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院生時代の部屋 梅の花

いつもの季節より早く、梅の花が咲いた。

「梅の花か・・・もうすぐ春だな」

4月になれば、4回生だ。

背の高い京楽は、梅の枝を折って、浮竹に渡した。

「部屋に飾るといいよ」

綺麗な紅梅で、かすかな匂いがした。

「梅の花って、綺麗なのにあまり匂いはしないんだな」

「そういえばそうだね」

二人で、学院の廊下を歩いていると、向こう側から生徒が走ってきた。

ドンとぶつかって、浮竹がよろける。

「こら、謝りなよ!」

京楽がそう声をかけるが、ぶつかった生徒はあっという間に遠ざかってしまった。

「こらーーー!」

その後を、教師が追いかける。

「どうしたんですか?」

浮竹が問いかけると、教師は真っ赤な顔で怒っていた。

「女生徒の更衣室を盗撮していたんだ」

「ちょっといってくる」

京楽は、瞬歩でさっき逃げていった生徒を捕まえた。

下級生だった。

教師は死神ではなかったので、瞬歩は使えなかった。

3回生の終わり頃に、ようやく瞬歩の基礎を教えられる。京楽が自己流で鍛錬し、死神と同じ速度の瞬歩が使えた。

浮竹も瞬歩を使えるが、まだ基礎的なもので本物の死神のそれと比べれば、どうしても劣ってしまう。

「すみません、すみません、もうしませんから」

ぶらーんと長身の京楽にぶら下げられて、哀れなほどに貧相な少年だった。

「君、1回生でしょ。こんな時期から盗撮だなんて、せっかく受かった学院を退学になりたいの?」

生徒を、教師に引き渡す。

「こら!停学になる覚悟は、できているんだろうな!」

「くそ」

生徒は、浅打を手にしていた。

「うわあああああ!」

暴れ出して、教師に斬りかかる。

「危ない!」

庇った浮竹の背に、その浅打は食い込んでいた。

「浮竹!!」

血を流して倒れる浮竹は、スローモーションで見ているようにゆっくりと床に倒れた。

「お前!」

「ひいいい」

下級生は、浅打を手に暴れ回った。

瞬歩でその背中に回り込み、浅打を取り上げて腕の関節を外した。

「いてえええええ!!」

本当なら、斬魄刀で斬り殺してしまいたい。

だが、通常の学院では帯剣は、非常時以外許可されていない。

「退学だよ、君・・・。大人しくしていれば、停学ですんだものを」

浮竹を抱き抱え上げる。

背中の傷はそんなに深くはなかったが、抱き上げた京楽の手にも腕にも服にも、べっとりと血がついた。

「京楽君、この生徒は私に任せなさい。早く浮竹君を医務室へ!」

京楽は、誰かを抱えて瞬歩をしたことがない。もしも、途中でおっことしたら大変だと、走って医務室に向かった。

ここから、そんなに距離は離れていなかった。

「先生、回道使えますか!」

保健室に入ると、今日は幸いなことに、4番隊の隊員がいた。

「背中を斬られてます」

「うつ伏せにベッドに寝かせて」

うつぶせにして、傷のある場所に回道をかけていく。

傷は、綺麗に塞がった。

「よかった・・・・」

すぐに、浮竹も意識を取り戻した。

「あ、俺は・・・?」

「君、教師を庇って浅打で背を斬られたんだよ」

「ああ・・・・咄嗟だったから」

「もう、あんな危ない行動は慎んでね!凄く心配したんだから!」

京楽の服が、手が、腕が、浮竹の血で汚れていた。浮竹の服も、真っ赤になっていた。

「傷は深くなかったけど、けっこう出血したね。輸血パックがある。輸血していきなさい」

浮竹は、念のために輸血をされた。

「院生の服、サイズが合うか分からないけど、ここに置いておおくから。輸血が終わったら、着替えなさい」

京楽も、手や腕についていた血を洗って、真新しい院生服に着替えていた。京楽は背が高いので、その院生服も大きめだったが、少し窮屈そうだった。

輸血が終わり、すっかり元気になった浮竹は、新しい院生服に着替えようとして、こっちをじーっと食い入るよに見つめている、変態京楽の視線に気づいた。

「着替えるから、部屋を出ていけ」

「ええ!先生はよくて、僕はだめなの!?」

浮竹は、京楽の背中を蹴って、医務室の外に出した。

着替えようとして、窓の隙間からじーっとこっちを盗み見ている京楽に、溜息を零しながら、カーテンでしきられたベッドの上で着替えた。

「ああ、オアシスが見れない!」

なんとかのぞきこうもうとしているが、分厚いカーテンにしきられて、浮竹の着換えは見れなかった。

「先生、ありがとうごいました」

「ありがとうございます」

「いや、大事に至らずによかった」

4番隊に所属している保険医に礼をいって、さっきまでいた廊下に戻ると、床に落ちていた紅梅の枝を拾った。

「どうするの、それ」

「お前が手折ってしまったんだ。このままじゃかわいそうだから、寮の花瓶にでも活ける」

「紅梅と浮竹・・・・(*´Д`)ハァハァ」

「どこに興奮する要素があるんだ!」

「君の白い肌に、紅梅はよく映える・・・」

「まさか、それだけのために手折ったのか?」

「そうだよ」

京楽は、そう言う。

「梅の花も生きてるんだぞ。無意味に手折るな」

京楽の尻を蹴り上げると、京楽はでれっとした。

「怒った浮竹もかわいい」

「ああもう、お前というやつは・・・・」

今日の授業は昼までだったので、食堂によって食事をした。

梅の花をみて、女生徒が綺麗だ綺麗だと集まってくる。

「がるるるるる!浮竹は僕のものだよ!さぁ散った散った!」

京楽に威嚇されて、女生徒たちは黄色い悲鳴をあげながら、去っていった。

「お前は・・・はぁ、もういい。疲れた。寮に戻ろう」

紅梅の枝を手に、寮の自室に戻ると、ちょうどいい大きさの花瓶を見つけて、水をいれて枝を活けた。

「もうすぐ、春だな・・・・」

「僕と君が巡り合ってから4年になるのかぁ。早いねぇ」

京楽は、ぱんつ一丁だった。

「服を着ろ、服を!」

「浮竹に踊りを見てもらいたくて」

ぱんつ一丁の、どじょうすくいの踊りを見せられた。

「どう?感想は?」

「非常に不愉快だった」

「そう!それはよかった!」

素晴らしいといっても、不愉快といっても、どのみち同じ感想をするだろう。

変態京楽は、そんな生き物だった。

梅の花はそれから1週間は散ることなく、寮の部屋を彩っていた。






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