院生時代の部屋 復讐
なかったことにして、二度寝した。
次に起きると、浮竹のパンツを被って太極拳をしている京楽がいた。
時計を見る。8時だった。
そろそろ起きないと、学院に間に合わない。
「京楽、遊んでないで登校するぞ」
寮の自室が京楽と一緒になって一年。もう、慣れたものだ。
マッパで何かしている以外なら、あまりつっこまなくなっていた。
新学期だった。
久しぶりの学院と、戻ってきた日常に自然と笑みが零れる。
「おはよう、浮竹、京楽」
「ああ、おはよう」
「おはようございます、浮竹君、京楽君」
男女問わず、浮竹は人気が高い。それについてまわっているので、京楽への挨拶はついでになる場合が多かった。
「おはよ、浮竹!」
「ああ、おはよう」
「おっと忘れてた。京楽もおはよう」
「おはよう・・・」
朝っぱらから、京楽は挨拶をしてくる友人たちを警戒していた。
クリスマスで同じ特進クラスの女子にはめられかけた。それと同じことが起きないように、警戒しているのだ。
「京楽、そんなに警戒しなくても何も起きない」
「そうかな・・・」
「普通に過ごせ」
「無理」
「普通に過ごせば、放課後5回キスしてやる」
「普通に過ごすよ」
全く、切り替わりの早い・・・。
浮竹は溜息を零しながら、1限目の授業を受けた。
座学だった。尸魂界と護廷13隊の成り立ちについての授業だった。浮竹は、年末年始をだらだら過ごしていたせいか、うとうとと眠りだしてしまった。
隣の席にいた京楽は、起こすこともせずに、一緒になって眠りだした。
授業が終わり、チャイムが鳴る。
はっと、浮竹が起きる。
「寝ていた!?京楽、なんで起こしてくれなかった!」
京楽の方を見ると、よだれを垂らして爆睡中であった。
「次は・・・・鬼道の授業か・・・・」
起こしてやろうか、悩んだ。
でも、気持ちよさそうに寝ているので、そのままにしておいた。
1回生や2回生の頃は、授業をさぼって廓なんぞに行ったりしていたので、出席日数がぎりぎりだったが、2回生の秋に、浮竹に告白をしてから廓に行くこともなくなったし、激しかった女遊びもやめた。
鬼道の腕はいい。
授業をこのままさぼっても、問題はないと判断して、浮竹は鬼道の授業に一人で出た。
「血肉の仮面・万象・羽ばたき ヒトの名を冠す者よ 蒼火の壁に紅蓮を刻む 大火の縁を遠天にて待つ 破道の七十三 双蓮蒼火墜!」
浮竹の完全詠唱のその鬼道は、的を粉々にしてクレーターができた。
アキラという名の、クリスマスの騒ぎで停学二か月処分を、山本総隊長から受けて、護廷13隊入りが難しくなった女生徒が、鬼道の詠唱を始める。
アキラの家は上流貴族だった。なんとか停学を2週間にまで縮めた。
「血肉の仮面・万象・羽ばたき ヒトの名を冠す者よ 蒼火の壁に紅蓮を刻む 大火の縁を遠天にて待つ」
ばっと、的ではなく浮竹に鬼道を放つ先を変えた。
「破道の七十三 双蓮蒼火墜!」
流石の浮竹も、突然のことでまともに鬼道を当てられた。
焦げた匂いをさせて、浮竹が倒れる。
「あはははははは!」
アキラは笑っていた。
教師がすぐにアキラを取り押さえて、怪我を負った浮竹を医務室に運ぶ。
「酷い火傷だ・・・・4番隊から、至急席官クラスの死神を呼んでくれ!」
山本総隊長の秘蔵っ子だ。死なせるわけにはいかない。
医務室の保険医は、できる限りの回道をほどこしたが、火傷はまだ残っていた。
やがて、4番隊から3席の死神がやってきて、浮竹に回道を施す。完璧にとはいなかったが、火傷はほぼ癒えた。
まだ傷跡が残っている腕にや足に湿布を巻いた。
「う・・・・俺は?」
「すぐ、京楽君を呼んでくるから。大人しく、ベッドで横になってなさい」
言われた通りにする。
京楽は、浮竹の霊圧の乱れで起きて、鬼道の授業がある場所にきていた。
そこで、停学処分から開けたアキラが、浮竹に向かって鬼道を放ったと知って激怒した。教師がおさえなかったら、拳で血まみれになるまで殴りつけただろう。
「浮竹!」
医務室に、京楽がやってきた。
「京楽・・・・」
「よかった。思ったより、怪我が酷くなくて」
「4番隊の3席を呼んだからね。火傷が酷かったんだ」
保険医はそう言った。
「ありがとうございます。4番隊を呼んでくれて・・・・・」
「山本総隊長の愛弟子だからね。まぁ、他の子でも呼んださ。それくらい、酷い火傷だった。回道でほとんど癒えたけどね。残りの火傷は、自然治癒に任せるしかないね」
腕や足に、湿布が張られていた。
「痛む?」
「少しだけ」
「俺に鬼道を放ってきた、アキラっていう女生徒はどうなった?」
「退学だよ。でもその前に、殺人未遂で警邏隊に連れていかれた」
「そうか・・・・・・」
「僕が君から目を離した隙にこれだ。浮竹、僕まで寝ていたら、今後起こして。二度とこんなことを起こらせないと誓う」
「ああ・・・・・」
浮竹の火傷は、2週間ほどで完全に治った。
まさか、命を狙う行動までするとは思わなかった。
京楽は、しばらくの間浮竹にべっとりだった。
「ええい、暑苦しい!」
「そんなこといわないで。むちゅー(*´з`)」
「やめろ」
京楽の頭を思い切りはたいた。
アキラの両親が謝罪してきて、罪の軽減を望んできたが、浮竹も京楽も許すことはなかった。
一度甘い考えを出してしまえば、今後同じことが起きた時に困る。
とにかく、退学処分になってよかったと思う二人であった。
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