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院生時代の部屋   書初めと

新年も開けて、書初めをすることになった。

総隊長であり、死神統学院の理事長である山本元柳斎重國の教えであった。

3回生の浮竹と京楽は、クラス代表として書初めに出ることになった。

書初めといっても、体ほどある大きな筆で書初めするので、体の弱い浮竹には補佐も必要だったので、自然といつも近くにいる京楽が選ばれた。

京楽の好きな言葉でいいと言ったら、大きな和紙に姫はじめと書いたので、殴って和紙を鬼道で燃やした。

「好きに書いていっていったのに。ぐすん」

涙ぐみながら、下からのぞきこんでくる京楽に、浮竹の心が乱れる。

「もっとましな文字にしろ。それならいい」

「そうかい。じゃあ・・・・・」

そうやってできあがった和紙には、豪快な文字で「浮竹十四郎」と書かれてあった。

「まったくお前は・・・・・」

京楽に拳骨をくれてやると、京楽は喜んで見えない尻尾を振っていた。

京楽は犬か猫に例えるなら、多分大型犬なんだろうなとか考えながら、抱きついてくる京楽をひっぺがして、できた書初めを提出した。

「ふむ。十四郎の名前か。まぁ、首席だからの。縁起もよかろうて」

「そうですか。先生にそう言っていただけるなら、書いたかいがありました」

「よい書初めであった。こりゃ、春水、十四郎をあまり困らせるでないぞ」

「はーい、山じい。分かってるよ」

そう言いながら、京楽は浮竹の肩を抱いて退出する。

それがごく自然に浮竹に受け入れていられるあたり、あの二人はそう遠くない未来、できてしまうのではないかと、山本元柳斎重國は少し苦悩した。



「あけましておめでとうセールやってるよ。ねぇ、行こうよ」

「仕方ないなぁ」

甘味屋で、新年初めの商いをする店が期間限定割引セールと、期間限定メニューを出しているので、いつも行く甘味屋とは違う甘味屋に出かけて、席をとった。

客の出入りはそこそこで、期間限定のメニューを中心に頼んだが、いつも行っている甘味屋のほうがおいしかった。

客の入りが多いのは、割引セールをして、新メニューを期間限定で配布しているせいだろう。

まずいわけではないが、特別美味しいとも感じれないメニューを浮竹はぺろりと平らげて、勘定を京楽に任せると、ふわりと風をはらませながら外に出た。

少し長くなった白い髪が、風で揺れる。

女でも通る整った顔立ちに、人の視線が集まる。

「あの、時間ありますか、よければ俺とお茶を・・・・・」

意を決して、そう言ってきた男を、勘定を払い終えて出てきた京楽が睨んだ。

「あ、あ、なんでもありません!すみません!」

「?なんだったんだ?」

浮竹は、首を傾げていた。

「なんでもない。浮竹は知らなくていいの」

ぐしゃぐしゃと浮竹の髪をなでて、京楽は笑った。

「うわ、お前髪の毛がぐしゃぐしゃになるだろ。そういう子供扱いはやめろ」

「浮竹はまだまだお子様だからね」

「なんだと」

「僕が今何を考えていると思う?」

「えろいこと」

「正解☆」

浮竹は、京楽をアッパーで殴った。

殴られた京楽はにこにこして、往来で浮竹の腰に手を回して、キスをする。

「きょうら・・・・・・んんっ・・・」

キスとハグは許しているとはいえ、人前ではしないようにと言い聞かせているのにと思いながら、浮竹は呼吸の苦しさに瞳に涙をためながら、目を閉じた。

そして、京楽の股間を思い切り蹴り飛ばした。

「あぎゃあああ!!!」

まさかそう反抗されると思っていなかった京楽は、今日こそ浮竹を落とせるかもとかちょろい考えでいた自分に反省するしかない。

「お前は!人前でこういうことをするなと何度言えば分かる!」

つっと、右目から涙が零れ落ちた。呼吸の苦しさでたまった涙なので、そこに感情も意味もなかったのだが、京楽は勘違いした。

「浮竹!」

京楽は、その涙にびっくりして、浮竹を抱きしめていた。

「京楽、人前だぞ!」

「ごめん、僕が悪かった。責任とるから!結婚しよう!」

「は?」

浮竹は頭の中が、真っ白になっていた。

何故この展開で、結婚に至るのだ。

「お前が白無垢なら、結婚してやらないこともない」

以前もこんなやりとりが、あった気がする。

あの時は京楽は白無垢を着ていたような着ていなかったような。あやふやな記憶を辿る。

「学院でも人前でもやってるじゃない。ハグとキス」

「見られない位置でだろ!」

「ああ、言いふらしたいなぁ。浮竹は僕の物だって」

「やめろ!」

京楽は、浮竹をひょいと肩に抱きかかえると、そのまますたすたと歩き出した。

「京楽、おろせ」

「だーめ。熱でてるよ」

「え?」

浮竹本人でも気づいていなかった。

少し暑い気はしていたのだが、それだけだったので。

浮竹の体調の変化に敏感な京楽は、浮竹が具合が悪くなるとすぐにわかった。

「雪が降ってきたね」

「どうりで寒いわけだ」

熱があることを認知した浮竹は、京楽の肩の上でため息を零しながらも、そういえば去年なくなったぱんつの枚数を思い出していた。

「去年、お前が奪っていった俺のパンツは何枚だ」

「225枚」

「・・・・・21枚おおい」

知らないところで、盗まれていたのか。

京楽の頭をぽかりと力のあまりない拳で殴ってから、浮竹は目を閉じた。

暖かい。

ちらちらと雪が降っているが、触れあっている場所はとても暖かかった。

今年も、京楽との腐れ縁は続きそうだ。

京楽の変態も。

書初めで「浮竹十四郎」と書いてしまうほどに、浮竹のことが大好きな京楽。

恋人になることを拒否しつつも、少しづつ受け入れている浮竹。

親友以上恋人未満の関係は、まだ続きそうだった。





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