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「好きだよ」

桜の木の下で告白されて、「俺も好きだ」と浮竹は答えた。

想いが通じ合って、それから--------------?



ずきずきと痛む頭に手をあてた。二日酔いなんて初めてではないだろうか。

「え、嘘でしょ」

ベッドの隣には、泣きはらした痕が痛い痛しい、浮竹が寝ていた。

「え、ほんとに?」

自分も浮竹も下着姿だった。浮竹の体中のいたるところにキスマークが残っている。覚えていたのは、二人で飲み屋にいって浴びるほどの酒を飲んだ。

そこまでだった。

確かに、好きだといったし、好きだと言われた。

でも、大切な初めてをこんな形で迎えるなんて、最悪だ。何せ、覚えてないのだ。

「浮竹、浮竹?」

揺り起こしてみると、浮竹はうっすらと目を開けた。

「僕、君に酷いことをした。なんていえばいいのか・・・・」

「覚えていないんだな」

浮竹の翡翠の瞳を見ていられなくて、目を逸らす。

浮竹が、触れるだけのキスをしてきた。

「大丈夫、俺も覚えていない」

親指を立てられた。

ぐっじょぶ。そう言いたいのだろう。

お互いの初めてを、酒のせいで台無しになるなんて、酒はほどほどにしようと思う京楽だった。

でも、本当に酒のせいなのだろうか。自慢じゃないが、今まで浴びるように飲んでも二日酔いになることはなかった。

浮竹といえば、部屋が相部屋なので、服を着て自分のベッドにもぐって、もうひと眠りしようとしている。

ムードも何もあったもんじゃない。

「浮竹、もう一度しよう」

このまま終わるのが悔しくて、浮竹をもう一度ちゃんと抱きたくてそういうと、浮竹が慌てた。

「いや、俺はもういい」

「そんなこと言わないで」

「もう無理なんだ」

「体に負担はかけないから」

「京楽、言うことを聞け!」

浮竹に頭を殴られたが、そんなことで引き下がる京楽ではなかった。

「君とのはじめを覚えていないなんて、恋人失格だ。もう一度、初めてをやりなおそう」

「違うこれは実は・・・・・・」

どっきりでした。

そう言われて、京楽は黒曜石の目を開いた。

「はぁ?」

「いや、お前がいつも廓の女とか買っているから、腹いせに・・・・お前の酒に眠り薬をまぜた」

「僕、浮竹と想いが通じ合ってから廓には・・・・行ってるけど、酒しか飲んでないよ」

「え」

今度は、浮竹が驚く番だった。

「女を、買っているんじゃなかったのか」

「違うよ。酒の酌をしてもらってるだけだよ。勘違いさせてたんだね。辛い思いをさせてしまったね」

そう言って、浮竹の服を脱がそうとする京楽を、浮竹は蹴り落とした。

「酒の力で途中まではしたけど、俺にはまだ覚悟がないんだ。すまないが、抱かれてやるつもりはない」

「そんなぁ・・・」

京楽は、情けない声をあげた。



「・・・・・ということがあってね」

「・・・・・・・そうか」

日番谷は、茶をすすっていた。もう大分慣れたので、少々のことなら動じない、はずだった。

「酷いんだよ。その後、浮竹ったら本当に眠ってしまって。どっきりだかなんだか分からないけどさ。だから、その夜に襲ったんだ」

ブーーーーー!

日番谷はお茶を吹き出していた。

「そうだぞ、日番谷隊長。この男、嫌だって言ったのに、あの時無理強いを・・・・・」

「でも、結局は君もその気になってお互い気持ちよくなって終わったじゃない」

「でも、ドッキリというオチは悪かったが、何もその晩に襲ってこなくても!」

「君がその気になれば、鬼道なりなんなりで逃げれたじゃない」

「それはそうだが・・・・・・」

日番谷は、なんとか平静を保とうとお茶を飲んだ。

「あの時の浮竹は凄かった・・・・ねぇ、浮竹」

「ああっ、京楽・・・・・・・」

「かわいいね、浮竹」

「日番谷隊長が見て・・・ああっ」

「おっさんどもーーーーーーーー!蒼天に座せ氷輪丸!」

ブチ切れた日番谷は、いつも通りの展開を起こす。

「きゃあああああああああ!」

長椅子に寝そべって酒を飲んだせいで飲み潰れていた松本は、それに巻き込まれて天高く昇って行った。

「ふ・・・京楽の金で、立て直せるようになったらから、いいか」

何度も執務室を半壊させるので、さすがの10番隊の懐もまずくなってきた。そこへ、京楽がお金を負担すると申し出てきたのだ。

上流貴族のぼんぼんの京楽には、腐るほどの金があった。

利用しない手はない。

そう思う、日番谷だった。
















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