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黒魔法使いと白魔法使い2

魔法使いの第一級テストの監督をこなし終えて、浮竹と京楽はやっといつもののんびりとした平穏な時間を取り戻した。

上から、弟子をとれだのああだこうだ言われているが、新婚なのでそんな気は全くない。

キャッキャアハハウフフと、毎日を甘く過ごしていた。

京楽は公爵家の出で、お金は腐るほどもっていた。

浮竹も、第一級魔法使いの称号をもっており、白魔法が使えて、浮竹の使う白魔法は重篤な病を癒したり、体の欠損まで補うので、はるか違う大陸から、その奇跡の魔法を受けるためにやってくる者たちがいた。

大量に謝礼金をもらうので、金には困っていなかった。

京楽は、だが魔物料理が食べたいと疼きだしていた。

ちょうど前のダンジョン攻略終了から半月が経っていた。

「浮竹、京楽。半月が経った。また、俺たちのパーティーに入ってくれないか。新しくできたダンジョンに潜りたいんだ」

この前のパーティーのリーダーであった、剣士がそう誘うと、京楽は顔を輝かせた。

「新しいダンジョンだって!踏破した者はいるのかい!?」

「いや、まだ25階層までしか攻略されていない」

「どんな魔物が出るかも分からないんだね!今から楽しみだよ!」

「引き受けてくれるか、京楽」

「いいよね、浮竹。ね、ね」

京楽に甘い浮竹は、京楽の言葉に乗った。

「まぁいいだろう。俺も暇だしな。しばらく患者は来る予定がないし・・・ダンジョンに潜る期間はどれくらいだ?」

「1週間を想定している」

「京楽の魔物料理に付き合ってもらうことになるが、いいか?」

「ああ。京楽の魔物料理は美味しいし、何かあったら浮竹の魔法で助かるから、大歓迎だ」

「僕の魔物料理が好評のようで、嬉しいよ。さぁ、今すぐ行こう。出発だ!」

「いや、まだ準備できてないから」

「そうだぞ、京楽。まずは1週間分の食材と調味料を確保しておかないと」

完全に魔物だけで料理するわけではない。

調味料も大切だが、野菜や肉も使う時があるので、調達しておく必要があった。

2日かけて準備をして、新しいダンジョンができた村に向かった。

金のない者は馬車や徒歩で向かうのだが、金のある者は瞬間移動の魔法をかけてもらい、村の近くにある地方都市まで飛ばしてもらった。

「よし、セーブポイント作成。何かあったら、転移魔法でこの地方都市まで戻れるよ」

黒魔法には、転移魔法もある。

攻撃魔法がメインだが、転移しまくって敵を混乱させて、強いモンスターなら背後から倒したりした。

「では改めて出発!」

京楽が、杖を掲げて先頭を歩く。

地方都市から、歩いて4時間の場所にダンジョンはあった。

地方都市への往復馬車が出ているが、新しく発見されたダンジョンだけあって、活気にあふれて馬車に乗ることもできないくらい、冒険者であふれていた。

ダンジョンで死ぬと、普通外で蘇生される。

よほど酷い原型をとどめていない死体や、モンスターに食べられたなんかの場合以外、ダンジョンで死んでも蘇生できるので、冒険者は駆け出しの者も含めて多くいた。

そんな新ダンジョンの、1階層2階層を進んでいく。

5階層まではアンデット系ばかりで、お腹がすいたが、アンデット系は食べられないので・・・食べたら、呪われるしステータス異常をおこして、神聖魔法でしか解除できないので、京楽は我慢した。

6階層は、密林だった。

「お、ハーピーがいる!」

京楽は、ハーピーの肉は鶏肉に近いので、焼き鳥にしようかなどと脳内で調理していた。

「本当だ!上からくるぞ、気をつけろ!」

他の冒険者も、ハーピーと戦い、手傷を負って後退する者がほとんどだ。

「うりゃあああああ!!!」

新米の斧使いが、ハーピーに向かって斧を投げる。

斧のあたったハーピーは、地面で動かなくなった。

「でかした!ハーピーの巣はあるかな?」

うきうきとした京楽の顔を見て、剣士がハーピーの巣のあるであろう場所を指さした。

「ちょっといって盗んでくる」

「おい、何を盗むんだ!?」

浮竹のつっこみに、京楽はニンマリと笑うだけだった。

京楽は、マッハで密林をかぎ分けて、一人行ってしまった。

「ハーピーの数が多いな。近くに巣があるんだろう」

攻撃魔法の要である京楽がいなかったが、他の剣士、獣人盗賊、新米斧使い、盾使いもそれなりに力はあるので、ハーピーを倒していく。

もう5体は倒しただろうか。

傷を負うと、浮竹が癒してくれた。

「ヒール」

「てやー」

「ヒール」

「とう!」

「ヒール」

「なんの!」

「ヒール・・・って、いちいち怪我するな!魔力は十分にあるが、癒すのがめんどくさい!」

みんな、浮竹がいるので防御を捨ててハーピーを倒しまくった。

「たっだいまー」

京楽が帰ってきた。

「お、ハーピーいい数倒してるね。全部は無理だけど、解体しようか」

他のハーピーは、京楽がヘルインフェルノを空に打ち上げたのに驚いて、逃げていった。

「おい、あの黒魔法使い、ハーピーを解体してるぞ」

「魔物食じゃないか?かかわらないほうがいいぞ。かわいそうに、干し肉を買う金もないんだろう」

周囲の冒険者からそんな言葉を浴びせられるが、京楽は全く気にしていなかった。

「ドライアドもいたから倒してきた」

アイテムポケットから、ドライアドの体を取り出す。

そしてかまどを作って火をおこした。

ハーピーは、人間の頭をした頭部を切り落として、鳥の胴体部分の羽をむしって内臓をとりのぞき、水で綺麗にあらう。足のほうは、丸焼きにする。

胴体の肉はある程度の大きさに切る。玉ねぎをきって、フライパンで炒める。ハーピーの卵をボウルで溶かす。

フライパンにサラダ油をぬって、ハーピーの肉を焼く。ある程度火が通ったら、玉ねぎを入れてこんがり狐色になるまで焼く。水気がなくなったら、卵の3分の2をいれて、卵が半熟状になったら、残りの卵をいれて、10秒ほど炒めてあからじめたいておいた米の上にのせる。

「じゃじゃーん!ハーピーの親子丼!」

きつね色にほくほく輝く肉と卵、米は、美味しい匂いを周囲に散らせた。

「ごくり」

周囲の冒険者の視線を集めているが、京楽は気にしない。

「ドライアドは、よく洗ってみじん切りにして、鍋にいれて味噌を溶かして、ドライアドの味噌汁に!ドライアドの実には蜂蜜をかけて、ドライフルーツと一緒に煮込んで、少し時間を置いて蜂蜜漬けにしてみたよ!」

今日の昼食の完成だ。

「おい、あいつらハーピー食ってるぞ」

「ハーピーって食えるんだ」

「ドライアドも食ってるぞ」

「ドライアドの実って、毒だよな、確か」

事前に、浮竹がドライアドの実から毒を抽出して、実は毒をぬいて生で食べても安心の状態にした。

京楽と浮竹のパーティーメンバーは、ハーピーの親子丼を食べた。

「うまい!」

「これ、ハーピーか?高い鶏肉の味がする!」

「卵がふわふわだ!」

浮竹も京楽も食べた。

「ほんとだ、ふわふわしてて、少し甘くて美味しい」

浮竹も、ハーピーの親子丼を美味しそうに食べていた。

「ドライアドの味噌汁もうまいな。いい出汁がでてる」

「ハーピーの骨と乾燥させていた昆布から、出汁をとったよ」

他にも、ハーピーの足を焼いたものは、もも肉がうまかった。

デザートのドライアドの実の蜂蜜漬けは、とても甘い中に少しの酸味があり、口当たりがよかった。

じーーー。

他の冒険者の視線を集める。

「ああ、よければハーピーの親子丼食べてく?」

匂いにつられて行きそうな冒険者を、その仲間が引き留めた。

「おい、魔物食に一度とりつかれたら病みつきになって、変なモンスター食べて命落とすのがほとんどだからやめとけ」

「えー。僕の魔物料理は大丈夫なのに」

京楽は口を尖らせて不機嫌そうだった。浮竹が、その肩をたたく。

「京楽、先を行こう。腹ごしらえは終わったし、この密林じゃあ、休息をとる場所も限られているだろうから、先に進もう」

「浮竹の言う通りだ。先に進もう。7階層で、今日は休息しよう」

7階層は、湖のある森だった。

その湖のほとりで、一行は本日の休息をとることにした。

夕飯にはまだハーピーの親子丼とかが残っていたが、新しいメニューに挑戦したくて、浮竹と京楽は湖に釣り糸をたらして、そして新米斧使いを餌に、罠をしかけた。

「おお、大量だ!ブラックシュリンプ(黒い大きいエビ)と、人食いピラニアがよく釣れる」

ちなみに、新米斧使いは浮竹に水中で呼吸できる魔法をかけられて、水底で餌になっていた。お化け貝が新米斧使いを襲い、すぐに引き上げて、新米斧使いは無事だった。

お化け貝を入手した!

「うーんいいね。海じゃないけど、海鮮パスタといこうか」

京楽は、まずは浮竹にブラックシュリンプの殻をむくように頼んだ。

「むき終わったぞ、京楽」

「うん。じゃあ、人食いピラニアの頭部を切って、はらわたをとりのぞいて3枚におろしてくれるかな」

「ああ、分かった」

京楽は、大きな鍋でお化け貝を煮込んでいた。

熱に耐えきず、死んでぱかっと口をあけたお化け貝の身をはぎとって、塩をふる。

パスタを茹でて、別の鍋で細切れにしたブラックシュリンプ、人食いピラニア、刻んだお化け貝の身を炒めて、トマトソースをいれて、ゆであがったパスタにトマトソースをベースにした新鮮魚類の具をかける。

「海鮮パスタもどきの完成だよ!」

名前からしておいしそうだった。

「僕の腕にかかれば、モンスターの人食いピラニアもブラックシュリンプも、お化け貝も、おいしい魚介類さ」

みんな、そのおいしさに涙を流しながら食べた。

浮竹は慣れているので、泣かなかったが。

「浮竹には、僕の下で啼いてほしいから」

ゴスっ。

白魔法使いの聖典の角で、浮竹は真っ赤になって京楽をノックダウンさせた。

「あー。そういえば、お前たち新婚だったよな。すまないな、冒険に参加してもらっている間は、その禁欲生活を強いてしまうから」

「ああ、気にしないでくれ。京楽が性欲が強すぎるだけなんだ。冒険している間は、ハグやキスはするけど、それ以外はしないと約束する」

「えー。やらせてくれないの」

いつの間にか復活した京楽が、浮竹の長い白髪にキスをしていた。

「アホか。ダンジョンで盛るやつがどこにいる!」

「ここにいる!」

「お前は!」

また聖典の角で頭を殴られて、京楽は昇天した。

「今日は、ここでベースキャンプを開こう」

テントをはって、皆思い思いに寛いだ。

7階層はモンスターが少なく、京楽と浮竹をのぞくパーティーメンバーで、一応見張りをしながら、朝を迎えた。

「さぁ、8階層に向かうぞ」

旅はまだ始まったばかり。

目指せ、未踏破の25階層!

浮竹と京楽の旅は続く。

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