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軟禁されてもこりない

「海燕の鬼---!」

「何ともで行ってください」

浮竹の手は仕事をするためにそのままにしておいた。ただ、足枷が右足にされていて、その少し長い鎖の先は、海燕がもっていた。

「上司を軟禁するとはいい度胸だ」

「こうでもしないと、あんた逃げ出すでしょう。この仕事は、今日中に片付けてもらわないと困るんです!」

「ちょっと甘味屋にいこうとしただけじゃないか」

「それがだめなんです!あんた、甘味屋行ったらしばらく帰ってこないじゃないですか。おまけに帰ってきたと思ったら、眠りだすし!」

「けちーーー」

浮竹は、そう言いながらも、次々と書類の束を片付けていった。

「終わったーーー!」

「えらく早いですね」

「いいから、足枷外してくれ」

「まだだめです。ちゃんと終わったか、チェックしないと」

海燕が書類に目を通す。

完璧だった。

「やればできるじゃないですか。なのに、なんで後回しにしようと思うんですか」

「だって、甘味物を食べないと頭の回転が鈍くなる」

「これで鈍ってるんですか?」

「いつもの4分の1、時間がかかってる」

「じゃあ、あんたに仕事を本気でさせるには、甘味物を与えればいいのか」

「どうでもいいから、足枷を外してくれー」

「3時のおやつに昼休憩の時に甘味物を許可します」

「わーい」

海燕は、浮竹の足枷を外してやった。

「自由だ!よくもやってくれたな!」

瞬歩で移動し、海燕の足元を蹴り、海燕を転がした。

「あいたたたた」

その間に海燕の右足に足枷をして、少し遠い柱に鎖をを巻き付けてやった。

「あ、そうきますか!」

「鍵なんてこうしてやる」

雨乾堂の傍にある池に向けて、ぽちゃんと投げてしまった。

「甘い!スペアキーがあるんですから」

それを手に、自分の足枷を外す海燕。

「くそ、何かぎゃふんと言わす手は・・・・・」

「ぎゃふん」

棒読みで、海燕がそう言った。

「きーーーーーー」

浮竹は怒った。

怒って、出て行ってしまった。

「今頃、8番隊のところかな・・・・・・」

浮竹が最初に行く場所といったら、そこくらいしか思いつかない。

案の定、浮竹は京楽のところにいた。

「お前もか」

「何がだい」

「足枷」

京楽の右足にされてある足枷をみる。

その先は、柱に固定されていた。

「これ、山じいが素直に言うことを聞かない僕らのためにって、七緒ちゃんと海燕君に渡した、特別な足枷だよ。鬼道でも斬魄刀でも切れない」

「先生も、時折えげつないことするな」

「まあ、怒って流刃若火で尻に火をつけられるよりましだけどね」

「それは確かに・・・・それにしても溜めこんだな。何か月分だ?」

「1カ月半」

京楽は、仕事をしながら泣きそうになっていた。

「俺も寝込んでため込むことはあるが、京楽はなぜこうなるまでため込むんだ」

「種類仕事、嫌いなんだよ」

「手伝ってやるから、さっさと終わらせて甘味屋に行くぞ」

浮竹が、すごいスピードで書類を片付けていく。

幸いにも、4分の1くらいしか残っていなかったので、その日の夕暮れ前には書類の仕事は片付けおわった。

七緒に事情を説明して、京楽の足枷をとってもらった。

「甘味屋へ行くぞ!」

「もう夕飯の時刻だよ」

「お前と甘味屋にいくために仕事を手伝ったんだ。今日のうちに一度行く!」

そう言って、瞬歩で浮竹と京楽はいつもやってくる壬生の甘味屋のまえにいた。

「遅くなると怒られるから、持ち帰りにしようか」

「ああ、分かった」

おはぎを、団子、羊羹、桜餅をそれぞれ浮竹は3人分、京楽はおはぎだけを買った。

勘定は、やっぱり京楽もちだった。

「俺はいいとして、お前はあんまり仕事を溜めこむなよ。処理するのに時間かかるんだから」

「うん・・・・流石にこりた」

雨乾堂にくると、海燕が怒っていた。

「こんな遅くになにやってたんですか」

「ちょっと、甘味屋まで」

「夕飯いらないんですか」

「いや、食うよ」

「京楽隊長もですか?」

「ああ、うん」

「隊長、京楽隊長の仕事を手伝ったそうですね。あまり他の隊の仕事をしないでください」

「なんでだ?」

「京楽隊長が懲りないじゃないですか。京楽隊長も、うちの隊長が手伝うっていってきた時は、断ってください」

「ええ、ああ、うん、多分無理」

はぁぁぁあと、長いため息をついて、海燕は夕飯の用意をしてくれた。

元々、今日は泊まる予定だったのだ。

京楽がやってこないので、浮竹は様子見を兼ねて京楽のところに行ってきたのだが、その溜めこまれた書類の量と、七緒の般若の顔に、書類整理の仕事をつい手伝ってしまった。

「京楽も懲りたようだし、これからは極力仕事を片付けるだろ?」

「うん、多分」

二人は夕飯を食べながら、久し振りに一緒に雨乾堂で食事とっている海燕に言う。

「まぁ、二人三脚でやってきたんだ。今後も、お互いを助け合っていく」

「仕方ありまんね・・・京楽隊長、あまり仕事は溜めこまないように。どうせうちの隊長がすることなってしまいますから」

味噌汁を飲みながら、海燕は小言をいう。

それをうるさそうに聞いていたら一言。

「あまりにも酷いようだったら、山本総隊長に知らせますから」

流刃若火で尻に火がつけられたことを思い出し、浮竹と京楽は互いに尻に手をあてるのだった。






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