァンパイアなのに何故ヴァンパイアハンターをしているのかと聞かれる。

何故かは、自分でも分からない。

ヴァンパイアハンター教会の掟で、今の浮竹は他のヴァンパイアハンターから守られている。それはマスターであり、ヴァンパイアハンターの補佐をしてくれる京楽もだった。

パートナーである京楽は、ヴァンパイアロード。千年以上も前にロード直前のハイクラスとなった、つまりは千年間ずっとハンターを返り討ちにしてきたので、ある意味最強である。

本名は、京楽 次郎 総蔵佐 春水
というそうだ。京楽 次郎 総蔵佐 春水といえば、千年前に魔女狩りを引き起こす原因となり、南の王国3つを滅ぼしたとして有名なヴァンパイアだった。

それが、今ではこんな腑抜け。当時は空気さえも凍てつくといわれていたのに。

話では、999人目の処女として選んだのが95歳のおばあさんの魔女で、一緒に5年間孫として生きているうちに人間の情が移ってしまったのだという。

魔女の魔法でもあったのかもしれない。

それから、千人目に浮竹で選んだのがさらなる間違いだった。

浮竹は男はであり、処女といえば処女だが女ではない。

女性の処女を吸血しなければならないしきたりのある中、それまでの吸血が全て無意味となった。すでにロードであったが。でも、すっごい人間臭くなった。

コンコン。窓がノックされて、浮竹
は窓を開ける。

白哉の使い魔である、白の鷹が入ってきた。白哉は複数の鷹の使い魔を持っている。

鷹は、窓に文字となって消えた。それを読む。

(敵、ヴァンパイアロードと確認。現在交戦中)

「白哉が、敵を確認したようだ。ヴァンパイアロードらしい。急ごう。白哉がすでに交戦中だ」

「フェンリル」

「にゃあ?」

京楽が、牙で自分の親指を噛み切る。そこから滴る甘美な血を、フェンリルに舐めさせた。

ヴァンパイアロードの血は、分け与えた者に力を与える。

京楽は浮竹を両手で抱えた。

「な、何をする!自分で歩けるぞ!」

「いけ、フェンリル」

「にゃああ・・・・・オオオーン」

窓の外に、フェンリルが飛び出す。

すると、真っ白な狼は、狼らしい遠吠えをあげた後、3メートルはあろうかという巨大な狼になった。その背中に、京楽がひらりと飛び乗る。

そっと、浮竹を降ろした。

フェンリルの背にまたがり、二人は白哉の元へと向かった。

フェンリルは、京楽の血を得て、通常よりも巨大に実体化し、空を駆けた。

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